第六十六話【因果応報…Xの脅威】
今回はお笑い要素抜きのシリアスな展開です。
決め技を放った依然でしたが…。
銀髪少女はチラッと周囲を伺う。
「これは…そういう技か…。」
次の瞬間、彼女を取り囲むドーム状の空間を覆う無数とも思える光点が一斉に彼女目掛けて伸びて来た!
(…死ななきゃ、いいけどね…。)
目を瞑ってニヤリと彼女は嗤った………。
ズバアン!!
凄絶な爆音が響いた。
ドーム空間の中は光で満たされる。
その光がドーム空間と共に消えてゆく。
誰もがその中の彼女…銀髪少女に注視した。
果たして、彼女は生きていられたのだろうか?と。
果たして、先程の攻撃を受けた銀髪少女はまだ立っていた。
僅かに安堵のため息が聴こえる。
だがそれどころか彼女の身体には傷一つ付いてなどいない事に皆が気が付くと、今度はどよめきが巻き起こる。
「む、無傷だと…?」
これには依然も驚いた。
だが、幾らアミュレットで防御されているとは言え、そのアミュレットによるシールドの破損は免れないはず。
つまりアミュレットの損傷が認められ、これ以上の防御が不可能と判断された時点で依然の勝利が決まる。
………なのに。
銀髪少女はニヤリと笑い、胸元からアミュレットを取り出した。
そのアミュレットはキラキラ輝き、全くの無傷だったのだ。
むしろ彼女は自身を覆うシールドを可視化すらして見せたのだ。
「ま、全くの無傷どころかアミュレットもシールドも一切の破損が無いなんて…!」
「とんでもない防御力よ?」
会場がざわめく。
「貴女、あの技を受けて何とも無いの…?」
依然も流石に驚いたのか、銀髪少女に話しかけた。
「ええ。私は…ね?」
彼女はそう言うと依然の方を指差した。
「貴女の方こそ、大丈夫?」
ニコッと銀髪少女が嗤った。
「?」
その瞬間、依然の視界が揺れた…………。
………………。
明花の前に瞬間転移した芽友が現れたのはその後だった。
ポップコーンを食べながら魔法部門の準決勝を観戦していた明花は月夜の試合が始まるのを待っていた。
因みに彼女はキャラメル味が大好物なのだが、生憎この世界にはまだ無いため塩バター味で我慢していた…。
「これはこれで結構美味しいですねえ…。」
彼女は意外と塩バター味も気に入ったようだ。
………まあ、それは置いといて。
そこへ突然、芽友が眼の前に出現したのだ。
「ふえっ?!」
思わずゴクッ、とポップコーンを噛まずに飲み込む明花。
「………お嬢様………。」
「な、何よもう!ビックリさせないで?」
少し憤った明花だった。
が、眼の前に突っ立っている芽友がただならぬ表情なのに気が付く。
芽友は青褪めていたのだ。
「…どうしたの?」
「とにかく、一緒に来て下さい。」
芽友は明花の腕を掴んだ。
「い、依然さんが…。」
「依然さん?」
「直接、ご覧になって下さい…。」
次の瞬間、二人は槍部門の試合会場へと転移した。
……………………。
結論から言おう。
明花の回復魔法と治療により依然は意識を取り戻した。
彼女は銀髪少女から指差された後、突然倒れたのだ。
全身を覆うハズのシールドは全てが粉砕されており、アミュレットは粉々に砕け散っていた。
そして全身を何かに穿かれたように無数の穴が空き、そこから出血していたのだ。
これを見た瞬間、クラッと倒れかける明花だったが芽友が彼女の身体を支えて叱咤する事で明花は正気を取り戻した。
(そうだ、私は医療を志し沢山の人々の生命を助けると誓った身…。)
(このくらいで気を失っていては、その資格がありません!)
明花は気を奮い立たせた。
ようやく担架が来たが彼女がそれを待ってもらい、治療回復に移った。
「…幸い、急所は外されています。」
とは言え小さな傷口はそこそこ深く、出血量は多い。
「しっかり…依然さん。」
愛麗が依然の手を取りずっと話しかけていた。
その姿に明花は危うく涙ぐみそうになる。
(いけない!しっかりしなくちゃ…こういう時にこそ頑張らないでどうするの、私!)
戦いにおいてはあまり役には立たない事を自覚している明花。
ならばこそ、失われそうな生命を救い、この世に繋ぎ止めよう。
美鈴の戦いの時、手助け出来なかった時、そう誓ったのだから。
…………いや、もっと前にも………?
