第五十二話【肝試し会場だよ全員集合!?美鈴(メイリン)後ろだっ!】
美鈴は范先生と合流、現場で依然と出会します。
三人はそこで驚きの場面に遭遇する事になるのですが…?
美鈴が走るスピードを落とした。
「…あれは…?」
彼女の目線の先にはボンヤリと明るく光る空が見えた。
そして、かすかに何かが鳴っているのが聞こえた。
「とにかく様子を見ない事には…。」
再び美鈴が駆け出そうとするが。
「あら?」
何やら見えない壁のようなモノを感じたようだ。
押せども体当たりを繰り返そうも、そこから先には進めない。
「これは何でしょう?結界…?」
美鈴が何気なく呟くと背後から返事が返ってきた。
「おそらく…そうで、しょう…ね…ぜいぜい…。」
ヘトヘトになりながら范先生が追い付いてきたのだった。
「せ、先生?えらく早かったですわね?」
「身体強化を限界まで上げて来たんだよ…ハッ、ハッ、ハッ………フウウー。」
「す、少し休ませて…くれ………。」
そう言うとその場に范先生はへたり込んでしまった。
「驚きましたわ。私がそこそこの速度に抑えてたとはいえ、ここまで身体強化出来ましたのね?」
「…か、仮にも…教師だから、…ね。」
二、三分程息を整えていた范先生がようやく立ち上がった。
「…大体の話は聞いたよ。」
「死霊が相手となれば范先生の出番だと思い呼ばせていただきましたわ。」
「そうか、キミが一人で先走らなくて良かった。」
(いえ先生?)
(先走ってたら途中で愛麗と会話したり結界に行く手を阻まれたりしたので追い付かれてしまっただけなのですけど…。 )
「美鈴君に頼りにされるなんて、実に嬉しいなあ。」
ポオッと頬を染める范先生。
「私が来たからには大船に乗ったつもりで安心したまえ!」
「ではまずこの結界を何とかしてくださいますか?」
「任せたまえ、こんな結界の一つや二つ!」
范先生が懐から御札を取り出した。
「ヤーッ!!」
御札を見えない壁に向けて投げつける范先生。
ぺたっ。
すると何も無いように見える前方の壁に御札が貼りついた。
范先生が両手で印を組むと御札が光る。
そして先生の呪文とともに煙がブスブスと上がり始めた。
「喝!」
パリイン!
何かが割れる音がした。
御札はそのまま炎を噴き出して燃え尽きた。
「これでここは通れる。」
「では参りましょう。」
物理攻撃に特化した美鈴、そして
霊的な脅威に対するスペシャリストたる范先生。
この二人が組めば最強のゴーストバスターズと言えよう。
「せ、先生!火の玉ですわっ!」
「ああ。これは死霊が放つプラズマだな。」
「あ、あそこに足の無い幽霊がっ?!」
「本当は足があるんだけど見えないだけ。エネルギー不足だろうな。」
「…あの、先生?」
「何かな?」
「一応ここは肝試しの会場ですので雰囲気ぶち壊さないで下さる?」
「いや、我々は肝試しに来たワケでは無いのだろう?」
「理由はともかく、ここは肝試しの場所なのです!」
「場所についてはともかく、我々は現場の状況を確認に来たんだ!」
やんややんや、と言い合いを続けるこの二人に恐れ知らずにもつい話しかけた何者かがいた。
「あのお~~~、お二人さあ~ん~~~?」
横から二人を宥める声がした。
「「やかましい!!」」
二人の裏拳がその声の主にヒットした。
…………ん?
何故に死霊に物理的な裏拳がヒットすんだ?
「…范先生、今何気に何かぶん殴ったような気がしましたのですけど…?」
「き、奇遇だなあ。私もふとそんな気が………。」
アハハと笑いながら互いに拳の方を見る美鈴と范先生。
すると、二人の拳の間に挟まれ、縦に潰れた顔が。
「誰ですの、これ?」
「少なくとも死霊じゃなさそうだね?」
美鈴は縦に潰れた顔の口らしき穴にどこから取り出したのかストローを差し込んで、ぷうっと空気を吹き込んだ。
すると。
プクウッ!と風船みたいに膨らんだその顔。
そして鼻から一気に息を吹き出して人間のサイズの顔に戻った。
「あら、依然さんじゃありませんこと?」
「何だ、妖怪悪霊の類いじゃないのか。」
「あ、貴女がたは言うに事欠いて…!」
ワナワナ震える依然。
「それが人の顔をペッタンコに潰した輩の言う言葉ですかあー?!」
「とは言われましても、突然私達の口論に乱入するのが無用心と言うものですわ?」
「有無。せめて距離をとるなり安全策をしてから話し掛けたまえ。」
泰然自若、唯我独尊。
常人とは違うこの二人には常識が通用しないのだろうか?
