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第百五十一話【王城内でのお嬢様達によるお正月の過ごし方】

新年会は当初の懸念が無かったかのように平和に進みます。

その翌日の会議には呼ばれなかった美鈴メイリン達は…。

さて、除夜の鐘…ならぬ教会の年越しの鐘の音を聞きながら一年の終わりを迎えた美鈴メイリン達は、結局早々に自室に割り当てられた部屋へと戻って朝に備えた。

コッチの世界では別に夜の12時を越えたから新年の挨拶、というわけでもなく「では皆様、また朝に。」

との華音ファインからの言葉を合図にパジャマパーティーというか夜の女子会?は解散となった。

女子会やパジャマパーティ?にワクワクしていた明花ミンファにはちょっと物足りなかったかも知れないな。

しかし新年の挨拶はきちんと朝を迎えてから改めて、というのがコッチの世界の常識らしい。


こうしてそれぞれが就寝し、今頃は初夢でも見てるに違いないな。

…あれ?初夢って元旦の夜に見るものだっけ?

まあ良いか。

どうせ夢なんて見ても覚えてなかったり見ない日も多かった。

一富士二鷹三茄子!なんて前の世界じゃ言われてたからそういう縁起が良い初夢なら見ても良いだろうけど、この世界ではそんな話し聞かないもんな。


そんなわけで本来霊体の俺は寝る必要もないわけなのだが肉体の記憶や感覚で眠気を催したので寝る事にした。


…。

…………。


チュンチュン♪


…おや?


いつの間にか朝日が窓のカーテン越しに差し込んでる。


「おはようございます名尾ナビ君。」


気が付けば美鈴メイリンが既に起きていて、聖霊の仮面を覗き込んでいる。

別に俺の姿が見えてるわけではないはず。


に、しても…なんか、こう…優しい顔してる?

えと…変なカッコしてないよな、普通のカッコしてるよな、俺?…まあ見えてるはずもないけど何か気になるなあ。

【おはよう、何かイイコトでもあったか?】


「いえ、こうして新年の朝を迎えられて胸が高鳴っていますの。」

「と、そうでしたわ…あけましておめでとうございます、仮面の聖霊様♪」


【お、おう…こちらこそあけましておめでとう。(あらたまってコイツからワザワザ仮面の聖霊様なんて呼ばれるとくすぐったいぜ…)】

結局、単に美鈴メイリンの気分が良いだけらしい。

何だ、何かあるのかと思ったぜ。


「今年もよろしくお願いいたしますわ。」


【ああ、こっちこそな。】

(何せこの百合ゲー世界攻略は他ならぬオマエに全てがかかってるんだからな、美鈴メイリン?)


(しかし今更なんだけど、ここホントに前世の百合ゲー世界なのかかなり怪しいんだが…)

(そろそろあの時の神様的存在に聞いてみたいんだが…連絡手段が無いから向こうから来てくれないと無理なんだよな…)

ぶっちゃけ神様的存在には聞きたい事があるから、早く会いたいんだが。

…あ、そういやあの人も女性だったっけ。

どんな顔や身なりだったかな〜、容姿に関しては実はあまり良く覚えてないんだ。

でもかなりスタイルは良かったような…♪


「さて、ではそろそろ身支度を整えますから!」

バサッ!

【ぶえっ?いきなり何しやがる!】

美鈴メイリンめ、聖霊の仮面にシーツかけやがった。

これは着替え姿を見るな、という意味だろうな。

もっとも、千里眼能力のある俺にとって無意味な抵抗なんだが…。

しかし仮にもアイツは前世では親友だった元オトコなのだ、間違ってもコッチから見たいという気は起きないぞ、ウン。


…でも中身が白百合のプリンセスそのものだったゲーム世界の美鈴メイリンなら是非見たいと思ったかな…。

おおっと、やはり外側だけ美少女ヒロインの美鈴メイリンでも中身が前世オトコの親友だとハッキリ言って見る気が失せるわい!


