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慈悲深い仮面の剣豪は、実は血を見るのが苦手な中華風TS美少女です!  作者: 長紀歩生武
第二章【一年生の夏休み編】
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第三十六話【熱い季節の始まり…夏と言えば!】

夏休み前の試験勉強に忙しい仲間は横目に暇をもて余す美鈴メイリン

出来る人間にはそれゆえの悩みがあるのです。

夏休みの臨海学校ネタで盛り上がる四人ですが、

月夜ユーイーから学院代表の話しを聞かされ…。


鋼鉄アイアンキメラとの戦闘が終わり、季節は夏。


全国の貴族学院も夏休みを前に一学期最後の期末学力試験が目の前に迫っていた。


座学による試験をペーパーテストで、魔法の実技試験も会場で行われる事になっていたのだが。


「皆さんが羨ましいですわ。」


「何が羨ましいんですか、美鈴メイリンさん?」


「実技試験ですわ。魔法や武術、体育の試験が受けられるなんて羨ましいと思いませんか?」


「そんな事言えるのはこの中では美鈴メイリンお嬢様くらいのものですよ!」


「そうです。私達は座学試験と合わせて実技試験もだから大変なんですよ?」


「その座学試験の勉強の為にこうして机に齧りついてないといけないのが堪らなく退屈なのですわあ~。」


美鈴メイリンが教科書を放り投げてベッド横になる。


今日は美鈴メイリン愛麗アイリーの部屋に明花ミンファ芽友ヤーヨウが集まり四人で試験勉強の真っ最中。


ほぼ頭の中に暗記してしまった美鈴メイリンは教科書を何度も見返すのが苦痛でならなかった。


「私達は美鈴メイリンさんと違って凡才だから繰り返し勉強しないと覚えられないんですよ。」


「私達は美鈴メイリンお嬢様の方が羨ましいですう。勉強は直ぐ頭の中に入っちゃうし、実技試験は全て免除されちゃってますし。」


「こんな事なら、もう少し授業で力をセーブしとけば良かったですわ…。」


美鈴メイリン的には魔力や体力を充分セーブしたつもりだったのだが…なにせ成長期真っ盛りな上に実戦を通じて魔力と技術も更なる成長をしており、その体力と魔力の増し増し具合を本人も正確には自覚出来ていない。


それにあまり力を抑え過ぎると動きや声、そして表情に出てしまうのでそれを教師によっては「手抜き」と捉えてしまう人もいる。

どの程度まで力を抑えれば良いのか、その匙加減さじかげんが難しいのだ。


「いっそ何処かで魔力や体力を全力全開に出来れば、その加減具合も分かりやすいのですけど。」


「…あの、知力なら試験で全開に出来るのでは?」

明花ミンファが苦笑いする。

美鈴メイリンは試験の成績も常に上位なのだが本人は記憶力が桁違いなのでさして詰込勉強する必要はない。

だから試験勉強と言っても専ら記憶違いがないか照合する確認作業としての本読みと、授業ノートを見直して応用問題対策するくらいだ。


それもほとんど終わったので後は皆に付き合ってだらだら本読みしたり、他の人のわからない部分を説明してあげたりしていた。


………普通の人から見ればとても羨ましい状況だ。


「知力で全開と申されましても、私はペーパーテストで順位を競うつもりなんてちっともありませんので。」


「あら、筆記試験では一番にはなりたくないんですか?」


「…昔から筆記試験だけは何故か成績を競うのに抵抗がありますのよ、何故か。」

恐らく前世のテスト嫌いの記憶が影響してると思われる。


「あ~、退屈ですわあ~!」


喚く美鈴メイリンに対してどうしたものか、と頭を捻る側仕えコンビ。


すると、突然パチンと手を叩く明花ミンファ

「あ、そうですわ美鈴メイリンさん!」


ゴロンと横になったままで何事かと聞く美鈴メイリン

「何ですの?」


「夏休みになれば臨海学校か高原での乗馬合宿があるのですけど、美鈴メイリンさんはどちらに参加されますか?」


「!」

突然飛び上がって起きる美鈴メイリン

「そうでしたわね、それがありましたわ!」


明花ミンファ様、ナイスです!)

