表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
157/160

第百五十七話【訳あり令嬢と謎の人形】

お城は姫様の行方不明騒動。

美鈴メイリンの屋敷には謎の人影が。

果たして?


「すみませんリー家のご当主様、奥さま…そして、美鈴メイリンさん」

頭を下げたままその影の一人がこう告げた。

灯りを手に美鈴メイリンがその影に近づくと…。

「そのお声…貴女はもしや…。」

美鈴メイリンは困惑した。


お姫様騒動の中、何気に自分達の第五都市へと戻って行ったはずの明花ミンファの家の馬車。

それに乗って里帰りする予定だった明花ミンファ、そしてその側仕えを仰せつかっている芽友ヤーヨウ


何故かその二人が美鈴メイリンの実家であるリー家の屋敷の前に立っていたのだから。


「ど、どうしてまた私の御屋敷に?…まさか、ご両親と何か…」


美鈴メイリンから聞かれた事については芽友ヤーヨウが答えた。

「そ、その、事情についてはご家族に説明させていただきますのでまずは中に入れていただきたいのですけどよろしいでしょうか?」


「いや、急に言われてもだね…仮にも貴族の令嬢を向かい入れるのだからこちらとしてもそれ相応の準備と言うものが…」

当主は困惑した。

それは当然だろう。

前回の年末は美鈴メイリンがいきなりの帰宅に合わせた友人紹介でもあった為、仕方なかった。

しかし今回はあまり日も置かずのまさかの再来訪。

オマケに今回は美鈴メイリンすら考えてなかったのだから。

オマケに彼女は美鈴メイリンの婚約話しが持ち上がった相手だけに丁重に扱わねば、という意識が美鈴メイリンの両親にはあった。

当然の如く明花ミンファリー家の双方は困惑し、話しは膠着してしまう。


………ここで無言だった美鈴メイリンの母親が動いた。

文明花ウェン・ミンファさん、芽友ヤーヨウさん、私から貴女方に聞きたい事があります。」


普段なら言葉の最後に「よろしいかしら?」とか「よろしくて?」又は少し威圧的に「答えなさいな。」

とか続けるのだが、それも無い。

これはかなり厳しい質問の意が込められてる。

美鈴メイリンの母親の目力が強い。

真っ直ぐ見据えられ、明花ミンファはゴクリと唾を飲み込んだ。

それは芽友ヤーヨウも同じだ。

(お、お嬢様を、お守り、しなけれ…ば…)

そう考えたものの、身体が前に動こうとしない。


以前学院のステージで起きたキメラ騒動の前に芽友ヤーヨウ愛麗アイリーを庇って重傷を負い、しかもキメラに変えられてしまった事がある。

その時はただただ必死で身体が勝手に動いた。

けど今はまるで蛇に睨まれたカエルのようだった。

芽友ヤーヨウは肝心な時に主人を守れない自分が悔しく、動けない身体にもどかしさを感じていた。

「…取り敢えず話しの続きは玄関に入ってもらってからでいいじゃないか…」

当主がそう言うと

「いいえアナタ、これは私からこの二人への見極めですから邪魔しないでくださいな!」

その剣幕に当主は黙るしかなかった。

(彼女なりの考えがあるのだろう…)

当主は明花ミンファ芽友ヤーヨウが少し可哀想に思えて助け舟を出したのだが、妻に聞き入れてもらえなかった。


「…お二人とも、イザとなれば私が力をお貸しいたします、ですから安心して私のお母様からの質問にお答え下さいな?」

「二人なら…私が真の友と認めた明花ミンファさんならきっと大丈夫、ですわ!!」

美鈴メイリンは力の籠もった言葉で二人を応援した。

美鈴メイリンさん…」

「ありがとうございます。」

明花ミンファ芽友ヤーヨウ美鈴メイリンに対して頭を下げた。


「コホン!…そろそろよろしいかしら?」


「は、はい!なんなりと…。」

緊張の面持ちで美鈴メイリンの母親からの言葉を待つ明花ミンファ


「ではお聞きします。」


シーンと屋敷の門前は静まりかえった。

「貴女はウェン家の御息女、文明花ウェン・ミンファさん、でしたわね?」


「は、はい…私はウェン家の長女です。」



「単刀直入に質問します。」


「貴女、ウチの美鈴メイリンのお嫁に来られたのですわね?」


ズコーッ!!

真剣な表情で成り行きを見守っていた美鈴メイリンがいきなり顔面からコケると土煙を立てながら地面を高速でズザーッ!と滑って行った!!!


