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第百八話【疑惑の決着…まあとりあえず腹が減ったら会食ですわ!】

鳳華音フォン・ファイン常夏海チャン・シァハイの試合に決着が付きます。


しかしそれは何かしっくりしないモノを残すのでした。


鳳華音フォン・ファインの放ったのは式神チャクラム軍団が火の魔法を纏い鳥の姿と成ったホムラの鳥ことファイアー・バード・スマッシュ。

それは真っ直ぐに常夏海チャン・シァハイ目掛けて突っ込んでいた。


その技に対して蛇の如く纏わりつくかのように伸びる無数の影の手。

常夏海チャン・シァハイの影から伸びたシャドウスネーク・バインドだ。


ニュルニュルニュルニュルッ!と真っ黒な影の手が火の鳥に巻き付こうとする。


が、それを超高速と運動性能で振り切り、火の鳥は常夏海チャン・シァハイへと迫る。


ここで常夏海チャン・シァハイは奇妙な動作を見せた。


火の鳥を睨み付けて何か呟こうとした常夏海チャン・シァハイだが、「フッ」と口元に笑みを浮かべたかと思うと数本の影の手が彼女のその身を守るように盾となる。

そしてそのまま常夏海チャン・シァハイはファイアー・バード・スマッシュの直撃を受けるのだった。


ズガアアン!!


凄まじい爆発音が轟き常夏海チャン・シァハイの姿が爆煙に消えた。


闘技場全体がざわめいた。


薄目でその様子を確認する鳳華音フォン・ファイン


すると。


『中々の攻撃でしたねー。』


煙が薄れて来るとその立ち姿が見えてきた。


そしてボロボロのビキニアーマーを着用したままの常夏海チャン・シァハイの姿が確認出来た。


オオオーッ!

観客席がどよめき、そして歓声を挙げた。


「凄い、凄いですわ常夏海チャン・シァハイさん!」


「あれだけの攻撃を受けても平気でらっしゃるなんて!」


…いや、ビキニアーマーはしっかりダメージ受けてるんだが?


浮かれる観客達とは逆に鳳華音チャン・シァハイは警戒した。


あれだけの攻撃をマトモに受け切ったのに常夏海チャン・シァハイの身体そのものにはさしたるダメージが無いのだ。


鳳華音フォン・ファイン常夏海チャン・シァハイから来るであろう反撃を警戒していたんだ。


けど…。


「参りましたわー、私の負けですうー♪」


常夏海チャン・シァハイは意外にもアッサリ負けを認めた。


まさかの敗北宣言に誰もがポカーンと口を開けた。


「確かに私はアナタの攻撃に耐えられました〜、けど〜。」


「この試合のルール上では負けなのですわー。」


ちょっとだけ不本意そうに言う常夏海チャン・シァハイは胸元から防護アミュレットを取り出した。


ものの見事にアミュレットは砕け、そしてそのアミュレットの発する防御シールドを可視化させるとそのどれもがズタズタに損傷し使い物にならなくなっていたのだ。


なるほど、確かに防護アミュレットの防御シールドが常夏海チャン・シァハイを防御して犠牲となったのだから彼女の身は無事で済むハズだわな。


この学院代表対抗戦の試合は選手たる生徒の生命を守る為の防防護アミュレットが正常に機能する事が前提。


だから防護アミュレットの使用不能状態は勝敗の決定を意味していた。


だからこの試合ルール上は確かに常夏海チャン・シァハイの負けとなるのだ。


そして鳳華音フォン・ファインはと言えば。


「………あらそうですか。」

うつむきながら面白くなさそうなニュアンスで言葉を吐き捨てた。


「確かにルールはルール、勝ちに変わりはありませんから、ここは素直に喜ばせて貰いましょう…。」


「ですが。」


ここで彼女はバッと顔を上げた。


「来年はこうはいきませんからね!」

キッと常夏海チャン・シァハイの顔を睨みつけた。

「どんな事情がおありか知りませんけど、こちらとしては実に不愉快です!」

そのまま勝ち名乗りを受ける事もなく、ズンズンと歩いて退場していった。


「あらあら、お気に召さなかったようですねえ〜?」


折角勝ったというのに観客を無視して速攻で帰ってしまった鳳華音フォン・ファインの態度に会場はザワついた。 


常夏海チャン・シァハイは負けたというのにサバサバしてた。

入場して来た時と同じように従者が近寄りビキニアーマーを脱がせると、アンダースーツ姿の常夏海チャン・シァハイにコートを被せ、二人はそのまま退場していった。


にこやかに手を振る常夏海チャン・シァハイに「惜しかったー」とか「次の試合は頑張れー」等と観客達から声援、拍手が送られていた。


…その様子からはほとんど悔しさは感じられない。


あまり今回の試合の勝敗自体には執着していなかったのだろうか?


