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第百四十五話【鳳華音(フォン・ファイン)を狙う敵とは?】

美鈴メイリン達はフォン家の歓待を受けます。

その夜、小雀シァオ・チュエ華音ファインの部屋へ連れていかれます。

 

突然な華音ファインからの夜のお誘いにドギマギした美鈴メイリンは一旦話しを逸らす。


「そうでしたわ、フォン家の皆様にお土産がございますの。愛麗アイリー、アレを。」


「はい、お嬢様。」


美鈴メイリンは馬車の荷台から父役母親ちちおやのマジックバックを愛麗アイリーに持ってこさせて受け取ると、中から焼き餅をドッサリ取り出した。

「王都の屋台で売っていた焼き餅です、皆様でお召し上がり下さいな。」


「おお、これは美味しそうだ。」


「しかし残念ながら我が家では餅は新年を明けた正月以外は口にしない事になっておりましてな、年明けまで保管させていただこう。」

フォン家当主は自分のマジックバックに美鈴メイリンの手の上にある大量の焼き餅をサッと投げ入れた。

この人もかなりの腕力と魔力を持ってるんだな。


歓待の宴が終わり辺りが暗くなる頃、用意されたそれぞれの部屋へ案内された美鈴メイリン達は個室毎に用意された小さな浴室で身体を清めてから寛いでいた。


寝間着はそれぞれが持って来た物を着ていた。


「あまり荷物も持って来ませんでしたし、誰かの部屋に遊びに行こうかしら?」

等と美鈴メイリンが独りちると。


コンコン。


美鈴メイリン様、先程お嬢様からお誘いした通りお部屋へご招待致します。)


「え?その声は…」


…………………。


「ようこそ、私の部屋へ♪」


「いらっしゃいませ、美鈴メイリン様。」


美鈴メイリン小雀シァオ・チュンに誘導されるがままに部屋へと通されていた。

そしてその部屋には鳳華音フォン・ファインがいたのだ。


「は、はあ…」


「さあ、こちらにいらしてください。」

そう言うと華音ファインはベッドに腰掛け、自分の隣をポンポン、と叩いた。

隣に座れという事なのだろう。

美鈴メイリンは従者である小雀シァオ・チュエの方を見たが、彼女は目を閉じたまま何の素振りも見せない。

そして。

「どうぞ、御随意のままに。」

と、小さく呟くように喋った。


(え?え?)

(この流れは…まさか?)

