第百六十話【お姫様から告げられた意外な…】
明花の誤解は解け…たのかな?
取り敢えず話しは少し進展します。
美鈴がお姫様から聞いた意外な情報とは?
「お、おはようございます明花さん、昨日は良く眠れまして?」
何事も無いように明花に挨拶する美鈴の目は泳いでいた。
そのせいか美鈴は明花がまだ沈んだままなのに気付くのは彼女から一声が発せられてからになってしまった。
というか昨日の状況から察すればすぐに気付くはずなのだが。
よほどお姫様との関係を誤解されたくなかったと見えるな、うん。
美鈴はようやく姫様から離れるべきと気付いて距離をとった。
そして明花は。
「あ、おはようございます…その、私お邪魔でしたかしら…」
明花の表情が更に暗くなる。
「と、とんでもございませんわ、邪魔だなんて!」
「そそ、そーですわ、この方、実は深夜いきなり匿って欲しいと申されましてね?」
「今から事情を聞くとこだったのですのよお〜」
「別に匿ってなんて、私…」
ボソッと姫様が呟いた次の瞬間。
「シャーラップ!」
美鈴はコメカミに青筋立てながらニコニコ笑顔を姫様へシュパッ!と高速で向けた。
「言われましたわよ、ね?!」
物凄い圧を美鈴からかけられ、思わず姫様は首を縦にブンブンと振った。
「そ、そーですわ明花さん、ウチの両親が貴女とお話ししたいと申しておりましたわ。」
「そーですか?」
「ええ、今から愛麗に案内させますので。」
チリンチリン!
美鈴は召使い呼び出し用のベルを思い切り鳴らした。
すると。
ドタドタドタドタ!!
「きゃっ?」
ドアの側に立つ明花を押しのけるように愛麗が息を切らせて走って来た。
「およっ、お呼びでございましょうか、お嬢様!?」
「貴女の隣にいる明花さんをお父役母様達のお部屋へ案内してくださいな。」
「おうっ?!これは明花様いつの間に?…ていうかおはようございますです!」
「お、おはようございます愛麗さん。」
「時に芽友は一緒ではないのですか?」
「あのコは湯浴み中です。」
愛麗がこれにピクッと反応した。
「それはいけません!私はすぐさまお手伝いに…」
ダッシュの体勢に入った愛麗だったが…。
「行かなくて結構ですわっ!!」
スパーン!
美鈴はハリセンで愛麗の頭をはたいた。
「あうっ?!」
愛麗は出鼻を挫かれ野望を阻止された。
「言いつけ通り明花さんを私の両親の下へ案内なさいな、いいですわね?」
「お嬢様ぁ〜」
愛麗は少し駄々をこねた。
「昨晩も私は芽友とイチャイチャどころか会話も出来なかったんですけどお〜?」
「…では今晩仕事終わってから会話なさいな。」
「今の状況では彼女も安心してアナタとの会話も楽しめないのではありませんか?」
「それも…そうですね…」
「わかったら、サッサと…」
「は、はい!」
「それでは明花様、こちらへ」
「わかりました」
「その前に一度、芽友を迎えに行きましょう、もう湯浴みも済んだ頃だと思いますので。」
「かしこまりました。」
明花は一旦チラ…と美鈴の方を振り返ってから愛麗について行った。
「ふう…何とかなりましたわ」
美鈴は精神的に疲れたようだ。
「ふ〜ん?」
何やら楽しそうに美鈴の顔を見ているお姫様、何考えてるんだろう?
「…何か?」
美鈴は姫様の視線に気付き、少し無愛想に尋ねる。
「ンフフ〜♪」
「そっかあ〜、さっきのあのコが、ねえ〜…。」
意味深そうに姫様が言った。
「あの!…姫様?何か誤解されてるような物言いに聞こえましたんですけど…。」
「別に明花さんと私は姫様がお考えになってるような関係ではございませんわ、ええ、何もありませんですわ!単なる真の友なのです!!」
「?あ〜ら、私が考えてるような関係とはどのような関係の事を言うのかしら?」
イタズラっぽく笑う姫様。
「…そ、そ、それ…は…」
美鈴は黙って赤面してしまった。
完全にこの姫様にペースを握られっぱなしだなこれは。
「と、そんな話しで誤魔化されたりしませんわよ!」
「姫様に質問があるのは寧ろこの私の方でございますから!」
強引に話しを戻したな。
と言うよりこれ以上、明花ネタで冷やかされるのに耐えられなかったんだろうな。
全く、往生際が悪い女主人公だぜ。
まあ、中身が前世オトコのTSだから…
…て、普通中身オトコなら喜びそうなシチュエーションだけどな?なにせゲーム本編のメインヒロイン攻略に王手かかってんだから。
なんでも今世では最初から女として産まれ育ったから中身も女とか抜かしてやがったけど、でも仮にも百合ゲーの女主人公なんだぞ?
どうにも解せん!
俺的には!
…等と、取り留めもない事を俺が考えていると。
「…で、詰まる所お姫様は一体何をなされたいのでございましょうか?」
「ん??協力してくれるの?」
「それはお話しの内容次第でございますけど。」
「私と致しましては穏便にお姫様にお城へと帰っていただきたいので。」
「…あら〜?その言葉はもしかしてこの私を力づくで送り返すとでも言わんばかりね?」
割と好戦的なのか、このお姫様は?
「ここは仮にも八大武家の家族三人が揃っておりますのですが?」
「ええー?流石に私一人に三人がかりは卑怯じゃなーい?」
「そうならない為にも、まずは貴女の事情をお話し願いたいのですが?」
(…美鈴のアホー、も少し聞き分けがいいかと思ってたのに…)
お姫様は不服なのか、小声でブツブツ文句を
「何かおっしゃいまして?」
「ううん☆何にもー♪」
ニコニコしながら本心を隠すお姫様だった。
「いい加減本題に入りたいのですが。」
「わかってるわよー。」
コホン、と咳払いするお姫様。
ようやく話しが進むらしい、ヤレヤレ。
「…アナタ、大魔王復活の話し、聞いてるわよね?」
「はい、何でも来年頃に…」
「…ああー、やっぱりそこまでしか情報行き渡ってなかったかー。」
「どういう事ですの?」
「…まあ、まだ知らされてないのには理由があるのかもね…だから、ここだけの秘密。」
お姫様は美鈴の耳にゴニョゴニョ、と内緒話をした。
(実は、事態は切迫してて大魔王復活が早まりそうなのよ〜。)
「マジですか?!」
美鈴は驚きのあまりに思わず立ち上がってしまった。
いや待て、俺も初耳なんだがそんな情報?!
〜〜一年生の冬休み編・完〜〜
大魔王復活が早まる…
それは人類と魔族の大戦争もまた早まるという事です。
さあ、大変な事になってまいりました!