確か、どこかで…。
魔法の使い過ぎなのか意識が薄れかけた明花だがふと意識が戻り眼の前に集中する。
と、ようやく依然の全ての傷口が塞がった事を感じ取り安堵する明花だった。
明花らが依然の救命に奮闘し、意識が戻った依然だったが念のため担架で医務室に運ばれた。
それを見送る明花達の耳にこんな声が。
「私は防御アミュレット諸共相手を殺傷する技など使っておりません!」
槍を持ったままの銀髪の少女が教師や一部生徒らに取り囲まれていた。
「嘘をつくな!」
「ならなんで依然はあそこまで血塗れにならなきゃならないんだ!」
眼の前で一人の生徒が危うく死にかけたのだ、冷静ではいられなくなった教師が怒号を銀髪少女に浴びせかけていた。
他の生徒達も銀髪少女を疑いの目で睨み付けている。
「では、証明の為に誰か一人だけ私を攻撃してみて下さい。」
銀髪少女にそう言われた彼女らのうち一人が良くぞ言った、とばかりに銀髪少女を殴った。
「…あっ。」
明花と愛麗、芽友の三人は次の瞬間、自身達の目を疑った。
倒れたのは殴った方の生徒だったのだ。
「な、殴っていいというから殴ったのに殴り返すなんて…。」
倒れた生徒は頬を擦った。
「私が殴り返してないのは他のみんなが見てましたよ。」
憮然とした表情で銀髪少女は言う。
「あの…私達も確かに見てました…。」
明花が恐る恐る証言した。
芽友はコレが何の現象なのか気付いた。
「そうか、これは魔術ですね?」
ザワ…。
「魔術?」
「どんな魔術なんだ…?」
銀髪少女を囲んでいた生徒らがざわめき始める。
「そこのおチビさん、私のこの魔術に気が付くとは大したものね?」
銀髪少女が嬉しそうに芽友に話しかける。
「いえ…以前お嬢様の読まれていた魔導書の一つにそのような記述がありまして…。」
芽友はこの銀髪少女とあまり関わりたくなかったのか明花に話が行くように仕向けた。
「確かにそのような魔術もありました。」
明花も芽友の言葉に引っ貼られるようにその魔術について思い出していた。
「内容としては自分の受けたあらゆる攻撃をその攻め手にそのまま、或いは威力をカサ増ししてダメージをお返しする、そんな魔術だったと思います。」
「素晴らしい…大体当たってるわ。」
「と、言うわけ。」
「コレで皆さんもわかったでしょう?」
「私は単に受けるはずだった技のダメージをそのままお返ししただけ。」
「そ…そんな事が…。」
居合わせていた教師は困惑した。
「確かにその方の言われるとおり、この魔術で必ず意図的に致命傷を与えられるワケではありません。」
「ホラご覧なさい、私の言った通りでしょう?」
「私は別にあの選手を殺すつもりは無かったって事、おわかり?」
明花の説明が自分の弁護になってると思ったのか、銀髪少女は安心して調子に乗った。
「ですが、相手がそのギリギリまで攻めようとした場合に今回のような事故が起きないワケでも無いと思います。」
「そして相手に返したダメージの量を更に上乗せした疑いは残ります。」
その明花の言葉に再び銀髪少女の旗色が悪くなった。
「あの…依然さんはもう大丈夫です。」
「ですがせめて後で彼女の様子を伺っておいて下さい、そして一言で良いので彼女の事を気遣ってあげてくださいませんか?」
「ど、どうして私がそんな事を?」
「考えても見てよ!あの技のダメージを返さずマトモに食らっていたら立場は逆だったかも知れないのよ!」
ここで教師はようやく反論した。
「…と、とにかくだ!」
「その魔術は危険過ぎる、もう使用しないように!」
これに銀髪少女も反論する。
「そんな権限が先生にお有りで?無いですよね?」
「それに私が誇る一番の決め技を封じるおつもりですか?それこそ不公平というモノです!」
「…う、ううむ…。」
再び教師は黙り込んだ。
「では、私は槍の部門決勝に備えて休憩いたします。」
そう言って銀髪少女は去っていった。
何とも後味の悪い試合となってしまった。
「そう言えば彼女の名前、何でしたっけ?」
「あれ?そう言えば…。」
「え?貴女も知らないの?」
周りの生徒達が再びざわついた。
(どういう事でしょう?)
芽友は会場入口の対戦表を見直しに行った。
「…これって?」
その対戦表には先程の依然の対戦相手は
『X』と表記されていたのだ。
……………。
そんな騒ぎがあった頃、剣の部門は美鈴の決勝での対戦相手が決まった。
美鈴と月夜の二人が依然の決勝敗退と重傷の報せを受けたのはそれぞれ自身の決勝を終えたその後だった。
どういう原理なのか、依然は自ら放った攻撃を自身に受けてしまったようです。
この銀髪少女の正体とは…?
彼女は四部門決勝で美鈴と対戦する事になるのでしょうか。




