第百三十二話【闇のトンネルを抜けて生還!そして鎧の中から真の姿を現す電光烈火】
前回、黒竜のプリンスから放たれた斬撃から生じた闇の魔力のブラックホールに吸い込まれたかに見えた電光烈火。
彼女の鎧が砕けたその後…!
目の前全てが真っ暗。
…。
一体俺達、どうなったんだろうな…。
やはり黒竜のプリンスからのあの一撃を喰らって消し飛ばされちまったんだろうか?
………の、ワリにはちゃんと意識はある?
どれ、身体(霊体だけど)手足の感覚は…。
クニクニ、ヒョコヒョコ。
ツンツン、サワサワ…。
「どこ触ったてますの?!」
パチーン!
「痛っ〜!?」
「今ぶったな?思い切りパーで!」
「馬鹿おっしゃらないで?私が本気なら今頃貴方跡形も残ってませんわのよ!」
「そ、それもそうか…」
冷静に考えたら、今頃になってゾーッとして来た。
「ところで俺何で叩かれたんだ?」
「い、言わせる気ですの?」
真っ暗でわからんけど、声からしてきっと美鈴のヤツは顔を真っ赤にしてるに違いない。
…ん?
「俺が触れられるって事は、今のオマエは霊体って事か?」
「そうなりますの?」
「ちょっと待て…(汗)。」
俺の頬を冷や汗がタラ〜ッと伝った。
「まさか…と言うか、美鈴死んじまったのか?さっきの攻撃で…。」
「えと…それが良くわかりませんの。」
「私の意識は確かにあの身体…電光烈火から離れてますけど。」
電光烈火の肉体の土台は美鈴だ。
それが美鈴の意識から離れてるって事はつまり…。
「でも、自分の身体がまだ存在する感覚はあるのですのよ。」
「そうか…確か前世でソレ関連の何かを知ったんだけど、それによると霊体と肉体は糸みたいなモノで繋がっててその糸が繋がってる間は生きてるんだったような…。」
「つまり私の身体はまだ生きてるワケですわね。」
「待てよ?電光烈火は何処だ?」
「おーい、電光烈火さーん。」
美鈴が事態の深刻さを感じさせない間の抜けたような声で電光烈火を呼んだ。
…が、返事が無い。
「お返事ありませんわね。」
「てことは電光烈火はまだ美鈴の身体と合体したままって事か。」
「ならこうしてはいられませんわ、早く肉体に…。」
「…て、この真っ暗闇の中じゃ何処に向かえばいいのか分かりませんわ?」
「俺の千里眼なら見れるか?」
目に魔力を込めてみる。
「…お。」
「何か見えまして?」
「美鈴の身体が見える。」
「あら、私の霊体が見えますのね?」
「ああ…。」
「真っ白で、綺麗な…」
「え?まさか私服着てませんの?」
咄嗟に美鈴が身体の前を手で隠す。
「ま、待て待て!安心しろ、まだ肩までしか見えてないし!」
「…うん、どうやらドレスみたいのを着てる姿だ、だから大丈夫。」
「私より、電光烈火さんの方を見て下さいな!」
「わ、わかってる。」
そのドレスみたいなのは結構際どい布面積だった事は黙っておこう。
で、電光烈火がどうなってたか?
俺の千里眼に映ったソレは…。
…………?!
眩く光るそのボディーは、明らかに女性。
しかしあの電光烈火の重厚な鎧(さっきまでは美鈴によって脳内変換されたメタルヒーローもどき)を纏っていない。
代わりにか、要所を守る程度の小さなプロテクター程度は着用してる。
『な〜にジロジロ見てんだい?』
口調が違う?
前の電光烈火はもっとこう、威厳ある言葉使いだったはず…あれ、もしかして別人?
『別人じゃないよ、私がその電光烈火の中身だ。』
え?どゆこと?
『あの鎧はそもそも鎧じゃない、私を閉じ込め扱い易くする為の拘束具だったんだよ。』
閉じ込める?扱い易くする?
「聞こえましたわ、そのお話し私にも詳しくお教え下さいな。」
美鈴、オマエ電光烈火のこの声や姿がわかるのか?
「闇も少し晴れて来ましたので…。」
あ、本当。
俺ラの周りだけ薄っすら視界が…。
『て事はあまり時間も無いな、簡単に言えば前世の私は無法者だったのさ。』
「無法者?無法者が仮面の剣豪になれるのですか?」
『ああ、成りたくてなったというより私の先代に当たる仮面の剣豪が強引に取り込んだってのが本当なんだけどな。』
『前世の私は魔物狩りを生業にしてたんだがそれだけじゃ食って行けないから、たまに傭兵紛いな事をして稼いでたんだ。』
『そしたらその腕を王国軍に見込まれて大魔王軍決戦部隊に入る事になったんだよ。』
『でも流石に大魔王相手はヤバかったんだけど、先代仮面の剣豪によって何とか勝つには勝ったんだ…が、相討ちになっちまってね。』
『で、仮面の剣豪として取り込まれた時に先代のヤツが仮面の剣豪として私を扱い易くする為に魔法の鎧で私を覆ってしまったんだ、くそ!』
「拘束具でもあり、パワーアップするアイテムでもあったんですのね?」
『パワーアップ?冗談!寧ろ暴走しないよう抑えられてたんだよ!』
『魔物相手に気分が昂ぶり過ぎて力が暴走する悪いクセがあったから、まあしょうがないっちゃあしょうがなかったんだけどね。』
「因みに拘束具無しだと如何ほどの力に?」
『二倍!…とまでは言わないけど、1.5倍くらいにはなるかな。』
ソイツは頼もしい!なら黒竜のプリンスも…
『それはやってみなけりゃわからんけどさ。』
等と電光烈火と会話してると、いつの間にか闇の魔力が薄れて視界が広がっていた。
「闇の魔力が消えていきますわ!」
「しかもソレにつれて…元の現実世界が見えて来ましたわ!」
『どうやら黒竜のプリンスが放った技は電光烈火の鎧を砕くのが精一杯だったようだね。』
そうか…て事は…。
バァーン!!
