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第百十七話【この試合に『賭け』ますわ!!】

美鈴メイリン鳳華音フォン・ファインの決勝が遂に始まります!


…と、ここで鳳華音フォン・ファインが妙な提案を…?


試合開始5分前。

漸く美鈴メイリンが自分の控え室にかけた結界を解いたようだ。


「ふう…。」

大きく息を吐く美鈴メイリン


「これ以上考えても仕方ありませんわ。」

「一度決めたのですからそれでいくしかありませんものね。」


「試合の方も、もうアレコレ想像するのは止めるとしましょう。」


………何か知らんが、アイツなりに…それなりに考えまくってたらしい。


何をそんなに考えてたのか知らんが、まあそれをアイツに聞くわけにもいかんかもな。


と、愛麗アイリーが控え室のドアをノックした。

「お嬢様、そろそろお時間でございます。」


「わかりましたわ。」

美鈴メイリンは霊斬剣を片手に椅子から立ち上がった。


…………。


ワーワー!


試合会場が湧き立つ。


『両選手、入場!』


闘技場の両端に設けられた入場口から美鈴メイリン鳳華音フォン・ファインが現れた。


二人とも歓声には応えず、真っ直ぐに互いの表情を見据えながら歩いていた。


ピリピリする雰囲気すら漂わせている。


二人が立ち位置に立った時、選手紹介のアナウンスが響く。

一際高まる声援だが、二人は睨み合ったまま動かない。


かつて、美鈴メイリンがコレほどまでに真剣に相手対して向かい合った事は無かった。


それほどまでに鳳華音フォン・ファインを警戒、そして意識してるというのか。


対する鳳華音フォン・ファインの方も美鈴メイリンの目から視線を外そうともしない。


二人は選手紹介や声援に対して、ほんの少し片手を上げたがそれ以上の反応は見せなかった。


コイツら、試合に入れ込み過ぎだ。

真剣なのは良いが怪我なんかするなよ、させるなよ?


特に美鈴メイリン、下手に切り傷や刺傷なんか負わせたら…それか自分がそうなったりして流血なんぞしたら思わぬ弱点を大衆の前で露呈しかねないから用心しろよな!


と、俺は何時もと違う雰囲気に一人気を揉むのであった。


魔法による両者のチェックが済み、登録された装備以外を所持してない事が確認されOKが出た。


そしていよいよ試合開始の合図が出される五秒前。


何を思ったのか、鳳華音フォン・ファインは剣を持ち上げ、頭上にかざした。


「私はここに宣言致します!」


………何だ?


「私はこの試合で美鈴メイリンさんに勝って、彼女を私のボディーガードにします!」

「そうね…転校は難しいでしょうから…年末年始の二ヶ月でどうかしら?」


「な?」


「なんですって?」


ザワザワザワ………!!


会場がざわついた。


「な、何ですかそれー?!」

明花ミンファは思わず席から立ち上がった!


