表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
慈悲深い仮面の剣豪は、実は血を見るのが苦手な中華風TS美少女です!  作者: 長紀歩生武
第一章【高等部入学編】
33/168

第三十三話【仮面の剣豪第三形態登場…走れメイリン、だが回避も忘れるな?!】

美鈴メイリン月夜ユーイーを狙った賊を叩き伏せますが、賊が語ったのは月夜ユーイーに向けて放った攻撃のヤバい内容。

仲間の元へと戻ろうとする美鈴メイリンは賊の仲間の暗殺部隊に囲まれてしまいます。

このピンチに、遂に美鈴メイリンは仮面の剣豪の第三形態を発動させるのでした…。


「待ちなさい!」


ステージを駆け降り校舎の裏側に回り込み、ようやく賊の姿を双眼に捉えた美鈴メイリン


そして手にしたスカーフを手前に翳して剣へと変える。


「ハーッ!」


その剣を賊の足元へと投げつけ、賊のズボンの裾を地面へと縫い付ける。


「うぉっ?!」

そのまま賊は頭から倒れ、地面へと這いつくばった。


「さあ、もう逃げられませんわよ?」


今度は制服のリボンを解き剣へと変える。


その切っ先を賊へと向ける美鈴メイリン


「さあ大人しく白状なさい、貴方は単独犯?それとも誰かに頼まれましたの?」


「…………。」


「では質問を変えます、先程貴方はどのような攻撃を、誰に向けて放ちましたか?」


ここでようやく賊が言葉を返した。

「………それなら話してもいいだろう。」


美鈴メイリンの顔がしっかり聞き取ろうと、少しだけ賊に近付く。

今は賊を捕らえたり、その背後を探るよりもこちらの方が最優先だからだ。


「アレは、魔法鉱石による攻撃。」


「魔法鉱石?では魔法による何らかの効果を狙ってのモノですか?」


「しかし残念でしたわね。こちらには魔法医学に精通した頼りになる相棒がおりますの。」

「如何に猛毒や魔素が含まれていても彼女ならチョチョイのチョーイで治して下さりますわ?」


「く。くくく…。」


「あら、ご自分の任務が失敗に終わって自嘲の笑いが洩れましたの?」

美鈴メイリンが挑発する。

これでコイツが乗ってくれればよいのだが。


「まあ、失敗と言えば失敗だ。狙いそのものは安月夜アン・ユーイーだったのだからな。」


「そう…やはり狙いは生徒会長でしたか。」


賊はその言葉にニヤリと笑う。

「…もしかしたらあの女は巻添えを食っただけ、とでも思ったのか?」


賊の意味深な言葉に、美鈴メイリンがピクッと反応する。

「どういう意味ですの?」


「言葉通りだ。確かに狙ったのは安月夜アン・ユーイーだったが、正直あの場にいたお前ら纏めて始末するのが目的だったからな。」


「わ、私達全員を、纏めて?」


「さっきの魔法鉱石による攻撃の話しにはまだ続きがあってな?」


賊はズボンの裾を破いて立ち上がると、地面に突き刺さったその剣を引き抜く。


そして美鈴メイリンへとその剣の切っ先を向けた。


「あれは呪術だ。鉱石に込められたヤバいヤツが鉱石を埋め込まれた人間に憑依して乗っ取り、具現化する魔法さ!」


賊は美鈴メイリンに斬りかかった。


キイン!


両者の剣がぶつかる。


「貴方は剣を嗜まれてますの?では貴族?又は武族ですか?」


「………ただの雇われの傭兵だよ!」

賊は忌々しく吐き捨てた。


賊は美鈴メイリンの剣を切り払うと、再び美鈴メイリンへと斬りかかった。


それから互いの剣と剣が重なり会うたび両者は問いかけ合った。


「貴方、もしかして貴族…又は王族、国家に恨みとかありますの?」


えよ、そんなもん!」

「ただ、上から威張って搾取するだけの連中が気に入らないだけさ!」


「あら、奇遇ですわね。実は私もそう思いますわ。」


「な、何言ってやがる?お前も貴族だろうが?」


両者は激しく剣を交えながらも会話を続けていた。


「ええ。貴族であり武族でもありますわ。」

「ですが、民草に支えられて生活させていただいてるそのぶん、ご恩返しに自らの命に代えてもこの国の人々の命と生活を護る使命を果たしておりますわ、こうしてね!」


ギイイン!!


