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慈悲深い仮面の剣豪は、実は血を見るのが苦手な中華風TS美少女です!  作者: 長紀歩生武
第一章【高等部入学編】
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第十五話【アン・ユーイー先輩からの招待状】

ドラゴンとの戦いも終わり、やっと一息ついた面々。

そんな中で新たな爆弾を投下する安月夜アン・ユーイー

彼女は周りを引っ掻き回す星の下にでも産まれて来たのだろうか?


学院内でのフレイムドラゴン出現事件。


………正確には安月夜アン・ユーイー先輩の身体に彼女の家庭教師から修業と称してフレイムドラゴンなどという強大な霊獣を宿らされたため、范燕巫ファン・イェンウー先生が彼女からフレイムドラゴンの霊体を現実世界に具現化させる事でアン先輩の身体から引放した、というのが事実である。


そのためそのドラゴンと戦った美鈴メイリンも一貫して魔術を駆使し続けたファン先生も魔力の消耗が激しく、比較的魔力の消耗の少ない明花ミンファから学生寮で少量の魔力補充を受けていた。


「ふうん。当の私だけが寝ている間に、そんな大変な事が起きていたのですねえ?」


事件後で目が覚めたアン先輩の方は、魔力を吸いとられていたドラゴンが居なくなりすっかり気分は良くなっていた。

彼女もまた、ドラゴン退治の時は勿論ついさっきまでも明花ミンファから魔力補充を幾らか受けていたので既に元気になっていた。


むしろ戦いで魔力を使い過ぎた美鈴メイリンの方がヘロヘロだった。


「と、とにかくアン先輩が無事に元気になられて良かったですわ。…アハハハ。」


「何言ってるんですか?美鈴メイリンさんがこんなにヘロヘロなのに何も良くなんかありませんよ!」


明花ミンファがプンプンしながら美鈴メイリンに魔力を送り続けている。


「まあまあ。彼女も私もこうして君のおかげでかなり回復出来たんだ。あとは一晩寝てれば普通に過ごす分には問題無いさ。」


「それよりいいんですか明花ミンファさん?そろそろ貴女も魔力供給を止めないと、今度は貴女の方が…。」


「大丈夫です!私はこう見えても魔法医師の見習いなんですよ?患者のために倒れるよう…では…、あ、あれ…?」


力こぶを作って元気をアピールしていた明花ミンファの身体がフラっと揺れた。

軽い貧血症状に近い感じだった。


「ほら、謂わんこっちゃないですわ!」

起き上がった美鈴メイリンが思わず明花ミンファを支える。


「大丈夫ですか、明花ミンファさん?」


「え、ええ。ごめんなさい、知らずに無理してたみたいです。」

明花ミンファの顔がポーッと赤くなった。


釣られて美鈴メイリンの顔も真っ赤になる。


明花ミンファさん、貴女の家系の治癒魔法や回復魔法を基にした魔法医学の素晴らしさは私も聞いております。」

「ですが、一人の人間の魔力には限度があります。どうか、あまり無理をなさらないで下さいな。」


「め、美鈴メイリンさん………はい。」


二人が見つめ合っているとファン先生からコホンと咳払いが聞こえてきたので慌てて離れた。


(先生の頬も赤くなっており、少しだけ嫉妬してるのかも知れませんわね。)


だが仮面の聖霊からは何も言ってこないし、まだ安全圏内だろう。


(とにかく、あまり先生の目の前ではイチャイチャしない方がいいですわね、特に明花ミンファさんとは、そんなつもりは無かったのに気が付いたらそうなってしまっていた事が多いので今後は気を付けねばなりませんわ。)


しかし美鈴メイリンがせっかくこのように決意も新たにしているというのに、既に第三の矢は放たれていたのだった。


「皆さん、この度は私のためにどうもありがとうございました。」

深くお辞儀をする安月夜アン・ユーイー

中華風に両手拳を胸の前で合わせていた。

それに釣られて皆もお辞儀で返す。

同じように両手拳を胸の前で合わせて。


「特に美鈴メイリンさん?貴女には命懸けでドラゴンと戦っていただいたそうですね。」


「いえいえ、私には命を懸けてでも人々の命を守らねばならぬ使命がございますので。」


「でも私としては貴女や皆さんにお礼がしたいのです。」


「そこで今度の休日、私の屋敷に招待いたしたいのですが、いかがでしょう?」


「せ、先輩の、お屋敷に…ですか?」

(こ、こんな綺麗で謎めいた雰囲気の先輩と、お近づきに?)