「あ、謝るという言葉がハナから頭の中にありませんのねえ?!」
「あ、そうか。」
「言われて見ればそうでしたわね、これは失礼。」
二人は膝と三つ指を地面に付けて頭を下げた。
そして。
「「この度は大変失礼をつかまつった。」」
チーン。
どこかで仏壇の鐘の音が鳴ったような幻聴が響いたようだ。
「さっさと頭を上げてください、こっちが恥ずかしいです!」
二人は顔を上げて依然を見た。
「「許して下さるのか?」」
「さっきから何ですか、その芝居がかった口調はあーっ?!」
ケラケラ笑いながら立ちあがり、膝に付いたホコリを払う二人。
「いやあ、面白いね美鈴君。」
「中々からかいがいがありましたわね、依然さんは☆」
「…い、いけませんわ依然、貴女には大事な使命が…。」
こめかみを押さえてブツブツ呟く依然は冷静さを取り戻そうと必死だった。
「お二人の気が済まれたところでお伝えしたい事がございます。」
「あら、もう精神が復活されましたのね?」
「仕方ない、そろそろ真面目にとりかかるとするか。」
「最初から真面目に取り組んで下さーい!!」
依然が天に向かって怒りの咆哮を上げた。
………………。
「かくかくしかじか…でございます。」
「なるほど、かくかくしかじかでございますか?」
「しかし、かくかくしかじかという事なら私としてはかくかくしかじか…。」
「先生、それではかくかくしかじかではありませんか?」
「お嬢様はかくかくしかじか………て、これじゃ話がさっぱり伝わりませんけど?」
「というかよくさっきまで会話が成り立ちましたわね?」
「君達、いい加減おふざけは止めたまえ!」
「ノリノリでふざけてた張本人がよく言えますわ…。」
説明しよう。
さっきまでの会話には何一つ事態について語られていなかったのだ。
「全く。もう一度説明致します。」
「あら、月夜さんの身体が何かに乗っ取られて死霊が溢れているからそれを退治するだけのお話でございましょう?」
「わかってたんですか?!」
「逃げて来た生徒の話から何となくですわ。」
「それなら私の術で万事解決じゃないか。」
「依然さん、范先生は悪霊妖怪の類いには滅法お強いのですわよ!」
「それは私も存じております、が。」
「何か不満でもあるのかね?」
「いえ、先生の実力を疑ってるワケではありませんけど…。」
チョンチョン。
「誰ですのさっきから勝手に人の肩を触って!」
美鈴が振り返ると。
『にヘラあ~。』
「…………。」
美鈴は絶句した。
そこには頭に三角の布を着けた白い着物姿の青白い顔をした女性が立っていた。
表情は正気ではない狂気に満ちていた。
「せ、先生…依然さん…?」
「…わかってるよ美鈴君。」
「ビシバシと感じてますものね、瘴気を。」
依然の背後には顔に御札を貼られチャイナ服を着て、両腕を真っ直ぐピンと伸ばし、ピョンピョン跳び跳ねている屍体が数体。
そして范先生の背後には白い浮遊霊らしき物体が気持ち悪い顔を浮かべながらフヨフヨと飛び回っていた。
そしてどこからか笛の音が。
「ピーヒョロ、ピーヒャララ?」
更には太鼓の音が。
「ドンドンドン、カカカッ、ドドンがドン…ですか?」
美鈴と依然が首を捻る。
「まさかこれは…?」
范先生がその音がする方を見ると。
「や、やぐらが立っている!」
「やぐら、でございますか?」
美鈴が『やぐら』の上にいるその存在を凝視した。
するとそこに居たのは。
「お嬢様あ?!」
何と、『やぐら』の上には月夜が居た。
しかも着物から肩を出している。
「月夜先輩、もろ肌脱いでらづしゃるとは中々に大胆な方でございますわね?」
「余程暑いんですのね、虫刺されには注意でございますわよ?」
ズコーッ!!
范先生と依然が美鈴の見当違いな言葉を聞くと盛大にズッコケた。
「な、何を見てらっしゃるのですか美鈴様?」
「そ、そうだぞ美鈴君?」
ヨロヨロと二人が立ちあがった。
まだダメージはそれほど深刻では無いようだ。
え、何のダメージかって?
