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第百十二話【私は押し寿司じゃございませんわ!決着付けるならやはり剣ですわ!!】

ああ、巨大な岩盤が上から美鈴メイリンを襲う…!?

果たして美鈴メイリンの運命や如何に。

そして常夏海チャン・シァハイは…?

常夏海チャン・シァハイは上空からの影の正体を見上げた美鈴メイリンに向かってこう言った。

「でわ、オサラバでーす☆」

影の槍を振り振りする常夏海チャン・シァハイ


これは絶対の自信が成せる行為だ。


これこそがコイツの本気、つまりホントの切札だったんだ!

【危ない美鈴メイリン…】

『シャドウ・ウォール・スプラーッシュ!!』 

猛スピードで地面へと迫る巨大な岩盤。

けど上空から見下ろす視点で見てた俺の千里眼からでは美鈴メイリンの姿はその岩盤の影に隠れてしまうのだった。


そしてその時俺の叫んだ声は常夏海チャン・シァハイの叫んだ技名に掻き消されてしまった。

少なくとも俺にはそう聴こえたんだ。


ズズーーンンン…!!!

ゴゴゴオオオ〜〜〜ッ!!!!!

猛烈な地響きと巨大な岩盤がプレスする事で猛烈に巻き上がる土埃で視界は完全に奪われた。


「ゴホゴホッ?」


「ゲホッ、め…目が…!」


「布で鼻と口を押さえて!何かに掴まるのです!」


「ふ、吹き飛ばされそう…?」


「身を低くして!」


辺りから阿鼻叫喚の声がする。


やや遅れてだが漸く観客席の防御シールドが発生し、この突風と土埃のつぶてを防いだ。


観客席を襲ったのが突風だったから魔法陣の防御反応が遅れたんだと思う。


しかしそのせいで観客席全体は舞い散った土埃が下に落ちて砂だらけになった。


誰かが飲みかけていたコップの中身にも砂が入っていた。

もう飲めそうに無いだろうな、可哀想に。


…と、そんな事より!


美鈴メイリンさん、美鈴メイリンさーんっ?!」


明花ミンファが観客席から身を乗り出して叫んでいた。


「危ないですよ明花ミンファさん?」

そんな彼女の身体を闘姫ドウ・ヂェンが支えていた。


美鈴メイリン様はどうなったのですか、闘姫ドウ・ヂェンさん?」

芽友ヤーヨウも心配そうに尋ねた。


「…まだわかりません。」


「お、お嬢様が、…ウチのお嬢様が、たかがこれしきの事で…!」


しーん………。


「ホントに…あの下敷きに…?」


「…さ、さすがにコレ…。」


「ね、ねえちょっと、やり過ぎじゃありませんこと…?」


観戦していた令嬢達が怯えるように言葉を口にする。


すると徐々に夏海チャン・シァハイを非難する声も上がり始めた。

「幾ら何でもここまでやるなんて…!」


「これで死んじゃってたら誰がどう責任とるの?」


「これ事故?事故じゃないですわよね、立派に殺人じゃございませんこと?!」


ザワザワと観客席全体がザワついた。


さすがに常夏海チャン・シァハイもその様子にイライラが隠せないみたいだ。

「…な、何でーす?勝ったからいいじゃありませんか〜?!」

「それにまだ死んだとは限ら…」


そこまで常夏海チャン・シァハイが言った時、岩盤の一部がボコッと動いた。


そして。


バコッ!!


その一部の岩が砕けると天に向かって噴き飛んだ。


そして出来た穴からは吹き荒ぶブリザードの竜巻が噴出した。


『ほんっとに危ないお方ですわねえ〜〜〜!』

低く響くような凄みのある声が辺り一帯に轟いた。


「ま、まさかこの声は…?」

鈴の音のようなコロコロしたいつもの声とは違うその憤怒を表すような響きに闘姫ドウ・ヂェンは戸惑った。


と、ブリザードの竜巻を纏いながら全身にブルーの光を纏った美鈴メイリンが岩盤に空いた穴から飛び出した!


美鈴メイリンさん!」

明花ミンファが身を乗り出して叫んだ。

彼女の眼に涙が浮かんでいた。


そんな彼女に片手を上げて答える美鈴メイリンだった。


けれどその厳しい目は常夏海チャン・シァハイを見つめたままだった。


これは本気で怒ってないか?


