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慈悲深い仮面の剣豪は、実は血を見るのが苦手な中華風TS美少女です!  作者: 長紀歩生武
第一章【高等部入学編】
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第二十一話【盲点が自主トレを呼ぶ!】

観光から帰宅する時になって転移魔法を可能にするアミュレットに問題が発覚します。


噴水広場の前で他の四人を待っているファン先生と月夜ユーイー先輩。


と、彼女らの前にお腹をパンパンに膨らませた美鈴メイリン達四人がやって来た。


「お、お待たせ、しましたわ…。」

「うぐっ。…め、美鈴メイリンさん…私、苦しい…。」

「お嬢様、耐えてください…。」

「せ、せめてあと一口…。」

花も恥じらう乙女達がまるで身籠ってるのかと見間違えるような大きなお腹になって戻ってきた。


「おいおい、四人とも、お腹大丈夫かい?」


「ぜ、全然、余裕ですわ~…。」

「め、美鈴メイリンさん、痩せ我慢は、止め、ましょう…。痩せるどころか、太くなってますけど…。」


「うぐぐ。ま、まだ食べたいですう~。」

「す、少し、休まないと動けそうに、ありません。」



「………やれやれ、これじゃまだ帰れそうにないね。」


「皆さん、もう一泊なさいますか?」

月夜ユーイー先輩が心配そうに四人へ尋ねる。


「い、いいえ。私達には転移魔法がありますから…。」

芽友ヤーヨウがアミュレットを取り出して見せる。


「あ、それならお腹がこなれたらまた食べに行けますね?!」

愛麗アイリーが性懲りも無い事を言い出す。


「貴女、良くお腹パンパンの状態でそんな事、言えますわね…。」

これには美鈴メイリンも呆れた。



ファン先生が「ハーッ」とため息を一つついてから仕方なさそうに言う。

「仕方ない。公衆トイレで少しずつ吐かせよう。」


「ええ?そんな、勿体ないですわ!」


「そんなお腹じゃ馬車にも乗れないだろう?」

ファン先生が万年筆のキャップを外し、万年筆の中から四粒の錠剤を出した。

「魔法の解毒錠剤だ。本来は誤って飲んだ毒物を吐き出す為の即効性治療薬なんだが、今回は胃の中を空にするのが使用目的だから差し支えないだろう。」

一人ずつに錠剤を渡した。

「一人ずつ順番に、別々の個室で戻して来なさい。」

…………ここから先の描写は割愛。


終わった後、彼女らのウエストは元通りで全員スッキリしていた事だけ伝えておこう。


………胸ポケットに入れられていて一緒に付き合わされた俺にとっては非常に迷惑な話しだったが。


あ、因みにここまでのナレーションは仮面の聖霊こと名尾君でした。



「さあ、全員スッキリしたところで帰りましょうか?!」


「では早速転移魔法で…。」

芽友ヤーヨウがアミュレットを取り出して天に翳す。


………が。


「あ、あれ?」


何故かアミュレットから魔法のパワーが発生しない。


「お、おかしいですね…?」

オロオロしだす芽友ヤーヨウ


「ちょっと見せてください。」


ファン先生がアミュレットを手に取る。

「……………。」

暫くジーッとアミュレットを眺めたり撫でたりしていたが…。


「どこも異常ないね。」


「あら、じゃあ何故ですか?」

明花ミンファが心配する。

両親から芽友ヤーヨウに預けられた物だから、もしこのアミュレットに何かあれば自分は元より芽友ヤーヨウにも責任が生じるのだ。


