第五十四話【引き離された白百合のプリンセス…新たな三角関係誕生?】
白百合のプリンセスはすっかり月夜の言いなりに?
美鈴はそんな二人に焼餅を妬く?
一方、その白百合のプリンセスもまた…?
異変による混乱から肝試しが中止され、教師らが交代で警備に当たった一夜が明けた。
結局、月夜に憑依した敵は本当にこの土地の不成仏霊達を癒しに来ただけらしく(但し、本人談)、それ以上は何も起きなかった。
誰もが釈然としないまま臨海学校は予定通り終わった。
と、いう事で皆が帰路についた。
早朝から学院に出向かなければならなかった范先生だけは芽友の持つアミュレットによる転移魔法の力を借りて一足先に学院へと帰還した。
そのため芽友は不在で愛麗、明花、美鈴は三人で同じ馬車に揺られていた。
「私は有翼飛翔魔術で一っ飛びして帰っても良かったのですが…。」
「そんなつれない事はおっしゃらないで、美鈴さん。」
隣に座る明花が美鈴に体を預けた。
明花の体温といい香りを感じて美鈴の表情が弛んだ。
だがコホン!と咳をした愛麗のせいで美鈴は再び表情を引き締めた。
以前とは違い、このところ美鈴は女の子同士による色仕掛けに対して素直に反応するようになってきた。
勿論、その相手は好意というか心を許せる仲間に関してのみだが。
とりわけ明花との間に関しては周りから見れば恋人同士にしか見えないような雰囲気を漂わせるようになってきた…美鈴本人だけは無自覚なのか認めてないけど。
彼女らの先頭を行く馬車には月夜とその従者の依然、そして白百合のプリンセスが乗っていた。
彼女が宿泊施設から月夜のエスコートで出て来た時には、プリンセスの姿のそのあまりの美しさと可憐さと存在感に周りの誰もから驚きとため息の声が洩れたものだ。
そして皆が話しかけるのも忘れて、ただ白百合のプリンセスに見とれていたのだった。
ただ、彼女の歩き方が少しぎこちなく感じられた。
まだ具合が悪いのだろうか。
月夜は教師陣に軽く説明を行い、来た時と同じように美鈴らと馬車に乗るため彼女らに合流した。
まずは月夜の方から挨拶してきた。
「おはようございます皆さん、そして美鈴さん。」
美鈴達も次々に挨拶を返した。
そして。
「白百合のプリンセス様、御加減は如何ですの?」
美鈴は漸く件の白百合のプリンセスに話し掛ける事が出来たのだが。
「だ、大丈夫です…その、メ、美鈴…さん…?」
何やら白百合のプリンセスの様子がおかしい…?
おどおどしてるようだし、頬が薄くピンク色に染まっている。
沢山の生徒らにジロジロ見られて恥ずかしかったのだろうか…。
等と感想を浮かべながら美鈴は白百合のプリンセスへと返事をするのだった。
「は、はい、何でございましょう…?」
「あの…。」
何か言おうとして口ごもる白百合のプリンセス。
周りを気にして喋れないようだ。
いつもと比べて少し弱々しく、落ち着かない様子の白百合のプリンセス。
しかもモジモジしてる。
どうやら彼女は、今回のこの状態について美鈴の二人だけで話せる時間が欲しいらしい。
それは美鈴としても同じ。
だが二人の関係は如何に美鈴の仲間とはいえバラしていいものでは無かった。
仮面の剣豪、そして聖霊の仮面に関する情報は王家と黎家が秘匿すべき極秘の機密だったのだ。
そしてこの二人の雰囲気を面白く思わなかったのか月夜が口を挟んだ。
「ご心配して下さりありがとうございます美鈴さん。」
「プリンセス様は私が責任を持ってお世話してますのでご安心してくださいな。」
まるで白百合のプリンセスが自分の彼女のような物言いだ。
そして美鈴と白百合のプリンセスとの間に腕を伸ばして二人を遮る。
「そ、そうでございますか?」
「ですが月夜先輩もですけど白百合のプリンセス様も気兼ねなく私達に話し掛けて下さいませ。」
軽く会釈する美鈴。
それに合わせて明花と愛麗も遅れて会釈した。
それに対しては月夜から当然のように受け答えした。
「はい、遠慮なくそういたします。」
遅れて白百合のプリンセスも弱々しくこう告げた。
「わ、私も…。」
プリンセスから美鈴達への反応に、チラッと横目でプリンセスを一瞥するも無表情で視線を戻す月夜。
その様子を一歩引いて見ていた依然は、ハアー…、とため息をついた。
(お嬢様、いくらプリンセス様に御執心とはいえ、独占欲が強過ぎでございます。)
(それに元々、お嬢様は美鈴様を想ってらしたのではありませんでしたか?)
