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慈悲深い仮面の剣豪は、実は血を見るのが苦手な中華風TS美少女です!  作者: 長紀歩生武
第二章【一年生の夏休み編】
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第五十八話【私達の間に染み渡る炭酸水のような刺激 】

美鈴メイリンの特訓に付き合う度に明花ミンファに介抱される若汐ルオシーを見ていたら、美鈴メイリンが何故か不機嫌になり…?


最後の方で美鈴メイリンは白百合のプリンセスと精神世界での再会を果たします。


若汐ルオシーさん、本当に無理はしないで下さいね?」


「はい、体調が悪くなってきたら早目に部屋に戻ります。」


「私もちゃんと付き添って介抱するので安心してください美鈴メイリンさん。」


今日も美鈴メイリンは学院代表戦を前にしての特訓を続けていた。


午前中は体力作り。


若汐ルオシーは体力的に美鈴メイリンに付いて行くのは無理があると「やっと」わかったので、

彼女は午後からの実技練習に付き合うことになった。


それでも精々二時間が限度らしい。


特にその日は疲れが溜まっていたのか一時間でフラフラとなり、明花ミンファに付き添われて部屋に戻って行くという毎日。


まだ中等部生徒だし、戦弓部の彼女が加減されてるとはいえ絶えず動き回り続ける美鈴メイリンの剣の動きに付いて行くのは大変だろう。


明花ミンファは夕食準備までの時間を若汐ルオシーに付きっきりとなるので美鈴メイリンは一人で特訓することになる。


今までずっと一人でしてきたことだから別に不満はない。

むしろ二時間だけとはいえ相手のいる練習が出来るのはかなり有意義だ。


その点に関しては正直、若汐ルオシーには感謝している美鈴メイリンだったのだが。


「………ふう。どうやら今日はここまでですね。」


「………す、すみませえん~…。」


美鈴メイリンと対峙していた若汐ルオシーがふらっ、と膝から崩れ落ちた。


「大丈夫?」

明花ミンファが駆け寄り、若汐ルオシーに肩を貸す。


若汐ルオシーさん、協力は嬉しいのですけどその調子では明日くらいお休みされても…。」


「いえ、夏休みはもう残り僅かですから1日たりとも…。」


「いえ若汐ルオシー、私もやっぱり明日は休んだ方がいいと思うわ。」


「そ、そんなあ。」


「ちゃんと私がついててあげるから、明日は大人しくしてなさい?」


「………明花ミンファ様が、そう言われるのなら…。」

照れながらエヘッと笑う若汐ルオシー


「さ、行きましょう?」

「では美鈴メイリンさん、これで失礼しますね。」


「は、はい…。」



「ちゃんと歩ける?私に掴まりなさい…。」


「は、はい…掴まっちゃいました…。」


キャッ、キャッ♪と楽しそうな若汐ルオシーの声が遠くから聞こえる。


美鈴メイリンはそんな二人の後ろ姿をぼーっと見送るのだった。



………………。



「何だか、モヤモヤしますわ…。」


【何がモヤモヤするんだ?】


「…名尾ナビ君でしたか、驚かせないで下さいな。」


「何だかあの二人、最初険悪でしたのにすっかり仲良くなられてしまわれて…。」


【良いことじゃないか、おかげでお前の心労も減ったじゃないか。】


「いえ、その…少し仲良くなり過ぎな気も…?」


【なんだ、妬いてんのか?】


「や、妬いてなどおりませんわ!」


「べ、別に若汐ルオシーさんばかり明花ミンファさんに構ってもらえて羨ましいなんてちっとも思っておりませんから!」


【おもいっきり思ってるじゃねーか。】


「こ、これは…あ、貴方の思考を先読みしただけですわよ!」


【はいはい、そういう事にしとこう。】


【あまり明花ミンファと仲良くなり過ぎると、今度は白百合のプリンセスに焼き餅妬かれちゃうもんな?】


「…な、なな…?」

美鈴メイリンの顔が真っ赤だ。


「…な…名尾ナビ君、の…。」


「大バカアア~ッ!!」


【お、大バカ?】


「何時も以上にデリカシーの無い名尾ナビ君だから大バカですわよっ!!」


【はいはい、悪うござんした。】


俺は降参した。


そこまで怒るとは、やはり白百合のプリンセスとも結構脈が有りって事なんだろうなあ。




「…まったく…。」


プンプンしながら鉛入り木刀で基本技を繰り出す美鈴メイリン


(…人の、気も、知らない、で…!)


