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第百十四話【後片付けは魔法でチョチョイのチョ〜イ!】

常夏海チャン・シァハイが攻撃に使った岩盤により発生した土砂や岩盤の瓦礫等で使え無くなった闘技場の後片付けに駆り出された美鈴メイリン達ですが…。


美鈴メイリン常夏海チャン・シァハイの試合から翌々日。


常夏海チャン・シァハイの放った攻撃により土埃と砂や小石、そして岩盤の破片の瓦礫にまみれた闘技場と観客席もやっと綺麗になった。


この掃除や後片付けを担当したのは闘技場を学院対抗代表戦の為に国から借り切った中央貴族学院。

その生徒会の面々が中心となってめぼしい生徒や教師に協力を願い、何とか予定日である今日迄に間に合わせたのだった。


その陣頭指揮を取っていたのは未だに生徒会長を続けさせられている安月夜アン・ユーイー


そして次期生徒会長として絶賛引き継ぎ…と言う名目で現生徒会長自ら教育中の多彩蜂ドゥオ・ツァイファン


更にはこの状況を招いた試合の張本人ということで駆り出された、我らがヒロイン美鈴メイリンだった。


彼女らは口を揃えてこう言った。

『何で私が…。』と。


多彩蜂ドゥオ・ツァイファンは、働いた。

別に名前のせいでは無いが、それはもう働き蜂のようにせっせと観客席の砂をかき集めては郊外へと捨てに行った。


美鈴メイリンも当初は面倒臭がったが風魔法でグラウンドの砂を捨てようとして却って砂を巻き散らかしてしまった。

それを見ていた闘姫ドウ・ヂェンから一言アドバイスが。

「風で砂を包んで集めるようにしてはいかがでしょう?」


「こう?ですの?」


両側から手で掬うように風で砂を掻き上げる。


が、砂粒は直ぐに風に混じり、バラバラな砂風になってしまう。


「…ちょっと違いますね。」


「うーん?…上手く行きませんわ。」


「…そうですね、例えば…」

丁度、闘姫ドウ・ヂェンは視線の先で旋風が砂を巻き上げた様子を指差した。


その砂は風の渦の中央付近に集まっている。

美鈴メイリンさん、あんな感じで。」


「ああ、なるほどですわ。」


美鈴は小さな竜巻を作って砂を巻き上げた。


………今度は上手くいった。


竜巻の数を増やしてゆくと、地面の砂溜まりは見る見る減っていった。


それらを都度郊外の指定場所へと廃棄する。

この方法だと一度運べる量は然程では無いものの、人力で運ぶよりは遥かに早いので効率的だ。

体力の消耗も無さそうだし良いことづくめかな?


他の生徒会役員や手伝いに呼ばれた生徒達も風魔法が使える者が真似し始めた。


が。

「あ〜ん、美鈴メイリンさんみたいには上手く行きませんわあ…。」


「かなりの集中力がいるわね、これ…(汗)。」


「ま、魔力消費が激しい魔法の使い方ですよ先輩〜!」


やんややんやと賑やかになる闘技場のグラウンド。


ただの一回だけ、それもちょっとの距離なら他の生徒らにも出来なくないようだけど、これを遠く迄大量に、それを何本も発生させながら何度も廃棄場所まで往復させるとなると難儀なようだな。

というか並の魔法の使い手レベルなら無理ゲーだ。


どうやらこれ、魔力操作や魔力量等、大魔法使いの父役母親おとうさま直伝の魔法教育を施された美鈴メイリンだから軽々やってみせられるのかも知れないな。


「フフフ…みなさんにも良い訓練になったようで何よりです。」

それらを見ていた闘姫ドウ・ヂェンも、五本指から発生させた五本の渦巻きを発生させてまだ薄っすら残っている小石などを掃除するのだった。


グラウンドがかなり片付けられたからか、今度は観客席にやって来た美鈴メイリン闘姫ドウ・ヂェン

「席の間を縫って廃棄場所の砂山まで運べますか?」

「チョロいですわ!」


腕まくりをする美鈴メイリンだったが、これが意外と難しい。

「この…!」

美鈴メイリンは体力を使わず魔力と集中力を使いながら汗をかいていた。

「これはこれで…中々…。」

やや苦戦気味な言い方だが、それでも小さな竜巻はその渦の中心を進行方向に向けながら客席間の通路を縫うように進んでゆく。


「そんなに難しいですか?」

試しに自分もやってみたが…

(え?意外に難しい…?!)

