表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/161

第百九話【私達を酔わせる芳醇の紅(くれない)…♡】

こんにちは、明花ミンファです。

鳳華音フォン・ファインさんの試合を観に行ってその帰り、私達は鳳華音フォン・ファインさんと小雀シァオ・チュエさんのお二人と一緒にお食事する事になったのですが…?

「いっただっきま〜〜〜す!!」

テーブルに並べられた料理に舌鼓をうつ美鈴メイリン達。


中華風の王国だけに俺の前世で知られる中華風の料理が主に並んでいた。

その中には欧風な肉料理やスープもあったが、これは主に北貴族学院の二人が好んで食べていた。


「モグモグ…フォンさん達は欧風料理の方がお好みなのでして?」 


美鈴メイリンから質問されたフォンはニコニコしながら口に運ぶスプーンを止め、ナプキンで口元を拭ってから返事をした。

「はい、元々この国の北側は欧風国家が多いのでこのような料理の方が食卓にあがり易いのです。」


「私も王都で食する事が出来て感激しております。」

フォンの従者である小雀シァオ・チュエも機嫌良さそうに微笑んでいた。


「気に入っていただけたのなら何よりですわ。」

美鈴メイリンはグラスに注がれていた赤い飲み物をグビッと飲んだ。


「ふぁらっ?」

げふっとゲップした美鈴メイリンがふらついた。


「め、美鈴メイリンさん?」

慌てて隣にいた明花ミンファ美鈴メイリンの身体を支えた。


「あ…これはワインですね。」

白百合のプリンセスが冷静に眺めた。


「そのようですね、こちらに置かれるはずだったのに料理の皿が多すぎてそちらに置くしか無かったのかも知れませんわね。」

フォンもそれ自体は特に気にしてなかったようだ。


「…もしかして、美鈴メイリンさんはお酒が駄目でしたか?」

白百合のプリンセスは愛麗アイリーに尋ねた。


「う〜ん、どうだったのでしょう?」

「少なくともリー家では食卓にお酒の類は置かれてなかった気がします…。」


芽友ヤーヨウは驚いた。

「じゃあ、これが始めての飲酒?」


フォンは気不味そうに尋ねた。

「あの、そもそも高等部に上がる年齢なら飲酒出来るのではありませんか?」


「…一応、そうだったような…。」

明花ミンファが困ったように答えた。

皆、飲酒そのものに興味が無かったんだろう。

あまり其の辺については認識してないようだった。


百合ゲー世界でのこの国、中華風っぽい中華王国(現実の中華人民共和国とは成り立ちの設定からして全くの別物)の成人年齢は一応十五歳で高等部入学時点で成人扱いとなる。


なので法律上は問題無い、のだが…


だからと言ってお酒が飲める体質なのかどうかは飽くまで個人差があるのだった!


「私達の地方では冬の寒さがありますので、普通に中等部からは少量という決まりはありますが飲酒が許されていたので…。」

フォンは「ぬかった…」という表情をしていた。


美鈴メイリンさん、美鈴メイリンさん?!」

ユサユサと身体を揺する明花ミンファ


「ふにゃああ〜♪」

美鈴メイリンは目が回ってるのか朦朧としてる。


「でも信じられない…幾らお酒に弱かったからと言っても、たった一口でベロンベロンになるなんて…?」

正直、鳳華音フォン・ファインは呆れた。


それに対して明花ミンファは真剣…というかかなり慌てていた。

飲酒量からして問題無さそうだけど、もしかしたら急性アルコール中毒を疑ってないか?

