第六十七話【剣と剣との火花が学園の星となる?剣の部門決着!】
遂に剣の部門の決勝大会!
美鈴は揺るぎ無い自信に満ちておりますが、相手は決勝に進出するほどの強者。
果たして、この試合の行方は…?
「始め!」
審判の合図と共に構える対戦相手。
対して剣にまだ手をかけてすらいない美鈴。
今日この時間、遂に剣の部の決勝戦となったこの試合。
誰もが美鈴の活躍を期待していた。
なので美鈴が剣を抜かないのが疑問だった。
(どうしたんかな美鈴。)
(ヤル気が出ない…?)
(相手をナメすぎやろ…。)
(これはアカンわ…。)
ザワつき始める観客。
彼女らと同じ事を対戦相手も思ったようで。
「何故剣を取らないの?私を苛つかせるつもり?」
少し憤慨してた。
これに対して美鈴は悪びれずこう答えた。
「いえいえとんでもございません。」
「これにはちょっと考えがこざいまして…どうぞかかってきて下さいませ?」
「怪我しても知らないからね?」
対戦相手の上級生は面白く無さそうに中段突きに構える。
そして片手を美鈴に向ける。
「そんなに使いたくなければその剣要らないわね?」
『稲妻よ…!』
彼女の手の平から雷光が迸る。
その稲妻は美鈴の剣に向かった。
稲妻が美鈴の剣を直撃した時、誰もが勝負有りか?と思った。
剣が粉々に破壊されるか、もしくは美鈴の結界シールドを稲妻が突き破って美鈴がダメージを受け戦闘不能となる。
又はその発生源であるアミュレットを稲妻が砕く。
…少なくとも観客である生徒らはそのように想像したのだ。
しかし。
「ニヤァ〜。」
美鈴が愉悦の笑みを浮かべる。
剣は鞘ごと地面に突き立てられていた。
「…そうか、アースね?」
「私の放った雷のエネルギーを地面に逃した、そうでしょう?」
対戦相手の上級生は自身が放った稲妻を無力化した美鈴の手口を理解した。
これを聴いて観客席の生徒達も…。
ザワ…。
「な、なるほど…だから稲妻は剣に留まらず地面に分散し吸収され、剣は破壊されずに済んだというわけか…。」
しかも美鈴の手袋、ブーツは革製。
これでは例え結界シールドやアミュレットを稲妻が突き破ろうとも、美鈴の身体に電気は通らない。
ザワザワ…。
「美鈴て身体能力と魔法が強くても正直頭はそれ程じゃないと想像してたんだけど…。」
「意外に知恵が回るのね〜、驚いちゃった!」
ザワザワザワザワ……………。
観客達がざわめく中、対戦相手が美鈴に問うた。
「私が雷魔法使いと知って対策を練ってたのね?」
「もちろんですわ。決勝の相手に対して欠片も油断していませんことよ。」
「…な、なるほど…だから最初から剣を掴もうとしなかったワケね。」
「念の為に、ですわ。」
「でも、素手じゃ剣に敵わないわよ!」
稲妻が無効と知るや、上級生は一気に距離を詰めて連続の突きを繰り出してきた。
「はあああ〜っ!!」
ズバズバズバババッ!!
目にも止まらぬ早技という言葉がピッタリなくらい、高速の突きで剣が繰り出される。
これは彼女が今迄の試合の中で繰り出したどの技よりも高速だったらしい。
「は、速いよあの突き!」
「さすが決勝戦だけあるな、レベルが違う!」
その為、観客席から上級生による高速の連続突きに対して賛辞が聴こえてきた。
ヒュ…ヒラ…フッ…フワッ…スッ…。
対して美鈴も巧みにこれを躱す。
それも出来るだけ最小限の幅の動きで。
「なるほど…さすが『雷音』と呼ばれる方でございますわ。
【和名呼びなら『ライオン』とも読めるぞ。】
(そう…まさにライオン…獅子の如き獰猛な魔法剣士でもあるこの方こそ、剣の部門の決勝相手として相応しいですわ!)
ガキガキガキイン!
最初その突きのことごとくを躱していた美鈴であったが、連続するその全ての突きを躱してばかりも飽きたのか、素早く抜いた剣で受け止め始めた美鈴。
それを見てすかさず雷を放とうとする雷音だが彼女は有ることに気が付く。
(え…足首が?)