芽友ヤーヨウ愛麗アイリーの二人が親指を立てて「グッジョブ!」と口パクで明花ミンファに伝えていた。


この時、何故「グッジョブ」がこの四人に当たり前のように通じたのかは不思議と誰も気にしていなかった。


「まあ、美鈴メイリンさんは上位貴族の上に八大武家の御息女でらっしゃいますから、やはり参加されるのは…」

明花ミンファの頭の中には優雅に高原を馬に乗って駆け抜ける美鈴メイリンの姿が浮かんでいた。


うっとりと目を閉じている明花ミンファ




「ええ、勿論【臨海学校】参加に決まってますわ!!」


「「「えええ~っ???」」」


全員が意外そうな反応を見せた。


美鈴メイリンお嬢様、海なんて暑いだけですよ?」


「そうですよ、庶民は海、貴族は高原が相場でございます!」


「…私の家は庶民からの成り上がりだけど、どっちを選べばいいのかしら、芽友ヤーヨウ?」

明花ミンファ芽友ヤーヨウの決めつけに困惑した。


「貴女達!」

ビシッ!と音がしそうな勢いで美鈴メイリンが三人の方を指さした。

「夏と言えば海!海と言えば海水浴!」

「更に海水浴と言えばあ?…これ以上を私に言わせる気ですかあ?!」


「海水浴…ああ、水着が着れますね。」

ぼんやりと明花ミンファがこの前ミスコンテスト用に美鈴メイリンと買って来た水着の事を思い出す。


「その通り!ミスコンテストが結局開催出来なくなったためにせっかく買った水着をこのままお蔵入りさせるのは勿体無くありませんか?」


「言われてみれば、そうですね!」

(もしや、海に行けば美鈴メイリンさんの水着姿が…?)

明花ミンファの表情が腐女子の顔になっていった。

腐女子と言えばBL好きが大多数だが、この世界は百合ゲーだから勿論対象は女性になる。


美鈴メイリンお嬢様!私は海だろうと銭湯だろうとついて行く所存です!」

愛麗アイリー明花ミンファよりももっと怪しい変質者じみた顔つきになり「ウヘウヘ」と怪しい言葉を発し始めた。


「し、仕方ないですね?あ、愛麗アイリーが行くのであれば、私も…海だろうと銭湯だろうと…。」

芽友ヤーヨウが純情そうに頬を赤くしながら語った言葉の内容は、実はちっとも純情では無かった。


「では、夏休みは皆で臨海学校の方に参加いたしましょうか?!」


「「「異議無ーし!!!」」」


美鈴メイリン達が臨海学校参加の方向で盛り上がってる最中、突然水を差す者が現れた。

バタン!と美鈴メイリンの部屋のドアを開けて来訪したのは。


「………何おっしゃってるの?美鈴メイリンさんは。」


「あれま?月夜ユーイー会長さんじゃありませんこと?」


「あれま、じゃありません美鈴メイリンさん!」


ツカツカと美鈴メイリンの方に歩いて行く月夜ユーイー


「今日はお話しがあるから生徒会室まで来るように申してましたわよね、私が。」


「えええ~?だってえ、会長さんと二人きりになったりしたらぁ、私の事を口説くんじゃないかしら?て怖かったんですものぉ♪」


「変なキャラ作りで誤魔化さないで、美鈴メイリンさん?!」


「チッ、ノリ悪いですわよ、月夜ユーイー先輩ったら。」


月夜ユーイー先輩、何ですか美鈴メイリンさんへのお話しって?」


「そうねえ…まあ別に貴女達に隠す必要も無かったから、もうここで説明しましょう。」


美鈴メイリンさん、実は貴女に各学院代表選抜試合出場券を与える事になりました。」


一枚の書類を美鈴メイリンに渡す月夜ユーイー生徒会長。


「中等部でもやっていた学院代表同士の決闘…その代表者を決めるための選抜試合への出場資格が充分貴女にはあると判断されました。」


「あら、そうですの?確か学院代表は二年生の春から選抜が行われると聞いておりましたが…現に中等部も一年生は対象外でしたから。」


「それが今年は私のせいで…例のフレイムドラゴンの一件があり開催が遅れてしまいました。」


「それとその時と今回の鋼鉄キメラ退治での活躍と貢献も踏まえ、例外ではありますが美鈴メイリンさんを出場させるべきと言う声が挙がり始めたので厳粛な会議の結果、今回の決定が下されました。」


「勿論私は選抜戦抜きで美鈴メイリンさんを代表にすべきだと主張したのですが…これには反対意見も多くて通りませんでしたけどね。」

ペロッと舌を出す月夜ユーイー生徒会長。


美鈴メイリンは茶目っ気を見せる月夜ユーイーにポッとなった。

(か、可愛いですわ…月夜ユーイー先輩。)


と、後ろから美鈴メイリンのお尻をつねる存在が。


ギュッ。


「痛っ?」


「どうしました?虫にでも刺されましたか?」


白々しく美鈴メイリンに尋ねる明花ミンファだった。


そんな彼女に文句の一つも言いたかった美鈴メイリンだが、彼女からの嫉妬の感情を感じとった美鈴メイリンはグッと堪えた。

(下手に言い返せばややこしくなりそうですわ…(汗)。)