…で、着替え終わった美鈴メイリンは聖霊の仮面を相変わらず胸元に入れて(ここだけは素直に役得と感じる俺)仲間や家族達と共にゾロゾロと大広間へと向かった。

衛兵達にガッチリガードされ、廊下や壁、天井にまで魔法が仕込まれている。

これは来客を護る為でもあるだろうけど、来客の中に紛れた不届き者から王族を護る為の守護でもあるのだ。


つまり見方を変えれば八大武家である美鈴メイリン達ですら監視対象として護送されてるに等しいという事だ。

まあそれくらい徹底しないと事が起こってからでは遅いもんな、仕方ない。


大広間では来場していた招待客で賑わっていた。

目に止まった貴族達と新年の挨拶を交わし、美鈴メイリン達も紹介された。

そのうち直に王族も現れ、現国王(勿論女性)と王妃、お姫様が正面の玉座に着席。

すると貴族達も近くのテーブルへ家族ごとに集まり着席。

そして王様の挨拶から新年会は開始された。

「皆のもの、新年あけましておめでとう。」


………そこからの王様の話しが長く、やっと乾杯、食事を交えた歓談、余興ではステージでダンスを踊る者もいればちょっとした芸を披露する者まで現れ、場を盛り上げてくれた。

時間が経過するにつれ各テーブルから仲の良い?者達で集まるようになると美鈴メイリン達は月夜ユーイーやここに招待された他の貴族の令嬢達と一緒に楽しい時間を過ごした。

その様子を常春萌チャン・シュンモンは遠目に眺めていた。

時々、鳳華音フォン・ファインに対して意味ありげな視線を送っていたせいで華音ファインの言動がぎこちなくなったりしたものの、それ以外特に問題らしい問題も起きなかった。


何かあるとすればここか?とも思ったけれど結局のところ、特に何事も無く新年会は終了した。

翌日はこの面々で会議が行われた。

これはその朝の朝食時での出来事。

城の大食堂で招待客達は朝食を摂っていた。


「私達もその会議に参加致しますのね父役母おとうさま様?」


「いや、美鈴メイリン達はまだ学生の身分だし参加する必要無いから、若い女子だけで遊んでなさい。」


「そうですの?私達学生が招待された理由はてっきり学生側の意見も参考にしたいとかだと思いましたわ。」


「ハハハ、卒業後招待されればちゃんと君達にも会議に参加してもらう事になるさ。」


「待ち遠しいですわ…ところで、ウェン家のご両親のお姿が先ほどから見当たりませんが…。」


「ウチの両親なら先に大臣らと重要な話しがあるとかで早めに食事を終わらせ席を外されました、私は話しの内容を教えるわけにはいかないと連れて行ってもらえなかったんです。」

また少し元気無さげな雰囲気だな。


「そうですの…では明花ミンファさんも私達と共に参りませんか?」


「はい、是非ご一緒させてください!」

明花ミンファの顔が綻んだ。

美鈴メイリン明花ミンファにとっての良薬なのかな?