そう、美鈴は素足になっていた。
これにより彼女の身体に雷撃が流されようともそのほとんどは地面に吸い込まれていく。
更に上手い事にアミュレットが形成しているシールド結界がその雷撃で破られない限り、受けた電流は美鈴の表面の結界をなぞるだけだ。
仮に結界が途中で破られたとしても美鈴がこれだけの電流対策を施していれば戦闘不能に陥る事は先ず無いと言える。
美鈴による見事な迄の徹底的した電撃対策であった。
因みにオレは何でそこまでするんだ?と疑問だった。
まあコイツの事だから意図的にそうやってるんだろうけどな…多分対策を考える事自体を楽しんでたのに違いない。
こんな対策自体が美鈴には必要無い事を知ってる俺からすれば茶番だなー、と醒めた目で見てしまうのところだが。
(くっ…ならば!)
この時、美鈴のアミュレット自体を破壊するまで!と雷音は思ったのに違い無い。
が、実はそれこそが美鈴が仕掛けた周到な罠だったんだな、コレが。
【実にヤラシイ性格の女だ、全く。】
(後で覚えておきなさいな、名尾君…(怒)?)
【はて、何の言葉でしょ〜?】
オレ達の心の中でのコミュニケーションが行われてる隙に、フェイントの突きを分散させて注意を散らした雷音がここぞとばかりにアミュレットを剣先で狙って突きを繰り出す。
ガキッ!!
「やった!」
雷音は勝利を確信した。
彼女の剣先はアミュレットに突き立っている。
後は少しパワーを込めるだけでアミュレットは真っ二つに割れる。
そうなれば試合続行不能とみなされ美鈴の敗退が決定する。
思わず雷音の瞳が笑みで歪んだ。
「私の勝ちだ!」
雷音が剣先に力を込める。
………………。
が、美鈴のアミュレットに変化は無い。
「な、何故?」
雷音の顔に焦りが見えた。
『クックックッ…………。』
さながら典型的な悪役令嬢の如き表情で美鈴が薄ら笑う。
「クスクス…あらあら御目出度いお方ですこと…?」
「な、何が可笑しい!?」
「コレが笑わずにいられまして?」
どういう事だ?と雷音が美鈴のアミュレットに突き立てた剣先を見る………と。
「…あっ?………あああ〜っ?!」
雷音は目を見開いて叫んだ。
「か、髪の毛えええ〜〜〜っ?!」
そう。
彼女の剣先は僅か数本の美鈴の髪の毛によって絡め取られていたのだ。
「そう、これこそ私が昼寝の間を惜しんで考えた雷音さんの高速連撃封じ、ですわ♪」
【そこはせめて夜通し考えた、と言ってやれ…(汗)。】
俺のツッコミは無視して美鈴は続けた。
「驚きまして?因みにこの髪の毛は硬気功ならぬ鋼気功と申しまして、魔法と仙術をブレンドした私のオリジナル魔法により強化されておりますのよ。」
喜々として自分の魔法が如何に独創的で素晴らしいかを語る美鈴の目がキラキラ輝いていた。
頼むから、そう言う眼はラブロマンスなシーンとかで使ってくれ?
…む、無駄にキラキラしてて、み…見てるコッチの方が恥ずかしいわいっ!
(ウフッ♪私の魅力にスッカリ釘付けですのね名尾君?)
【…て、ご満悦な表情でとんでもねえ事を言うんじゃねえーっ!】
そんな俺の叫びはアッサリ無視して勝手に話を進めやがったのだ、この女は。
「で、この魔法の更に凄いトコロはですね?」
バキイン!
美鈴が自分の髪の毛で絡め取っていた剣先を締め上げると、いとも簡単にその剣先は砕け散った。
「…な、何だそれええ〜?」
呆然と剣先の砕け散った自分の剣を見つめる雷音。
あ、彼女ちょっと涙目になってるぞ?
「よ、よくも大事な私の剣を〜…。」
目ん玉を大きくしてポロポロ涙を溢す雷音。
あ〜あ、オレ、知〜らねえ〜。
「え…?えと、そんなに大事な剣でしたの?」
(あわあわ…。)
美鈴は少し悪い事をしたと思ったらしい。
「あ、後で父役母様に頼んで弁償していただきますから、どうか勘弁なさって…。」
アタフタと謝りだす美鈴。
と、泣いていた雷音は次第に怒りの表情に。
「許っさああ〜ん!!」
ドッシャアアン!!