もちろん美鈴の天然発言で受けた精神的ダメージの事だよん。
依然が美鈴に物申した。
「あんな色っぽい姿の月夜お嬢様を見てムラムラ来ないのですか?!」
再び范先生がコケた。
「全くキミ達は…!」
ぐわっ!と一気に立ち上がる范先生。
「キミ達はさっきから一体何に注目してるんだ?」
「だって薮蚊に刺されたら痒くて大変ですのよ?」
「せっかくお嬢様が美鈴様にお色気アピールされてるのに気が付かないなんて美鈴様は罪なお方です。」
(コイツらは何しにここへ来たんだ?)
美鈴はともかく依然は最初からここにいて死霊騒動に巻き込まれただけなのだが。
「ともかく、彼女は何かに操られているんだ!」
「それが一体何なのか、まずはそれを突き止めないと…。」
ドンドンドン、カカカッ、ドドンがドン!
ピーヒャラピーヒャラピーヒョロー♪
「………さっきから気になってましたけど、まさかこれ………。」
ハッとして『やぐら』の足下を見る美鈴。
「…なるほど、わかりましたわ。奴らが何をしようとしているのか…!」
緊迫した表情の美鈴。
彼女の真剣な表情にゴクッと唾を飲み込む范先生と依然。
「アイツらは…。」
「「アイツらは?」」
スウッと息を吸い込み、肺にいっぱい空気圧を溜め込む美鈴。
「その『やぐら』、太鼓の音、笛の音、間違いありませんわ!」
「美鈴君、一体何が起こるんだ?」
「お嬢様はどうなるんですか?」
「月夜先輩のそばをご覧なさいな。」
「お嬢様の?」
「一体何が…」
銀色の穴空きボールが付いた棒が彼女の前に置かれていた。
その尻からは黒く太い紐のようなモノが伸びていた。
「あれは、マイクですわ。」
「「マイク?!」」
二人には何の事かわからなかった。
「ご覧なさいな、月夜先輩がやぐらの上で太鼓を叩いてこの地を浄めてらっしゃいますわ。」
「さ、さすがお嬢様、取りつかれていても無意識に浄化されてらっしゃったんですね?」
「それに、何やら口をパクパクさせて唱えているようたぞ?」
「…そうか言霊か、楽器だけでなく言霊の波動も
使って浄化しているんだな?」
せっかく感動してる二人には悪いが。
(これ、盆踊りですわね?)
美鈴はわかっててネタバラシを避けていたのだ。
美鈴は何が目の前で起きてるのか正確に把握していた。
(盆踊り…流石にこればっかりはこの世界にはありませんでしたものね。)
目の前の二人には説明が難しい。
だからきっとこれは転生者の仕業なのだろう。
(夏に盆踊り…前世でもあまり見られなくなっていった夏の風物詩ですものね。)
(して、その転生者は何処に?)
范先生と依然が美鈴の取って付けたウソ説明に感動してる間にとっとと転生者を見つけて事態の収集をせねばならない!
(やはり演奏して盆踊りの歌を歌ってる月夜先輩に取りついてるのがそれですわよね?)
安月夜は盆踊りに夢中で隙だらけだ。
「殺るなら今だな…」
「…て、言ってみただけですけどね(笑)。」
浄化と称する盆踊りに見入っている二人から隠れると、美鈴はポケットから仮面を取り出した。
やれやれ、やっと出番か。
『お待たせ致しましたわ、名尾君。』
【あー。あんまり出番が無さ過ぎなもんだから身体が鈍っちまったぜ。】
『では今日は念願の活躍の場という訳ですわね?』
【しかし幽霊相手とは…こればっかりは俺もどうすりゃいいのかサッパリだ。】
『多分、魔力を込めれば剣で切れると思いますわ。』
【まあ、魔力頼みになるわな。】
『行きますわよ、先ずは基本形態から。』
【聖錬潔白】!!
仮面の聖霊の力なら変身の呪文を省略して形態の名称だけを呼んでも変身をさせられる。
『なら最初からそうして下さればよろしかったですのに!』
【物事には順序と言うものがあってだな…?】
等と言い合いするうちに美鈴は仮面の剣豪基本形態【聖錬潔白】へと変身を遂げていた。
所謂別名『白百合のプリンセス』降臨である。
勿体ぶってたワケではありませんが、ようやく仮面の剣豪の基本形態こと『白百合のプリンセス』の登場です。
果たして彼女は謎の幽霊から月夜を解放し、事件解決出来るのでしょうか?




