第百三十話【私の怒りは爆裂寸前ですわ!】
黒竜のプリンスに挑む白百合のプリンセスは聖霊の仮面の加護を受けられない現状で何処まで善戦出来るのか?
そして美鈴に仮面の剣豪・電光烈火から授けられたという魔力強化されてる結界内部に入る策とは?
仮面の剣豪の電光烈火はもう少し待てと言った。
しかし俺は明らかに魔族四天王である黒竜のプリンスに押されている白百合のプリンセスをハラハラしながら見守っていた。
今直ぐにでも駆けつけ援護してやりたい!
だが、それには実体や戦う力を持たない俺には無理。
結局は仮面の剣豪・電光烈火とそれに変身中の美鈴…超速星に頼るしかないんだ。
それに当の本人である白百合のプリンセスから俺達は手出しNGを言い渡されてしまっている。
俺は自分の無力さを改めて知り、歯痒い思いをしている。
更に加えてあの厄介な結界だ!
…いや、ダジャレじゃないし別にオヤジギャグのつもりもないぞ?
えーとだな、状況から見てあの結界は結界内で白百合のプリンセスに倒されてる赤服集団が元々は外部からの邪魔が入らないように発生させたものらしい。
それを一部破損させて白百合のプリンセスは今結界の中に居るワケなんだが…。
仮面の剣豪・電光烈火によれば結界内に生じた魔法陣の中から召喚されたらしきあの魔族四天王、黒竜のプリンスによって強化されてしまったようだ。
「でも考えてみたら黒竜のプリンスも結界がある限りそこから出られないんですよのね?」
『うむ…白百合のプリンセスにヤツが気を取られている間はそうだろう。』
『だが彼女が倒されればヤツはあの結界を強化している魔力消して結界を破り、学院や王都を蹂躙しに来るつもりだろう。』
【そうだな、あの結界を強化してるのはヤツの魔力だから、そのヤツが魔力の供給を止めれば結界を内側から壊すくらい造作も無いんだろうな。】
『だが逆に言えば結界に食われていた魔力をそのまま戦闘力に向けられるようになるのだからそこは厄介だと言える。』
「…では以前白百合のプリンセスがアイツと戦った事があるなら電光烈火さんもそうですの?」
『勿論ある。』
『前回は白百合のプリンセスはヤツ相手に互角だった、本来の力を出せてたからな。』
『そして最後は私へと変身しヤツにトドメを刺したのだが…どうやら致命傷には至らなかったようだ、実に悔やまれる。』
「因みに今のアイツに電光烈火さんは勝てそうですの?」
『わからん。』
【昔の白百合のプリンセスの変身前の輝光姫と美鈴の実力の差から見てなら?】
『それは、美鈴次第だ。』
「電光烈火さんが勝てると言い切れないほどアイツは数百年前より強くなってますのね…。」
『だがアイツを倒せぬようではとても大魔王には勝てんぞ?』
「それはそうでしょうけど…。」
『数百年の時を経て今度復活するはずの大魔王の力は今までとは比べ物にならんとも言われている。』
【「うげ。」】
【おい美鈴、お前の今の実力は白百合のプリンセスと比較したらどのくらいだ?】
「剣技と魔法そのものはプリンセスさんの方に一日の長があるとお見受けしますが…魔力や破壊力、フィジカルに関しては私に分があるようですわ。」
つまりちょっと上?レベルか。
なら電光烈火になっても同じレベルって事かよ。
おいおいこの期に及んでまさかの無理ゲーか?
つうか大魔王どころか目の前の黒竜のプリンスにすら勝てるか怪しくねえ?
ドスン!
俺達が深刻に話し合ってると、白百合のプリンセスの身体が地に叩き伏せられてしまっていた。
「ぐうう…。」
苦しそうな表情が仮面越しにも分かる。
「姫さん!?」
思わず名前の方で白百合のプリンセスを呼んでしまった美鈴。
アイツも冷静でいられないくらいに白百合のプリンセスのいたぶられ具合は酷かった。
彼女は決して弱くはないんだ。
だけど相手が悪過ぎる。
既に全身を覆っていたはずの輝くシールドは消失、ドレスはビリビリに破れてて絶対領域や肩から胸元までが丸見えだ。
しかし両手のレイピアだけは離していなかった。
何とか身体を捻って立ち上がる白百合のプリンセス。
やばいな、どう見ても流石に限界みたいだ。
それなのに黒竜のプリンスの方は掠り傷程度でピンピンしている。
あれから白百合のプリンセスの方も一矢報いる事が出来たようだがそれでも黒竜のプリンスを地に伏せさせるには明らかに力不足だったらしい。
俺はやり切れなくなって彼女に叫んだ。
【もういい、引き上げるんだプリンセス!】
ピクッ。
「仮面の…聖霊、様…。」
「ま、まだです、やっと…反撃の…糸口が…。」
『そのボロボロな身体で何が出来る?諦めて我が元に来て花嫁となれ、そうすれば生命まで奪わん。』
黒竜のプリンスの戯れ言を聞くや、ククク…と白百合のプリンセスは笑った。
「抜かせ…。誰が、魔族になど…。」
しかし勇ましい言葉とは裏腹に彼女はヨロヨロだった。
「もうとても見てられません!これ以上白百合のプリンセスさん一人に戦わせるワケには参りませんわ。」
電光烈火の身体から美鈴の鈴の音のような凛とした声が聴こえた。
…静かだが、かなりの怒りをその胸のうちから感じる…。
『なら…私の言った通りやってみせろ。』
「わかりましたわ…本当に止む終えませんから仕方無く、ですわよ?!」
すると、いきなり電光烈火の変身が解けた!
