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第百五十四話【騒動の黒幕の前に現れた純白の少女】

魔物騒動のドサクサに紛れて逃亡を図るモノが一人。

追え、美鈴メイリン

…城内に大量発生した魔物騒動も、約三十分後には沈静化した。


流石は中華王国の要となる王城。

四大名家と八大武家当主達が勢揃いしていただけでは無く、王城に集う精鋭揃いの兵士達が守っていたのだから魔物達を鎮圧するのにそう時間を必要とはしなかった。

 

魔物の死骸の殆どは時間が経てば黒い微粒子となって消えてしまい、片付けや浄化の必要はほぼ無かった。


戦闘で破壊された壁や床、天井は勿論のこと、調度品や照明等の備品類も四大名家の家の一つが復元魔法を用いて大体は直してしまった。

それでも広範囲に瓦礫は残ったのでその廃棄や復元に時間と労力は若干かかったのだが。


会議に参加していた王と王妃はまだ危険が予想されるため会議室から下がる事に。


「しかし、幾ら数を呼んだとはいえこの程度の魔物クラスで我々をどうにか出来るとでも思ったのだろうか魔族は?」


「それもですが…これだけ厳重な防御がされた城内へ如何にしてアレだけ大量の魔物を送り込めたのでしょう?」

四大名家、そして八大武家を加えた各貴族らは皆が頭を捻って考えていた。


「…さてと、どうやらこの騒動も収まりましたようですし、直に会議も再開される事でしょうから私はこの辺りでお暇する事と致しますわ。」

美鈴メイリンは両親に会釈をすると、会議の会場である大広間を後に…


「…あ〜、時に美鈴メイリン?」


「…はい?」


「状況が状況なだけに、くれぐれも単独行動は慎みなさい?」


「い、嫌ですわ父役母様おとうさま、何故私がそのような真似をせねばならぬのでしょう?オーホホホ!」

乾いた笑いをしながらその場を去る美鈴メイリン

「…貴方。」

美鈴メイリンの母も美鈴メイリンの行動を予想したらしく渋い顔をしていた。

「ああ…。」

(仮面の聖霊様、どうか美鈴メイリンをお護りください。)


美鈴メイリン父役母親ちちおやからそうお願いされたけど、正直俺に出来ることと言えばアイツが聖霊の仮面を装着した時に仮面の剣豪としての力を授けてやることくらいだ。

それに俺がアドバイスしたところでアイツは一度思い込んだらロクに聞く耳を持たないだろうしな。


さて、となると。


……………。


ここは城下の街並み。


「はー、食った食った!」

愛麗アイリーがパンパンに膨れた腹を擦っている。

愛麗アイリーったら、はしたないですよ?」

そう言う芽友ヤーヨウの方もそろそろお腹が苦しそうだった。


「二人とも、よくそんなに食べられますね?」

こんな二人のお守りを押し付けられる格好になった白百合のプリンセスこと闘姫ドウ・ヂェンはため息をついた。

(今頃どうなさってるのかしら、美鈴メイリンさん…)

(何事も起きてなければ良いのだけれど…)


どうやら彼女は飲食を控えているようだ。

というか目の前にいない美鈴メイリンの事が心配であまり食欲が無いのかも知れんが。


俺はそんな彼女に念話で声を届けた。

闘姫ドウ・ヂェン、俺だ聴こえるか?】


(え?仮面の聖霊様?)


【そんなかしこまった呼び名じゃなくて俺の本名である名尾ナビって呼んでくれないかなぁ。】


(わかりました、では…な、ナビ、さん?…ポッ///♡)

う〜ん!少し照れてるところが可愛らしい♪


…じゃ、なかった!


【一緒に居る二人には黙っておいて欲しいんだが、実はコッチで魔物が発生して大騒動だったんだ!】


(ええっ?!な、なんでソレをもっと早く教えてくれなかったんですか?それで現在どのような…)

【安心しろ、もう沈静化した…なにせ城内には四大名家と八大武家が勢揃いしてんだから。】

(そ、それもそうですね…)


【まあそれは片付いたから取り敢えずは良いんだ、それより美鈴メイリンの事で話しがある。】


(まさか、またあの人は何かを独断先行されてるのですか?)

【勘が鋭いな。】


【何かに気付いたらしく大広間を飛び出したんだ、詳しい事はこれから本人に聞くからコッチに向かってくれないか?】

(承知致しました!)