鈍ちんの美鈴メイリンもこれにはヤバいと感じたらしいな。


「え、えと…お話しだけなら立ったままお聞きしますわ!」


「長話しになるかも知れませんのでこちらへ来ていただけませんか?」


「そ、そーですか?」

ぎこちなく答える美鈴メイリン

ギギ…と錆びついてるかのような動きで辺りを見回すと、急に錆がとれたように素早く近くの椅子に腰掛けた。

「で、ではこちらに座らせていただきますわ。」

着席したら安心したのかホッと息を吐いた。


チュエ?何でそこの椅子とテーブルを片付けておかなかったの?」

ギロッと華音ファイン小雀シァオ・チュエを睨んだ。


「あの、突然お嬢様から言われたもので…」

「段取りも無く思いつきで言われてはこちらも困ります。」


「あ、あら、そう?」

「少し忙しくて連絡不足だったようね。」

明後日の方を見ながら白々しく言い逃れする華音ファインだった。


「あの、そちらの事情はともかく私を呼んだ理由をお聞かせ願えませんかしら?」


「そんなの決まってるじゃありませんか、貴女と楽しいひと時を過ごしたいから…」


美鈴メイリンはジトッとした目で華音ファインを見た。

「もう前置きはいいですから本題に移りませんこと?」


この美鈴メイリンの言葉と表情に華音ファインは目を伏せ、はあ…と吐息を洩らす。


「…ええ、では本題を話しましょう。」


チュエ?」


「はい、お嬢様。」


小雀シァオ・チュエはバサッと巻物を開き、その中身を美鈴メイリンに見せた。


「…これは、脅迫状?…いえ、犯行予告…?」


「ええ、それによればこの敷地内の塔の安全と引き換えに私の身柄を渡す事を要求しているようですの。」


「塔…館に来る前に見たあの塔ですわね?」

「しかし何故貴女を?」


「わかりません。」

「ただ犯人なら目星があります。」


「お心当たりが?」


「私は以前求婚されたのです。」


「!?」

「そ!そのお相手とは?」


「…南学院生徒会長、です。」


「!!」


「しかし南学院と言えば…確か新血脈同盟の…」


「ええ、もしかしたら北学院の私を取り込む事で北部地方への影響拡大を目論んでいる可能性は推測出来ます。」


「政略結婚狙いですか。」


「でしょうね。」

「求婚された時はそこまで考えが至りませんでした、なんせ去年の学院代表対抗戦決勝トーナメント中の出来事でして、まだその頃は新血脈同盟の名前等聞いた事がありませんでしたから。」


「きょ、去年のお話しでしたの?」


「あまりに綺麗な御方でしたので危うくオッケーしそうでしたけど、断って正解でした♪」

「まだフリーなおかげで美鈴メイリンさんをゲット出来そうですもの♪」


「あ、あはは…」

さり気なく急愛されて渇いた笑い声の美鈴メイリンだった。


「にしても、それだけの御方からの求婚を、その時は何故お断りに?」


「全く予想外な事を言われてしまい、その場ではパニクってちゃんとお返事出来ませんでしたの。」


「で、後日改めてお断りの返事を封書にて届けました。」

「頭や気持ちの整理が着かず、お気持ちに応える事が出来そうにありません、と。」


「で、向こうは振られたと思われたのですわね。」


「それが動機となりえる彼女が一番怪しいと私は考えてます。」


「しかし塔が狙われてるのなら、結界が邪魔な魔族という事も…」


「あら、そもそも魔族は結界のおかげで塔に近寄る事すら出来ませんからそれはあり得ませんよ?」


「となると、他には…」

「そう、例えば、新血脈同盟とかは?」


「新…血脈同盟…。」

「それこそ南学院生徒会長…常春萌チャン・チュンモンが掲げる思想の集団です!」


常春萌チャン・チュンモン…南学院生徒会長…ああ、確かあの常夏海チャン・シァハイさんのお姉様でしたわね?」


「そう、あの女の姉…姉妹揃って忌々しい…!」


「ま、まだお姉様の方が今回の犯人と決まったわけでは…」


「いいえ彼女に決まってます!そして私をモノにしてあわよくば北部都市と北学院を新血脈同盟の勢力下に置きたいんですわ、きっとそうです!」

興奮した華音ファインは一気に捲し立てた。

それを「どう、どう。」と、主人をまるで馬の如く宥める従者の小雀シァオ・チュエだった。


「はあ…嫌な予感はしてましたけど、やはり新血脈同盟絡みの可能性が出てきましたわね…。」

美鈴メイリンはため息をつく。


「それで、私に以前話されていたボディーガードとやらの件とはこの脅迫状…というか振られた相手からの腹いせ疑惑から貴女を御守りしろ、という事と理解すればよろしいのですの?」


