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第百二十四話【学院祭・最終日…その②ユーイーの従姉妹登場】

金髪ロール碧眼キャラ登場!

しかし高飛車悪役令嬢ではありません(笑)。


学院祭午前中の催しである弁論大会最後に出場した弁論者はザワつく会場を眺めてほくそ笑んだ。


皆、口々に彼女の弁論に対し否定と肯定に分かれ騒然としていた。


…不思議だな。

普通自分の意見に理解を示す者達が現れ始めたらここぞとばかりに更なる主張を畳み掛けてより多くの賛同者を獲得したがると思うんだけど…。


『これで私の主張は終わりです。』

なんと彼女はあっさりステージから降りて退場していったのだ。


「い、言うだけいっておいて…これだけ周りを引っ掻き回しておいて…!」

美鈴メイリンは何か言い返してやりたい気分だったんだろうけど、こうもアッサリと退かれてしまっては向かうべき矛先を見失った気分だろうな。


「追いますわよ!」

「それかせめて今からあの壇上で私が彼女の主張をひるがえして…!」


「いけません、それでは益々火に油を注ぐ事になりかねませんよ?」

明花ミンファ美鈴メイリンの手を掴んで宥めた。


そして闘姫ドウ・ヂェンがこう告げる。

「今はザワついてますが、午後からの紅白試合が始まれば皆さんの気も晴れて落ち着かれる事でしょう。」


「…それはつまり、さっきの弁論の主張内容より紅白試合で盛り上がれれば皆そっちの方に興味がいって気が逸れる、という事ですね?」


「その通りです、流石は芽友ヤーヨウさんですね。」

慈愛深い眼差しで闘姫ドウ・ヂェンに見つめられた芽友ヤーヨウは柄にもなくポッと頬を染めた。

「い、いえ…。」


「ちょっと芽友ヤーヨウ?何照れてんですか!」

愛麗アイリーが嫉妬したみたいだ。

何時いつもとは逆だな。


「…はあ…わかりましたわ。」

美鈴メイリンはやっと落ち着いたのか、力を抜いた。

「腹が立った後はお腹空きましたわ!」

明花ミンファさん、何か用意されてまして?」

「…す、すみません…皆さん今日も何処かでお食事されるものと思って準備してませんでした…。」


「あ…良いのですのよ?もし準備されてたのなら食べ歩きしないでいようかという確認でしたので。」


明花ミンファは済まなそうにしていたが別に明花ミンファ美鈴メイリン達の食事を準備しなければならない、という決め事があるわけでもない。 

だから美鈴メイリン明花ミンファに食事の用意について聞いたのは、何時も彼女が自分から進んでやってた事だからであり、皆もそれに慣れていただけだから確認までに聞いただけだ。


「あの…明花ミンファさん?少しお疲れ気味ではありませんか?」

美鈴メイリンは少し表情の優れない明花ミンファを気遣った。


「い、いえ?全然大丈夫ですよ!」

ガッツポーズを見せる明花ミンファ


だけど目に力が感じられない。

何かあったんだろうか?


闘姫ドウ・ヂェンも気になったんだろう、

明花ミンファさん、午後からの生徒会のお仕事はお休みになられてはいかがですか?」

と声をかけた。


「そうは参りません、私が居ないと貴女にリードされてしまいますから…。」

まさか、美鈴メイリンを取られたくないから無理してでも、てか?


「たかが半日、そんな気にされる程に美鈴メイリンさんと私の仲が進展するとは思えませんけど…」

「そこまで心配されるなら美鈴メイリンさんは愛麗アイリーさんとコンビで動いて貰う事にしましょう。」


これを聞いた芽友ヤーヨウ闘姫ドウ・ヂェンにこう話しかけた。

「では、午後からは私が闘姫ドウ・ヂェンさんと行動を共にする、という事ですか?」

芽友ヤーヨウさんが嫌で無ければですが。」


「…いえ、わかりました。明花ミンファお嬢様の代わりに貴女が抜け駆けしないよう見張り役を致します。」


大丈夫かな?

