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第百三十六話【学院祭最終日・その⑨…遅れてやって来るのがヒーロー…もといヒロインの証しですわ!?】

明花ミンファに変身の事がバレてしまった美鈴メイリンはグズりながらも愛麗アイリーに会場へと連れ出されたのですが…。


ガヤガヤ…


『皆様お待たせしました、それでは学院祭最終日最後の催しとなる今宵のダンスパーティー、最後まで存分にお楽しみ下さい!』

多彩蜂ドゥオ・ツァイファン新生徒会長がステージ上から新生徒会役員と並んでダンスパーティー開始の宣言を叫ぶと、会場である講堂に参加者達の「おおーっ♪」という雄叫びが轟いた。


とは言え、思春期の女の子達の発する声だから高音域の可愛らしい雄叫びではあったが。


「かなりの参加者が集まったわね、新生徒会長?」

多彩蜂ドゥオ・ ツァイファンの横から月夜ユーイーが現れた。

「まあ私達が手伝ったんだから当然よね?」

そして遅れて前副会長と旧生徒会役員の面々も。


「これはこれは旧生徒会長と旧生徒会役員の方々。」

「そうですね、およそ三分の二程度は来てくれたんじゃないでしょうか?」

新生徒会長と新生徒会役員は旧生徒会にお辞儀した。

…絶賛遅刻中の美鈴メイリン愛麗アイリーを除いて、だが。


「自由参加が前提という事もあってか、私達の頃やその前の代までは大体半数程度の参加だった事を考えればかなり良い成績と言えますね。」

月夜ユーイー前生徒会長はお世辞では無く本当に喜ばしく感じてるらしい。


「ところで美鈴メイリンさんは?」

月夜ユーイーがキョロキョロする。


「あ、あはは…。」

乾いた笑いが新生徒会を包む。


「ご心配無く。ただいま美鈴メイリン様達は私からの頼み事をこなしておられる最中でございまして、もう直ここへ来られると思います。」

芽友ヤーヨウが申し訳無さそうにフォローした。


「そうなの?まあ良いわ、どのみち自由参加だから誰も咎めたりしないものね。」

月夜ユーイーからは特に気にする素振りは見られなかった。


「じゃあ私達も自由に楽しむから貴女達もあまり仕事に囚われる事無く楽しみなさい。」

月夜ユーイーは背を向けると手をヒラヒラさせながらステージから去った。


「ホッ。」

「なあ芽友ヤーヨウ、本当のところは?」


「本当のところとおっしゃられますと?」


「…いや、いい。」

「それじゃ月夜ユーイーさんもああ言ってる事だし、私達も楽しもうか。」

多彩蜂ドゥオ・ツァイファンは隣にいる陰潜イン・チィェンの手を取るとステージを下りていった。


ステージに取り残されたのは闘姫ドウ・ヂェン明花ミンファ芽友ヤーヨウ

「…では、取り敢えず立食にでも参りましょうか?」

「はい、そうですね。」

「そう致しましょう。」

闘姫ドウ・ヂェンが声をかけると明花ミンファ芽友ヤーヨウも特に反対せずそれに同意した。


………。


さて、美鈴メイリンは…。


ハアハア。

「お、嬢様、す、少し…休憩…。」

「この程度でもうバテましたの?」


美鈴メイリン愛麗アイリーは確かに会場目指して歩いていた。


が、何故か森の中にいる。


「大体貴女がショートカットしましょう!とか抜かして森の中に入り込むから道に迷ったんですのよ?」


「へ、変ですねえ〜?何時も、なら、とっくに…講堂前まで、辿り着いて、るんですけどぉ〜、ハアハア。」


そういうことか。

どうやらダンスパーティー開始時間が迫ってたから愛麗アイリーが近道しようと考えたらしい。


美鈴メイリン一人ならちょっとその気になれば「アッ」という間に会場に到着出来るけど、常人の体力しかない愛麗アイリーには美鈴メイリンを引き摺りながら全力疾走なんて出来っこない。


そもそも行きたくない美鈴メイリンは単なる「重し」、走行抵抗だ。


だから近道を選んだんだろうけど…。

何で道迷ったんだ?