「わ、私は美鈴メイリンさんを安静にさせますから皆さんはお食事を続けて下さい!」


「お、お嬢様?私も…」

芽友ヤーヨウはそこにいて!貴女には役目があります!」


「あ、私もお供に…」


愛麗アイリーさんは美鈴メイリンさんのお食事分を持って帰ってあげて下さい!」

そして美鈴メイリンの懐から例の小切手を抜き取り愛麗アイリーに預けた。


「は、はい…。」


「白百合のプリンセスさんは全員の護衛、良いですね?」


「はあ…構いませんが…」


「ではお願いします!」

言うが早いか、明花ミンファ美鈴メイリンの身体を背負い、店を出て行った。




チーム・美鈴メイリンのメンバーは皆、明花ミンファの剣幕に呆気に取られていた。


明花ミンファさんてあんな怪力の持ち主でしたっけ?」

白百合のプリンセスは芽友ヤーヨウに尋ねた。


「まさか…ウチのお嬢様はあんなに力持ちなんかじゃありませんでしたよ?」


「愛の力、ですかね?」

愛麗アイリーが呟くと、皆が神妙な顔でうなづいた。


「え…と…あのお二人、そういう関係でしたの?」

フォン小雀シァオ・チュエの二人は顔を見合わせた。



ズダダダダ…!


医学が前世の世界より発展してないこの世界では病院は王都といえどそう簡単に見つかるものじゃない。


とにかくどこか休める処を、と明花ミンファは探していた。


「あ!ここなら!」


安宿街らしき一区画を見つけた明花ミンファはそこに駆け込んだ。


彼女はこの時思いもしなかった。


そこはタダの宿屋街では無かった事を。


……………。



「な、何だか派手というか…赤みがかった照明が多い、宿屋街ですね…。」


ヨイショッと崩れかけた美鈴メイリンの身体を背負い直し、ヨタヨタ歩き始めた。


さっきまで気合いで駆けて来た明花ミンファだったが、この気合いが抜けそうな雰囲気を漂わせる街の様子を見るうちに身体から力が抜けそうだった。


オマケに。


「…ん…。」


ドキッ。


首元で美鈴メイリンが吐息を洩らし、その息が明花ミンファの首筋にかかる。


(い、いけない、しっかりするのよ明花ミンファ?)


更に。


ギュ…と美鈴メイリンがしがみつく。


(せ…背中に…?)

美鈴メイリンの身体の前面が明花ミンファの背中に押し付けられた。


(…や、ヤバいです、これ以上は…!)

自分で自分を抑えられなくなりそうな…というか体力が尽きて崩れてしまいそうになる明花ミンファだった。


(と、取り敢えずあそこに…!)

明花ミンファは一番近くにあった宿屋に何とか飛び込んだ。


ガラッ。


「二名様いらっしゃ〜い☆」


二階に通された明花ミンファは宿屋の受付け係の力を借りて美鈴メイリンを運んだ。


「酔わせてこんなとこに連れ込むなんてお嬢ちゃんもかなりやるねえ〜♪」


「そ、そんなんじゃ…(汗)」


「でわでわ、ごゆっくり〜♪」


受付係は楽しそうに下の階へと下りていった。


「もう…ホントにそんなツモリじゃ…」


目線を落とす明花ミンファの目にベッドに寝かされた美鈴メイリンがいた。


少し汗をかいている。


「暑いのかしら?」


美鈴メイリンの上着を脱がせてあげる明花ミンファだった。


「む…胸元も少し開けた方が…いいわよ、ね…?」

誰に聞くでもなくそう呟く明花ミンファ


一つ一つ、ゆっくりボタンを外してゆくと美鈴メイリンの胸元をそっと開いた。


美鈴メイリンの白い肌と、そして更に真っ白なブラがチラ見した。


(可愛い…♡)


ドキドキ胸が昂る明花ミンファ


思わず美鈴メイリンの肌へ口づけしたくなるような衝動にかられる明花ミンファだった。


「い、いや駄目よ?こんなタイミングを利用するなんて!」


「…で、でも…。」


(もう、我慢出来ないかも…?)