遂に美鈴メイリンの剣が賊の手から剣を弾き飛ばした。


「ぐっ?、お前、まさか手加減してたのか!」

賊が痛さのあまり剣を持っていた右手を庇う。


怪我はしていない。

細身の身体、細身の剣からは考えられない程の美鈴メイリンの剛剣を受け止め切れずに、剣が賊の手から離れてしまったのだ。


日頃の鉛入り木刀の素振りによる鍛練はここでその成果の一端を見せたのだ。


「少しばかり貴方のお話も聞きたいと思いまして。」


賊の手から弾き飛ばされた剣(美鈴メイリンがスカーフで作った剣)が再び地面へと突き刺さる。


「それよりもう一度こちらからお聞きしますわ。」

「その魔法で何を憑依させますの?それを解く方法は?答えなさい。」


美鈴メイリンは剣の切っ先を賊の覆面へと突き付けた。


そして努めて冷静に、しかし威圧感と冷徹さを込めた視線を賊に突き刺した。


賊は覆面の下で冷や汗を浮かべながらも、しかし笑みを浮かべてこう言った。


「なあに、単なる猛獣さ。だが、ただの猛獣とは違う。」

(そろそろ、頃合いかな?)

賊は時間を見計らっていた。

ソイツは何かを待っていた。

それを悟らせないためにワザと情報を小出しにして美鈴メイリンの気を引いていた。



「どんな猛獣ですの?」


「キメラさ。」


「キメラ?」


「伝説とは違うが、ヤバい獣を組み合わせて作られたから、ヤバい猛獣には違いはない。」

「だが、それだけじゃない。」


「何せソイツの身体は鋼鉄製だからな!」


「な、何ですって?!」


「生半可な魔法や剣では傷一つ付けられんだろうさ………いいのかな?こんな所でこんなヤツ相手に時間を潰していても?」


「くっ!」


賊を放っておいて踵を返す美鈴メイリン

だが。


「おおっと、今お前を帰すと面倒だからな?」


パチンと賊が指を鳴らす。


すると両者の周囲には二桁はいるかと思われる集団が現れた。


「紹介しよう。今回の任務を成功させるため俺の雇い主が遣わせた暗殺部隊の皆さんだ。」


「あ、暗殺部隊?」

今度は美鈴メイリンが冷や汗をかく番だった。

「な、何て事…?」


「フフフ。流石の八大武家の筆頭とも噂されるリー家のご息女でも、これだけの数の暗殺部隊を前にしては無事では済むまい?」


「では、ここで失礼させてもらうぜ、アバヨ!」


地面に突き刺さっていた剣を引き抜くと、捨て台詞を残して月夜ユーイーを狙った賊は逃げた。


「くっ!逃したましたか!しかも剣泥棒までするとは!」

「しかし、これだけの包囲網、それに相当の手練れと思われる集団を相手にせねばならぬとは………。」


(て、手加減が難しいじゃありませんか~!)


そう。美鈴メイリンは血を見ると身体の力が抜けてしまい、最悪気絶してしまう。

だから出血させずに制圧するには鞘付きの剣を使うしかなかったのだ。


鞘付きの剣でぶったたきまくれば良いのだが、生憎と長年愛用していた鞘付き剣はまだフレイムドラゴンとの戦いで失われたままだ。


今手にしている剣は手ぶらだったので咄嗟に制服のリボンを魔法で変化させて作り出した剣で、鞘まで作っていない。


それより前にスカーフで作った剣は賊にそのまま持ち逃げされてしまった。

アレは翌日にはただのスカーフに戻っているから、まあいい。


他に何か代用出来る物があるならそれで鞘を作れば良いのだが………。


「あ?!」

美鈴メイリンが鞘の作成に頭を使っていると、暗殺部隊が仕掛けてきた。


「ぐっ!」

「くっ?」

「は、速…!」


一人一人のスピードなら余裕で対処出来たが、それが二桁もの集団で攻撃を効率的に組み合わされてくるとこれが中々面倒だった。


回避や防御の後で攻撃に転じようにも、その隙を突いて二ノ太刀、三ノ太刀、と矢継ぎ早に切れ目なく攻撃を仕掛けて来る。


おかげで全く反撃の糸口すら掴めない。


(こ、このままでは防戦一方ですわ!)

(は、早くステージに戻らなければなりませんのに!)


充分思考は出来るし攻撃への対処も問題なく出来る。


だがこの場を蹴散らしステージへ戻る突破口が開けない。


仮に出来たとしても確実に相手を殺傷してしまう。


せめて向こうの出血を防ぎ反撃に転じる事が出来るなら…!


【おー、スマンスマン、何かピンチそうなんで来てやったぞ。】


名尾ナビ君?!)


【当分お前の正真正銘のピンチになるまで干渉しないつもりだったから、仮面から離れて有意義に過ごしていたんだが………これは確かにヤバそうだな?】


(仮面から離れてた?そんな事出来ましたの?それに一体何処へ?)


【あー、一辺に聞くな!ただ色んなとこに霊体となってブラブラ観光してただけだっつーの!】

【千里眼でも良かったんだけど、肉眼目線で確かめたり、嗅覚や聴覚、それに触覚や味覚とかも一部物質化して感じてみたかったしな。】


(そ、それは中々に有意義でしたわね。………こちらはピンチの真っ最中ですのに!)


【そんな連中、お前の実力ならアッサリと捩じ伏せられるだろ?】


(こ、殺したり出血させたりは嫌なんですの!)


【あ、あのさ?………まあいいか。せっかく俺が来たんだから、俺を使えばいいんじゃね?】


(それが、仮面を出して装着する暇も無いんですの!)


