表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
159/161

第百五十九話【運命に引き寄せられる二輪の花】

想定外のお客様達への対応に動く美鈴メイリン

かたやこの国の最高権力者の娘、かたや大切な真の友(?)、どちらも無下に扱えないです。


愛麗アイリーの状況が前回のお話しと繋がっていなかったので前半を訂正しました。



寝ぼけたのか抱き着いてる姫様とやらを引き剥がした美鈴メイリンは手早く身支度を整えると、そのお姫様をベッドに寝かせた。


そして立ったまま硬直してる愛麗アイリーの身体を揺さぶる。

愛麗アイリー、起きておりますか?」


少し待ってから返事が返ってきた。

「お、お嬢様〜?」

「どうされたんですかあ、この状況は、一体…?」

ほおっておくと大騒ぎしそうな声だな。

美鈴メイリン愛麗アイリーの鼻血をティッシュで拭き取りながらこう言った。

「いいから私の言うことをお聞きなさい、直ぐ支度して高級ドレスを仕立てておきなさいな。」


「高級ドレスぅ〜?」


「理由はあとで話しますわ、とにかく急ぎなさいな。」

ズボッ、ズボッと愛麗アイリーの鼻の穴へとティッシュをちぎって突っ込む美鈴メイリン

「あ、それとサイズは私より…そうですわね、5cm程度低くて」

「私よりも胸とお尻が…ええと、一回りくらい?大きめを選んで下さいな?」


「ふがふが…お嬢様のではない…明花ミンファ様、なら背丈はお嬢様とほぼ同じで…上下のサイズはもう少し大きめのはず…」


「…悔しいですけどそこは認めますわ。」


「え?それってまさかそこで寝ておられるご令嬢様へのお着替えって事ですか?」


「ん〜、一応、その方への…と、申しますか…。」


「??」


「とにかく直ぐ支度して私の部屋の前に置いておきなさい!」


「あの、しかしその方のお着替えのお手伝いは必要は…」


「そ、そうでしたわ!」

「アナタ一人では少し不安なので有能な先輩召使いを三人ばかり連れて行きなさい、重要なお客人なのでくれぐれも失礼など無いように、良いですわね?!」


「はあ…わかりました、ふがっ。」


「それから私と明花ミンファさんにもドレスを用意しなさいな、よろしいですわね?」


「ええ〜っ?それは朝からイキナリ忙し過ぎではございませんか?」


「いいからやるのです!」

美鈴メイリンから大声で一喝された愛麗アイリーは姿勢を正した。

そして鼻息で鼻の穴に詰め込まれたティッシュをフン!と吹き飛ばす!

「は、はいっ!ただいま!!」

咄嗟に回れ右する愛麗アイリー

しかし慌てていたためつまづいて思い切り転げるのだった。

ドンガラガシャン✩✩✩


「急げとは言いましたけど怪我は無いように。」


「ふぁあ〜〜〜いぃ〜…。」

愛麗アイリーは今度は顔面をドアへとしたたかにぶつけてしまい鼻血を再発させていた。


コイツは打たれ強いうえに鉄壁の防御魔法を使える不死身のタフネスのはずなのだが、それでも攻撃を受けた場合でなく日常のうっかりから来る怪我に対しては常人並みにダメージでも受けるんだろうか?


と、俺がそんな疑問を持ってしまうくらいにダラダラ鼻血を流し続ける愛麗アイリーだった。


ティッシュを受け取りながら退室する愛麗アイリーを見送ったあと、美鈴メイリンは若干の不安を抱えながらもその場を後にした。


「…?…何か、忘れているような…」

美鈴メイリンは一瞬何かを思い出そうとしていたようだが。

「…嫌な予感がしますので、この際忘れたままにしておきましょう!」


…コイツ、愛麗アイリーの鼻血見ても失神しなかった事を無意識とはいえ無理矢理にでも忘却の彼方へ押しやるつもりらしい。

まあ、今気絶しては何かと大変だから正しい判断だけどな。


………。


コンコン✩

「お父役母様とうさま、お母さま、朝早くから失礼致しますわ。」


「おはよう…これはまた随分と早起きだな美鈴メイリン。」


「ドア越しからの挨拶、失礼致しますわ。」


「どうしたのです?」


「いえ、もしや気付いてらっしゃるかも知れませんか、一応のご報告がございますの。」  


「そうか、我々も起きてるからかまわんよ、入りなさい。」

 