月夜の節操の無さと増長ぶりに依然の気苦労は増える一方だ。
そして何故なのか昨夜から美鈴とは別人として存在している白百合のプリンセスは大人しく月夜に付き従っていた。
まるで自由に反論や抵抗が出来ないように見えた。
だからと言って、まさか月夜が慕っていた白百合のプリンセスを脅したりできるとも思えないが。
そして問題なのが月夜は
美鈴が白百合のプリンセスに近付くのを拒んでいる事だ。
そのままでは白百合のプリンセスは美鈴に近寄れない。
彼女と美鈴が接触すれば白百合のプリンセスは美鈴に取られてしまうと直感で感づいてるのかも知れない。
白百合のプリンセスが着ている洋服も敵に破かれた純白のドレスではなく月夜の予備の制服だった。
少し背丈が足りないのか袖が余って手の甲が隠れている。
それが却ってプリンセスを可愛らしく見せている。
だが意外に胸や腰のボリュームは不足がないようだ。
白百合のプリンセスは着痩せするタイプなのかも知れない、と美鈴は思った。
思い返せば、確かに自分が彼女の姿で戦っていた時も普段より胸や尻が揺れていたなあ、と美鈴は考えていた。
馬車に乗り込む前、そして馬車の席からも彼女は何度かチラチラと美鈴の方を見た。
何かを訴えかけたそうなその目に美鈴の胸は痛んだ。
美鈴も白百合のプリンセスに労りの思いを込めてその姿を目で追いかけていた。
幸い明花と愛麗もまた白百合のプリンセスに目が釘付けだったためとやかく言われずに済んだが。
と、言うわけで学院寮へと彼女らは向かっていた。
「それにしても何だか消化不良に終わった臨海学校でしたね。」
「そうですわね。」
「海水浴は海の魔物が現れて中止、肝だめしは月夜先輩が悪霊みたいなのに憑依され死霊だらけになって中止…まあ、直ぐに先輩は元に戻られたようですけど。」
「その二つの行事の中止に関して皆はブー垂れてしまたよお。」
「そりゃそうなりますわよね…。」
せっかくの夏休み中の思い出となるイベントのことごとくが中止に追い込まれたのだ、不満の声が出るのは当然だろう。
「事件と言えば馬車襲撃事件もありましたね。」
「月夜様の従者さんが矢を受けたアレでございますか?」
「あの時は仲間を人質に取られた他学院の中等部生徒が相手でしたわね。」
「その件も美鈴さん達によって無事その子の仲間が解放されたんですよね。」
「あ、そうでしたわね。」
「確か若汐さん、でしたっけ?」
「ええ、戦弓部のホープだかエースだかで中々強い人でしたわ…少し性格は変でしたけど。」
お前が言うな!と俺は聞かれないように突っ込んだ。
他の二人も同じ思いだったのか、苦笑してたけどな。
「あの子に迫られてデレッとしてらした美鈴さんを思い出すと可笑しくて…。」
焼餅を妬いてた癖に、その若汐が居なくなって安心したのか明花がクスクスと笑った。
(彼女達、無事に中等部校舎へ帰れましたかしら…?)
別の事を考えて気を紛らせた美鈴だが、明花はまだ美鈴の表情を面白そうに観察していた。
少し恥ずかしくなり、美鈴は話を先へと進めた。
「あれも最初は白百合のプリンセスのおかげで何とかなったのですけど…。」
「白百合のプリンセス様…。」
「まさか、いつも直ぐ居なくなる方が今、目の前の馬車に…。」
「一体どうなってるのでしょう…?」
三者三様、それぞれが複雑な思いで前の馬車を眺めて無言になる。
その中でも美鈴の胸中は正直穏やかでは無かった。
(どうにも面白くありませんわ。)
(さっきの月夜先輩の態度、まるで自分が白百合のプリンセスの側にいるのが当然みたいな?)