自分で自分に言い訳しながら、そっと明花ミンファが顔を美鈴メイリンの唇に近づけていった………。


…………と、


「うぷっ。」

唐突に美鈴メイリンの口から声が漏れた。


「いっ?!」

その声がするや反射的に明花ミンファは飛び退いた。


そして美鈴メイリンは口を手で押さえながら上半身を起こした。


(これってまさか…。)


「うぶ…。」

美鈴メイリンの顔が真っ青だった。


「せ、洗面器!」

明花ミンファは慌てて部屋中を探し回った。


…………………。


敢えて描写は避けよう。


あ〜見たくも無かった(笑)。


そんな展開も漸く落ち着いた。


二人はベッドで横になっていた。


「…落ち着きました?」


「ええ…やっと、ですわ。」


美鈴メイリンの手を優しく明花ミンファが握っていた。


「それにしても驚きました、美鈴メイリンさんてホントお酒に弱いんですね?」


「あれがまさかお酒だったなんて…美味しくて未だに信じられませんわ。」


フォンさんの傍に置かれるはずだったのが間違えて美鈴メイリンさんの方へ置かれたみたいですね。」


「私ってそんな呑みそうな顔に見えますの?」


「さあ?」


そして二人はクスクス笑いあった。


「しかし折角の会食でしたのに皆さんにはご心配おかけしてしまいましたわ。」


「大丈夫ですよ、そんな公的な集まりでも無かったんですし。」


「お食事代の方はお支払い出来ましたのかしら?」


美鈴メイリンさんの小切手を愛麗アイリーさんに渡して置きましたから大丈夫ですよ、きっと。」


「…まあ、芽友ヤーヨウさんや白百合のプリンセスさんもご一緒でしたから多分そうですわよね。」


ギュッと美鈴メイリンの手を握る明花ミンファの手の力が強くなった。


「あの…美鈴メイリンさん?」


「はい…。」


「わ、わた…私…。」

明花ミンファは身体を起こして美鈴メイリンに覆いかぶさった。


「私、貴女の事を…!」


明花ミンファはそのまま顔近づけてくる。


「み?明花ミンファ、さん…?」

美鈴メイリンはドギマギした。


「ちょ…ちょっと、落ちついて…?」

美鈴メイリンの腕力なら簡単に明花ミンファを引き離せる筈だ。


だけど何故か振り解けない、いや振り解こうともしなかった。


真っ赤な顔をして凍りついたように身体が微動だにしない。


「あ…あわあわ…。」

完全に頭がフリーズしてやがる。


【情け無い、しっかりしろ!】


(ん、んな事を申されましてもお〜〜(汗))


【…もお〜、じゃねえ!オマエは牛か?】


(知りませんわ、もお〜〜ッ!)

(か、身体が…金縛りみたいに動けませんのよおお〜〜っ?!)


【………やれやれ。】


その時、フッ…と目を閉じた明花ミンファの顔が美鈴メイリンの顔に落ちて…


(も、もう覚悟を決めるしか…無いんですの…?)


美鈴メイリンは緊張のあまりグッと目を閉じた。


トサッ…


(〜〜〜〜〜!!………)


(…………!…………)


【おい。】


(………んんん〜〜〜っ………)


【おい、いい加減目を開けろ。】


(あ、開けられませんわあ〜っ!)


【良いから横を見てみなって。】


(〜〜〜〜〜!!!)


【…オマエ、初心うぶな反応はそこまでにしろって。】


【前に事故とはいえ明花ミンファとファーストキスしてんだろ?】


(こ、今回は事故ではすみませんわあ〜〜っ)


【いや事故だよ】

【未遂で終わるという事故だがな。】


(………?)

(未遂…え…)


漸く恐る恐る目を開ける美鈴メイリン


その顔の横には「くーくー」と寝息を立てる明花ミンファが。


「み…明花ミンファさん…?」

明花ミンファの身体を横たわらせて起き上がる美鈴メイリン


【余程オマエの事が心配で気が張ってたんだろうぜ、緊張の糸が切れたらしい。】


「…あ、さいでございますか…」

ホッとした美鈴メイリンもまたドッと疲れが出たようだ。


「あ〜、私もついでにこのまま寝ちゃいますわ…おやすみなさあ〜い…。」


二人とも力尽きたようにドップリと深い眠りについてしまった。


【変なカップルだなあ。】


俺にはどう考えてもさっきの美鈴メイリンは迷ってたように見えた。


このまま明花ミンファとマブダチとしての一線を越えてしまうべきか、それともまだまだマブダチとしての一線の手前で踏み止まるべきか、てね。


さっさと恋人関係を認めてしまえば良いのに…それとも白百合のプリンセスとどっちにするか迷ってるて事は無いよな?