ふう、これで美鈴メイリンの暴走はなんとかなりそうだが…。

少し心配だからちょっとだけ三人の会話を聞いておこうか。


「お二人とも、私ちょっと用事を思い出しましたのでここで休憩されてから先に宿へ戻って下さい。」


「ふえ?闘姫ドウ・ヂェンさんお一人で何処へ?」

愛麗アイリー、食べてから喋りなさい…ダメですよ、闘姫ドウ・ヂェンさんはお美しい方なんですから一人で街中を彷徨かれては良からぬ輩が寄ってくるかも知れません。」


「ありがとうございます、そこは気配を消して移動するので問題ありません。」


「あの…つかぬことを伺いますけど、ウチのお嬢様…」


「な、何でしょうか?」


「ウチのお嬢様、また何かやらかしたのでしょうか?!」

ズコッ☆


闘姫ドウ・ヂェンさん、何故にそのように見事なリアクションをなされるのですか?」

芽友ヤーヨウが怪訝そうに闘姫ドウ・ヂェンに聞く。


まあそれは無理も無いな、今のは音だけでもかなり器用なズッコケ方をしたのが俺にまで丸分かりだったぞ闘姫ドウ・ヂェン

まるで昭和の演芸だ(笑)。


「…な、何もやらかしてないと思いますよ、…多分…?」

闘姫ドウ・ヂェンめ、ヨロヨロと立ち上がろうとしてるな。


「ホントですかあ〜?」

ああ、ジロッと闘姫ドウ・ヂェンを睨む愛麗アイリーの様子が瞼に浮かぶなあ〜。 


愛麗アイリー、ここは闘姫ドウ・ヂェンさんの事情を察してあげましょう。」

「ええっ?明らかに私達を置いてけぼりにする流れですよお?」


「ごめんさなさい、事情は後でお話ししますので…」


「う〜ん、………わかりました、闘姫ドウ・ヂェンさんは根が正直な方ですから悪気で私達を置いていくわけがありませんもんね。」


「そのかわり!」

愛麗アイリーはガシッと闘姫ドウ・ヂェンの両手を握った。


「お嬢様達の事を、お願いいたします…!」


愛麗アイリーさん…」


「勿論です、その為にこそ私は存在するのですから!」

闘姫ドウ・ヂェンは強く宣言した。


…………。



…等と城下にいる三人の様子に聞き耳を立てていると(別に聞き耳じゃなくて千里眼でも良かったんだけどな…何時でも美鈴メイリンが目的に辿り着いても良いように目だけはコッチ見てないといけなかったのだ)。


「…いましたわ。」


ん?誰がいたって?


意識を戻すと、美鈴メイリンは城の裏門からコッソリ出て行こうとする一人の女性を見つけた。


常春萌チャン・シュンモンさん!」


「…!」


魔物騒動のせいで兵士の殆どはまだ城内にいる。

だからこの裏門は今最も警備が手薄だ。


「きっとあの魔物の群れを陽動に、ここから立ち去ろうとするに違いないとヤマを張ったら案の定でしたわ。」


「あら何の事かしら?」

悪びれず常春萌チャン・シュンモン美鈴メイリンに振り返る。


「私は魔物の群れから避難するように両親から言われてこの城から退避するところでしたのに、酷い言いがかりをされるのですのね?」


「ならばせめて鳳華音フォン・ファインさんにくらい一言欲しかったですわね。」


「あら聞いて無いのかしら?私は以前あのコにフラれたのよ、もう向こうは何とも思ってないんじゃない?」


「それ、本気で言っておられますの?」


「本気よ?だって現在あのコは貴女にご執心じゃなかったかしら、黎美鈴リー・メイリンさん?」


「今はそうかも知れませんけど、でもあの方は…」


「お話しはそれだけ?じゃあ私は実家のある南部地方へ戻る事に…」


ビュッ!


瞬間、常春萌チャン・シュンモンの目の前に美鈴メイリンの姿があった。


それを常春萌チャン・シュンモンが認識すると、遅れて風が吹いた。

美鈴メイリンの動きで発生した空気の流れだ。


「…驚いたわ…確か中等部では疾風ハヤテ美鈴メイリンとか言われてたそうだけど、その通り名は伊達じゃなさそうね。」


「お褒めに預かり光栄ですわ…ではなくて!」

「まだコチラの話しは終わってませんわよ!?」


「貴女にはあっても私にはございませんの、それでは。」

常春萌チャン・シュンモンは通せんぼする美鈴メイリンの手を払い除けようと手を伸ばした。


「!」

その刹那、何かを察したのか美鈴メイリンは反射的に腕を上に上げた。


「…勘が良さそうね。」

ニコッと常春萌チャン・シュンモンが微笑む。

何かやろうとしやがったな。


と、思ったら既に彼女の手は美鈴メイリンの腕を掴んでいた。


「い、いつの間に…?」

美鈴メイリンが驚いていると、


クルン


「え?」


「それでは、ご機嫌よう♪」


何だ?世界が回って…


「宙に投げ飛ばされた?この私が?!」


クルリと身体を捻って何とか着地する美鈴メイリン

【お、オマエ凄いな?俺なんか平衡感覚が…】

(咄嗟に猫の習性を脳にダウンロードしたのですわ。)

【そんな事出来るのか?それ魔法や仙術とも違うだろ?!】


(どうもこの世界、というか私の能力は私の思いつきが直ぐ反映される仕組みのようなのですわ…言ってる私にも良くわからないのですけど。)


う〜む、確かに良く分からん。

ただ、これもゲーム主人公補正なのか?

或いは美鈴メイリンの能力はとっくにカンストしてたはずだが、未だ進化はし続けてるようだし…コイツの成長は底無しなのか?


「呆れたあ…今の空気投げ、初見で破られたのは貴女が初めてよ?」


…今、空気投げとか言ったな?

それって現実世界の柔道か合気道の技とかじゃなかったっけ?

(確か合気道だったと思いますわ。)


まさか、アイツは俺達と同じ世界から来た転生人?

(まだ断言出来ませんわ、この世界にも存在した技かも知れませんし、他の転生者から受け継いだ可能性もあり得ますから。)

(しかし…)


「空気投げ…確かそれは手を触れず相手を投げ飛ばす技だったはずでは?」


突如、俺達の頭上から凛とした声がした。


「え?誰?」

常春萌チャン・シュンモンが空を見上げた。


「ま。まさか?」

美鈴メイリンもその視線を追った。

 

流石だ、出番にはちゃんと来てくれた。


その上空には金髪をたなびかせる純白のドレスの美少女が飛んでいた。

そして頭上の小さな王冠と黄金の仮面、とくればそれはもう一人だけしか思いつかなかった。


「仮面の剣豪、聖錬潔白!」

「またの名を…」


『白百合のプリンセス!!』


バァーン!!と言う音と共に

真っ白な光の粒子が白百合のプリンセスの背後で弾けて拡がった。





底知れぬ不気味さを放つ常春萌チャン・シュンモン

そこへ飛んで来たのは戦いに於いて一番頼りになる美鈴メイリンの相棒、白百合のプリンセス!

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