(だいたい、本来は白百合のプリンセスとは私の事ですのよ?)
(ああ、でもあちらの白百合のプリンセスさんもやはり本物のようですし…。)
(て言うか、なんでその白百合のプリンセス様は大人しく月夜先輩の言いなりになってますの?!)
(本来なら真っ先に私の側にいるべきではありませんか?!)
(まあ、誰も私達の秘密は知らないから仕方ないかと思いますけど…。)
(だからって距離近過ぎですのよ、あの二人!)
結局何が面白くないのかというと、白百合のプリンセスに月夜がベッタリしてる事に尽きるだろう。
【要するに嫉妬だな、これは。】
(だ?誰が嫉妬ですってえ?名尾君!)
【聴こえてたか(笑)。】
ま、ワザと聴こえるように呟いたんだけど。
(一体誰が、誰に対して嫉妬してるというのかご説明なさいな!)
【いや、だから美鈴が嫉妬してるんだろ?】
(この私が誰に嫉妬してると?)
【わかりやすいんだがなあ。】
【今お前は自分だけの者だった白百合のプリンセスを取られた、みたいな気持ちになってるだろ?】
(なっ?!)
【それに散々お前に言い寄って来てた月夜が、今じゃすっかり白百合のプリンセスに首ったけ。それじゃ今までのはなんだったのか?とも思ってるよな?】
(な、な、ななな…?)
図星を刺されたのか、美鈴がアワアワしてる(笑)。
【まあそんなに狼狽えるな(笑)。】
【別に不自然な事じゃない、それだけ二人の事が大好きって事なんだろ。】
(だ、誰が、大好き?って言いましたかあ?)
…いや、態度が物語ってるだろ?
【わかってるって。】
【美鈴は本命の明花一筋、だもんな?】
(そうです、私は最初から明花さん一筋………。)
(………ん?)
【わかりやすく引っかかったなあ(笑)!】
(…て、違あ~うっ!!?)
心の中で地団駄を踏み始める美鈴。
少しからかい過ぎたか?
【まあ、今は仕方ない。】
【白百合のプリンセスとの会話自体は俺に少し考えがある。】
(彼女と、話せるのですか?)
(ついでに月夜先輩から彼女を引き離して取り戻せますの?)
【さすがに引き離したり取り戻すとかは無理だから、取り敢えず会話の方だけは、な?】
【そこは何とかする…だけど彼女を元通りに仮面の剣豪への変身状態に戻せるかと言えば正直難しい。】
(もしかして、当分私は仮面の剣豪にはなれない、とでも?)
【幸い聖霊の仮面の本体はお前のポケットに入ったままで白百合のプリンセスがしている仮面はそこから分離した物らしい。】
【だからお前とこうして話せてるだろ?】
(なら変身も試してみる価値はありそうですけど。)
【勿論その場合、聖錬潔白にはなれないぞ?今の彼女はあの通り聖霊の仮面には存在していないから。】
(まあ、喫緊の問題ではありませんけど。)
【それより不気味なのは昨夜の憑依体だ。】
(あの悪霊?は何だったのでしょう。)
【月夜を狙ってる一団らしいな…昨夜のあの事件そのものは多分イレギュラーだったんだろう。】
(本人が言うには死霊たちを癒してたという事ですけど?)
【お、昨夜の記憶がだいぶ戻ったのか?】
(いえ、後から聞いた話ですが。)
【大方ヤツは月夜の身体ごと乗っ取ってそのままアジトに行くなり自殺させるなり考えてたんだろう。】
【しかしその場は大量に死霊がたむろしていて、邪魔でしょうが無かった。】
【強引に突っ切ったり戦っても良かったが、数が多すぎて面倒だった。】
【だから魂鎮めの儀式を行った…平たく言えば機嫌取り、だな…推測だが。】
(て、言うかアレって盆踊りでしたわよ?)
【そうだな(笑)。】
【…そこだけは覚えてるのか?】
(そう言えば、そこだけは…何故でございましょう?)