トクンと美鈴メイリンの胸の鼓動が高鳴った。


隣で聞いていた明花ミンファも一瞬嬉しそうな表情を見せたが、隣の美鈴メイリンが心ときめかせているような表情になっていたため表情に少し淋しそうな影を落とすのだった。


一方、ファン先生は。

(これは、もしかしたら彼女にドラゴンを憑依させた家庭教師とやらに直に会ってその真意を確かめるチャンスかも知れない。)

今回の事件の裏側や真相を暴く事に気持ちが向いていた。


美鈴メイリンの方は事件自体の大体の事は既に知っていたので特に気構える事もなく、(ウフフ。あの先輩、ゲームプレイの頃に二週目での攻略対象に決めてましたのよねえ。)


(果たして、彼女の生活や裏話など、どんな事を知れるのかしら?)

と、ゲーム攻略目線でウキウキワクワクしていた。


だが、そんな事を知らない明花ミンファはまたしても美鈴メイリン安月夜アン・ユーイー先輩に心を奪われそうになっているのではと、そんな気持ちで切なさを募らせているのだった。


「また後日、正式な招待状をお送り致しますから、楽しみに待っていてくださいな。」

安月夜アン・ユーイーはそう言って三人を見送った。

(本当に楽しみですわ。美鈴メイリンさん♪)

悪戯っぽく微笑む安月夜アン・ユーイー




安月夜アン・ユーイー先輩のいる三年生の寮からそれぞれが自室へと戻った。



「はあー………。」


「どうされましたか、お嬢様?」


宋芽友ソン・ヤーヨウが疲れたようにテーブルへと突っ伏した主、文明花ウェン・ミンファのカップへとお茶を注いだ。


「ねえ芽友ヤーヨウ、今度の休日にアン先輩からファン先生や美鈴メイリンさんと一緒にお礼と称してお屋敷に招待していただける事になったのですけど。」


「素晴らしいですね。それが何で心配事になるのですか?」


「え?私心配そうにしておりましたか?」


「はい。お顔に書いてございます。」


「え?!嘘!」

自分の顔をペタペタと触りまくる明花ミンファ


「嘘です。」


「ええー?!芽友ヤーヨウ、酷いです!」

プンスカする明花ミンファ


「ですが、何かお悩みが有ることは本当ですよね?」


「う…………それは。」


美鈴メイリン様の事でございますか?」


ギクッ!という音が鳴りそうな明花ミンファの表情は実にアニメチックな描写になっていた。


「わ、わたわたた、私が、なな何で、め、美鈴メイリンさんの事、で?!」


物凄くテンパるその様子が美鈴メイリンの事で悩んでるぞと雄弁に語っている。


「更に、悩みの原因は安月夜アン・ユーイー先輩であるとお見受け致しました。」


「あ、貴女は人の心が読めるのですか?!」


「お嬢様を見てれば魔術や魔法を用いらずとも、直ぐにわかります。」

そう言って芽友ヤーヨウはクスリと笑った。


恥ずかしそうに人差し指同士の先をツンツンとくっ付けたり離したりする運動を繰り返す明花ミンファ


「そんなお嬢様に、私からの助言でございます。」


「な、何かしら?」


「堂々と、ライバル宣言すればよろしいのです。」


アン先輩に、こう言うのです。」


『私も美鈴メイリンさんが大好きです、こうなったらお互い抜け駆けせずにどっちを好きになってもらうか勝負です!』


「…と、こんな具合に。」


ごくっと息を飲む明花ミンファ

「わ、私に、言えるかしら…?」


「お嬢様、ここで勇気を出さねば眠れない夜を過ごす日々が続きますよ?」


「す、少し、考えさせて…。」


と、寝室に入るなりパタンとベッドに倒れる明花ミンファ


そのまま眠ってしまった。


「クス。お嬢様、さすがに今日ばかりはお疲れでしたものね。」


「急がなくとも、グッスリ眠れる間はまだ良しとしますか?」


そっと明花ミンファの身体に毛布をかけると、寝室を後にする芽友ヤーヨウだった。


一方、美鈴メイリンは。


「いいな、いいなあーお嬢様ばかり!」


「何をそんなに羨ましがるのですか、愛麗アイリー?」


「だって、アン先輩と言えば御実家は凄い豪邸なのでしょう?」


「お食事や飲み物だって、きっと物凄く美味しいに決まってますよ!だから羨ましいんですー!」


「貴女は食い気ばかりですか?」


「いいえ、色気の方ならお嬢様と1日でも早く、そういう関係を望んで………!」


「待った待ったー!それ以上抜かしやがりますと、貴女をこのお部屋から外にぶん投げなくてはならなくなりますわよ!!」


「ぶん投げられるのが怖いくらいでは、お嬢様を襲えませんよ!」

如何にも押し倒すぞ、的に両肘を直角に曲げて指を折り曲げた両手を翳す愛麗アイリー


それに対して

「やる気ですか?来るなら来なさい変態!」

中国拳法の構えを見せる美鈴メイリンだった。


ジリジリと位置を変えながら互いに唸り声を叫び、動きも加えて威嚇し合う二人。


「キショアアア~ッ!!」


「ハチョオオ~ッ!?」



と、そこへ。


ドンドン!