上段、中段、下段、突き、凪ぎ払い…。


心の乱れなど感じさせない流麗な剣裁き。


だがその剣筋が磨かれれば磨かれれる程に、対称的に美鈴メイリンの瞳は悲しみと憂いの色を帯びていくのだった。





一方、明花ミンファの部屋では。



「ありがとうございました明花ミンファ様。」

若汐ルオシーは部屋に到着すると、明花ミンファから離れて椅子に腰掛けた。


「濡れた服は私が洗濯するわ。」

「さあ、脱いで。」


「は、はい………。」

消え入りそうな声で、素直にスルスルと練習着を脱ぎ始める若汐ルオシー


「あ、脱ぎにくい…。」


「汗でへばりついてるものね、やっぱり私も手伝うわ。」


若汐ルオシーに近寄り彼女の衣服に手をかける明花ミンファ


「いえ、平気で…。」

恥ずかしいのか、軽く身を捩りそれを拒否する若汐ルオシー


すると。


「あっ…。」

「キャッ?」


二人は縺れ合ってベッドに倒れて重なりあった。


ドスン。


「ご、ごめんなさい明花ミンファ様…。」

「き、気にしないで…。」


二人の顔が近い。


「あ…。」


「ごくっ。」


若汐ルオシーはユックリと瞼を閉じた。


彼女の顔を見つめる明花ミンファの顔が重力に引きつられて徐々に近付いてゆく…。


明花ミンファ様あ、ちょっと教えて欲しい所があるんですけどぉ…。」

そこへ何も知らない愛麗アイリーが現れた。


部屋のドアに鍵がかかってなかったのでノックもせずドアを開けた愛麗アイリーの身体が固まった。


「「!!」」


更にそれを見られた二人も。


「しし、失礼しましたー?!」

恐る恐る後ずさる愛麗アイリー


「ま、待って?貴方誤解してない?!」


明花ミンファが焦って愛麗アイリーを止めに行った。


そして必死に弁解し、何とか事なきを得るのだった。


美鈴メイリンお嬢様には内緒にしときますから!」


誤解と分かり安心して帰って行く愛麗アイリー

だが天然の入った娘なだけに油断はならない、と明花ミンファは正直不安だった。


「行ったみたいですね?」

若汐ルオシーもホッとしていた。

既に彼女は自力で下着姿になっていた。


「そうね。」

「それじゃ続き、しましょうか…?」

カチャリとドアをロックする明花ミンファ

「タオルと洗面器用意するから貴方は早く脱いでね。」


「………はい………。」

真っ赤な顔になる若汐ルオシー


恐る恐る彼女はスポーツブラに手をかけた。

彼女の心臓がドキドキしてるのは端から見ても分かった。


「そうだ、さっきみたいに変な誤解を招かないように結界を張っておかないと、ね…。」

クスリと笑う明花ミンファ


だがその表情がどこか怪しい雰囲気を漂わせてるように見えたのは気のせいだろうか。


若汐ルオシーの足下に彼女のスポーツブラがポトリと落ちた。


彼女は腰のパンティーにも手をかけた。


そのタイミングで明花ミンファが結界を張った。


これでもう外から部屋の中の様子はわからなくなった………。



………………………………。



結界が解かれた時には既に若汐ルオシーはシーツにくるまって眠っていた。

顔が赤い。

熱でも出てるのだろうか。


「じゃあね若汐ルオシー、夜中にお粥でも用意するわね。」


そう言って明花ミンファは彼女のオデコにキスをした。


「…ホント、可愛いんだから♪」


明花ミンファが部屋を出てパタンとドアを閉める。


「…はうう、明花ミンファ様あ~☆」

まだ寝付いていなかった若汐ルオシーは先ほどのオデコへのキスにすっかりメロメロになっていた。


「フンフンフン~♪」

ご機嫌な明花ミンファが台所へ夕飯の支度のために入室する。


と。


「あ、明花ミンファさん…?」


「あら美鈴メイリンさん、今日は早目に切り上げられたのですか?」


「え、ええ。今日は何か気分が乗らなくて…。」


「ふーん。」


そんな日もあるか、と明花ミンファは思った。


「そうだ美鈴メイリンさん、そこの冷蔵魔法庫開けて下さいますか?」


「はあ?」


「何か、瓶が何本か入ってますわね?」


「それ、一本差し上げます。」


「この瓶、何が入ってますの?」


「実は、コッソリ配達して頂いてるモノがございまして…。」


明花ミンファが瓶の栓を開けると。


キュポン!


シュワワーッ!


瓶の口からシュワシュワな炭酸水が溢れ出した。


「な、何ですのコレーッ?!」


「これ、王都のお店の新商品だそうです。」


「新商品?」


「はい、その名もスイート・ドラゴンウォーター!」


「ドラゴン?」


「正しくは地下から湧き出る炭酸水で、これにハチミツや濃縮果汁、ビネガー等を混ぜてあるそうです。」


「冷たくて美味しいし、何より疲労回復にピッタリなんだそうですよ?」


「これ、私が飲んでよろしいんですの?」


「はい、どうぞ。」


「毎日の特訓でお疲れ気味の美鈴メイリンさんに是非飲んでいただきたくて取り寄せたんです。」


「で、では…。」


(~ぜ、前世以来の炭酸飲料じゃございませんかコレーッ?)


ごくっ。


ごくごく…。


ん?



