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慈悲深い仮面の剣豪は、実は血を見るのが苦手な中華風TS美少女です!  作者: 長紀歩生武
第二章【一年生の夏休み編】
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第五十五話【夢の世界で現実を語る仮面の聖霊】

白百合のプリンセスの問題を抱えている美鈴メイリンのもとをあの女の子が訪ねて来ます。

明花ミンファとしては面白くないでしょうけど。

そして仮面の聖霊、名尾ナビ君は約束通り美鈴メイリンを白百合のプリンセスと会わせるのですが…。


美鈴メイリンさん、来ちゃいました!」


玄関前で開口一番、元気いっぱいに彼女は叫んだ。


「あ、貴方は…!」


「確か…中等部の…?」


美鈴メイリン明花ミンファがビックリする。



【はい、李若汐リー・ルオシーです!】


何でコイツが今ここに?


「貴女たしか中等部に帰られたんではありませんでしたか?」


「はい、一度は皆と一緒に帰路に着きました。」


「けど、私が美鈴メイリンさんの事を忘れられなくて、ずっと塞ぎ込んで、それで…。」


「皆に背中を押されて、全力で駆けてきました!」


良く見たら、身体中が汗でビッショリしていた。


「ば、バカですか貴女は!」

「こんな炎天下で何時間も全力疾走なんてしてたら…。」


「…こうなりますよね?」


明花ミンファが指差したその足下には若汐ルオシーが「はにゃああ~。」と目を回して気絶していた。


「る、若汐ルオシーさんっ?!」


「…全く。」


明花ミンファは仕方ないという感じで美鈴メイリンに指示を出した。

美鈴メイリンさん、岩塩と麦茶、それと氷嚢ひょうのうと乾いたタオルをお願いいたします。」


「は、はい!」

美鈴メイリンは台所へとダッシュした。


「何で私が恋敵の介抱なんてしなきゃならないのかしら…?」


つい口に出した明花ミンファだったが、それでも魔法医学に携わる者としての自覚を思い出すと自らにも汗が付くのを我慢しながら若汐ルオシーを抱え上げるのだった。


明花ミンファから頼まれた物を一通り揃えて玄関まで持って来た美鈴メイリンだったが、そこにはもう既に二人の姿は無かった。


「もしや、私か明花ミンファさんのお部屋にでも運ばれたのかしら?」


美鈴メイリンは手に持った荷物で視界が遮られる事から階段を踏み外さないように足下を注意しながら運んだ。


そのため歩みは遅くなったものの、明花ミンファに任せておけば大丈夫だという信頼感から焦りは消えていた。


コンコン。


明花ミンファの部屋の前でノックをする美鈴メイリン


明花ミンファさん、いらっしゃるかしら?」


「あ、美鈴メイリンさん?」

「お頼みした物を持って来て下さったんですか?」


「ええ。手が塞がってますのでドアを開けてくださるかしら?」


「ええ、ただいま。」


ガチャリとドアが開く。


美鈴メイリンが持って来た物を幾らか受け取る明花ミンファ


「ありがとうございます、助かりました。」


「とんでもないですわ。」

「それより、若汐ルオシーさんの容態は如何ですの?」


「予想通り熱射病と軽い脱水症状でした。」

「涼しい場所で休ませて小まめな水分補給をすれば徐々に回復するでしょう。」


「ああ、良かったですわ。」


美鈴メイリンが声をかけて上げようと部屋の中に入り、奥を覗く。


すると。


「な!?」


「な、な、ななな~っ☆☆☆」


狼狽える美鈴メイリン


「どうしたんですか?」

ヒョコッと様子を伺う明花ミンファ


「なあんだ、若汐ルオシーさんがうつ伏せに寝てるだけじゃありませんか?」


何をそんなに美鈴に(メイリン)が狼狽えているのかが明花ミンファには分からなかった。


「だっ、だっ?…だって、彼女、その…裸ですわよ?」


確かに。


若汐ルオシーはベッドの上でうつ伏せに寝ていた。


美鈴メイリンが言う通り、全裸で。


但しうつ伏せだから当然前は見えてないし、腰にはシーツがかけられていたから肝心な部分は見えていない。


精々、シーツの隙間からチラッと見える横乳とお尻の谷間のほんの上、後は背中くらいだ。


「そりゃ、全身の汗を拭いてあげてたから…ハッ。」

そこまで言って明花ミンファはようやく美鈴メイリンは他人の裸に対し耐性が無い事に気が付いた。


「メ、美鈴メイリンさんって、実は物凄く殉情なんですね?」


「そ、そう言われる明花ミンファさんだって、こないだ私に着替えを見られて恥ずかしがってたじゃあございませんか!」


「あ、あれは…。」


確かにあと時は着替えを手伝って貰ってた側仕えの芽友ヤーヨウ相手には特に恥ずかしくもなかったし、芽友ヤーヨウも普段と同じように粛々と手伝っていた。


なのに、美鈴メイリンの目線に気が付いた途端、猛烈に恥ずかしくて堪らなくなったのだ。


(………もしや、これは恋心のせい?)