「ですよね…それにしても、ボディーガードとは一体…。」

闘姫ドウ・ヂェンはボディーガードという言葉に引っかかったようだ。


だが対する美鈴メイリンは特に動じる事なくこう返した。

鳳華音フォン・ファインさん、それでは随分と一方的ではございませんか?」


「その宣言では私が勝った場合の旨みがございません、賭けとしては不公平ですわ。」


「あら、でしたら黎美鈴リー・メイリンさんの方も何か賭けたら如何ですか?」


「う〜ん、とはいえ私には特に欲しい物など…。」


美鈴メイリンはジロジロと鳳華音フォン・ファインを眺め始めた。


「…そうですわ、年末年始の二週間ずつを貴女のご自宅に滞在させてはいただけませんか?」


「「「「は?!」」」」

今度はチーム美鈴メイリンの四人全員が口あんぐりとなった。


ざわ…。


「ただし私一人ではなく私の友人達…次期生徒会役員が内定している四人を連れて行きたいのですケド…よろしいかしら?」


「ご、五人も?!」


「え?私達全員でお泊りですかw?」

「それはソレで楽しそうですね愛麗アイリー(笑)。」


側仕えコンビは楽しそうに笑った。


「あ、貴女達は…」


「いいではありませんか明花ミンファさん。」

「それに鳳華音(フォン・ファイン〕さんが何を企んでるのかわかりそうだし、彼女が美鈴メイリンさんへ手を出そうとしても阻止できますよ?」


「い、言われて見ればそうですね、闘姫ドウ・ヂェンさん…。」


観客席のチーム美鈴メイリンの四人はすっかり美鈴メイリンが勝つ前提で美鈴メイリンの提案に乗り気になっていた。



「…お嫌でしたらソチラの賭けの方も無かったと言う事に…。」


「わ、わわ…わかったわ!その条件を呑めば良いのね?!」


「交渉成立ですわね♪」

美鈴メイリンが満面の笑みを浮かべると、鳳華音フォン・ファインの顔は真っ赤になった。


「ハッ?」

自分の顔が火照ってると気が付いたのか、鳳華音フォン・ファインは顔をプルプルと左右に振ってから剣を腰に戻してから両手で顔をパンパンと叩いた。


(しっかりしなさい、集中しないとこのチャンスを逃してしまうわ!)


「ところで、最初貴女は私ではなく仮面の剣豪・不可視擬フカシギさんをご所望されていたのではございませんでしたか?」


「…そうだったけど、肝心の相手が居場所も連絡先もわからないのだから諦めるしかないでしょ?」


「成る程、私は第二志望の滑り止めと言う事ですのね…?」

ヨヨヨ、とシナを作って嘘泣きする美鈴メイリン

実にワザとらしい。


「ま、待って?不可視擬フカシギさんに関係無く貴女も傍に置いて置きたいのは本当よ?」

「そ!それに貴女も結構お強いですし!」


「ですわよね?貴女に一度勝ったんですから♪」

途端に笑顔になる美鈴メイリン


…別に鳳華音フォン・ファインに気に入られてるからじゃなさそうだ。

どうせ自分が強いと認められて自尊心が満足したからたろうな。


『…コホン。そろそろ始めてもヨロシイかな、二人とも?』

二人が寸劇?を繰り広げてたらアナウンス席から試合開始をせっつかれた。


「そうでしたわね、サッサと始めてしまいましょうか!」


「え、ええ!絶対に貴女に勝って私の傍に引き込みます!」

チャキッと剣を構える鳳華音フォン・ファイン


「望むところですわ!」

美鈴メイリンもまた霊斬剣の柄の方へ右手を伸ばすと腰を低く落とした。


(あの構え…確か威合斬いあいざんとか言う技よ構えですね?)

鳳華音フォン・ファインも対抗するように腰のチャクラムに手を伸ばす。


二人とも、マジなようだ。


前回の対決では美鈴メイリンが勝ったけど鳳華音フォン・ファインは自信があるのかな。

まあ確かにあのまま式神チャクラムが外部から操られなければ彼女が優勢だったかも知れない。


俺は単純な魔力量や魔法、剣術なら美鈴メイリンの優勢は揺るがないと思うんだが、戦いはスペックだけで決まるモノではないからな。


そうこうしてるうちに。

『それでは…各貴族学院代表対抗戦…決勝戦、開始!』


ピーッ!


ホイッスルが鳴らされた。


おや?


威合斬の構えの美鈴メイリンが動こうとしないぞ。

俺はてっきりあのまま試合開始と共に仕掛けるものだとばかり思ってた。


それは鳳華音フォン・ファインの方もだ。


腰のチャクラムに手をかけてはいるものの、まだソレを使おうとはしていない。


二人とも、相手の出方を伺ってるのか?

慎重になるのもわかるが…。



その時、風が吹いたせいか審判がうっかり手にしていたバインダーを落としてしまった。


カタン…。


するとその音を合図にしたのか、二人の瞳が光った。

次の瞬間、美鈴メイリン鳳華音フォン・ファインは互い目掛けてダッシュしていた。


バキイン!