【なんか面白く無さそうだったな、鳳華音フォン・ファインの方は。】


「そりゃそうですわ、あんな手抜きみたいな形で中途半端に試合を終わらせられては。」


「ですね。」

「確かにルール上ではこれで決着ですけど…」


【何か不可解みたいだな、二人とも。】


「ええ、どんな意図があるのか存じませんけどあれは鳳華音フォン・ファインさんに取ってみれば失礼でございますわ。」


「果たして何を考えての事でしょうか、常夏海チャン・シァハイさんは…?」


何となくだが、嫌な感じが俺達にはあった。


【まさか次の対戦に備えて、敢えて手の内を隠したなんて事は無いよな?】


「次の常夏海チャン・シァハイさんの対戦相手と言えば…。」


白百合のプリンセスがパラパラと試合のパンフレットを捲る。


それを見ている美鈴メイリンと俺。


そう、それは他ならぬ

「…本年度の中央貴族学院代表…黎美鈴リー・ メイリン。」


「…私ですわね。」


美鈴メイリンと白百合のプリンセス、その二人の顔に緊張が走った。


…………。


試合も終わり、闘技場から退出した美鈴メイリンと白百合のプリンセス。

だが美鈴メイリンを招待した筈の鳳華音フォン・ファインは何時まで経っても観客席の出口には現れなかった。


「よっぽど気分を害してらっしゃるのか、或いは…。」


「あくまで今回は試合に招待しただけ、とか?」


「それにしても普通は挨拶くらいはする為にこちらへいらっしゃる筈でしょう?」


「きっとさっきの事で機嫌が悪くてそれすらすっかり忘れてらっしゃるのですわ!」

美鈴メイリン鳳華音フォン・ファインかその従者の小雀シァオ・チュエからの挨拶や伝言が無いことにプンスコと憤慨してるようだった。


そんな美鈴メイリンを会場の一般観客席から合流して来た明花ミンファ達が「まあまあ」と宥めている。


すると


「ごめんなさい、お待たせしてしまいました。」

ようやく気が晴れたのか、ニコニコてをふりながら鳳華音フォン・ファインが従者の小雀シァオ・チュエを連れて歩いて来た。


小雀シァオ・チュエ鳳華音フォン・ファインの斜め背後からではあるが、頭を下げて謝罪した。

「申し訳ございません皆様、お気付きと思いますがお嬢様は勝敗の結果に納得がいかず、落ち着くのに時間をようしまして…。」


チュエ、一言余計です!」

プン!と顔を背ける鳳華音フォン・ファインと、それを受けて「恐縮です」と微笑んで返す小雀シァオ・チュエのやり取りが微笑ましくて皆の顔が綻んだ。


当然、それはさっきまでプチオコ!だった美鈴メイリンも。


「ま、まあそれでしたら仕方ありませんものね、当然私達もそのへんは理解してましたからご安心を♪」

と、コロッと態度を変える美鈴メイリンだった。


「では折角ですからこの王都のレストランでお食事いたしませんこと?私が奢りますわ!」

美鈴メイリンにしては太っ腹だなあ。

ここに今何人いると思ってるんだ?


「あ、勿論北学院のお二人以外は自腹でお願い致しますわね♪」


ズコーッ!

という音が聴こえそうなくらいに中央貴族学院のメンバーがズッコケた。


ま、どうせそんなこったろうと思ったけどな。


そんなこんなで北貴族学院二人を加えた美鈴メイリン一行はそこそこ立派で大きめなレストランに辿り着いた。


「うわあ…。」


「こんな凄い食堂が…。」


北貴族学院の二人が感動しているのを見て悦に入る美鈴メイリン

「ど、どうですこと?素晴らしい店でしょう?」


オマエだって初めてだろがこんな店!