愛麗アイリーの口ぶりだと初めての道じゃ無さそうだけど。


「?」

愛麗アイリー、ここもしかして先日赤服達が明花ミンファさん人質に逃げ込んだ場所じゃございませんこと?」


「え?ここがそうだったんですか?」


「ええ。私がここら一帯吹き飛ばした跡が見られますので…。」

言われてみれば辺り一面の樹木がなぎ倒され、草も千切れ飛んで地面の土が見えている。


これだけの状況ならここだけじゃなく周りにも相当な影響を出しててもおかしくないかな。


…ん?


「あーっ?!」


「どうかしましたか愛麗アイリー?」


「どうも木々や草花の感じがおかしいと思ったんですよ!」


「お嬢様が魔法か何かでここらを吹き飛ばしたから森の様子が変わってたんですね?」


「まあ…そうなりますわね?」


「それですよ、だから今迄と様子が変わったせいで方向がわかんなくなっちゃったんです、きっとそうです!」


「そ、そうなのかしら?愛麗アイリー、それ実は思い違い!と言うことは無いかしら?」


いや、普通に考えれば愛麗アイリーの考え通りだと思うぞ。


「まあ理由はどうあれこれではダンスパーティーどころではございませんわね。」


「どうしましょうお嬢様、このまま私達ここで野垂れ死にしちゃうんでしょうか?」


「縁起でも無い事おっしゃらないで!」


「そもそもこんな見通しの悪い森の中彷徨いてるから迷子になんかなるんです!」

美鈴メイリン愛麗アイリーをいきなりお姫様抱っこで抱きかかえた。

「お、お嬢様?!」


「しっかり掴まってるんですのよ?」


「は、はいっ、それはもう!」

ガシッと掴まる愛麗アイリー

が、そのだらしなく笑ニヤける愛麗アイリーの表情を見た途端に美鈴メイリン愛麗アイリーを引き剥がすと背中に背負った。


「何でオンブに変えたんですかあ?」


「いえ、貴女が変な期待してるように見えたモノで。」


「ええー?明花ミンファさんはお姫様抱っこされたそうじゃありませんか?不公平でございます!」


「抜かしなさい!あのコは私の大事な…」


「…大事な?」


「…だ、大事な真友なのですわ!」


おい、危うく何か言いかけたようだが一体何を言い直したんだ?


「と、ともかく!」


「地ベタ這いずり回ってたら拉致が空きません!」


有翼飛翔魔術ウイングフライト!」 


ズバッと背中に翼を生やす美鈴メイリン


美鈴メイリンの背中にいきなり翼が生えたもんだからその背中に覆い被さっていた愛麗アイリーはさぞかしたまげた事だろう。


「さあ行きますわよ会場へ!」

サアーッと上空へと舞い上がる美鈴メイリン


その眼下には明るい灯火に満たされた中央貴族学院の敷地が。


「しっかり掴まってなさい。」


「は、はい…ブワァー?!」

一気に加速した美鈴メイリン

その風圧に押される愛麗アイリーは振り落とされないように必死だった。


愛麗アイリーにとって残念ながらロマンの欠片も無い体験となってしまった事だろう。


ダンスもたけなわ、ダンスの音楽をかき消す轟音が響いたかと思うと、講堂近くの地面が激しく揺れた。


「じ、地震?!」

会場で立食参加していた生徒達はグラスや皿を持ったまま見を低くした。

 

演奏していた生徒達、ダンスに興じていた生徒達も慌てて伏せた。


「一体何事?!」

新旧生徒達役員達と教師勢は慌てて講堂の扉を開き、外を確認した。


その扉の向こうではモウモウと土煙が上がり…。


ゴホッ、ゲホッ…と咳払いが聴こえて来た。

そして姿は見えずとも聴き慣れた声が。

「あちゃ〜、少し減速が間に合わな勝ったみたいですわ…。」

「お嬢様…私もいるんですからもう少し丁寧に…。」


「「美鈴メイリンさん?!」」


芽友ヤーヨウ?」


土煙が晴れると、ソコには砂埃をかぶった美鈴メイリン愛麗アイリーが立っていた。


美鈴メイリンは生徒達や教師、特に新旧生徒会役員達を目にするなりバツが悪そうにこう言った。

「み、皆さんお待たせ致しましたわ…。」


ダンスパーティーのさなか、人騒がせな登場を果たした美鈴メイリン

彼女はダンスパートナーに誰を選ぶのか?

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