そんなわけで皆で連れ立って庭園へと向かう途中。


「あらみんなお揃いね?」

そこへ声をかけて来たのは月夜ユーイーだった。

月夜ユーイーさんは会議に参加されないのですか?」

「ええ明花ミンファさん、私は政治の話しに関してはまだチンプンカンプンですもの。」

「しかし軍備…魔族への防衛に関しては話しを聞くだけでも重要ではございませんこと?」

「それならどうせ両親から聞かされる羽目になるから今でなくても良いわ。」


「ええと…どうも私が抱いてた中央貴族学院の元生徒会長のイメージとちょっと違う感じが…。」

華音ファインが少し戸惑っている。

大方高貴で欠点のない生真面目なお嬢様なんてイメージでも月夜ユーイーに持ってたんだろうな。

昨日は周りに他の大人達もいたので月夜ユーイーも自制してたんだろう。

「あら期待外れでゴメンなさい?因みに昨日は少し猫被ってたのよ、両親や王族、それに他の貴族の手前で本性出すわけにはいかないじゃない?」

あ、やっぱり。


「そうはおっしゃいますけど、私は普段の月夜ユーイーさんも充分貴族の御令嬢らしさがあると思いますわ。」


「フォローありがとう、美鈴メイリンさん♪やっぱりアナタって良い子よね♡」

月夜ユーイーに頭を撫でられ、美鈴メイリンは頬を赤くした。

それを見ていた明花ミンファ華音ファインの二人は別の意味で頬を赤くさせ、ついでに膨らませた。


「そう言えば華音ファインさん、貴女の従者はどうされましたの?」


小雀シャオ・チュイエですか?さすがに彼女を王族の屋敷での公式の行事への参加はさせられませんので部屋で待機させております。」


「そうですの?ではあまり私達だけで時間を取るのは…」


「いえ構いません、これは彼女への休憩時間でもありますので。」


「でしたら私達も存分に楽しみませんといけませんね♪」


「ですね、明花ミンファさん(笑)。」


華音ファイン明花ミンファとも打ち解けて来ているようだ。


「それにしても…」

キョロキョロと周囲を見渡す月夜ユーイー

見ると、庭園にはかなりの白百合が咲き誇っていた。

「まあ…白百合がこんなに…。」

「まるで私達の中央貴族学院の校庭のようですね、美鈴メイリンさん♪」

「…そう言えば、私も試合ついでに中央貴族学院も見ましたけど、確かに校庭一面に白百合の花が咲いてましたね。」

フォンさんも見られました?あの白百合は去年、美鈴メイリンさんが一人目の仮面の剣豪さんと共にフレイムドラゴンを倒した場所に植えられたんですよ。」


「まあ、そんな事が…?」


「…あ、アハハ…照れますわ…(汗)。」


「じ、実は私が相手したのは途中まででして、結局のところ仮面の剣豪さんがフレイムドラゴンを倒したのですけど…。」

頬をポリポリ掻きながら明後日の方角を見つめる美鈴メイリンだった。


しかしその時の仮面の剣豪の正体が美鈴メイリンだと知ってしまった明花ミンファ

彼女はこの場では唯一仮面の剣豪(のウチの一人、電光烈火)が美鈴メイリンだと知る人物という事になる。

それだけに少し複雑そうな表情で華音ファイン月夜ユーイーの顔を交互に見ていた。


「そういえばそれから暫くしてから、今度は別の仮面の剣豪であらせられる白百合のプリンセスがご降臨されたのです、我がアン家の屋敷に!」


「白百合のプリンセスって月夜ユーイーさんのお屋敷に初めて現れたのですか?」


「そうなのです、私は仮面の剣豪に二度も助けられたという稀有な経験を持ってるんです!」

月夜ユーイーは自慢気にエッヘン!と胸を張った。

元から月夜ユーイーは巨乳なだけに胸を張ると余計バストトップが強調される。

青少年には目の毒だが、幸い百合ゲー世界のここには健康な男子はいない。

…仮面の聖霊たる俺以外は…。


…と、思ったら


ヒソヒソ…


(見てみて、あのアン家のお嬢様、とっても胸が大きいわ♪)

(まあ…育ちが良いのは中身だけでなく身体つきまでそうみたいね(笑))


なんかお城の召使い達が好色そうな目で月夜ユーイーを見ながら噂していた。

…ありゃあ、やっぱり百合ゲー世界のここでは女のコ同士でもそういう目で見ちゃうのね…。

因みに胸の大きさだけなら明花ミンファだって負けてないと思うぞ。

華音ファインは…人並み?かな。

えと…後一名についてだがアイツの名誉の為に伏せておこう。

この話しの流れで変に呟くと後が怖いしな。


(ねえ明花ミンファさん、月夜ユーイーさん達は仮面の剣豪の話しで盛り上がってますから私達は私の部屋で話しませんこと?)


(え?!ふ、二人だけで?)


(さあさ、気付かれないうちに(笑)!)


美鈴メイリンは強引に明花ミンファの手を引っ張っていく。

なんだ?

これはもしや良い傾向?


そうとも知らず月夜ユーイーは仮面の剣豪の話しを盛ってマシマシにして華音ファインに聞かせるのだった。


それに華音ファインもメッチャ食い付いた。

「それでそれで?不可視擬フカシギさんは?!」


「落ち着きなさいな、まだまだお楽しみはこれから♪」


二人は美鈴メイリン明花ミンファがいなくなってるとも気付かず仮面の剣豪話しに没頭するのだった。



美鈴メイリン、何とも大胆な行動に!

これは明花ミンファとの仲が進展するイベント発生か?


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