第五十一話【肝試しの異変?】
明花達を素通りさせたしまった月夜達は本気出したようです。
が、調子にのり過ぎたのかそれとも何らかの悪意が働いたのか、何やらおかしな様子になってるようです?
「ただいま戻りましたー。」
明花が芽友と一緒に宿泊所に戻って来た。
「あ、明花さん、どうでした?」
「えと…特に変わった事もなく、退屈なだけでしたよ?」
「三年生の方々、オバケ役であるのを忘れて遊んでおられましたからね。」
芽友が呆れ顔でヤレヤレ、と手でポーズをとった。
「それは良かっ…いえいえ、楽しくありませんでしたわね。」
美鈴はそう言いつつも内心ホッとしていた。
これはもしかしたら、自分もオバケ役に脅かされずに済むかも?と。
………しかし。
「いや~!参った参った!」
「三年生達、ちょっとやり過ぎなんじゃないですの?」
「マジでビビったわあ~、はあー、怖かった!」
明花達が帰ってきた後で出発した一年生達は、皆口々に肝試しの恐怖を言葉にするのだった。
「あら、月夜先輩達ようやく本気になられたのかしら?」
明花が他人事のように言う。
まあ、確かに既に自分達の順番は終わってるのだからもう月夜先輩達三年生に驚かされずに済むワケだし。
「…な、何でやる気出されるのですか月夜会長?」
美鈴は段々と出番が怖くなってきた。
「あ、聞いて聞いて美鈴さん!」
肝試しの順番が終わった一人の一年生が美鈴に話しかけてきた。
「ど、どうされましたの?」
「もう、生徒会長張りきり過ぎですよお。」
「そりゃモンスターくらい出すでしょう、会長は使役してるのですから。」
「それだけじゃないの!」
「と、申されますと?」
何と彼女が言うには、何と月夜が冥界から本物の死霊を辺りに漂わせてると言うのだ。
「…まさか?あの方なら呼び出した所で精々妖精か聖霊の類いのはず。」
「四大名家でもある安家がわざわざ冥界から死霊を呼び出すなど普通あり得ませんわ、それではまるで黒魔術じゃございませんか?」
「でも、確かに私は見ましたが…。」
(変ですわね?)
「范先生は今どちらに?」
「あの先生なら昼の行事担当なのでこの行事は夜の担当の先生にお任せされてもうお休みされてると思いますけど?」
「では今この行事を監督しておられるのは?」
「確か三年生の学年主任と各クラスの担任だったと思います。」
「その先生方は今どこに?」
「さあ。」
と、会話する美鈴の前に件の教員が表れた。
「私がその三年生の学年主任ですけど、何か?」
「あら、そうですか。それでクラス担任の先生方はどちらに?」
「彼女らは三年生の方についてるはずですけど。」
「すみません、直ぐに一年生クラス担任の范先生を叩き起こして下さいませ。」
「彼女は明日朝早く学院に行くとの事なのでもうお休みされてる…」
「そこを何とか!もしかしたら緊急事態になるやも知れませんのよ?」
「緊急事態?!」
「私は先行します、追って来るよう范先生にお伝え下さいな!」
美鈴は肝試しの順番を待たずに教会の方へとダッシュした。
「あ、美鈴さんの順番は最後ですよー?」
「…行ってしまわれましたわね。」
「学年主任の先生、美鈴さんの言われた事は本当でしょうか?」
「緊急事態…一体何があったのかしら?」
「実は先ほど私から美鈴さんに三年生達が…特に安先輩が冥界から死霊を呼び出してると告げたのですが。」
「それは本当ですか?!」
三年生学年主任はその生徒に凄い形相で質問した。
「ほ、本当です、間違いありません!」
三年生学年主任はその生徒から離れると呟く。
「…何て事?そんなバカな…!」
「安家はモンスターの使役、妖精や聖霊との交流はされても死霊を操ったりはしない…!」
「…では?」
「何かの悪意か脅威の疑いがあります、今から肝試しは中止します!」
「エエー?」
それを聞いた生徒らから抗議の声が出始める。
「皆さん、事実を確認しないことには危険が大き過ぎるのです!」
「全員宿泊所にて指示あるまで待機!いいですね?!」
はーい、と仕方なくゾロゾロ宿泊施設へと入って行く生徒達。
「美鈴さん、大丈夫かしら?」
不安そうな明花が今にも現場に向かいそうに見えた芽友。
「お嬢様、私も肝試しに行っている愛麗が気掛かりです、けどここはお互い忍耐です。」
「そうでなくてはこれから先、とても八大武家の妻は務まりませんよ?」
「そうでしたね、将来の事を想えば…」
そこまでいいかけてハッとする明花。
「や、芽友?!」
自分の発言に恥じらう明花。
「アハハ、気付かれましたか?」
「も、もう!」
プンプンと頬を可愛く膨らませる明花を見て安心する芽友。
「愛麗、無事に帰って来るんですよ…。」
しかし彼女の胸の内は親友以上恋人未満である愛麗への心配でいっぱいだった。
彼女らの背中を見届けると三年生学年主任は行動を起こした。
「さて、私も急がねば…!」
三年生学年主任は疲れから気持ち良く爆睡している范先生を文字通りに叩き起こすのだった。
范先生にしたらいい迷惑であろう。
「これでただの勘違いだったら、本当勘弁して欲しいよ美鈴君…ふあ~あ…。」
眠い目を擦り、欠伸を噛み殺しながらフラフラと范先生は教会へと歩いて行くのだった。
と言うか、走れよ范先生?