「ぐぱっ?!」


「げ、ゲホッ?ゲホッ、ゲホゲホ…!」


「む、むせましたか?」

ハンカチを差し出す明花ミンファ


「な、なんか刺激が無茶苦茶強いんですのねコレ?」


(あまりに久しぶり過ぎて炭酸が口の中で痛いくらいでしたわ?)


「ゲプッ!」


「し、失礼…?」


「ああ、飲み込んだ炭酸水の炭酸がお腹から戻って来たんですね?良くある事ですよ。」


「知り合いの前では飲み辛いですわね…。」


「でもおいしいですわ、ありがとうございます明花ミンファさん。」


「気に入っていただけて、嬉しいです!」


美鈴メイリン明花ミンファも本当に嬉しそうだ。


「で、では私はこれで。」


「はい、瓶はまた明日返していただければいいですから。」


狭い台所の通路を二人がすれ違う。


と、


美鈴メイリンさん…。」

いきなり明花ミンファ美鈴メイリンにしがみついた。


「み、明花ミンファ…さん?」


「お願い、あと少しだけこうさせて下さい…。」


「は、はあ。急がないので構いません…。」


何故急に彼女がこんな行動をしたのか美鈴メイリンにはわからなかった。


「…………美鈴メイリンさん……………。」


「何でございましょう?」


「…………いえ。」


「すみません、お邪魔な事しちゃって!」

にこやかにパッと離れる明花ミンファ


意味が良くわからずに、首を傾げながら台所から出て行く美鈴メイリンだった。


食堂から離れたところで美鈴メイリンの、

「あー、美味いですわー。」

という声が聞こえた。

先ほどの炭酸水を飲み歩きしてるのだろう。


「………美鈴メイリン、さん…私………。…………?」

胸に手を当てて切なそうな表情になる明花ミンファだった。



それからは何事もなく穏やかに時間が過ぎた。


結局その日も月夜ユーイー依然イーラン、そして白百合のプリンセスは部屋から出てこなかった。


「…眠れませんわ。」


夜中に目が冴えた美鈴メイリン、気晴らしに庭を歩こうと玄関を出た。


すると。


「………本当に、これっきりにしてください…。」

白百合のプリンセスの声だ。


彼女が森の中から姿を見せた。

いつの間にか部屋から抜け出していたらしい。


そして月夜ユーイーも当然のように隣に付き添っていた。


「…あらあら、ご機嫌斜めかしら…?」


「…お嬢様に歯向かったりなどをしてはなりませんよ…。」


依然イーランもいた。


この二人は黒いラバー製の衣服を身に付けてるようだ。


対して白百合のプリンセスはダボッとしたロングコートのような服を着ていた。


「…余興はあまり気に入っていただけなかったようだから、やはり部屋でちゃんとした続きと参りましょうかしら…?」


「…腕がなりますね、お嬢様…。」


「…あの、…………お手柔らかに…………。」


俯いた白百合のプリンセスを両脇からガッチリ押さえる月夜ユーイーと依然と(イーラン)。


この時の白百合のプリンセスはまるで連行されてるみたいだった。


そのまま三人で寮の中へ戻っていった。


(…………一体何をされてたのでしょう。)


かといって夜中に森の中へ一人で入って調べる気にもなれず、美鈴メイリンも部屋に戻って寝る事にした。


………夢の中で、再び美鈴メイリンは白百合のプリンセスと再会した。


美鈴メイリンさん?」

振り返った白百合のプリンセスが心底嬉しそうに名前を読んでくれた。


その事にいたく感動した美鈴メイリン


感動のあまりか視界がボヤけてきた。


何故、自分はこんなに彼女からの声に感動してしまっているのだろう?


美鈴メイリンは自身のこの反応に戸惑っていた。


だが白百合のプリンセスに精神世界の中での出来事とはいえ抱き着かれると、堪らない充実感を得られた。


「嬉しいです、またお会い出来ました!」


「わ、私も嬉しいですわ…。」


自然と互いの背中に手を伸ばしあった。


「それで、あれからどうです?」


「…はい。あまり貴女に語るには抵抗があるのですが…。」



その日も明け方まで美鈴メイリンは白百合のプリンセスと精神世界での事とは言え、二人だけの時間を過ごすのだった。


まるで心の中の、満たされぬ何を埋めるかのように。


…そして白百合のプリンセスの存在は美鈴メイリンの心の隙間をピッタリと満たす事に成功するのだった。



明花ミンファの言動がどこかおかしいですね?

果たして彼女は何を思い、何を考えているのか?

今後の彼女の動向にも目が離せませんね。

そして月夜ユーイーもまた白百合のプリンセスを何時まで手元に置きっ放しにするつもりなのか…?

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― 新着の感想 ―
[一言] 正直、恋愛面はあくまで美鈴との絡みが見たかったから、明花と若汐のやり取り見てもうNTR的なの感じて辛くなってしまった……。この三人変に拗らせずに美鈴一筋であって欲しかった。 これもし本当に二…
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