二人の剣がぶつかり合う。


「ほお…私の威合斬いあいざんを防ぐとは?」


「狙い所さえ予測出来れば受け止めるのは可能です。」


「ですか…少し改良の余地がありそうですわね。」

「…しかし!」


ググッと美鈴メイリンは剣を押し込んだ。


「な…?」

グイグイ押されて鳳華音フォン・ファインの身体は後退る。


と言うより、ズズズ…と彼女の靴が滑っている後が地面に残っていた。


「な、何と言うバカ力なのっ?」


「そこはせめて怪力と言って欲しいですわ。」

ブン!と美鈴メイリンが剣を薙ぎ払った。

「アアア〜っ?!」

同時に鳳華音フォン・ファインの身体が後方に吹っ飛んだ。


鳳華音フォン・ファインは空中で軽く身体を捻ってストンと着地する。


「…至近距離で戦っては不利なようね。」

「剣の技術では負けないつもりだったけど、その力は一体何なの?」


「日頃の鍛錬の賜物ですわ♪」


(どんな鍛錬すればこんな力が出せるというの?)

(…益々興味が湧いて来ましたわ。)

鳳華音フォン・ファインはニヤリとした。

そして。


「行けっ、式神チャクラム!」

シュビイイイン!

鳳華音フォン・ファインが腰に回した手を光らせると、チャクラム達は自分の意思を持つかのように一斉に飛び立った。


「まーたそれですか?」

「私に壊されても知りませんわよ?」

美鈴メイリンも嬉しそうにコレを迎え撃つつもりのようだ。


「絶対、この冬は貴女を私のボディーガードにしてみせます!」


「私こそ、冬休みは貴女のお家でお泊りさせていただきますわ!」


二人とも互いの欲求丸出しでぶつかった。


………??


でも良く考えれば…。


鳳華音フォン・ファインが冬季に美鈴メイリンをボディーガードとして傍置いて…。


美鈴メイリンは冬休みを鳳華音フォン・ファインの家で過ごす…。


ん?!


鳳華音フォン・ファインが勝てばボディーガードという名目ながら美鈴メイリンはこの冬は鳳華音フォン・ファインと一緒に過ごして…。


美鈴メイリンが勝てば友達と一緒といえど冬休み中は鳳華音フォン・ファインの家で一緒に過ごす………って?


結局同じやないかーい?!


期間こそ二ヶ月間と二週間の違いこそあれど、要はこの二人が何日もベッタリするって事やんかーっ!!


と、俺はツッコミたかったのだが…。


カキン!ガガガッ!!


「中々やりますわね、この式神達前より賢くなってませんこと?」


「式神チャクラムは成長するのよ、そしてこの私もね!」


「ならば私も成長しなくちゃですわね!」


美鈴メイリンはベルトのポーチから鋭い鉤状のモノを取り出した。


「行けっ!竜の爪!」


ビシュっと式神チャクラムに向けて投げられたその竜の爪とやらには穴が空けられており、それは細いチェーンで繋がっていた。


ガガガッ!!


竜の爪は式神チャクラムに反応するように追撃し、美鈴メイリンへの攻撃を跳ね除けた。


「し、式神チャクラムを追尾してる?まさか?」


「伊達に竜の爪と名付けたわけではありませんわよ!」


【おい美鈴メイリン、もしかしてそれ…。】


(ええ、先日巨竜さんから頂いた鱗の破片から作って貰ったモノですわ!)


早速アレ、武器にしたのか…。


誰に頼んだのかは…大方あの変じ…いや、天才の部長さん辺りだろうな。


………んなわけで、美鈴メイリンも新しい武器を出しながら盛り上がってる周りも本人達もすっかり決勝戦。


………この勝負に賭けたご褒美はどちらも同じ内容だと言うことには誰も気が付かないみたいだがな。



一度は美鈴メイリンに負けてる鳳華音フォン・ファイン

式神チャクラムが進化してるとはいえ美鈴メイリンも新たな武器を。


果たして鳳華音フォン・ファインの次なる策は?

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