「いや、異常ではないんだが…。」

先生が口を濁す。

「その道具、魔力充填式なのを、…知ってた?」


「と、言われますと?」

芽友ヤーヨウがよくわからなさそうに尋ねた。


「つまりだな、早い話が魔力切れで使えなくなったんだよ!」

呆れたように答えを返すファン先生だった。


「見てごらん、アミュレット外周の、この目盛りを。」

アミュレットの外周部分を小さなランプ状の石が囲んでおり、その一目盛り分だけが点滅していた。


芽友ヤーヨウ君、昨夜君達が月夜ユーイー君の屋敷まで転移した時に目盛りの石はどのくらい光ってた?」


「ええと…確か、半分くらい。」


「で、この広場まで転移した時には?」


「うーん。…四分の、一程度だったような。」


「で、この町でも使用したんだろ?」


「はい、お腹膨れて歩くのがしんどいって愛麗アイリーさんが言うから…。」


「「「「はああ~。」」」」

その場で芽友ヤーヨウ愛麗アイリーの二人を除く全員から盛大なため息が聴こえて来る。



「つまり、お屋敷まで転移した時点で学院寮まで帰還する分しか魔力が残されてなかったワケなのですわね?」

美鈴メイリンがこめかみを押さえながらそう言った。


「ま、まあ馬車で屋敷まで帰ればいいのですよ。一往復半すれば全員屋敷までは帰れますし、学院への帰還には違う馬車を出せば…。」

月夜ユーイー先輩が気を利かせてフォローしてあげるのだが。


そこを執事がピシャリと否定する。

「お嬢様、それが御館様と奥方様、その部下の方々に馬車を出しておりますので、この馬車しか残っておりませぬ。」


「え?」


「だから私はお嬢様とご学友の方々、そして先生はもう一泊されるものだとばかり…。」

なるほど、執事さんにも迷惑な話しだったようだ。


「あ、アハハハ…。」

月夜ユーイーもこの馬車不足については全くの想定外だったようだ。


「よ、要はそのアミュレットに魔力が補充されれば良いのですよね?」

明花ミンファが努めて明るく話す。


「いや、あの二人が屋敷に来るだけで魔力量が半分になるくらいなんだ。私達全員を学院まではとても運べないのではないのか?とても今日中に全員が学院に帰るのは無理だろう。」


「ああ、なるほど。二人で半分なら片道分だと四人が限度、と言ったところですか。」


美鈴メイリンの魔力量なら一回満タンにするくらいなら楽勝だろうが往復分となるとその後で何かが起きた場合美鈴メイリンの残りの魔力量が不足して対処に遅れを取る可能性もある。

月夜ユーイーを刺客が襲ったばかりなので安全のために全員の魔力量は温存しておきたい。


「仕方ありません、私と、あともう一人の方は歩きで帰りましょう。」

美鈴メイリンは歩くつもりだ。

体力には自信があるからだ、さすがは脳筋令嬢。

後一人はファン先生か月夜ユーイー先輩、又は明花ミンファか。

使い勝手の良い実戦向きの魔法を安定して使えるのは美鈴メイリン以外ではこの三人だ。


明花ミンファは攻撃魔法を持ってはいないが、防御や回復、治療、補充などのバックアップに回れば心強い。


と、ここで。


「あ、お嬢様。私も歩きますよ?」

どうした事か、愛麗アイリーも徒歩で帰ると言い出した。

「側仕えたる者、お嬢様を歩かせて自分だけが馬車に乗って楽するわけにはまいりませんからね。」


これは本心なのかも知れないが、何か他にも理由がありそうな気がするのは美鈴メイリンの考え過ぎだろうか?