【あ、左手にも普段懐に忍ばせてる短剣持ってるのな?】


(今両手塞がってますの、片手だと連撃への対処に遅れを取りますからね?)


【ふぃ~、しょうがねえ。】

【今回は特別大サービスだ、「変身」とだけ叫べ。】


「へ、変身?」


【そうだ、それでいい。】


すると、みるみるうちに美鈴メイリンの身体が輝き始めた。


「……………………!」


暗殺部隊たちは危険を悟って一斉に美鈴メイリンから離れた。


輝きが消えて、そこから現れたのは。


「紫のチャイナドレス……!」


【仮面の剣豪の第三の形態…多勢相手に最も有効な姿がそれだ。思い出したか?】


(ああ、そうでしたわ。…これが。)


『仮面の剣豪【不可視擬フカシギ】推参!』


僅かにたじろぐ暗殺部隊。


『参ります!』


不可視擬フカシギが駆け出し、宙を舞う。


そのフワフワと宙を舞うような変幻自在の動きに翻弄され、オロオロとする暗殺部隊は手も足も出せない。


『双剣へのシールド展開!』

以前に白百合のプリンセスとして月夜ユーイーをガードした時に彼女は真剣を持っていたため相手を攻撃出来なかった。


その反省から鞘を持たずとも剣を使えるように

手に持つ双剣の刃先を魔力でガードしたのだ。


次々と暗殺部隊の剣や武器を双剣で弾いて行く不可視擬フカシギ


【いや、だから最初からそうすれば良かったんじゃね?】


(でもさっきまでは防戦一方で魔法すら使う余裕ありませんでしたもの!)


美鈴メイリン、いや、不可視擬フカシギの双剣が紫色の光を纏い、幽玄の煌めきを帯状に放ちながら振るわれる。


不可視擬フカシギ幻夢げんむいっ!!』


一ノ太刀、二ノ太刀、三ノ太刀。


瞬きも許さず、次々と暗殺部隊にその刃がヒットする。


「がっ!」

「ギャッ?」

「グォッ!?」


悲鳴を挙げて、続々と倒れていく暗殺部隊。


…………気がつけば、そこに立っているのは不可視擬フカシギただ一人だけだった。


不可視擬フカシギが動きだしてから、たった十秒で全ては終わりましたわ。)


(正に秒殺!)



【………正確には殺してないけど。】



(そしてそれは一人辺りに換算するならコンマ5秒にも満たなかった…それこそ瞬殺!)



【………だから、殺してないってw】



(ちょっとくらい気分に浸らせてくれません?)



【そんな事してていいのか?】



(そ、そうでした!)


「さ、急ぎませんと!」

不可視擬フカシギは倒れている全員に忘却の魔法をかけると美鈴メイリンの姿へと戻り、ステージを目指した。


(間に合いますように!)


【走れ美鈴メイリン!】


【だがここは校舎裏、スピードの出し過ぎに気を付けろ? 】



「ああ~!?」


「キャッ?!」


危うく女性教員とぶつかりそうになり、高く跳躍して飛び越える美鈴メイリン


実に地上から20メートルは飛び上がった。


美鈴メイリンにかわしてもらえた女性教員が空を跳んでいる美鈴メイリンのスカートの中を眺めていた。


ボンヤリと美鈴メイリンのスカートの中身を下から覗き見た女性教員の感想は。


「…影で見えない…残念。」


美鈴メイリンはスカートの中を回避した女性教員に下から見られてる事に気が付かないみたいだった。

「フフフ、回避成功っ!ですわ!」


が、その跳躍先には大木が立っていた。


「どーして、こうなりますの~~?」


美鈴メイリンは思いっきり大木へとぶつかった!


しかし恐るべき事に、その幹を砕いて美鈴メイリンは無事着地した。


誰に言うとでもなく、美鈴メイリンはボソッと呟いた。

「体は無事で、制服はボロボロになりましたけどね?」


ポンポン、と埃を手で払い、再びボロボロの制服姿で美鈴メイリンは走り出した。


制服の下はカッターシャツ、スカートの下はストッキングの重ね履きで肌や下着は見えていない。

実に残念だ。


名尾ナビ君?さっきから全部聞こえてますからね~?!」


【あれ?おっかしいなあ~(笑)?】


仮面の聖霊に文句を叫びつつ、美鈴メイリンは再びステージへと向かうのだった。

名尾ナビ君の…バカ。)


ポッ、とピンク色に染まった頬を膨らませる美鈴メイリン


その反応にちょっとだけドギマギしてしまう仮面の聖霊こと名尾ナビ君だった。


月夜ユーイー明花ミンファ達を襲う鋼鉄の合成生物、キメラ。


美鈴メイリンは間に合うのか?


そしてこの攻撃を受け付けそうにないバケモノ相手に、如何にして立ち向かうのか、芽友ヤーヨウを無事保護出来るのか?


次回は鋼鉄キメラとの戦闘。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