表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/155

第六話【お屋敷の地下はお化け屋敷】前編

春休みの間に起きたお屋敷の怪談事件。

臆病な両親の代わりに地下の捜索を命じられ、虚勢を張りながら事実を確認しに行く美鈴メイリン、そして道連れにされた愛麗アイリー

そんな二人は地下である古文書を発見するのだが…。


とっくにハロウィンも終わり年も開け、雪解けの春もやって来たというのに。


「お化け、でございますか?」


「ええ。近頃この屋敷の地下へと降りた召し使い達からそのような声が聞かれているのよ。」

美鈴メイリンの母がフッと息を洩らしながら語る。


二人は父役母様おとうさまと同じテーブルで午後のティータイムを過ごしていた。


「私も耳にした事があるんだよ。何でも地下の階層を歩いていると、誰もいないはずのなのにどこからともなく声が聞こえてくるとか。」

父役母様おとうさまであるお館様も気になるらしい。


「私、地下にあるのは倉庫ばかりだと思っておりましたが。」

美鈴メイリンは一口紅茶を煽る。


「貴女はそこまでしか用事がありませんものね。昔はひいお爺様が無礼者や犯罪者を苦しめるための拷問部屋が…………。」


ブッ!!


思わず紅茶を吹き出した美鈴メイリン


「あら何ですか美鈴メイリン、はしたない。」

クスクス笑うお母様。


「コホコホッ…これは失礼。」

「それより先程のお話は本当ですの、お母様?」


「あら、そんなのあるワケ無いでしょう?冗談よ、冗談。」


「まあ、確かに拷問などしなくても魔法で口を割らせる方がはるかに簡単だしね。」

「昔から犯罪者や無礼者への凝らしめは何でも魔法。その方が彼らを変に痛め付ける事なく改心させられるからね。」


「色んな幻覚を見せたりする魔法もありますからね。美鈴メイリン、貴女は今は外側の物質に働きかける力のみを鍛え上げてますけどいずれは人間の内面に働きかける魔法の習得もする時が来ますわよ。」


「まあ、それは彼女が学院を卒業してからの話だ。」


「はあ。魔法とはまだまだ奥が深いのでございますわね。」


「………それはそうと、結局地下の噂の件は如何なさるのでございますか? 」


美鈴メイリンから地下の方に話を戻され、両親は「うっ。」と顔を曇らせた。


「い、嫌ですわねえ。そんなの召し使い達の都市伝説みたいなモノですわよ?」


「そ、そうだねえ。地下が怖いと思うからそんな空耳も聴こえたんだろうねえ?」


二人とも、ソワソワしている。


「…………もしかして、お二人共、恐い、とか仰いませんわよね?」


「な!…ななな、何を仰いますの、美鈴メイリン?!」


「わ、わわ私達が、そんな迷信なんかに怯えるワケが無いだろう?」


ギクシャクしながらツンツンと話すお母様と、ワハハと笑う父役母様おとうさま


「…やはり、恐いんでございますね?」


「いいえっ!……そ、そう言う貴女は怖くありませんのよね、美鈴メイリン?」


「…私、でごさいますか?」


「そ、そうだね。私達自慢の娘の君なら怖くなんかないよね?」


「は、はあ…。」

呆れて生返事をする美鈴メイリン


だがこの言葉が肯定と捉えられた。


「…流石はわが娘。よろしい、では美鈴メイリン、今宵、地下階層を探索なさい!」


「ふぇっ?!」


「幸い貴女春休みの真っ最中でしたわよね?」

「そうそう、卒業生代表の君の答辞は感動的で美しかったよお!だからハッキリと卒業式のことは覚えているよ!」



「あ、あのお。私美容のために早く寝たいのですけど。」


「まだまだ全然若くてお肌ピッチピチの貴女なら一晩くらい寝ないでも問題ありませんことよ!」




かくして、美鈴メイリンはビビりまくる両親の代わりに夜の地下階層を探索に行く羽目となってしまったのだった。


とは言え、流石にたった一人でそんな場所に行くのは心細かったようで。


「お嬢様ぁ、私、夜は弱くて……オマケに朝早くからお仕事がぁ。」

ぼやく愛麗アイリー


「主任さんに断り入れて明日のお仕事はお休みにしてもらいましたから大丈夫です!何せ貴女は私の側使えですからね、着いて来て当然!」


「何でそこまでして私も連れて行かれるのですかぁ?そりゃ確かにお嬢様と二人きりのお時間いただけるのは嬉しいんですけど。」


「や、やあねえ?流石に一人でそんなとこいたら退屈だからに決まってるでしょ!」

ワハハとお嬢様らしくない笑いで誤魔化す美鈴メイリン


「話し相手、ですか?…でも私どうせなら言葉だけで語るよりも身体で会話を……。」


愛麗アイリーは「ウヘヘ」とえげつない笑みを浮かべながらモミモミするような怪しい手の動きを見せるが、美鈴メイリンはそれをスルーした。


「あら、身体で文字を表現するアレですか?」


…………。


一瞬双方の間に何とも言えない空気が流れた。


「………いえ、何でもございません。」

「………あの、お嬢様?もしやとは思いますけど、まさか恐い………?」


「な、何を仰いますの愛麗アイリー?」

ひきつりながら会話する美鈴メイリン


「わ、私は魔法と剣を使いこなすんですのよ、恐いものなんかありませんことよ!」

ワハハと笑う美鈴メイリン

同時にガクガクと彼女の膝も笑っていた。


(お、お嬢様?あまり無理なさらずとも。)


(でも、そんな意地を貼るお嬢様が可愛らしいです。)


(それに私を頼って下さって、嬉しいです。)