い、一体何する気だ?
コホン。
軽く美鈴が咳払いした。
で、次にアイツはこう発した。
「そこの黒竜のプリンスさんとやら?」
「白百合のプリンセスさんばかりが強い美少女ではありませんわ!」
「この私、中華王国の八大武家、黎美鈴の実力が貴方の眼鏡に適うか試してみませんこと?」
ギロッと黒竜のプリンスがコチラを見た。
『ふむ…確かにその絶大な魔力…我ら四天王に匹敵するやも知れんな。』
『それにその容姿は輝光姫にも負けておらん。』
「そうでしょう、そうでしょう♪」
『しかし残念だが、胸が少し寂しいな。』
「ガーン!!」
美鈴は突然思わぬ所を指摘され精神的にショックを受けた!
TS女でも一応そこは気になるんだな。
(TSっつっても私のは転生ですわ!)
(赤児の頃から女のコの身体で育ってますからもう中身も立派な女性ですの、だから思い切り気にしますのよ!)
そんなもんか。
でもそこまで女なら魔族は男性のイケメン多いから好みのタイプとかいるんじゃね?
あの黒竜のプリンスも顔だけは中々イケメンぢゃね?
(でも前世でオトコだった記憶もあるからオトコとの恋愛なんて論外ですわ!!)
面倒臭いヤツめ。
『…まあソコソコ見れる姿だしその魔力量は興味深い。』
『よし、俺の花嫁候補に相応しいかその腕前を試してやろう、来るがいい。』
ブオン。
「結界が帯びていた闇の魔力が消えてゆきますわ?」
『これでキサマなら難なくコッチに入ってこれる筈だ。』
「ほう…私の魔力で破れるレベルなのですわね?」
美鈴は剣に輝く竜巻を纏わせた。
「魔閃光竜巻斬!」
また竜巻斬のニューバージョンを考えやがったな。
ズドン!
魔閃光竜巻斬の一撃でグラウンドを覆う結界は跡形も無く吹き飛ばされた。
『こ、これは予想以上だな…。』
黒竜のプリンスは少しビビったようだ。
え?て事は、もしかして今の美鈴の魔力ならコイツに勝てるのか?
『さ、さあ来るが良い、その剣の腕前を試してやろうではないか。』
「ええ、でもどうせなら剣だけでなくこの魔力を込めた魔法剣でもお願いしますわ。」
『!…い…いいだろう。』
吐いた言葉を今更飲み込めないらしい。
ちょっと警戒してるな。
「め…美鈴、さん…。」
「プリンセスさん!」
美鈴はグラウンドに駆け寄ると、白百合のプリンセスの身体をギュッと抱き締めた。
「可愛そうに…こんなになるまで助けに入らなくてゴメンナサイですわ…。」
「いえ…あの状態で援護は無理でしたし…援護を断ったのは私ですから…。」
「とにかく後は私にお任せを。」
「…ゴメンナサイ…。」
「いいえ謝る事はありませんわ。」
「いえ…貴女に引き継ぐのならせめてもう少しヤツにダメージを与えたかったです…。」
「もう充分ですわ。」
美鈴は一度グラウンドの外へと白百合のプリンセスを連れ出し叢に彼女を寝かせた。
と。
「美鈴さーん…!」
遠くから良く知る声が近付いて来た。
「…明花さん?」
「ハアハア…遅くなりました。」
「貴女、お身体の方はもう大丈夫ですの?」
「だいぶ良くなりました、それにこの騒ぎでおちおち寝てなんかいられません!」
「そうですか…では少し力になっていただけませんか?」
「はい、その為にここまで来たんですから!」
明花は明るく応えた。
「では、ここに横たわっている白百合のプリンセスさんの回復をお願いしますわ。」
「?」
一瞬ボカンとする明花だったが
「ええ〜っ?し、白百合のプリンセスさん?」
「な、何でどうして?」
「うわ…酷い、ドレスは破けて肌も…。」
明花はすかさずしゃがんで掌を白百合のプリンセスへと向けた。
柔らかな光がそこから白百合のプリンセスの身体へと降り注ぐ。
「では、頼みましたわよ?」
「…あと、その…来て下さってありがとう。」
美鈴は振り返るとペコリと頭を下げた。
これだけで明花は来た甲斐があったと言うものだ。
再びグラウンドに戻る美鈴。
すると
「!お、お前は黎美鈴?」
「おや、起きられましたかオネンネされてた赤服の皆さん。」
「すみませんがこれから貴女達の召喚された黒竜のプリンスと一試合する事になりましたの。」
「巻き添え食って死にたくなければまたグラウンドを結界で覆いソレを保持してて下さいな。」
「…いいですわね?」
ギロッと美鈴は赤服達を睨んだ。
「ゔっ………(汗)。」