身体能力に差があるから闘姫ドウ・ヂェンがその気になれば簡単に置き去りにされそうだけど。


「私が抜け駆けしたら後で明花ミンファさんから何言われるかわかりませんからそんな事しません(笑)。」

闘姫ドウ・ヂェンは微笑んだ。


ま、これなら大丈夫かな。

少なくとも今のところは。


闘姫ドウ・ヂェンには悪いが俺としては美鈴メイリン明花ミンファがくっついてくれた方が俺が闘姫ドウ・ヂェンに言い寄るチャンスが残されるからその方がいい。


…でもこの百合世界で果たして男性でしかも仮面の聖霊、という役回りの肉体を持たない俺が彼女に好かれる可能性は限りなく低いがな。

あ〜あ…。


「では、お昼食べてから私と愛麗アイリーの二人で明花ミンファさんを保健室へ送りますわ。」


「わ、私は本当に大丈夫…!」

「無理しがちな人はみんなそう言いますのよ?」


ぐ〜っ♪


「では、とりあえず食堂に行きますか?私もうお腹空いちゃって…!」

お腹を押さえてテヘヘと笑う愛麗アイリー

さっきのは愛麗アイリーの腹の虫が鳴った音か。


「では、参りましょうか?」

美鈴メイリン明花メイリン闘姫ドウ・ヂェンの手を取った。


「行こ?芽友ヤーヨウ♪」

「うん。」

側仕えコンビも手を繋いだ。


こうして一行は食堂で昼食へと向かった。


………。


ザワザワ…。


学院祭期間中の食堂は結構空いていた。

皆がクラスの出し物である喫茶店や出店等で食事をすませてしまうというのも有るだろう。


「さて…」

美鈴メイリン達が空いてるテーブルを見つけ、席に着いたその時だった。


バアン!!

「私の由緒正しい家柄を罵るのはやめていただけません事?!」

金髪ロールのいかにもプライドと家柄の高そうな欧風貴族の生徒が黒い前髪に目が隠れてる生徒と言い争いをしていた。


「由緒正しい?」

「はん、学院対抗代表選抜戦のベスト8にすら残れなかった貴女の家柄が由緒正しいと言われますか?」

その生徒はワザと欧風金髪ロール生徒を怒らせているようにも見えた。


「あ、あれは他の選手の方々が素晴らしかったのですわ、それに負けたのは私個人であって私の家族は皆優秀ですのよ、家族を悪く言わないで下さいませ!」


「おやおや、では貴女はその優秀なお家の中の落ちこぼれ、という判断をしてもよろしいのですね?」


「くうっ…。」


ケタケタと嘲笑う黒い前髪で目を隠した生徒、そしてその生徒の眼前で悔しそうに歯軋りをする欧風金髪ロールの生徒。


 

「何か、穏やかではありませんね。」

明花ミンファは自分の事も忘れてそのやり取りを見ていた。


それを聞いた美鈴メイリンは周囲に尋ねた。

「どなたか、あの方々はどうされてしまったのか教えて下さいませんか?」


「ああ…!もしや貴女は一年生ながら学院対抗戦優勝された黎美鈴リー・メイリンさん?」


「何ですって?!」


「あの一年生優勝者の?」


「しかもしかも、あのドラゴンスレイヤーでもあるっていう?」

正確にはちょっと違うがな。

フレイムドラゴンを倒したのは超速星チャオ・スウシンだと美鈴メイリンが名乗った仮面の剣豪こと電光烈火だし。


この前の月夜ユーイーが原因だった巨竜騒ぎの時も別に倒したわけではなく美鈴メイリン闘姫ドウ・ヂェンの攻撃力に関心した巨竜が振り上げた拳を下げただけだし。

…まあこの二人が仮面の剣豪に変身して本気で戦ってたらホントに倒せていたかも知れないが。


ザワザワ…。


美鈴メイリンが迂闊に周囲へ話しかけたおかげか諍いを起こしていた二人は毒気を抜かれてしまったらしい。

ポカンと口を空けて勢いを失っていた。


「…ちっ。」

挑発してるように見えた生徒はスタスタと食堂から去っていった。


「はああ〜、全くうう〜。」

欧風金髪ロールの碧眼生徒はヨロヨロと力が抜けたように椅子に座って大きく息を吐き出した。


「大丈夫でしたか?」

美鈴メイリン達はその生徒の側に集まった。

「さっきは一体どうなされたのですか?」


「あら…貴女は美鈴メイリンさん?」

「あの月夜ユーイーさんの可愛がっておられるという後輩の…。」


「それに、貴女は確か…闘姫ドウ・ヂェンさん?新しい副会長に任命されたという…。」


「あら、私達の事ご存知ですの?」


「ええ、それはもう…。」

「実は私は月夜ユーイーさんの従姉妹でウェン家の長女なのですのよ。」


「「「「「エエエ〜ッ?!」」」」」


言われてみれば月夜ユーイーと同じく金髪碧眼、欧風諸国の血筋らしい。

てことは安家の従姉妹である彼女の穏家、二つの家族は一緒にこの中華王国にやって来たのかな?