なんてことだ、おかげで往来の石畳の中央に溝が出来ちまった。

馬車の車輪がハマったり歩行者が足を取られて躓いたりしたら危ないぞコレ?

美鈴メイリン、早く土魔法で道路を直せやコラ。


名尾ナビ君たら、乙女の顔の心配が先ではございませんこと…?」

ムックリ顔を上げる美鈴メイリン

顔面へのダメージは全く無いな、面の皮の厚さは伊達じゃないな、流石だ!

俺は親指をグッと立てた。

何か言いたそうな顔しながら顔の土を払ってつかつかと母親の方に歩いて行く美鈴メイリン


「お、おか、お母様?明花ミンファさんに一体何を聞かれるのかと思えば…!」


「充分大事な事です!貴女と我が家、そして文ウェン)家の行く末に大きく関わる事なのですよコレは!?」


「そうだね、まあ…式は卒業まで待つとして後二年程度か…それまでにウェン家との親交を今以上に深めねばな。」

「もーう、御父役母親おとうさままでえ〜!」

しかしここで下手に明花ミンファとの婚約話しを否定してしまえば明花ミンファを傷付けてしまうだけにマトモに言い返せない。

結局地団駄を踏むしかない美鈴メイリンだった。



一方、明花ミンファ芽友ヤーヨウはと言えば美鈴メイリンの母親からの予期せぬ質問に呆気に取られているのだった。


……………。


そんなちょっとした騒動も収まり、明花ミンファ芽友ヤーヨウは無事、屋敷の中へ迎え入れられた。


バタン…。


屋敷の扉が閉じ、美鈴メイリン親娘はコクンと頷く。


「では明花ミンファさん、お疲れでしょうからお部屋へ案内致しますわ。」

美鈴メイリンが先導しますから、ついて行って下さいな。」  

愛麗アイリー、行きますわよ。」

「はいはいただいま!」

「心配ないからね芽友ヤーヨウ明花ミンファ様。」


「は、はい…。」


愛麗アイリーったら、こういう時はまず私の主人たる明花ミンファ様の方から声をかけて下さい…もう。」



明花ミンファ芽友ヤーヨウ美鈴メイリンの後をついていった。

「あ、そうですわ。」

愛麗アイリー、先に私の部屋に行ってらして。」

美鈴メイリンは何処から出したのか小さな人形を手渡した。

「はあ、…お嬢様、この人形…」

「頼みましたわよ。」

愛麗アイリーは少し首を傾げながらも芽友ヤーヨウにお休みを伝えてから一人で美鈴メイリンの部屋へと向かった。


………………。


「…さて、次は…。」

当主は再び扉を開けて玄関を出ると馬車の中を覗いた。


「…やられたか。」


「アナタ、どうされました?」

美鈴メイリンの母親である奥方は当主に尋ねた。


「確かに気配があったのだが…」

「早く見つけないとエライ事になるぞ。」

当主は頭を搔きながら息を吐き出した。


「では、やはり。」

奥方は美鈴メイリン達が歩いていった先に視線を向けた。

そして、こう零した。

「まあ、あのコなら大丈夫でしょう。」


長い廊下を歩いてゆくと、突き当たりに小部屋があった。

「すみませんが、今晩はコチラのお部屋をお使いになってくださいませ。」 

美鈴メイリンがドアを開くと、その中は小ぢんまりとしながらもきちんと掃除されていて、必要な物は大体揃っている部屋があった。


「ありがとうございます、すみませんいきなりお泊まりさせてもらって。」


「いえいえ、他ならぬ明花ミンファさんですもの。」

「何か事情がおありなのですわね?出来れば後で話せる範囲でお話しくださいませ…それではお休みなさいな、明花ミンファさん、芽友ヤーヨウさん。」


「え…もう行ってしまわれるんですか?」


「もう少しお嬢様とお話しして行かれませんか美鈴メイリン様?」


「すみません、名残惜しいですけどお話しはまた明日でよろしいですかしら?」


「い、いえご迷惑でしたら申し訳ありません。」


「そうですねお嬢様…美鈴メイリン様、お休みなさいませ。」


「ええ、お二人とも良い夢を。」

パタン。

美鈴メイリンは部屋に鍵を掛けておいた。

中には水の入った水差しや小さな浴槽やトイレもあったから一晩寝るぶんには不自由しないだろう。


「さてと…」


美鈴メイリンは早足で自室へと戻った。

「私が行くまで大人しくしててくださいな…!」


美鈴メイリンは何を焦っているんだ?


人影の正体は明花ミンファ芽友ヤーヨウでした。

どんな事情があったのでしょう。

そして美鈴メイリンが部屋に連れ込ませた人形とは?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