溜りこんだ明花ミンファの表情を覗き込む美鈴メイリン


明花ミンファさん…?」


その声に明花ミンファは目の前に美鈴メイリンの顔が近付いていた事を知った。


彼女がユックリと顔を上げると、二人の顔は触れんばかりに距離が近くなった。


「メ…美鈴メイリンさん………。」


明花ミンファ、さん………。」


互いに相手の息を顔に感じた。


このまま、ほんの少し顔を前に出す事で二人はキスしてしまう。


明花ミンファは、そっと目を閉じた。


美鈴メイリンは何も考えられなくなっていた。


ただ、拒む気持ちや力の一切が働かず、吸い込まれるように顔を明花ミンファの方へと近付け………。



「う…うう~~~…ん。」


突然、美鈴メイリンの背後から若汐ルオシーの声が聴こえた。


寝苦しくて寝返りでも打ったらしい。


「!!!」


美鈴メイリンはその声に呪縛を解かれたかのように飛び退いた。


「し、ししし…失礼いたしましたわ、明花ミンファさん…!」


「い、いえべつに謝らなくても…。」


明花ミンファは残念そうな顔をしていた。


そしてこんなタイミングで声を出した若汐ルオシーを忌々しく思って目をやる。


と、明花ミンファの表情が突然固まった。


その視線に自然と誘導された美鈴メイリンの目に映ったのは。


「★~★☆!?」


ズデ~ン☆☆☆


…………取り敢えず、若汐ルオシーが寝返りを打ってシーツを蹴飛ばし大の字になってた、とだけ説明しておこう。



あああ~…これは美鈴メイリンにとって、かなり刺激が強過ぎだったようだ。


何故なら美鈴メイリンはその場で卒倒したのだから。


「メ、メイリンさん?!しっかりして!?」


若汐ルオシーの時とはうって変わって大慌ての明花ミンファだった。



その夜、寝間着を着せられた若汐ルオシー芽友ヤーヨウのベッドに、美鈴メイリンを自分のベッドに寝かせた明花ミンファ


彼女は側仕え達に事情を話し、芽友ヤーヨウ美鈴メイリンのベッドで寝て貰った。


「全く、何でこうなるのかしら?」


面倒なライバル、月夜ユーイーは白百合のプリンセスに夢中となり戦線離脱中だというのに、ここに来てまさかの若汐ルオシーの訪問とは。


ダークホースと思われる愛麗アイリー芽友ヤーヨウが押さえててくれるから大丈夫、以前夜這いを企んでたファン先生も学園に帰った今は表だって動けないはず。


明花ミンファにとって完全に流れが自分の方に来ていたと言うのに。


しかし、彼女は恋敵となる可能性を持つもう一人の女の子の存在を失念している。


その女の子は今、悲しい事にすっかり月夜ユーイーのいいようにされてしまっているのだが。


その彼女だが。



どうやら月夜ユーイーの部屋の結界が弱まってるようなので、少しだけ様子を覗いて見よう。



ダブルベッドに横たわり満足げにスースーと眠る月夜ユーイー


シーツからは彼女の上半身が見えていた。


その彼女の素肌が月夜に照らされてぼんやり白く光っていた。


一方、その隣にはシーツで身体の前を隠しながら物憂げに空を見つめる白百合のプリンセスの裸の後ろ姿があった。


瞳に涙を湛えながら月を眺め、その視線を自身の素肌に何ヵ所も付いた…いや、「付けられた」赤い痕へと向ける。


「いつまで、私はこの方の所有物のように扱われ続けなければならないの…?」


本来なら美鈴メイリンが護るべき対象である月夜ユーイーは自分にとっても護るべき存在であるはず。


だが今の状態では自分を篭の鳥にしてしまった月夜ユーイーの存在を恨めしくも感じずにはいられなかった。


美鈴メイリンさん………。」


白百合のプリンセスは一体となり共に闘った美鈴メイリンの事ばかりが脳裏に浮かんでしまう。


彼女は両手で顔を覆い、しくしくと泣いた。


「…貴女に、会いたい。」


「ううっ…メイリンさん、メイリンさぁん~…。」

そのまま静かに泣き崩れ、いつの間にか深い眠りへと白百合のプリンセスは堕ちていった。


だが彼女は忘れているのだ。


自分を手入れて離そうとしないのは何も月夜ユーイーばかりではないということを。


彼女をこんな境遇にしてしまった張本人である謎の敵。


向こうはハッキリと白百合のプリンセスを奪い取ると宣言したのだ。


ソイツが白百合のプリンセスを何れは奪いにやって来る。


それは単に時間の問題でしか無かったのだ。


その時が来たら、月夜ユーイーに勝ち目など無いかも知れない。


それを思えば、どうせ同じように愛玩動物の如く飼い慣らされてしまうのならまだ人間側にいて美鈴メイリンとも会える可能性のある今の方が彼女にとって幾分マシなのかも知れない。


