第七十二話【これはモテ期なのですか?夢で皆に、現実ではXさんに話しかけられてしまいましたわ!】
勿論、美鈴はモテ期ではありません。
寧ろ女難の相と呼べるのかも?
良く晴れた秋晴れ。
「んんー!」
大きく伸びをした私こと、美鈴がベッドから起き上がりました。
そして窓を開けて外の空気を胸いっぱいに吸い込んだのですわ。
「ああ〜、今日も気持ちの良い朝ですわ。」
………昨晩、寮に帰ってから何やら色々と面倒なゴタゴタがあったような気がするんですが、ここは黙って頭の隅に置いて置くとしましょう。
「さて、朝食に参りましょう。」
何気に離れたベッドを見る、です、が…。
「あら?愛麗の姿がありませんわね?」
朝食の準備の手伝いか洗濯にでも行ってるのでしようか?
等と呟きながら私は一人で着替えを済ませて食堂に向かいましたの。
が、
「皆さあ〜ん、おはようございますですわ〜♪」
私、美鈴は食堂に入るなり、いつも通りにこやかな挨拶をしたのでございますのよ、それなのに…。
「…おはようございまぁ〜す…。」
ボソボソッと気の無い返事が返って来たのですわ。
「どうかなさったのかしら、皆さん?」
ハテナ?と不思議に思いながらも見知った顔の席を探す私、美鈴。
あら、ちゃんと皆さんいらっしゃるじゃございませんか!
「おはようございます、明花さん、、芽友さん、それから愛麗?」
親愛の情を込めてスマイル!ですわ♡
…………………し〜ん……………………。
………………。
………な、な、なな?…何故ですのおーっ?!
「おっはー?」
……………し〜ん……………。
「グッモーニン〜!」
……………し〜ん………………。
な、何故皆さんシカトされますのおお〜っ?!
と、そこへ白百合のプリンセスこと闘姫さんが。
「あ、姫さんおはようございますですの!」
「あら美鈴さん、おはようございます。」
良かった〜、このコだけは答えて下さいましたー!
…………でも、何故無表情ですの?
彼女は手にし照らした本を片手に席に着かれるとそのまま読書を始められてしまいました。
「あの、姫さんちょっと聞いて下さりますか?」
「…朝食前なので手短かに…。」
「あ、はいですわ。」
(な、何か機嫌悪い?)
「あの…皆さん私が声をおかけしても誰も答えて下さらないんですの…何故でしょう?」
すると。
「貴女、ご存知のハズですよ?」
パタンと本を閉じられて席を立つと、姫さんは私の前にツカツカと歩み寄られましたの。
「美鈴さんがいつもいつも私達に思わせぶりな態度を取られ続けるから、もうみんな我慢の限界なんですーッ!!」
なんと姫さんが怒りを大爆発させて私に食って掛かりましたのよ〜っ!!
「お、思わせぶりい?!」
私が困惑していると、
「美鈴さん酷ーい、昨日も私の事を弄びましたよねー?!」
「み、明花さん?」
「お嬢様〜、私という者がありながら次から次へと〜!」
「あ、愛麗?貴女にはもう芽友さんがいるでしょう?」
「美鈴様…明花お嬢様がいながら姫さんや、あろうことか私の愛麗にまでちょっかいを………!!」
「芽友さん、私誰にもちょっかいなんかだしておりませんから!」
「あと、あの変態娘の愛麗にだけはちょっかい出す気は起きません!」
「酷いっ、私の愛麗には魅力が無いとでも?!」
「あ、あのですねー…?」
「お嬢様酷いですよお〜〜〜??」
「愛麗、アンタは黙ってなさい!!」
と、友人達の相手に手を焼いていると…。
ドドドドド…!!!!
「「「「「美鈴さ〜ん!!!」」」」」
ゲゲッ?!
何と、寮中の生徒が…。
いえ、これはそれ以上…まさか学院中の?!
これはもう逃げるしかありませんわ!
そして走って逃げるのですが、何故かあまり引き離せませんの…これは一体?
しかも更に聞いた様な声が聴こえてまいりましたのよ、これが…!
「美鈴さーん?」
(これは月夜生徒会長?)
「美鈴様〜?」
(え?依然さんお怪我治りましたの?)
「美鈴君〜?」
(范先生、お久しぶりですわ…て、あれ?担任なのに?)
「黎美鈴君ー?」
(王部長、貴女ま出何ですの?!)
「美鈴さんー?」
(だから何出学院長代理までがあ?!)
な、何で私の知ってる人達がみんな追いかけて来るのですか〜?
…………?
私の目の前にはちっちゃい人影が。
その人影は振り返ってこう言いましたの。
「美鈴様あ、私、来ちゃいましたあ♪」
何とその子は弓を引き絞って降りました!
「ゲゲゲッ?!若汐さんっっ?!」
「えいっ、ホーミングアロー♪」
シュバババとその子は私に向けて矢を放ちましたの!
しかも、矢の先はハートマークになってるじゃありませんか!
「貴女、いつの間に恋のキューピッドに転職されましたの?」
「え〜?私は昔から恋のエンジェルですよお〜?」
矢を躱しながら話しかける私とニコニコと矢を放ちながら惚ける若汐さん!
そこへ白百合のプリンセスや明花さんを始めとする人の波が押し寄せて来て………!
ええ〜い、もう面倒ですわあ〜?
【龍巻斬!!!】
私は剣を振り、周りの全てを吹き飛ばしましたわ!!