「早い話しがそうです。」

まだ憤りで興奮が治まらずフーフーと鼻息を荒くしている主人に変わって従者の小雀シァオ・チュエが答えた。


…いや、全然早い話しじゃないだろ説明長過ぎ。


「で、具体的には四六時中私や仲間が貴女に張り付いてればよろしいのでございますの?」


「えと…」

ようやく落ち着いて来た華音ファインが思考を整理する。


「そうね、館の外への外出時はそうなるかしら。」

「取り敢えず屋敷内では美鈴メイリンさんと…仮面の、剣豪さん?でしたっけ、そのお二人に付いていただけたら充分だと思うわ。」


「あ、お部屋では美鈴メイリンさんとお嬢様のお二人だけにします、勿論私も席を外させて貰いますので…」


ササ…と部屋の外へ出ようとする小雀シァオ・チュエ

「ではごゆっくり♪」

口に手を当てクフフ、と笑う小雀シァオ・チュエ


華音ファインは顔を真っ赤にする。


美鈴メイリンは慌ててドアへと近寄る。

「そ、そんな気の回し方は結構ですわ!」


と、後ろからトンと小雀シァオ・チュエは背中を押され、美鈴メイリンの腕の中へすっぽり収まる。


「やれやれ、心配になって来てみればヤッパリこういう展開でしたか。」


部屋の中へ闘姫ドウ・ヂェンを筆頭にゾロゾロと美鈴メイリンの仲間が入って来た。


「あら皆さん、聞いてらんたんですの?」


「すみません、美鈴メイリンさんがお部屋にいらっしゃらないので気になってヂェンさんに探ってもらったんです。」

闘姫ドウ・ヂェンの背後からヒョッコリと明花ミンファが顔を出した。


が、美鈴メイリンの腕の中へスッポリ収まった小雀シァオ・チュエを見るや、見る見る不機嫌そうな表情へと変わる。


「あ!」

明花ミンファの不機嫌そうな顔を見てやっと小雀シァオ・チュエを引き剥がす美鈴メイリン


が、時すでに遅し。

仲間達は勿論、小雀シァオ・チュエまでが華音ファインからジト目で見られていた。


「こ、これは事故ですの!」

「そ、そうです美鈴メイリン様のおっしゃる通りで…。」

2人は焦って弁解した。


「はあ…まあ、元はと言えば私が小雀シァオ・チュエさんの身体を押したせいですから確かに事故ですね。」

闘姫ドウ・ヂェンは努めて理性的判断をした。

まあそれが事実なんだけど周りはみんな女性しかいないだけに中々彼女らの…特に明花ミンファ華音ファインの2人は収まりが付かないようだった。


この後、美鈴メイリン明花ミンファの部屋へ仲間達に連行され、華音ファイン小雀シァオ・チュエにブツブツ文句を垂れながら不貞寝したようだ。


その夜。


「あら?」


「あ…またお会い致しました。」


何と、眠れぬ夜の廊下で件の美鈴メイリン小雀シァオ・チュエがバッタリ出会ってしまった、


「さっきはお互い災難でしたわね。」


「全くです、私はお嬢様の為に気を利かせようとしただけでしたのに…」


「オホホ…」

「それで、華音ファインさんは?」


「散々私に文句言われてから直ぐ寝てしまわれました。」


「私は明日以降常に全員で行動するように皆さんから説教されましたわ。」


2人は廊下の窓に腕を置いて話しをした。


「さて、あまり長くこうしているとまた誰かに見られたりしたら面倒な事になりますわ。」


「そうでございますね。」

クス…と小雀シァオ・チュエは微笑んだ。


「ええと…小雀シァオ・チュエ一つだけお聞かせ願えますか?」


「はい、何でございましょう?」


常春萌チャン・チュンモンさんの姿を昨年以降お見かけした事はございませんか?」


「いえ、お嬢様と私は昨年の大会以外でお見かけしてはおりませんが。」


「そうですか…では仮に私と仲間がお会いしても彼女だとわかりませんわね。」


「う〜ん、多分一度見ればお分かりになられるのでは無いかと思われますけど。」


「それはどのような意味でございますの?」


「あの方は…妹さんと雰囲気が似ておられますから、姉妹だけに。」


「あ、常夏海チャン・シァハイさんのイメージと同じでございましたか。」


「はい、とても陽気でスタイル抜群で…」


「な、なるほど…!」


「…そして内面はドス黒そうですね。」


「な、なるほど…(汗)。」


【色んな意味で危険そうな相手だな。】

美鈴メイリンも俺もまだ見ぬ常春萌チャン・チュンモンを想像しながら冷や汗をかくのだった。


華音ファインとは甘い展開をさせられた美鈴メイリン

代わりに小雀シァオ・チュエとはキッカケが出来た事でボディーガード依頼話しの詳細を彼女から聞くことが出来ました。


果たして犯人は常春萌チャン・チュンモンなのか?

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