壁やドアが一斉にノックされた。


『ちょっと美鈴メイリンさん、静かにしてくださるかしら?』


『もう夜も遅いんです!美容のため安眠妨害はご遠慮願いますわ!』


「す、すみませえん。」


「ホラ、貴女が変な事言うから!」

愛麗アイリーの頭にゴツンと軽くゲンコツを落とす美鈴メイリン


「じゃあ、何かご馳走を持って帰ってきてくださいますか?」

ブスッとお土産をねだれる愛麗アイリー


「う、ううーん。…しょうがありませんね。」


「ただし、期待はしないでくださいな。」


「期待します、約束ですよ?」

悪戯が成功したガキ大将のようにはしゃぐ愛麗アイリー


「こ、こら、静かにしなさい!また怒られるでしょ?」


「はい、静かにします!おやすみなさいお嬢様ー。」

そう言うなり寝室のベッドで横になってしまう愛麗アイリーはいつまでもニタニタしていた。


「全くもう。」


御者なら玄関前までくらいは一緒に来れるはずなのだが、それでも中に入れるか否かでは大きな差がある。


早く社会のしきたりや法がもっと寛容にならないものかと美鈴メイリンは考えるのだった。


(それはそうと、アン先輩のお屋敷へのお誘いはやっぱり魅力的ですわね。)


お屋敷や料理にも勿論興味はあるのだが、

当日のファン先生やアン先輩がどのような衣装で着飾ってくるのかを考えるだけで楽しい。


(それに、明花ミンファの衣装、どんなものになるのかしら?)


この時、知らずに明花ミンファの事を心の中でとはいえ呼び捨てにしていた事を、まだ美鈴メイリンは気が付かなかった。


そして色んな明花ミンファの姿を想像するうちに、そのうち肌の露出した水着姿まで思い浮かべてしまった。

(!い、いけません、ちょっと想像が飛躍し過ぎましたわ!)


ハアハアと荒くなった息を整える美鈴メイリン


(や、ヤバいです。危うく愛麗アイリーと同様の変態な思考に至る所でしたわ。)


こんな変な事を考えるのは、きっと疲れ過ぎだからだ、それに明花ミンファに超近距離で接触する時間が多かったせいだ、そう美鈴メイリンは結論付けた。


(また変な事を考える前にさっさと寝てしまいましょう!)


美鈴メイリンはパジャマに着替えて歯を磨くとベッドへと潜り込んだ。




そして翌日。


「お早う美鈴メイリン君、明花ミンファ君。」


ファン先生、お早うございます。」


「お早うございますファン先生。」


「実は、早速今朝方に彼女から届けるように言われたんだよ。」


そう言われて思わず互いに顔を見合せる美鈴メイリン明花ミンファ


(そんなまさか?)

幾ら何でも早過ぎやしませんか?二人はそう思った。


「早過ぎ。君達もそう思うだろ?実は私もそう思ったんだ。」


「と、言うことは、」


「まさか…。」


「ああ、来たんだよ。わざわざ私の部屋を訪ねてね。」


ファン先生から手渡された安月夜アン・ユーイーからの招待状の中身には、確かにこう書いてあった。


【今週の金曜日の夕方、お迎えの馬車を向かわせます。】


【楽しみにお待ち下さい。】


安月夜アン・ユーイー


【追伸・お泊まりになれるよう、替えの下着とパジャマをご用意くださいませ。】


アン君からの招待状、だ。」

軽くため息を付くファン先生。


これには美鈴メイリン明花ミンファも乾いた笑いを浮かべるしか無かった。


(どんだけ必死なのですか、あの先輩はー?)


(め、美鈴メイリンさんを、盗られちゃいますよー?!)


ただ、二人は自分達それぞれが全くの違うベクトルで反応している事にまでは気が付かなかったのだった。


果たして安月夜アン.ユーイーのお屋敷とは、楽園なのか、はたまた魔窟なのか?



ただでさえ明花ミンファにとっては悩みの種となる安月夜アン・ユーイー先輩。

そんな彼女のお屋敷に招かれて、それが無事に終わるとはとても思えません。

果たして、美鈴メイリン達をどんな事が待っているのか?

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