「えと…私達持ち合わせあまり無いんですけどお値段とか大丈夫なんですか美鈴メイリンさん?」

このメンバー中一番に庶民感覚がある明花ミンファが恐る恐る尋ねた。


「だ、大丈夫ですわ!」

美鈴メイリンは懐から一冊の手帳を取り出した。

「これは月夜ユーイー会長から預かってきた小切手ですわ!」


「こんな事もあるだろうと、月夜ユーイー会長から生徒会権限で接待費としての使用許可は下りてますのよ、おーっホッホッホ!」


どこの高慢痴気令嬢だキサマは?


「い、いいのですか?他学院のたかが一介の生徒でしかない私達にそんな…。」


「遠慮ならさないで下さいなフォンさん、美味しいモノ沢山食べて楽しい気分になりましょう、ですわ!」


「しかし…月夜ユーイーさんも思い切った事をされましたね…因みにその小切手は学院の予算から落ちるのですか?」


「あら白百合のプリンセスさんは御存知無かったのですわね?」

「四大名家の一つである月夜ユーイー先輩のご実家であらせられるアン家はその財力から多大な援助をされておりますの。」


「もしや、その小切手も援助の一貫…?」


「ですのよ、いやー持つべきものは大富豪の先輩ですわね〜♪」


【オマエんもその配下の八大武家だからそこそこ裕福なんじゃねえの?】


(今は余計な事を言わないで下さいな名尾ナビ君!)


(我が家は何故かお金に関してはものすっごく厳しいんですのよ!)


え〜と、これについては俺から補足至徳必要があるな。


先の魔物の大量発生等による大きな戦がなければ四大名家が直接動く事はない。


それに四大名家は自ら出向いても前線より後ろで指揮する事も多いし、戦に出向く事自体がそうそうは無い。


対して八大武家ともなれば四大名家の代わりに直接前線に出向く事も多いし四大名家の護衛の名目上実戦という事も珍しくは無い。


この前の魔物大発生時には領地を守るためアン家が出向かざるを得なかった。


代わりに美鈴メイリンの実家である八大名家のリー家はアン家不在の留守を任され出番は後になったけどね。


それは最初から大きな戦いが予想された故のイレギュラーだったけど、どっちにしろ戦闘そのものは四大名家よりも八大名家が受け持つ事が多くなる。


戦闘が多くなればそれだけ周囲の破壊も大きくなる。


それだけ武器や武具の破損による修理修繕費は嵩むし、兵達への危険手当や治療費も大きくなるし、馬や道路、周辺の建物や農地への被害への見舞いや修繕費も大きくなる。


で、それらを各武家が主に負担する事になるワケで、これが結構バカにならないんだな。


しかも力を持つ上位貴族ともなれば家を維持する為の人材や各所への人件費や諸々の費用、交際費、取り引き先との付き合いによる高価な商品の買い物なんかで更に出費は嵩む。


世知辛いようだが、入ってくるお金に対して出ていくお金もバカにならないのが貴族社会だ。


華美な宝石や装飾品、豪勢なパーティー料理に惑わされがちだが上位貴族と言えど日常生活では不要な出費は抑えておく家も珍しくは無い。


桁違いな魔力で放たれる高度な魔法と、化け物じみた体力に裏打ちされた鬼神の如き剣技を持つ黎両親のいる(リー)家。


だからこそ当然戦闘で破壊してしまうモノや破損してしまう武器が大量に出てしまうから仕方の無い事なんだろうけど…。

その割を食うのは美鈴メイリンのお小遣いでもあるのは笑え無い話しだ。


まあそんな事情を見越してなのか、単なる恩の押し売りなのかは知らないけどとりあえず小切手の事を思い出した美鈴メイリンは懐が温かいと気付くや急に太っ腹になった。


「折角ですから、この小切手で皆さん全員のお食事代金をお支払いしますわ!」


すると


『ゴチになります!!』

その場にいた美鈴メイリンの仲間全員が声を揃えるのだった。







勝負での気不味さを吹っ切る為か月夜ユーイーの小切手でタダメシする気マンマンの美鈴メイリン達!


さて、次の対抗戦はどんなカードが待ち構えているのか?

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