「やはりでしたか、失礼致しますわ。」

美鈴メイリンが両親の部屋に入ると、既に二人は着替え終えてくつろいでいた。

「座りなさい。」


「いえ、私は立ったままで構いませんので、このまま説明させていただきますわ。」


かくかくしかじか…。


美鈴メイリンは事の経緯を両親に説明した。


「まあ…大体は予想通りだったな。」


美鈴メイリン、貴女はもしもそのお人形がお姫様ではなく何らかの危険な存在であったら………と、いう可能性を考慮して皆を遠ざけてから自室で正体を暴く事にした………それでよいのですよね?」


「おっしゃる通りですわ。」


「しかし…相手は王族であり皇位継承者にして世継ぎを産まれるかも知れないお方だ、王室への報告義務というものが…」


「そうおっしゃられると思いましたわ。」

「なので、ここは私に一任していただけないかしら?」


「………相手がお姫様とはつゆ知らず、キミが独断で世話をした、ということにするんだね?」


「察しが良くて助かりますわ。」

「代わりと言っては何ですけど私からお願いがございますの、よろしいでしょうか?」


「親に取引を持ちかけるとはな…まあ今回はそれも良いだろう。」

「こちらとしても断りにくいですものね、今回ばかりは美鈴メイリンに軍配が上がりましたわねアナタ。」


「ご理解いただきありがとうございますですわ♪」

美鈴メイリンはニコッ✩と極上の笑みを両親に向けた。


「…ちょ、ちょっと待ちたまえ?まだ私達は美鈴メイリンからのお願いとやらを聞いてはいないぞ?」

父役母親ちちおやの方はすぐ我に返った。

娘にデレデレしてる子煩悩なだけの当主ではなかったか。


「ですわよね〜、流石に内容知らないと何して良いのかよもわかりませんものね〜。」


「勿体ぶらず早く言いなさいな!」


「ではお願い申し上げますわ、私の…」

 


「あー、ウェン家のご令嬢の事だな?」

「ちゃんと彼女から事情は伺っておくわ、心配しなくても大丈夫よ?」


「さ、察しが早くて助かります、わ…。」


美鈴メイリンはソファから立ち上がり部屋を出ようとする。

が、何かに気づいたように後ろを振り返った。


「あのー、もしやとは思いますけど?」


「何かね?」

「何かしら?」


明花ミンファさんとの縁談話しを私抜きで勝手に進めたり、なんてなさりませんわよね?」


「「ギクッ?!」」


「…なさりませんわよ、ね?!」

笑顔で圧をかける美鈴メイリンに両親はタジタジとなった。

「ま、まさか私達がそんな事するわけないだろう?」

「そ、そーよー?こういうのはやはり本人同士の了解を得てからでないと、ねえ〜?」

乾いた両親の笑いを背にしながら美鈴メイリンは両親の部屋を後にした。

「ホントに任せて良かったのかしら…?」

またしても若干の不安を抱く美鈴メイリンだった。


さて、自室に戻った美鈴メイリンだが。


「お嬢様、お言いつけ通りに仕立て上げました。」

そこにいたのは愛麗アイリーと呑気そうな先輩召使い、そして子供召使いという不安の残る召使いトリオだった。


(あちゃ〜、よりにもよってこの三人でございましたか〜)

(もっと他にも召使いはいたでしょうに、なんでよりにもよってこんな時に…)