【まあそれだけインパクトが強かったんだろうな。】
(しかし、そうなると盆踊りを知ってたあの敵の正体は…。)
【だからもしかしたらあの敵は俺達の世界かそれに近い世界からの転生者なのかも知れないな。】
(それは…厄介ですわね、色んな意味で。)
この時の美鈴と俺は心底嫌そうな顔してたと思う。
さっきの推測、敵側の転生者だとすると本当に面倒な相手となるかも知れないからな。
いよいよの時はこちら側の転生者らしき連中にも声をかけていくしかないか…?
いつの間にか夢の中で俺と会話していた美鈴の意識が浮上して目覚めていた。
彼女は起きてキョロキョロしたが、周りの二人もウトウトと寝ていた。
皆が無言になった後で考え事に耽ったのだろうな、そのまま寝てしまっていた。
美鈴も、もう一度眠りについた。
前を行く馬車の様子も気になったけど、俺は正直それを覗くのが怖かった。
依然の目の前ではさすがに何も無いと思いたいけど…何せ昨夜から二人で部屋にいる間はずっと結界張られて中の様子がわからなかったんだよな。
多分今も馬車の周囲に結石張り巡らせるんだろう、どうせ覗くのは無理って事だ。
耳を澄ませても会話らしい会話も聴こえて来ない。
まあ正直、白百合のプリンセスが月夜と二人きりでいる場は俺も怖くて様子を覗き見る気にもなれないんだわ、これが。
取り敢えず何も無いと信じよう。
そもそも色恋沙汰云々は本人同士の問題だし?
さすがに名門貴族のお嬢様が、結婚や婚約もしてない相手とそんなはしたない行為には及ばないだろう。
聖霊の仮面から抜け出た彼女、聖錬潔白こと白百合のプリンセスは現在仮面の加護を受けていない。
その身に何かあってもこちらでは感知出来ないし助ける事も出来ない。
今は白百合のプリンセスの無事を祈るしかない…そう、色んな意味で(汗)。
そうこうしてるうちに時間は経ち、ようやく馬車は学院と学院寮へ到着した。
「皆さん、到着いたしましたー。」
御者からの声に目覚める美鈴達。
「ふぁ~ああ、良く眠りましたわあ~♪」
「も、もう着いたんですね…?」
美鈴に寄りかかったまま寝ていた明花は少し残念そうだ。
「…あの、明花様?ずっとお嬢様にそうしてらしたんですか?」
愛麗が羨ましそうに明花を睨んだ。
「あっ!…こ、これは…。」
慌てて明花が美鈴から離れた。
勘弁してくれ、今度はこっちで三角関係か?
いや、ここで芽友が来たら更に面倒な事に…?
「愛麗?お帰りなさい~!」
その芽友がニンマリしながら馬車の外から声をかけてきた。
「色々お話したいから、早く降りて来なさいな~?」
「そう、早く、ね…♪」
ゾゾゾ~ッと愛麗の顔が青くなった。
「は、はい…ただいまあ~。」
愛麗がビクビクしながら馬車を降りていった。
「愛麗たら、すっかり尻に敷かれてますのね。」
ご愁傷様、と美鈴は合掌した。
「私達も降りましょうか?」
「ですわね。」
この時、ちゃっかり美鈴と手を繋ぐ明花だった。
二人が手を繋ぎながら学院寮へと歩いていると。
「あらあら明花さん、美鈴さんと大変仲がおよろしいんですのね?」
後ろから声がした。
美鈴と明花が振り返ると、そこには月夜がいた。
彼女もまた、白百合のプリンセスと手を繋いでいた。
…いや、お手々繋いでどころか腕を組んでる!
しかも月夜の肘がプリンセスの………に?
な、なんて羨ましい当たり方してんだ!