「う~ん。…愛麗アイリー、危険に巻き込まれる可能性も有ります。貴女が自身を護れるならともかく、そうでなければ同行しない方が懸命ですわ。」


「…かと言って私や月夜ユーイー君のように防御や攻撃も可能な人間が馬車からいなくなったりしたら、今度は馬車の方のメンバーの危険が高まりそうだね。」


要は、美鈴メイリンクラス程ではないにしろ戦闘力のある人間がもう一人はいた方がいいという事だ。


「でも私は昨夜襲われたばかりですし、私といれば却って皆さんを危険に晒すかも知れません。」

月夜ユーイーの言う事はもっともだった。


「…わかりましたわ。私と愛麗アイリーが徒歩で帰りましょう。」

「その代わり、月夜ユーイー先輩のお屋敷までです。やはり今夜は全員が月夜ユーイー先輩のお家に再び御厄介になるとしましょう。」


「そうだね。明日早朝学院まで送り届けて貰ってもいいかな、月夜ユーイー君?」


「私は構いませんことよ。どうせ両親の帰りもまだ先でしょうから。」


「今晩の間にアミュレットに魔力を充填しておけば、愛麗アイリー芽友ヤーヨウさんは明日の朝に転移で帰れるでしょう?」


「私の持つ魔方陣を使えばそのアミュレットへの魔力の充填も自動で出来るし、明日朝には魔力の充填も完了してる頃だろう。」

ファン先生が懐から何枚かの魔方陣が描かれた紙を取り出し、そのうちの一枚に魔力を込めると芽友ヤーヨウに渡した。


「有り難うございます。」

芽友ヤーヨウがその紙を受け取りアミュレットを包むと淡い光が紙とアミュレットの隙間から漏れ出す。


「さて、それではお屋敷まで帰りましょう。」


すると、馬車が進むよりも先に美鈴メイリン愛麗アイリーをおんぶしたまま馬車を追い越して行く。


美鈴メイリンは歩くと言ったが、自動車並みの速度で駆け抜けていった。

しかも速度はぐんぐんと上がっていく。


「………美鈴メイリンさんのあの脚力は、魔法による身体強化でしょうか。それとも、まさか筋力…………?」

美鈴メイリンの常識はずれな脚力に呆気に取られる明花ミンファであった。


………………………。



愛麗アイリー、いつまで寝てますか!」


「…………はっ?!」


寝てたのではなく気絶してたのだが。


美鈴メイリンにおんぶされて運ばれるという事は、オープンカーに乗って高速道路を法定速度以上でスポーツ走行するのに匹敵する。


ただし、フロントガラスによる風防効果ほぼ無しで、だ。


時速50km/hの風圧をもろに浴びたらそれだけでもかなりのモノだ。


それが時速3桁ともなると息するどころか目を開けているのも苦痛、首から上を持ってかれるし両腕では身体を支えきれず落車しかねない。

バイクの場合は全身まともに風を受けないし、ヘルメットのおかげで目を開けていられるし呼吸も普通に可能、更に身体は前傾姿勢を取れるから風圧や加速Gにも耐えられ高速走行が可能なのだ。


それはともかく、二人はあまりに早く屋敷に到着したので皆の乗った馬車が来るまで少し待たねばならなかった。


「少々早く着きすぎてしまいましたわ。」


「お嬢様、それならあまり本気で走られなくても良かったのでは?」


「あら、最近少し運動不足というか鍛練不足気味でしたから、ここでちょっとだけでも挽回しとこうかと思ったのですけど…。」

「丁度良いですわ。愛麗アイリー、皆が来るまでウェイト代りになりなさい。」


「い?」


「ちょっと失礼。」


「お、お嬢様?」


美鈴メイリン愛麗アイリーの股下に頭を入れると立ち上がって肩車した。


恥ずかしそうに赤面する愛麗アイリーだが、美鈴メイリンは気にする素振りも見せなかった。


「女子一人分のウェイトで負荷をかけながらのヒンズースクワットですわ。」

そう言うなり膝の屈伸運動を始める美鈴メイリン


「ヒエエエエ~ッ??」

愛麗アイリーの絶叫が上下から木霊する。


「本来なら後で鉛入り木刀で素振り百回もやりたいとこですけど、今日のことろはこれだけに自重しときますわ。」


「お、お嬢様?これは、…何回、続けられる、おつもり、ですかあ~?」


「ええと~。………皆さんが来られるまで、ですわ!」


「………………、十一、十二、……………!」


「ひ、ひえええ~!」

「み、皆さん、は、早く、帰って来てええええっ?!」


………こうして、密かに美鈴メイリンと二人だけでイチャイチャエロエロな時間を過ごそうという愛麗アイリーの企みは、美鈴メイリンの天然と脳筋によって無事に粉砕されたのであった。



皆の乗る馬車が来るまであと10分もある。


その間、美鈴メイリンの高速スクワットで激しく上下に揺らされる愛麗アイリーは再び気絶するのだった。


「やはり肩車しながらだと効果を実感出来ますわね!」


「これからの鍛練はこれでいこうかしら?」


嗚呼、果たして愛麗アイリーは卒業まで無事に生きていられるのだろうか。



次回はいよいよ学院に帰宅。


しかし、あのトラブルメーカーの愛麗アイリーがいる時点で…。

そこは察してください(笑)。


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