「ち、因みにその代表選抜の内容と日付けの方はどのように?」


「それがその書面に記されてるの、良く読んでおいて下さいね。」


「…どれどれ?」


美鈴メイリンと、彼女の周りの三人が代表選抜の書類を覗き込んだ。


愛麗アイリーが目を丸くしたり

「来たる9月1日より3日連続トーナメントぉ?夏休み終わったら直ぐじゃありませんかっ?」


「誰ですの?こんなスケジュール組んだのは?」


「異論反論もっともだけど、代表同士の決闘スケジュールも考えるとそうせざる終えなかったの。」


「10月初旬には各学院との総当たり戦が開催されます。だから9月中に対策や訓練する為にも9月始めに学院代表を決めてしまわないといけないんです、お分かり?」


「で、では…遊んでる暇などないじゃありませんかっ?!」


美鈴メイリンは鉛入り木刀を手にして庭へ出て行った。


「ああん、まだ話しは終わってないのにい。」


月夜ユーイーが地団駄を踏んだ。


恐る恐る明花ミンファ月夜ユーイーに尋ねる。

「あの…そもそも美鈴メイリンさんより強い学生さんて、この学院にいらっしゃるのですか?」


「そんな人いるワケないでしょ?」

月夜ユーイーは「何聞いてるのこの人は?」と言う顔で答えた。


「かなり強い上級生ならいるけど、彼女に勝てる人なんていないわよ。」


「もっとも、いくら美鈴メイリンさんでもあまり力を出し惜しみばかりしていては足元を掬われかねないわよ?」

「ね?愛麗アイリーさん?」


「な、ななな…何、の、事、でしょう…??」

明らかに挙動不審な愛麗アイリー


「じゃあ、美鈴メイリン様はまだ一度も本気を出した事無いんですか?あのフレイムドラゴンを相手にした時もですか?」

芽友ヤーヨウが興味津々に聞いてきた。


「…私は眠った状態だったから、その時の事はわからないかしら。」


「あの、フレイムドラゴンは仮面の剣豪である超速星チャオスウシン様が退治されたんですけど…。でも、美鈴メイリンさんも互角に戦っておられました。」


「あら、リー家の家訓で

【普段は最低限の魔法と魔力、後は武術と技能で乗り切れ!】

…と言われているハズだけど、それでもフレイムドラゴンと渡り合うなんて…私の想像以上ね美鈴メイリンさんの戦闘力は。」


「そんな家訓が?…て言うか先輩はリー家についてお詳しいんですね?」


「まあ、八大武家は私達四大名家の配下ですからそのくらいは知ってて当然ですわよ。」

月夜ユーイーが勝ち誇ったように言ったので明花ミンファが「ムッ」とした。



その頃、一心不乱に鉛入りの木刀を素振りする美鈴メイリンだった。


「ひゃくにじゅうはーち、ひゃくにじゅうきゅーう!」

ビュッ!ビュッ!


「あれ、30キログラムの木刀なのにあれだけの速さで素振り出来るなんて…。」

改めて美鈴メイリンの馬鹿力の凄さに恐れ入る愛麗アイリーだった。


「と、言うか…そこまで実力あるのに何故美鈴メイリンさんは焦って鍛えてるのかしら?」


「お嬢様、これでまた話しかける口実が一つ増えましたね?」


「ええ、本当に………て?」

「そ、そんなんじゃないですっ☆」

照れる明花ミンファをからかう芽友ヤーヨウ


「フフフ…高等部の各学院代表は中央学院のようにはいかないかも知れませんものね?」


真剣な美鈴メイリンに目を細める月夜ユーイー



(引き出しを開けずに済ます為にも、自力と技術を徹底的に磨いておきませんと!)


最強の武家足るが為に彼女なりの苦労があるのであった。


「あ、そう言えば臨海学校には温泉もありましたわ。」


「鍛練で疲れた身体を温泉で癒す…何てのも悪くありませんわね♪」


ムフフと含み笑いする美鈴メイリンだったが…この様子だと臨海学校もひたすら鍛練で終わる事になりそうな勢いだぞ、このご令嬢は。



…………素振りを終えて部屋に戻った美鈴メイリン明花ミンファがタオルと水を持って来た。


「はい、美鈴メイリンさんどうぞ。」


「ありがとうございますわ。」


そして美鈴メイリンの身体に回復魔法をかける。


(ああ~♪)

(~この感じ…まるで温泉のような優しさ…)

(さながら私専属、癒しの明花ミンファ温泉、ですかね?)

クスッと笑う美鈴メイリンに、「?」と笑顔のまま首を傾げる明花ミンファだった。



学院代表戦前の臨海学校。

遊ぶ気満々だった美鈴メイリンも学院代表戦へ向けて鍛練の毎日になるかも?


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