一気に闇魔法のブラックホールが爆散した!!
ドン!と音がしたかと思うと俺等は元の世界の空間に復帰していた、つまりブラックホールから生還したのだ!
と、思ったらポッカリ口を開けて明花と白百合のプリンセスがコッチを見ていた。
「…嘘…?」
「あの鎧の中身は美鈴さんじゃ無かったんですか?」
「そ、それよりあのお姿…アレこそが電光烈火様の真のお姿…なのですか?」
ああそうか。
部外者な明花は勿論、白百合のプリンセスすらもこの電光烈火本体たる中身の女性の姿を知らなかったって事か。
『私が聖練潔白…白百合のプリンセスと初顔合わせした時からずっとあの鎧姿だったからね、彼女が私のこの姿など知る由もないのは当然と言えるかな。』
なるほど。
しかし電光烈火本来の姿を見て驚いてるのは明花と白百合のプリンセスだけじゃ無かった。
『おおーっ!超速星の鎧が砕けたと思ったら、中からはとてつもなくお色気のある大人の女性が現れたーっ!!』
学院生らにもこの状況はバレていた。
学院からは騒然とする声が。
そして。
「キャーッ☆」
「な、なんて、素敵なオネーサマーッ?!」
「超速星お姉様ーっ☆」
学院生達からの声援に気を良くしたのか電光烈火は軽く学院棟に向けて手を振る。
すると益々黄色い声援が爆発した。
…何かこれでまた超速星の人気が盛り上がってきたみたいだ…。
(超速星は本来私が名乗ったヒーローネームなんですけど?)
そうだったんだけど、今は美鈴の意志とは無関係に電光烈火の身体が動いている。
これ、鎧というか拘束具が壊されて外れた事と関係あるんか?
と、
『コラーッ!!』
大声で叫ばれた。
「なんですの?」
『あ、忘れてた。』
実を言うと俺も忘れてた、まだ黒竜のプリンスと戦闘中だったっけ。
『何だ何だその姿は!』
『何だ…て、コレが私本来の姿であの鎧の中身なんだが?』
スラッ…としなやかなその肢体は身長1メートル90センチ近くはある。
女性ながら筋骨隆々、しかしちゃんと女性らしい丸みを帯びてるし膨らみもある。
要所をプロテクターが保護しているが、そのグラマラスさは隠せていない。
その長い銀髪は風に靡き、燃えるような紅い唇、
グリーンの瞳の奥には電光が迸っていた。
『な…何だと…そんな華奢な人間があの鎧の中で戦っていたというのか?』
『文句あるんかい?ここからでも相手になってやるよ!』
『な、何と言う負けん気の強さ…だが…』
『ソコが良い!』
『「「(はっ?)」」』
思わずその場の女性全員、目が点になった。
『好みだ!俺の第一…は無理だから第二夫人にしてやる!』
『せ…節操無いな…。』
電光烈火オネーサンは呆れた。
そして明花と白百合のプリンセスは
「ところであの方が美鈴さんの変身されたお姿なのですか?」
「そうみたいだけど…どうなんでしょう?」
二人は黒竜のプリンスの求愛が聞こえなかった事にした。
更に約一名。
(ちょっと?私が夫人候補足り得るか試すお話はどーなったんですの?!)
いや、そもそもソレは戦いの相手にしてもらう為の方便だったんじゃないんかい?!
(でしたわね!)
(まーそれは良いとして)
(ちょいと電光烈火さん?何で私の身体なのに貴女が奪って動かしてますの?!)
『固い事言うな、ちょっと黒竜のプリンス野郎をギタンギタンにしてやるまで貸してもらうだけだ。』
(ダメですっ、ヤツをギタンギタンにするのはこの私ですわ!)
コラコラ、内輪揉めすんな。
ともかく、ヤツをギタンギタンにしたいんだな?
「当然ですわ!」
『勿論だ!』
…およ?
電光烈火の身体の内側から魔力の光が…
「白百合のプリンセスさんを苦しめたアイツを…」
『聖練潔白を痛めつけたアイツを…』
グングンと電光烈火の身体が大きくなる…
「『許さない!!』」
おおっ、何かコレって二人の意志がシンクロしてないか?
そんでもって下半身が…
ズガガッ!!
『人馬変化!!』
電光烈火の下半身が四本足に…馬のようになった!
「これは…これが…電光烈火の…本当の力の発現…!」
白百合のプリンセスが感嘆している。
「神々しさすら感じますけど…美鈴さんみたいな気配も…。」
明花は感づいてるらしい。
ブラックホールからの生還に加え、この人馬形態への変化には流石の魔族四天王である黒竜のプリンスも無意識に後退った。
『じ…人馬形態〜?!』
『「さあ、覚悟」』
『せよ!』
「しなさいな!」
う〜ん、これからこの戦いどうなるんだ?!
さながら蛹から蝶への成長。
そして人馬へと進化を果たした電光烈火!
電光烈火と美鈴、二人の意志が一つとなり、次回いよいよ黒竜のプリンスとの決着!!