………等とは決して口にはしない美鈴メイリンだった。


「お嬢様、早速私共の仕事をご覧くださいませ。」

先輩召使いが、さも自分の手柄と言わんばかりにドレス姿の姫様へと視線を注がせた。

子供召使いもブイッ!とVサインをしている。

この三人は何かと性格に問題はあるが腕だけは確かだった。


輝かんばかりの美しい姿に化粧やコーディネートされた姫様は、当に王族の威厳と眩さを保っていた。

「…これは…とても…」

確かに美しい。

化粧も衣装も急場しのぎにしてはかなりの高得点と言えるんじゃなかろうか。


しかし


「ぐー…スピー…」

肝心の姫様は口を開けてヨダレを垂らしながら爆睡しているのだった。


「ま、まあ起きて下さればきっと普段通りには…(汗)。」


美鈴メイリンは後の事は姫様の自己責任だと思う事にした。


「お嬢様、それでコチラのお方はどのようなご関係で…」


「それは今は聞かないでくださいな。」

下手にこの先輩召使いにホントの事を教えればすぐ屋敷中に噂が広まる事を美鈴メイリンは警戒したようだ。


「ありがとう三人とも、あとは私がお相手しますので下がって結構ですわ。」


美鈴メイリンは、さっさと三人を下がらせた。


「さあて、起きたら尋問のお時間ですわよお姫様?」

美鈴メイリンは胃が痛そうにお腹を押さえていた。


一方の当主の方を千里眼で覗いてみたら、当主もお腹を少し擦っていた。

なんせこれから明花ミンファから事情を聞かねばならないのだ。

せっかく美鈴メイリンと婚姻を結ばせるに丁度いい相手が見つかったばかりだと思ってたところで明花ミンファが両親と彼女の実家であるウェン家との間で何か問題が起きているかも知れないのだ。

「単純に単なる親子喧嘩であればまだ良いのだが…」

「アナタ、事がそう簡単に済みそうにないからそんなに不安なのでしょう?」

「やはりわかるかね。」



………。


明花ミンファの表情は優れなかった。

それは彼女の側仕えである芽友ヤーヨウもまた同様だった。

リー家から召使いによる伝言が明花ミンファ達の寝ていた部屋に届けられたのは、ほんの数分前。

…湯気で良く見えないが、明花ミンファは身体をお湯で清めているようだ。

芽友ヤーヨウはご主人の湯上がりをジッと待っていた。

「…お嬢様、あまりお眠りになられなかったのでは?」


「…それは貴女も同じでしょ、芽友ヤーヨウ?」


「仕方がありませんよ、まさか馬車の中でご両親から…」


芽友ヤーヨウ。」

「ここへの転移を求めたのは私です、例え私の両親から責められようと貴女への非の追及があれば私が証言し否定します。」


「ですが…」


「こうなった以上、私も覚悟の上です。」

…そう言いながらも明花ミンファは嗚咽を洩らした。

明花ミンファが身体を清め終わるにはもう少しかかりそうだ。


【…と、まあこんな感じだった。】

俺は先ほど美鈴メイリンに千里眼で見聞きした明花ミンファと両親の様子を説明した。


「…。」

美鈴メイリンは胸元で拳を握りしめていた。 

(きっと、きっと私がなんとかして差し上げますわ…)

(だから私にホントの事を…教えてくださいな…)

明花ミンファさん…」


「ねー、明花ミンファって誰えー?」


ヌッ!と美鈴メイリンの顔を姫様が覗き込んだ。

「ほわっ?!」

武に秀でた美鈴メイリンもこの時ばかりは隙だらけだったのか、思い切り驚いてしまった。


「ねーねー、そのコ?とどーいう関係なのー?」

興味津々そうに美鈴メイリンに顔を寄せる姫様。

「ちょ、ちょっと姫様、近いですわよ?!」


ガチャ

「あ…」


「え?」


「おや?」


美鈴メイリンのドアがちょっとだけ開いていた。


そこには親しげに顔を近づけ合っている?

美鈴メイリンと姫様の姿があった。


そして明花ミンファはそれを思い切り見てしまった。


ああ、そーいやぁ美鈴メイリンの部屋と明花ミンファの泊まった部屋ってわりと近い場所にあったっけな〜…。




ああ、まさかの鉢合わせ…

しかも誤解を呼ぶような展開に。

果たして?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