近くの大木にカミナリが落雷した。
遂に怒りの雷音が奥義を繰り出したのだ。
まさに稲妻。
まさにサンダーだった。
※(注)正確には稲妻はライトニング※
この時の雷音の側頭部に二本の角が生えてたならバックのBGMに【怒りの○神】という元プロレスラー(Jrヘビー級)のテーマ曲が流れた事でしょう…と呑気に考えてしまう美鈴だった。
天候を操り雷雲を呼び寄せたのだ。
このレベルの雷撃にもなると、流石に今の美鈴の小細工程度ではとても防ぎ切れる電力ではない。
しかも。
「雷音・終局斬!!」
天に掲げた雷雲の剣の刀身に一筋の電光が降り注ぐ。
するとその電光は火花を散らしながら剣となる。
外見的にはイ○オンソードに近いかも?
「食らええ〜ッ!!」
雷雲が剣を振り下ろす。
するとその電光は真っ直ぐ美鈴に向かった。
「んなもの簡単に…。」
「…除けられると思ったかな?」
雷音がニヤリとする。
「ふえっ?」
美鈴が横っ飛びで躱したハズの電光は、何と直角に曲がって真横から美鈴を狙う。
(んなバカなー?!)
若汐のホーミングアローなんてレベルじゃないぞ、速度が違い過ぎる、これは流石に避け切れない…!
「むん!」
その刹那、美鈴の全身がメタリック調に輝く。
「は?」
雷音はその美鈴の姿に絶句した。
そして放ったハズの雷は美鈴の手前で散り散りとなった。
「ななな、何なのそれえ?!」
「そんなのまで使えるなんて、何かズルくない?」
雷音が羨ましそうにほざいた。
「…ふう、つい使ってしまいましたわ…。」
メタリック調の輝きを解除し、ペロッと舌を出す美鈴。
咄嗟に全身をメタリックコーティングしやがったなコイツ。
これは要するにだ、美鈴は通電性の無い絶縁体となる金属で表面を覆ったんだ。
幾らアミュレットによる結界シールドが守ってくれるとはいえ、雷レベルの電撃ともなればとても防ぎ切れないだろう。
そうなればシールドは全損してアミュレットは砕け散り、着用している選手もタダでは済まない。
それはさすがに不味いだろう。
美鈴はバリアー結界も持ってるし他にも色々と防げ無いワケでは無いのだが、取り敢えず氷や凍結魔法と風魔法、そして有翼飛翔魔術が公式に届け出ている魔法だ。
王家と四大名家、そして国全体を守護する八大武家の跡取りとしてはあまり何でも使える事をバラすのは何かと不味いのだ。
だが咄嗟の事でいい手が思い付かずついメタリックコーティングを使用してしまった…と、そんなトコロだろうな多分。
しかし考えてみれば今迄これの他にも超加速魔術とか壁登りとか色々使ってやらかしてるようだが誰も突っ込まないらしい。
だから今回のメタリックコーティングに関しても皆良く分からなくてスルーしてくれる…かも知れない。かもね?
「まあ、今のは無しですわ…これから仕切り直しという事でよろしいかしら?」
「わ、私の渾身の一撃だったのに…!」
あ…また何かウルウルしてるよこの人。
「あれ以上の力でぶつかれと?」
更にはワナワナ震える雷音。
【大事な剣の剣先を砕かれた上に奥義の一撃まで無力化され…オレ、何だか可哀想になってきたわ雷音先輩が。】
(あーもう、うっさいですわ!)
「ならこうですわ!」
美鈴は自らの剣の剣先を掴むと、いきなりバキッ!と折ってしまった。
ザワッ!
「な、何してるんだアイツ!」
「バッカじゃないの?」
「意味ワカラン…なんでワザワザ自分を不利にするの…?」
観客の言う通りだろう。
だが。
「さあ、これで得物の条件は五分と五分!」
「貴女の魔法は敗れましたわ、なら後は剣での決着のみ!」
「剣の部門の決勝戦らしく、最後はお互いの剣同士で決着をつけましょうじゃあございませんか?」
そう言って折れた剣先を雷音の方へと向けた。
………そう。
つくづく脳筋なのだ、このご令嬢は。
すると。
「ふん。大層な自信だね。」
雷音もまた剣を構え直す。
「確かにアンタの言う通り魔法じゃ敵わなそうだし。」
「ご要望通り、剣で勝負しようじゃないの!」
「ハアアッ!」
雷音が駆けた。
が、
(!速い!)
一瞬に間合いを詰めて美鈴に一撃を叩き込んだ。
(くっ!)
キンキン、キン!
ガキイン!
ヒュッ!
ズビュッ!