………コホン、失礼。
でも俺だけじゃなくて美鈴も冷静じゃなさそうだ。
白百合のプリンセスの方もこれを嫌がってるのか嬉しそうなのかがわからない、微妙な表情だった。
「これはこれは月夜先輩、そちらこそ何だかご機嫌がよろしいようですが良いことでもあったのですか?」
明花が月夜に言い返した。
この二人、本来先輩後輩としての仲が良好な方ではあるのだが。
「私はお慕いしておりました白百合のプリンセス様のお世話が出来るので今とても光栄な気分なんですのよ。」
「それはそれは。私も美鈴さん直々に命名された【真の友】でありますので、その【真の友】とこうして仲良くさせていただいてます。」
「良い事ですね、オホホホ。」
「ええ、おかげさまで、フフフ。」
謎の微笑み合戦を始めた二人。
その隙に白百合のプリンセスの様子を盗み見る美鈴だが。
(ツーン)
何故か、白百合のプリンセスからの視線が痛い。
彼女の視線を辿ると、しっかり明花に握られた自分の手があることに美鈴は気が付いた。
だが、ここで彼女の手を振り解くとそれはそれで却って面倒な事になりそうだ。
よくわからないけど、この場は目で謝っておく美鈴だった。
一体自分の預かり知らぬところでどんな人間関係になってるのだろうか?と、真剣に美鈴は困っていた。
とことん朴念仁である。
或いは、もしかしてだが潜在的にはわかっててもワザと気が付かないようにしてないだろうか、この女。
それともまさか、この場以外に好きな人でもいるんだろうか?
【まさか、側使えの愛麗か?】
【あの変態を好むとは、意外にマニアックな…】
(違いますわよっ!)
お、やっと反応が帰ってきた。
(………名尾君の…馬鹿…。)
顔を赤くして下を向く美鈴。
(……………。)
おーい、美鈴さーん?
………返事が無くなった。
女子達の良くわからない圧が飛び交う空間は居心地が悪かった。
場面はいつの間にか部屋の中に。
白百合のプリンセスの方は当たり前のように月夜の部屋に連れ込まれたようだ。
月夜が白百合のプリンセスを自室に押し込みドアを締めるなり、いきなりピンク色の結界が部屋中を覆った。
そしてドアから部屋へと入れられる一瞬に見えた白百合のプリンセスの顔は少しだけ悲しそうにも見えた。
「さっきの白百合のプリンセス…助けを求めてたように見えませんでしたか?」
「いいえ、特に。」
「…私の考え過ぎでしょうか…?」
いや、明花には感じられなかったかも知らんが俺も美鈴と同じように感じ取れた気がするような…。
全く月夜のヤツめ、どれだけ白百合のプリンセスを独占したいんだか…。
さてこっちはここから先を見るのが怖いから美鈴の方に意識を向けよう。
「…で、帰ってきたとて特別やる事は無いんですよね。」
ふうっ、と息を吐く明花。
とは言え退屈そうには見えない。
「そうですか…実家に帰る気は無いので…て?」
何故か美鈴が驚いた。
「ウフフ。やることがなければ別に何もしなくてもいいんですよね?」
見ると、明花は美鈴に寄り添ってきていた。
「ちょ、ちょっと明花さん?」
「私は、美鈴さんとずっとこうしていたいなあ。」
美鈴の背中に腕を回し、抱き締める明花。
(あ、当たってますわよ明花さんたらっ?)
本当だ、というか明花が自分から意図的に当てに来てる?
何だかいつもより明花が積極的だな…美鈴が白百合のプリンセスを気にしてるから彼女も嫉妬で独占欲が出てるのかも知れない。
あんまり積極的過ぎて美鈴と深い関係になられると、こっちもおいそれと様子を覗けなくなるから程々にな?
まあ相手はゲーム主人公キャラだった美鈴だし、こういう場合は大抵邪魔が入る事になってるんだけどな。
コンコン!
誰かがドアを叩いた。
ほーら、ヤッパリ。
『美鈴さん、いますか?』
その声に慌てて美鈴から離れた明花。
美鈴がホッとしたような、少しだけ残念なような表情で答えた。
「ど、どうかされましたの?」
『貴女にお客さんが来てますのよ。』
「お客さん?」
一体誰が?
美鈴と明花は互いに顔を見合わせるのだった。
中々複雑な人間関係になりそうな予感(笑)。
白百合のプリンセス、そして仮面の剣豪と美鈴との関係はどうなっているのか?
そして肝心な美鈴の心は?
白百合のプリンセスの心は?
…因みに本編で伏せている白百合のプリンセスを巡るアレな話をノクターンノベルズの方に投稿予定です。