「私の家は四大名家の下に位置する文官なのであまり有名ではございませんから知らなくても無理はありません。」


「すみません、言われてみれば子どもの頃にちょっとだけお見受けしたような気も…。」

焦る美鈴メイリン


「いいんですのよ、私は月夜ユーイーさんと違って優秀ではありませんから。」

金髪ロールの生徒がコロコロと笑って許してくれたので皆がホッとしていた。


……………………。


「私は二年生で、穏星空ウェン・シンコンと申しますの。」

「新生徒会長に就任された多彩蜂ドゥオ・ツァイファンさんと同じクラス、同じフェンシング部所属ですのよ。」


「おやそうでございましたか。」

「では多彩蜂ドゥオ・ツァイファンさんや月夜ユーイー先輩と同じく魔法部門に出場されましたのですか?」


「私は剣の部門に出場し、早々に敗退いたしましたの…二回戦で当たったのが剣の部門準優勝車の雷音レイインさんだったのが私の不運でしたわ…。」


「え?そうでしたの?」

多彩蜂ドゥオ・ツァイファンさんのように魔法部門での出場という選択肢もございましたのに。」


「私も多彩蜂ドゥオ・ツァイファンさんはてっきり剣部門に出場されると思ってましたからアレは意外でしたわ。」

「で、彼女や月夜ユーイーさんが上の方にいる以上、私は魔法で決勝に勝ち進めるという自信がございませんでしたから…。」


「ああ、なるほど………、て、ところで始めの質問に戻りたいのですけどよろしいですか?」


「あ、ああ…そうでしたわね。」

穏星空ウェン・シンコンはグイッとお茶を煽った。


「ところで…。」


「…はい、何ですの?」


「皆さん、いつもそんなにお食べに?」


「はぁ?」

「ふえっ?」

「むぐ?」

「はふっ?」

「…ごっくん。」


チーム美鈴メイリンはこの日、何時も以上に食欲旺盛だった。

皆それぞれが空になった皿を10段も積上げ、尚も新しい食事にパクついていた!

そして穏星空ウェン・シンコンからの問いに対し、それぞれがこう答えた。


先ずは美鈴メイリン

「いえ、本日は食堂利用者が少ない事から全メニューのお値段が三割引になっておりまして!」

貴族のお嬢様らしからぬ貧乏臭い発言だな。


続いて明花ミンファ

「これを逃す手はありませんよ!そうですよね?」

せっかく今年から貴族になれたというのに庶民暮らしの頃の考え方は抜けないようだ。


「何時如何なる時に戦闘が始まるかも知れません、食べれる時に食べておかないと!」

闘姫ドウ・ヂェンよ…だからと言って食い過ぎはイザという時に動けなくなるぞ…?

もう遅いけど。


愛麗アイリーは…。

「とりあえずコレお代わり下さーい♪」

て、まだ食うのか?

王都で腹が膨れ過ぎて薬で嘔吐させられる羽目になった事、もう忘れたのか?


で、芽友ヤーヨウは…。

「…ふむふむ…小遣いの予算上、あともう一皿注文してもいけそうですね…ゲフッ。」

お前、小遣いよりもカロリー計算した方がいいぞ?


「え…と…何の話しでしたっけ?」


「あ!そうでしたわ、何故あの時あの生徒と口論になってましたの?」

「あちらは弁論大会ラストで何やら不穏な事を弁論されておられたあの生徒ではございませんでした?前髪で目を隠されていらした…。」


「…そうですわ。」

一口紅茶を口に運んでから穏星空ウェン・シンコンは語り始めた。


「あの方に私は家族である穏家、そして従姉妹でもある月夜ユーイーさんのご実家である四大名家の安家、この二つの家を侮辱されたのです…!」


(根性ありますわねーあの生徒、この二大貴族相手に喧嘩売るだなんて!)


【嫌な予感がするなー、まさかあの新血脈同盟と関わりあったりして…。】


(ま、まさかー!…ですわ…。)


残念な事にこんな予感は結構当たらずともかすったりするんだな、これが。


前髪目隠し女はどんな意図があって穏星空を挑発するような発言をしたのでしょう?

果たして学院祭はこのまま無事最終日を終えられるのでしょうか…?

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