闘姫ドウ・ヂェンは意外な場面で結構な魔法の使い方の特訓になってる事に気が付いたが、敢えて美鈴メイリンにはそれを教えず黙って見守る事にした。


「…お、おほっ!」


「見て見て下さい!ほらっ♪」


「ほお〜、…流石ですね…。」


美鈴メイリンはコツを掴んだらしく、観客席の椅子の間を縫うように風の渦を送っている。


上から見ると、それはまるでアミダクジのように見えた。

徐々に速度も上げ、曲がる角度も鋭く垂直に近づけていった。


美鈴メイリンは楽しくなったのか、すっかり夢中になってる。


本来の掃除片付けを忘れて魔法の訓練に夢中のようだ。

いや、もはや遊んでるようにしか見えないな。


それを苦々しく見つめる安月夜アン・ユーイー

美鈴メイリンさん、遊んでないで仕事してくれないかしら?」


それが聴こえた美鈴メイリン月夜ユーイーを見るなりこう返答した。

月夜ユーイーさんにだけは言われたくありませんわ。」


「あら、ちゃんと働いてる私に何で?」


「そのお姿が皆の士気を下げるとは思わないんですの?」


「?」

美鈴メイリンの言葉の意味がわからないのかキョトンとする月夜ユーイー

それを見て「はあ…」と溜息を付く闘姫ドウ・ヂェン

そして月夜ユーイー従者である依然イーランが苦笑いをした。


美鈴メイリン達の反応は無理も無いだろうな。

何故なら月夜ユーイーは観客席の最上段二設けられた広間に堂々とビーチパラソルを立て、その傍に置いたデッキチェアで寝そべりながら指示を出しているのだから。


時折、副会長らとボソボソ話しをしてるのは指示を出してるんだろう。

決して彼女らからの苦言を受け流してるわけじゃ無いハズだ、多分。


だからデッキチェアの横に置いてある丸いテーブルの上に置かれたトロピカルドリンクみたいなのも喋り過ぎてカラカラになった喉を潤す為なんだろう、そう思わずにはいられない。


「お嬢様、この状態では周りに怠けてるように思われても仕方ないかと?」

見かねたのか従者の依然イーラン月夜ユーイーに具申した。

…いや、やんわりと苦言を呈した、のかな?


「…ああ、そういう事ですね?」

やっと今の立場を理解したのか月夜ユーイー


「誤解があるようなので説明します。」

「私も最初は皆と一緒に片付けに精を出してましたよ?」

これはホントだ。

…少なくとも、作業開始5分までは。


その後は他の役員達がやって来るのでアレコレ指示出ししたり全体の様子を眺めて考えたり、使役獣を出現させて操ったりしているうちに

「立ちん坊だと足が疲れるわねえ。」

「お嬢様、日焼けはお肌の大敵でございます。」

と、唐突に四大名家御令嬢とその従者の会話が何となく聴こえたのは憶えている。


で、誰がどっからもってきたのか知らんけど、いつの間にかビーチパラソルとデッキチェア、そしてテーブルというプールサイド定番の3点セットが置かれていたのだった。


「あ、因みにこの飲んでいるのはトロピカルドリンクとかじゃありませんよ?一応魔力回復の為のポーションですからお間違い無く。」


「お嬢様は霊獣、使役獣を操作して土砂や瓦礫等を運んでおられるのです。」

月夜ユーイー依然イーランは冷静に言い訳をする。


…なるほど、確かにさっきから郊外に運んだ砂や岩盤の破片とかの山を崩して更にどっかへと運ぶモンスターの姿が見える。


「使用してる使役獣は三体程度だけど海まで何往復も運ばせるのはさすがに魔力を使うのよ。」


月夜ユーイーはまるで肩でも凝ったかのように上半身を起こすと腕を曲げたままグルグルと小さめに回した。


「…そうでしたか、疑うような事を言って失礼しましたわ。」

「因みにそれらの岩や土砂等は何処に運ばれまして?」


「ん?…そうね、なんか殺風景な崖があったから適当にそこへ落とさせてるけど…」


キシャアアッ!!


ん?


翼竜やら象やらカバやらがこっちに向かって凄い勢いで来るぞ?


ドドドド…!


ついには街中まで入って来たので少し街はパニック気味になった。


「あの…もしやアレ、会長が土砂や瓦礫の運搬に使ってらした使役獣とかではなくて?」

何事かと闘技場の観客席エリアの壁まで跳んだ美鈴メイリンが外の様子を見るなりそう言った。


「どれどれ…ああ、確かにそうですね。」

依然イーランがオペラグラスで外の様子を見て確認する。


「マジ?あのコ達どうしたのかしら?」

月夜ユーイーも闘技場の外に向かって手を翳す。

「…………ふんふん、なるほど…。」


「…どうやら土砂や岩盤を落とした崖の海の底で寛いでいた巨竜が怒って文句を言いに来たらしいわ。」


「「「巨竜っ?!」」」


美鈴メイリン闘姫ドウ・ヂェン依然イーランの三人の声が見事に揃った。



月夜ユーイー良かれと思ってやったの行動が、結果的に王都のピンチを招く事に?

この巨竜相手に会話が通じるのでしょうか?

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