赤服達は渋々結界を張り直した。
この赤服達の結界は黒竜のプリンスや美鈴の攻撃魔法には耐えられない。
さっきまで白百合のプリンセスと黒竜のプリンスが戦っても流れ弾?が外に行かなかったのは黒竜のプリンスが膨大な闇の魔力の一部で結界を補強していたからだ。
だから美鈴と黒竜のプリンスが戦ってる間、今度は赤服達が必死で結界を保持してないと自分達も巻き添え食ってしまうのだ。
「だ、だからあんなバケモノ呼び出したくなかったんだ!」
「知るか!オマケに今度は八大武家のバケモノ娘まで加わってるじゃないか?」
「わ、私ら生きて帰れるんかいな…(涙)。」
赤服達は泣きながら結界を自分らの魔力で保持し続けるのだった。
『では…来るが良い!』
黒竜のプリンスは闇の魔力を全身から放出し始めた。
「あら?さっきまでそんな力お出しになられてませんでしたわよね?」
『気にするな、単にそんな気分になっただけだ。』
…コイツめ、絶対に美鈴の魔閃光竜巻斬を見たせいでビビって魔法防御しやがったな。
『おい。』
「何ですの?」
『オマエ、剣は持たんのか?』
「え?剣ならここに…。」
「あ、あら?」
美鈴は素手だった。
これはさっき白百合のプリンセスを抱き起こす時ウッカリ結界の外から剣を手放したさいだ。
ていうか、おい美鈴!
さっき電光烈火だった時の身体の感覚で喋ってたから気が付かなかったんだろ?
「う…これはしくじりでしたわ。」
『素手で俺に勝つ気だったのか?』
黒竜のプリンスは剣を美鈴に向けた。
少し憤慨してるらしいな。
「ま、まさか…タハハ…。」
(幾ら私でも何時も通り魔法を拳に纏わせた程度で、この剣を持った魔族四天王相手に勝てると思うほど慢心してはおりませんわ!)
「私とした事が失礼いたしましたわ、しかしご安心を。」
『これより剣を持った姿に変わりますわ。』
ズオッ!
美鈴の全身から闘気の奔流がオーロラとなって噴出した。
厳しい顔の美鈴。
…しかし一瞬、ふと口元が微笑んだのは何故だろう。
『おおっ?これは中々の魔力…!』
「では参りますわ…。」
『電光・閃光・ 烈光!』
『以下略』
あらら?
まあ二度目の変身だからいいか。
ドドーン!!
美鈴の周囲が爆裂し焔が包む。
そしてその焔が振り払われた。
『仮面の剣豪・電光烈火!』
『又の名を…超速星!!』
ビシッとポーズを決める超速星。
再びその背後で爆炎が轟いた。
超速星(仮面の剣豪・電光烈火)の全身はシルバーのフルメタリックボディーで背後の焔を色鮮やかに反射していた。
何度変身しても某特撮番組のメタルヒーローっぽくなるのはもう美鈴だからしょうがないのか?
何故かわからんが、ヤツの頭の中では電光烈火の本来の姿である綺羅びやかな全身鎧姿がこんな格好に脳内変換されてしまうようだ。
(漲る…力が漲るぞ美鈴、前回以上にだ!)
(以前とは格段の差だ、これならヤツを相手にしても引けは取らんかも知れん!)
さっき変身した時には感じられなかったのだろう、何が原因かわからんが、余程パワーアップしてるようだ。
電光烈火がウキウキしてるのが声でわかる。
(そ、それはどうも〜♪ですわ…(汗)。)
「さあ黒竜のプリンス、白百合のプリンセスさんをいたぶった報いを受けなさいな!」
『ふん…ならこの勝負に勝ち、オマエと輝光姫、二人とも俺の嫁にしてくれる!ありがたく思え!』
「その上からの物言い、生憎ノーサンキューでございますですわ!」
電光烈火…超速星は大剣を出現させて構えた。
…ん?
何か大事な事忘れてるような…。
「め…美鈴さんが…あの超速星………?!」
超速星の背後の叢では明花が白百合のプリンセスを介抱しながらこの光景を見ていた。
そして。
「おいおい、美鈴て仮面の剣豪だったのか?」
「帰ったら連絡しないと…!」
「生きて帰れたらの話しだがな…。」
結界を維持してる赤服達にもシッカリ見られてた。
アチャ〜ッ…。
(わかってますわよ!)
後で赤服全員と明花の記憶消さないとな
…嗚呼、頭が痛いぜ…。
黒竜のプリンスのオスとしての欲望をくすぐる事でマンマと結界内部への侵入を果たした美鈴!
仮面の剣豪・電光烈火と一体化し超速星となった美鈴は白百合のプリンセスの分までやり返せるのか?
そして遂に明花に(ついでに赤服達にも)超速星の正体が…?