フフッと微笑む愛麗アイリー


午後9時、二人は一階の隠し扉から地下の階層へと足を踏み入れた。


階段を一段ずつ踏み締める度に「ミシッ」と音が鳴る。


階段から床まで降りたらさすがに辺りは真っ暗だった。


二人は手に持つランプに灯りを灯すと辺りを探った。


「ここはまだ何もありませんわね。」


「ただの通路のようです、突き当たりまで行ってみましょう。」


並んで歩いて行くと、突き当たりの壁に幾つもの扉があった。


「何の扉かしら?」


ランプを近付けると扉に文字が書いてある。


『食糧庫』『日用品』『貴重品』『先祖の遺品』『地下洞窟入り口』『緊急避難口』『秘密』


「…何だか右側へ行くほどヤバそうですわね。」


「逆に左側は単なる倉庫のようです。」


「となると、探索するなら当然…。」

「秘密、と書かれている入り口ですわね。」


「お嬢様、何か武器を持って行かれた方が?」


「長い得物等、狭い通路では却って邪魔になりますわ。」

「はい、ダガーを貴女に渡しておきます。」


「あ、ありがとうございます。」

「お嬢様は?」


「私には魔法がありますからね。」


「でも、魔法が通用しない相手や仕掛けがある場合はどうするんですか?」


「………あ。」

美鈴メイリンが天を仰いだ。


「…………愛麗アイリー、やっぱり先程のダガー、返しなさい。」


「………。」


黙ってダガーを返す愛麗アイリーだった。


「それにしてもランプの灯りだけだと暗くて視界も悪いですね。」


「戦闘になれば不利は否めませんわね。」


「照明の魔法は使わないのですか?」


「あれは少しずつとは言え絶えず魔力を消耗し続けるので長時間使用が予想される場合は使わないようにしているのです。」


「その分は別の魔法で補いましょう。」


美鈴メイリンが指先を自分と愛麗アイリーに向け、光を放射する。


「一時的に猫の目の能力を付与しました。これでどうです?」


「あっ、さっきまでよりも、とても明るく見えます!」


「これなら僅かな灯りでも大丈夫。それにこの魔法の効果は一時間以上は持続しますからね。」


「では、参りますわよ。」


美鈴メイリンが『秘密』と書かれた扉を開いて中へと入って行った。


暗い通路が暫く続く。

やがて前方にドアが。


「開きます。愛麗アイリー、貴女は私の後ろに下がってなさい。」


「はい。」


「行きますわよ。私の動きに続きなさい。」


少しだけドアを開け、一呼吸置く。


そして一気にドアを開けて中へと転がり込む。


ダガーを翳して正面を見据える美鈴メイリン


「ここは?」


「お嬢様、書庫のようですが………。」


部屋中の至るところに本棚が立ち並んでいた。


壁際も本棚でビッシリと埋め尽くされている。


「かなり古い書物のようね。さっぱり読めませんわ。」


適当に本を手にとって開いて見るものの、この世界での現代文字や文章しか知らない美鈴メイリンにはちんぷんかんぷんだった。

(これが前世のゲーム世界通りなら、ヒロインにはスラスラと読めるはずなんでしょうけど…。)

(はあ…やはりここはゲームに似てるだけの世界という事なのでしょうか?)

ポイッと愛麗アイリーに手渡す。

「それ、返しといてくださいな。」


「あ、はい。」

本を手にする愛麗アイリー


「ふう…ん。聖霊を宿した仮面に関する記述、ですか。」


ペラペラ古書を捲っていた愛麗アイリーが何気なく呟いた。


「………今、何と仰いましたの?」


「へ?聖霊の仮面の記述、と…。」


「………愛麗アイリー、貴女それ、読めますの?」


「あ、いえ?ここのページだけが現代文になってます。」


「貸しなさい!」

愛麗アイリーから古書をぶん取る美鈴メイリン


「ほ、本当だ…………ですわね。」


何故か、本当にそこの部分だけが美鈴メイリン達にもわかる文字や文章となっていた。


(一体、何故?)


【ヒーローとなるための力を宿した仮面をある場所に隠した。】


「ひ、ヒーロー?」


【この仮面にはガイドとなる聖霊が宿っており、非力な子供ならそれなりに、戦闘能力と魔力を有する者なら勇者に、そして最強レベルの武力と魔法を用いる者は軍神に匹敵する力を得るであろう。】


「お、お嬢様。これは、かなりヤバイ代物ではないですか?」


「み、見つけたら、の話ですわよ。」


【願わくは清く正しい心の持ち主に見つけて欲しいものだ。】


【間違っても自分の力に自惚れたり自慢したりするうつけものには手にして欲しくない物だ。】


「あら、なら私こそ相応しい適格者ですわね?」

オホホホと笑う美鈴メイリンを横目で見る愛麗アイリーの目がジトッとしていた。


「お嬢様、それよりこれがどこに隠してあるのかが問題です!」


「そうですわね、続きは…。」


【この仮面の隠し場所は、当屋敷の地下の一角に…】


「ここで途切れてますわね。」


「当屋敷?まさかこの屋敷の事を?」


「まさか、そんな…………。」


その時、二人の耳に怪しい声が。


【イ~ッヒッヒッヒッヒ………!】


「ひっ?!」

「な、何ですの今の声は?」


「お、お嬢様?何だか部屋中にあの声が響き始めて…」


【ヒッヒッヒッヒ~!】


「だ、誰ですの?出てきなさい!」


美鈴メイリンがダガーを構えて叫ぶ。

「疾風の剣!」

ダガーに光が宿る。


「さあ、来るなら来なさいっ!」


謎の声の正体とは?

ヒーローになれる仮面とは一体どのような物なのか。

そして今度の展開にどんな影響が出るのでしょうか。

次回に続く。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