この音は全て雷音からの斬撃だ。
美鈴はひたすらこの剣を防いでいる。
すると、この光景を見ていた観客達は思った。
「見てよ、あの美鈴が押されてる…。」
「は、初めて見ましたわ、こんな光景!」
「いいぞ、雷雲!」
「もしかしたら雷音の方がイケるかも?」
観客席では雷音コールが湧き上がった。
『雷音、雷音!!』
「頑張れー、雷音〜!」
「一年生になんか、負けないでー?!」
「やれやれー!もう一押しー!」
その声援を受けて雷音がニコッと笑う。
(いい波が来てる…私に勝利の風が吹いている…!)
雷音は叫んだ。
「勝てる…いや、私が勝つーっ!!」
叫ぶ事で更に気合いが入り、剣の動きに鋭さが増す。
剣先は砕けて無くなり突きこそ繰り出せ無いが、それでも斬る事は出来る。
ビュンビュンと唸る雷音の剣は徐々に速度を増し、やがて朧げながら残像すら見え始めた。
ワアアア〜ッ!!!
試合会場は興奮のルツボと化した。
(全く…………何か面白く無いですわねー。)
【俺はわかってるって。】
【お前の言葉だから精一杯向こうの気が済むまで相手してあげたいとかなんだろ?】
(でもコレじゃあまるで私が負け確定の悪役令嬢か何かみたいじゃございませんの?)
【違うのか?】
オレがふざけてツッコミを入れると。
『違〜うっ!!』
カチンと来たのか怒声を発する美鈴。
ガギン!!
と、同時に襲いかかっていた雷音の剣を自分の剣で弾いた。
そして。
「ほっ。」
ズドッ。
「ぐおっ?」
雷音が腹の底から息を洩らした。
美鈴がすかさず掌底を雷音の土手っ腹に叩き込んだのだ。
するとその打撃の威力に思わず後方へ吹っ飛ぶ雷音。
「ま〜ったく、しつこいですわよ!?」
と、何を考えたのか美鈴は懐からハリセンを取り出した。
そして振りかぶる。
『いい加減に、しなさ〜…!』
掛け声と共に美鈴は雷音の頭をハリセンで………!
【わー待て〜?】
【お前、失格になりたいのかあ〜っ?!】
「…あっ。」
【剣の部門の試合だと言うのにそれ意外の武器を使用したら失格になるだろうが!】
(そ、それもそうでしたわね?)
オレの必死の説得が効いたのだろう、
ギリギリ三歩手前でやっと気が付いた美鈴が慌てて懐にハリセンを仕舞い込んだ。
「な、なんてね、冗談ですわよ冗談〜♪」
愛想笑いで誤魔化す美鈴。
ついいつもの癖でツッコミ役をやろうとしたらしい。
コイツ試合にちゃんと集中してるのか、ちょっと心配になって来たな。
と、その隙を倒れていた雷音は見逃さなかった。
咄嗟に起き上がり剣を美鈴へと突き出す!
「チェストー!」
ガキイッ!
「…だから申しましたでしょ?」
「あ…?」
惜しいトコロだったが、またしても雷音の剣は止められた。
再度、強化された美鈴の髪の毛によって。
「さて、そろそろ制限時間ですし…もう流石に終わらせるといたしますわ。」
「ホイ。」
美鈴が剣で雷音を軽〜く袈裟斬りにすると、雷音の胸元のアミュレットは綺麗に真っ二つにパカッと割れた。
観客は暫く黙っていた。
「審判、判定を。」
美鈴に促され、我に帰った審判がようやく雷音のアミュレットを確認した。
『しょ、勝者、黎美鈴ー!!』
コールから数秒後、やっと会場に大歓声が巻き起こった。
「「「「「「ワアアアア〜ッ!!!」」」」」
「ヤッパリ美鈴だったー!」
「でも雷音も良くやったぞー、流石三年生だ!」
「どっちも凄ーい、二人とも私達の誇りよー?!」
「美鈴、雷音、バンザーイ!!」
その歓声の凄さに良く聞えなかったが、美鈴と雷音はコメディーのようなやり取りを見せていた。
(おい、本当に私の剣を弁償してもらえるんだよね?)
(も、もも、勿論!…ですわよ…。)
(ホント頼むよ?)
(まあ、それはともかくアンタは剣も魔法も本物だったわ。四部門代表が当たる本選では私の分まで頑張ってね。)
(言われるまでもありませんわ。)
ガッチリと握手をする両者。
このノーサイドに観客席から拍手が送られるのだった。
…因みに、イザとなればコッソリ復元魔法で雷音の剣を直してしまおう、チャッカリそう考えてる美鈴でなのであった。
大方の皆さんの予想通り、美鈴が余裕を見せながらの勝利でした。
さて、他の部門の結果は果たして…?