仮面の剣豪たる彼女にとってそれはどちらも耐え難い屈辱でしかないのだが。


泣き腫らした白百合のプリンセスはせめて夢の中だけでもという願いが叶ったのか、美鈴メイリンに優しく抱き締められる夢を見る事が出来たのであった。


或いは彼女を哀れに感じた女神が見せてくれた、それはせめてもの救いであったのかも知れない…。


もう間違いない、白百合のプリンセスは自分でも気が付かないうちに愛してしまっていたのだ。


美鈴メイリンさん、私は貴女を…愛してしまいました…。)


白百合のプリンセスの夢の中で彼女から愛の告白を受けた美鈴メイリンは一瞬キョトンとしながらも、優しく微笑んで彼女を強く抱き締めるのだった…。



で、再びこちらは本物の美鈴メイリン


彼女の寝顔を見つめていた明花ミンファが寝ボケて美鈴メイリンのベッドに入って抱き付いてるのは平常運転だから良いとして。


【さて、そろそろ始めるか。】


俺は美鈴メイリンに約束した通り、白百合のプリンセスと彼女を会わせる事にした。


但し、現実世界では色々難しい。


そこでそんな制約の通用しない精神世界を会話の場所に選んだんだ。


【第一回、「ゆりかめ」会議~☆☆】


パフパフ~ッ♪♪


「…何ですの、コレは?」


「え?この場所は…て、美鈴メイリンさん?」


美鈴メイリンの直ぐ隣には白百合のプリンセスを座らせてあげた。


これは二人への、特に白百合のプリンセスへの俺なりの配慮だ。


「あ!プリンセスじゃありませんか!?ようやく自由になれたんですの?」


「………え、……それじゃあさっきまでのは、夢…?」


思いきって美鈴メイリンに告白したさっきのは夢だった!


しかも本物の本人が今自分の直ぐ目の前にいる!


白百合のプリンセスは恥ずかしくなって泣き出した。

「いやあ~ん、恥ずかしい!私を見ないで下さい~!」


「い、一体どうされましたの?」


【あ~あ、女の子を泣かしてやんの~♪】


「私も女の子ですわよっ!?」


そんなドタバタの最中にソイツらがやって来た。


『いい加減我々を紹介してくれないか?』


『アタイ達暇なんだから急がないけどさー。』


『くははは、私は力さえ奮えればそれでいい!』


「あー、何ですかこの方達は?」


美鈴メイリンが面倒臭そうに彼女らを見た。


「あら、難解見覚えありますわね?」


『この電光烈火でんこうれっかを忘れるとはご挨拶だな。』

全身鎧甲冑で武装した大女が不満そうに喋った。


「ああ、一番最初に使用させて頂いた仮面の剣豪の形態でしたわね。」


美鈴メイリン美鈴メイリン、アタイの事覚えてるよね?』

今度は紫のチャイナドレスの少女が話し掛けて来る。


「勿論ですわよ、不可視擬フカシギちゃんは可愛いから忘れるワケないですわ。」


『エヘヘヘ。可愛い?ヤッパリね♪』


『ハン、私達は仮面の剣豪。戦ってナンボの存在だ。可愛い等と何を下らん…クッククク…。』


「あのー、名尾ナビ君?」


【ああ、あの人とは初対面になるな。】


「何ですのこの方?全身金色のローブだし、さっきからクレイジーな笑い方されてるし…。」


「なんだかんだ危ないヤツ感有りまくりなのですけど?」


『危ない?それは最上の誉め言葉だよ、クッククク、ハッハッハー!』


「とうとう気が触れましたかしら?」


「そ、それはさすがに失礼ですよ美鈴メイリンさん?」


「あらどうしてですの、プリンセス?」


「あの方こそ初代仮面の剣豪、『真面狩マジカル』様です!」


「…ふぇっ?しょ、初代?」


『フフン、たまげたか?』

ふんぞりかえる偉そうな態度の真面狩マジカル


「あの、名尾ナビ君、初代ということはもしや?」


【ああ、今夜は白百合のプリンセス…聖廉潔白セイレンケッパクと会わせるだけが目的じゃない。】


【彼女達…仮面の剣豪と美鈴メイリンの関係、】


【そして聖霊の仮面のシステムについてきちんとお前に説明するためにこの場を設けたんだ。】


「仮面の…システム…?」


「とうとう、これを彼女に教える時が来たのですね…。」

白百合のプリンセスは美鈴メイリンの手を握った。


美鈴メイリンもまた白百合のプリンセスの手を握り返した。


そして二人は互いに見つめあう。



その二人が何となくいい雰囲気を醸し出している間に他の三人の仮面の剣豪達は俺の用意した席に着いていった。


パンパン!と俺が手を叩くと美鈴メイリンと白百合のプリンセスはビックリして俺の方を向いた。


【…さて、それじゃ始めようか。】



【聖霊の仮面のシステム、そしてこれが産み出されて現在までの、その歴史の説明をさ。】


普段ふざけてる俺も、今日ばかりは少々襟元を正した。



何と、仮面の剣豪の大集合!

但し美鈴メイリンの夢の中で、ですが。

これから語られる仮面の剣豪、そして聖霊の仮面の真実とは。

果たして白百合のプリンセスは美鈴メイリンと結ばれる事が出来るのか?

…もとい、また一体化出来るのか?

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