「やれやれ、明日は朝早くから学園長の相手をせにゃならんと言うのに…。」
そう呟くと、ようやく范先生が仕事モードに切り替わったのか徐々に駆け足となって現場へと向かうのだった。
そして三年生の学年主任は一年生と二年生の学年主任、そしてクラス担任らと 共に合宿場所の警護へと当たる。
「相手は霊的な脅威とも考えられる、総員、対悪霊装備の用意を!」
各学年主任の指示の元、クラス担任達が呪文や護符をあしらったマントとスーツを着用する。
そして霊的防御を施した盾と霊的攻撃力を有した剣を手にした。
「…この程度で抑え込める相手なら良いが…。」
三年生学年主任は不安を拭い切れなかった。
…………。
一方、教会に向かった美鈴は、先ずは先に肝試しに挑戦していた愛麗と、たまたま今回組合わさる事になった生徒に出会す。
「あら愛麗じゃ御座いませんこと?」
「え?その声は美鈴お嬢様ぁ?」
抜けた声を出して振り返る愛麗。
そのお陰で彼女が手に持っていた照明の光が走って来た美鈴の目を直撃した。
「うげふっ?!」
思わず目を瞑って手を前人気翳す美鈴。
すると美鈴は慣性の法則が働いて曲がった道を曲がり切れなくなった。
そして彼女はそのままカーブを曲がり損ねてアウトコースに生えてる大木に体当たりをぶちかましてしまった。
ズドーン!!
大木はミシミシと音を立てて倒れてしまい、道を塞いだ。
「………大丈夫ですかあ?」
愛麗が真っ二つに折れた大木の幹の下にいる美鈴の様子を伺った。
「誰のせいだと思ってますの…?」
そこにはほぼ無傷の美鈴がいて、愛麗を睨み付けていた。
やがて大木の下から美鈴が表れて服についた埃やら土やらの汚れをポン、ポンと手ではたいて落とすのだった。
「お嬢様ー、幾ら早く肝試しに挑戦したいからって順番は守らないといけませんよー?」
「べ、別に順番が待ち遠しワケではありませんわ!」
「大体、今はそれどころでは無いのです!」
愛麗と、一緒にいた影の薄いモブ生徒に美鈴が事情を説明する。
「ま、まさかあ?!」
「それを確かめる為に私は向かってますの!」
「それはわかりましたけど…」
「何ですか愛麗、私は急いでます
の!」
「美鈴お嬢様、オバケは大丈夫なのですか?」
「な、何を申しますの愛麗?」
「わわ、私に怖いものなど、…ございませんわ!」
愛麗だけではなく顔もろくに覚えてないようなモブ生徒の前でうっかり弱気な姿
は見せられないとばかりに美鈴は虚勢を張った。
「はあ。あと、幽霊ですけど」
「どちらも似たようなものじゃありませんか!」
「いえ、どうやって退治されるのかな、と。」
「…あ。」
そうだった。
実はあらゆる魔法に精通している美鈴であったが物質ではない霊の類いを攻撃したり封じたりする魔法はまだ知らなかった。
(ど、どう致しましょう?)
だがこの事件をそのままにも出来ない。
「とにかく、行ってみるだけですわ!」
「貴女達は引き返しなさい、よろしくて?」
そう言うと美鈴は教会目指して再び駆け出すのだった。
果たして美鈴はオバケ退治…いや、死霊?を追い払えるのか?
月夜達は無事なのか?