「貴女という方は一度ならず二度までも…いよいよ本気で私を殺る気なのですわね?」


凄みのある視線に圧されたのか僅かに後退する常夏海チャン・シァハイ


美鈴メイリンは剣の切っ先を常夏海チャン・シァハイに向けて質問した。

「一つ聞かせてくださいな。」

「何故私の生命を狙うのです?」


「答える義務はありませーん!」

常夏海チャン・シァハイは影の槍を構えて背中のシャドウウイングで空に舞った。


そして背後に真っ黒なオーラを発生させた。

臨戦態勢だ。


「影のー…鎌ーっ!!」


常夏海チャン・シァハイは影の槍を変形させて巨大な鎌へと変えた。


更には全身のビキニアーマーは漆黑へと変色し、彼女の頭には二本角の生えた黒い王冠が被られていた。


そしてその全身にはユラユラと揺れる黒い炎の帯が蠢いている。


「貴女…ホントは何者ですの?」


『…グフフフ…。』


「あれは…もしや身体を乗っ取られている?」

闘姫ドウ・ヂェンが懐から仮面を取り出した。


「待って下さい!」

それを明花ミンファは手で制した。


「なぜ止めるんです?アレは尋常の存在ではありません、もはやこれは試合などでは…」


「それでも彼女は戦うおつもりなんです!」

「見て下さい、美鈴メイリンさんは一歩も引かず寧ろ立ち向かっています!」


「この相手とは美鈴メイリンさんがご自身で決着を付けるおつもりなんです、何故なら彼女の今大会全勝のかかった大事な試合なんです!」


「だから、信じて見守りましょう…。」

明花ミンファは両手を胸の前で合わせて祈った。


「どうか…美鈴メイリンさんに神のご加護を…。」


その姿を見て次々と両手を合わせる側仕え、そして近くにいた観客達。

美鈴メイリンさん、ご武運を…。」

闘姫ドウ・ヂェンもそっと仮面をしまい、両手を合わせて祈った。


……………。


(な、なんだかさっき明花ミンファさん達からのむず痒い会話が聴こえて来てしまいましたわ…(汗)。)

美鈴メイリンの頬がヒクヒクしていた。

(そんなにマジでもありませんでしたのにい。)

(うっわー、何あれダッサーと幻滅しながら見てただけで他意などありませんでしたのよー?あんまりハードル上げないで欲しいのですわー?!)


(…と、今は試合に集中しませんと!)


(でも、私の事をそこまで理解してくださってるなんて、流石は明花ミンファさん、私のマブダチですわあ〜♡)


鉄面皮で常夏海チャン・シァハイを睨みつけてる美鈴メイリンだったが、実はその顔の裏ではこんな気の抜けるような事を考えていたのだった。


「来なさいな、例え貴女が魔物に乗っ取られていたとしても私は負けません事よ!」


『しゃらくさい…!』


常夏海チャン・シァハイは口から牙を剥き出して鎌を振りかぶる。


そして一気に振り下ろした。


ザクザクザクザクッ!!!


複数の鎌の切っ先が地面…いや、その地面を覆い尽くした岩盤を穿つ。


美鈴メイリンは落ち着いてその一つ一つを躱した。


「ふむ…。」


空に向かいシュッと剣を振る美鈴メイリン


すると天から風の刃が降って来た。


『な?!』


ズガガガッ!!


雨のように降って来るその風の刃を慌てて影の鎌で薙ぎ払う常夏海チャン・シァハイ


だがその風の刃の勢いに押され気味だ。


『くうう〜っ!』

手が痺れたらしく、鎌から離した手を軽く降って痺れを取る常夏海チャン・シァハイ


「目には目を、刃には刃でお返ししましたわ☆」


『ならコレはどう?!』

『シャドウスネーク…』


「その手はBE QUIETビー・クワイエットですわ!」


ビー・クワイエットって…たしか静かにするように、て意味だったかな?

でも何で…


…あ、「その手は食わない」にモジッたのか?


等と俺が美鈴メイリンのくだらないダジャレについて考えてると。


『むぐぐぐっ?!』


「フフフ…そのうるさい口を閉じさせていただきましたわ。」


常夏海チャン・シァハイの口が氷で閉じられていた。

唇を凍結魔法でくっつけちまったのか?