それはそれで…俺がちょっと面白く無いような…。


多分、他に理由は無いよな?


あ、でもコイツがこの時点で明花ミンファと結ばれてしまったらこの先の展開への影響はどうなるんだろ?


う〜ん、やっぱまだそういう関係になるのは早いんかな?


コイツが白百合のプリンセスを狙ってる可能性もあるし、まだカップル成立は先でもいいかもな。


…いや、白百合のプリンセスをコイツにくれてやるのは勿体無くないか?


ああ〜、この世界がゲーム世界で無ければ俺が白百合のプリンセスを落としたいんだけどなあ?!


でも仮面の聖霊はゲームシステムでは本来名も無い裏方みたいな処遇だったからなあ〜。


俺にはチャンス無いのかなあ…グスン。


…………い、いかんいかん!

今の俺は仮面の聖霊…の役だからな!


…でもゲーム世界のストーリーがエンドになれば、案外俺にもワンチャン…?


………等と堂々巡りの思考を繰り返していたらいつの間にか朝になってた。


正確にはまだ午前5時くらいか?


美鈴メイリン明花ミンファは…


ろ、露骨に抱き合ってる!?


オデコをくっつけ合ってる…このままキスしたりしないよな?


…二人が起きた時どんなリアクション取るか見ものだ(笑)。


そして5分後。


案の定、二人はビックリして飛び起き、離れた。


二人はそのままドキドキしながら身支度を済ませて宿を出る。

が、その宿屋街は連れ込み宿が軒を並べてた事に気が付き、パニクりながら駆け足で宿屋街を後にするのだった。


学院寮に帰ってからも二人はかなり周りから冷やかされたようだ。

幸い教師の耳には入らないように皆気を付けてくれていたようだが。


「二人ともお互いのほっぺたにキスマーク付けながら帰って来たんですよ?信じられません!」


俺は精神世界の部屋へ招待した白百合のプリンセスからその時の状況をウンウン、と頷きながら聞いてあげた。


「そりゃ大変だったなあ〜、あ、お茶おかわりする?」


「ください!」


ガチャン!とカップを乱暴にテーブルへ置く白百合のプリンセス。


(やれやれ、これが紅茶じゃなくてワインだったらそれこそとんでもない事になるところだったかも?)


とはいえ白百合のプリンセスが酔った時どんな反応するかは興味津々な俺だった。


で、この騒動の元の二人はというと。


「もうお酒は懲り懲りですわあ〜。」


「あ、ところで鳳華音フォン・ファインさんは美鈴メイリンさんを試合に招待したのは結局何だったんでしょうね?」


「…あ。」


すっかり忘れられた存在の鳳華音フォン・ファインだった。


で、その頃…その鳳華音フォン・ファインもまた当初の目的を美鈴メイリンの「一口で酔い潰れ騒動」のせいで忘れてしまっていた。


「わ、忘れてましたあ〜〜〜!!!」 

ジタバタする鳳華音フォン・ファインをジト目で眺めながら従者の小雀シァオ・チュエはこう言った。

「はいはい、今度は私達が美鈴メイリンさんの試合を観戦に行きましょうね。」


「よしっ、今度こそ美鈴メイリンさんをボディーガードに勧誘します!」


「…ところで隣の席におられた仮面のお方、あの方も仮面の剣豪さんとやらかしら?」


「少なくとも不可視擬フカシギさんとやらでは無さそうでしたけど…はて?」


鳳華音フォン・ファインは会食の場にも居た白百合のプリンセスの事を聞き逃していたのだった。


というわけで、今回付かなかったあらゆる決着は美鈴メイリンの次の試合後へと持ち越されるのであった!





………は、恥ずかしいです…!


わた、私…よりにもよってあんな…キャッ♪


………え?単なる未遂だろ?ですって?


ち、違うんです!

つい勢いで?あ、あんな事を私から…(汗)。


き、嫌いにならないで下さいね?美鈴メイリンさあ〜〜〜んっ!!!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