……………………………。
「…………ふえっ?」
唐突に美鈴が目を覚ました。
部屋の中は色んな物が散らかっていた。
椅子やソファーは倒れているし、なんならお茶に使うテーブルもひっくり返っている。
本やノート類、ペン等も床に散乱しており窓ガラスも何枚か割れていた。
(何やら部屋が散らかっておりますわね…?)
美鈴がやや離れた場所にあるベッドを見ると、何故か愛麗が寝ていた…と、言うより目を回してノビていた。
「………あれ?」
その様子を美鈴がボンヤリ眺めていると、彼女の頭上からクッションが降って来て美鈴の頭にポン!と落ちた。
「…はて、何が起きたのでしょう?」
まだ寝惚けたままで着替え始める美鈴だった。
……………………。
今朝見た悪夢の影響から、食堂の扉を前に少し緊張する美鈴。
「深呼吸、深呼吸…。」
すうーっ、と息を吸って吐き、もう一度大きく息を吸う。
そして。
(良し…。)
彼女の後ろでは頭を擦っている愛麗がいた。
「お嬢様〜、早く入ってくださいよお。」
「わ、わかってますわ!」
もう一度軽く息を吸い込むと、美鈴は扉を開けた。
「皆さん、おはようございますですわ!」
…………………。
「…と、いう夢を見たんですのよ。」
「それでお嬢様ったらいきなり寝言で【龍巻斬】とか叫ばれちゃって!」
二人は何時ものメンバーとの朝食を楽しんでいた。
「夢の中だったのに現実でも発動しちゃったみたいですわね、すみませんでしたわ愛麗。」
美鈴が愛麗のタンコブを優しく撫でるとタンコブが小さくなり、愛麗も気持ちよさそううに喉をゴロゴロと鳴らした。
まるで猫だな。
「ああ〜、それで二階の方で何やら音がしていたんですね?」
明花が終始いつも通りの柔らかな表情で美鈴の言葉に対して受け答えしていた。
(こ、これですわコレ!これこそ明花さんが私にいつも向けて下さる笑顔ですわ!)
明花が普段通りの反応をしてくれてることに喜びを噛み締める美鈴だった。
ついでに味わう食事もいつも以上に美味しく感じるのだった。
「それで愛麗さんにもタンコブが出来てるんですね?」
今度は白百合のプリンセスこと、闘姫がにこやかに話しかけた。
「そうなんですよ、何時もならすぐ治っちゃうんですけどねー。」
そのタンコブも美鈴が撫でてやると目立たないまでに小さくなった。
(そう言えば自動的に発動しているはずの愛麗の自己治癒魔法が効かないなんて変ですわね…。)
「愛麗、貴女まさか変な物とか拾い食いしてませんよね?」
「するワケありませんです!」
「わかりませんよー、愛麗って結構食い意地が張ってますものね?」
クスッと笑う芽友。
「もーう、さすがに拾い食いなんてしませんよー。」
困ったように潔白を主張する愛麗だった。
「まあ冗談はともかく、以前にも怪我の治りが遅い事ありませんでしたか愛麗?」
「…んー、言われてみれば前にも一度だけこんな事が…。」
………そう、その出来事は美鈴が聖霊の仮面を正式に継承した後に発生していたのだった。
つまり愛麗の自己治癒が阻害されたのは、美鈴に何らかの新たな力が宿ったが故の一時的現象と考えられる。
だがその新たな力が何なのか、まだこの時点ではごく一部の者しか知らない。
「まあ、愛麗の自己治癒能力が早く戻らないと迂闊に攻撃魔法の発動が出来ませんから気を付けないと。」
「あの〜、何故そこで愛麗さんを攻撃目標とする事が前提になっているのですか?」
白百合のプリンセスこと闘姫は苦笑いした。
「姫さん、二人はセクハラする側とそれを迎え撃つ側という特殊な主従愛の関係にあるんです。」
こめかみを片手で押さえながら明花は闘姫にそう説明するのだった。
そんな歪んだ主従関係の二人はそんな話もすっかり何処かへ放り投げたのか、バクバクと食事に齧り付くのであった。
………………そして学院校舎を前に校庭を歩く美鈴とその仲間達。
「おはよう美鈴さん、今日の試合頑張ってねー!」
等と口々に声援を受ける美鈴。
と、彼女達の前に突然一人の生徒が現れた。
「おはようございます美鈴さん。」
それは黒髪おかっぱ頭の生徒だった。
「…え〜と、貴女は…あ、確か設営準備で顔を合わせた…?」
「良く覚えてらっしゃいましたね、驚きです。」
「そんな貴女には覚えてくれていたお礼にいいモノをお見せ致します。」
ニッコリ微笑んだ黒髪おかっぱ頭の生徒の目が値のように紅く光った。
すると、彼女の全身が銀色に輝く。
眩さに目を瞑った美鈴達が次に目を開けると、そこには。
「この姿でお会いするのはこれで二度目かしら、美鈴さん。」
「あ、貴女は…!」
彼女には見覚えがある美鈴だった。
夜中なのか、それとも明け方だったか、二人は寮の庭で出逢っていた。
そして明花、愛麗、芽友の三人もまた試合会場でその姿を見ていた。
「あ、貴女のお名前は何ですか?」
震えそうな声で明花は聞いた。
「フフフ。『X』ですよ。」
銀髪ボブヘアーと紅い瞳が、それぞれ怪しく光っていた。
Xさん、美鈴に対して余裕の宣戦布告でしょうか?
しかしもう一人の決勝進出者を忘れてるようですねー、彼女を甘く見てると痛い目に遭うと思うのですけどね。
例えば、鞭シバきとか(笑)?