なるほど、確かに静かにさせてるな。


「こんどはこっちの番ですわ。」

「アイスローズバインド!」


常夏海チャン・シァハイの足下から氷のバラが出来上がると、その茎が常夏海チャン・シァハイの全身に巻き付いた。


「ホラホラ早くギブアップしないと、そのまま縛られていればいずれ凍死してしまいますわよ?」


防御アミュレットはあらゆる攻撃からシールドを犠牲に選手の身を守るけど、徐々に低温で冷やされる分には防御の範囲外。


なるほど、これは盲点だった。


美鈴メイリンは凍結魔法に秀でているけどこれを学院側に公式登録してたのはこんな考えもあったのか…。


(とーんでもない!)

(いつかまたあの熱っ苦しい炎龍イェンロンと対戦する事になるでしょうからアイツの炎に対抗出来る凍結魔法を真っ先に登録しといたのですわ!)


…あ、そ。


「さあ、潔く負けを認めて下さいな。」


『クククッ…それで勝ったつもりか?』


「おや、と申しますと?」


『この娘がくたばれば新たな宿主を探すのみ。』

『そう…例えばオマエなんかいいかもな。』

ズズッと舌舐めずりをする常夏娘チャン・シァハイ…の身体を借りた魔物らしき存在。


「悪い冗談ですわ。」


「それに私はアナタなら兎も角、同じ学院生の常夏娘チャン・シァハイさんを殺すつもりなんてありませんわ。」


『そうか…なら早くこの娘を解放する事だな…でないと手足に凍傷が出来て切り落とさなければならなくなってしまうぞ?』


「…止む終えませんわ、ね…。」


美鈴メイリンはアイスローズバインドを解いた。


少し苦しそうにケホケホ言ってから常夏海チャン・シァハイは向き直る。


「よ、よくもやってくれましたわねー?」


え?


「あらっ?」  


良く見ると常夏海チャン・シァハイの姿は普段の明るい配色をしたビキニアーマー姿に戻り、雰囲気も明るくなっていた。

しかも彼女の身体にしつこくまとわりついてた漆黑のオーラも受けてるし。


「あ、あの…貴女さっきまでのキャラは?」


「何ワケわかんない事言ってまーす?」

「取り敢えず影魔法だけではダメだとわかりましたー、これならどうですかー?!」


闘技場の足下の岩盤がヒビ割れると、それらは鋭利な刃物へと変化した。


「コレは…まさか土魔法ですの?」


「イエース、でもタダの土魔法ちゃいますねー!」


おい、途中から関西風になってるぞ。


「私は土から金属を精製できます、そして更に…!」


「おおっ、これは…!」


美鈴メイリンが驚いた。


「見て!あれは剣よ!」


「ウソ、あれ全部がそうですの?」


観客達もビックリしてる。


岩の破片や土くれの塊がドンドンと光輝く刃物や剣に変化していった。

それらが闘技場のフィールド全体を覆い尽くす。


「な、なかなかおやりになられますわねえ…。」

美鈴メイリンは感心した。


と、ここで。


「?」

(はて…)

美鈴メイリン常夏海チャン・シァハイを見て何かに気がついたらしい。


「ど、どうですか〜、私の実力は…!」


「す…素晴らしいですわ。」

「貴女、影魔法に頼らずともこんな素晴らしい魔法を使えたんじゃございませんか!」

素直に常夏海チャン・シァハイを褒める美鈴メイリン


「そ、そうでしょ?凄いでしょ〜!」

そう語る彼女のこめかみから薄っすら汗が滲んでた。


「…貴女の覚悟、受け取りましたわ。」

チャキッ。

剣を正眼に構える美鈴メイリン


「その貴女の剣の舞い、全てを受け止めてご覧にいれますわ!」


「やれるモンならやってみるでーす!!」


「食らうです!サウザンドブレイド!!」


何千本はあろうかという剣や刃が一斉に美鈴メイリンへと向かった。


美鈴メイリンは目を閉じて言葉を紡いだ。

「目には目を、剣には…剣を!」


カッと見開かれる美鈴メイリンの目。


竜巻斬トルネードスラッシュ・改…!」

美鈴メイリンは風魔法を纏わせた剣を三度振り回した!


妖しげな姿になった常夏海チャン・シァハイ

元に戻ったようですが一体何が起きたのか?

そして巨大岩盤に押し潰されたはずの美鈴メイリンの復活。

この試合の行く方は?

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