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第百五話【これがホントの両手に花!ですわ〜(汗)】

相変わらず美鈴メイリンは百合恋愛には疎いというか馴れないようです。

そうとは知らない百合ヒロイン二人は無意識にグイグイと美鈴メイリンに迫るのですが。

そして鳳華音フォン・ファインの前にいよいよ南学院代表選手が現れます。


珍客?炎龍イェンロンが何故か慌てて去って行くのを見届けた後、郊外へ向けて歩き始めた美鈴メイリン一行。

 

明花ミンファは今年度の学院代表対抗戦パンフレットの中身の地図を確認しながら歩いていた。

「会場は後2km先でしたね。」


道幅が広いからか美鈴メイリンの両隣に明花ミンファと白百合のプリンセスの二人がガッチリと美鈴メイリンの腕に寄り添いながら歩いている。


そのせいか時たま両隣の二人の胸が美鈴メイリンの腕に当たってたりする…実に羨ま…いや、風紀が乱れそうな眺めだ、チクショー!


と、俺からすれば羨ましい限りなのだが美鈴メイリンからすれば恥ずかしいやらどう反応して良いのかパニくり気味だった。


それでも何とか明花ミンファから振られた話題に食い付くのだった。

「…え、ええ?い、急がないと…試合が始まってしまうかも、知れませんわっ。」

美鈴メイリンはこの妙な気分を誤魔化すかのように懐中時計を胸元から出して現在時刻を確かめた。

ちょっと懐中時計の文字盤が揺れてて数字が読み辛そうだが。


「急ぐなら、転移アミュレットの出番ですね?」

芽友ヤーヨウは転移アミュレットをポーチから取り出した。

 

「あ、それには及びませんわ…」


しかし時すでに遅し…。


「えいっ。」

芽友ヤーヨウの声が聞こえたかと思うと、気が付けば全員の目の前には試合会場となる大規模な闘技場があった。


「ここで場所合ってますよね?」

芽友ヤーヨウ美鈴メイリンに尋ねた。


「いえ…まあ合っておりますけど…。」

美鈴メイリンは少し微妙な表情だった。


明花ミンファと白百合のプリンセスからソフトな感触でサンドイッチにされてなければ芽友ヤーヨウを止められてたはずなのに、と残念に思ってるんだろうな。


「ん?」

てっきり感謝か労いの言葉がいただけると思ってたらしい芽友ヤーヨウはキョトンと首を捻った。


すると美鈴メイリンの気持ちが読めたのか明花ミンファ芽友ヤーヨウにこう語るのだった。


「あのね芽友ヤーヨウ美鈴メイリンさんはきっとこの先何があるかわからないから念の為に転移アミュレットの魔力を無駄遣いして欲しくなかったのよ…。」

「ですよね、美鈴メイリンさん?」 


明花ミンファから話しを振られた美鈴メイリンはの顔に喜びがあった。

「そうそう、そうなんですわ。」

「流石私の真友ですわ♪」


「言われてみればそうですね…補助魔法で全員の身体能力を底上げすれば時間に充分間に合うと思われましたから。」

既に白百合のプリンセスへと変身していた彼女もまた頷いていた。


芽友ヤーヨウ、ドンマイ?次は気を付けよう、それでいいじゃない。」

愛麗アイリー芽友ヤーヨウの肩に手を置き励ます。


「ですね。…美鈴メイリン様、私がせっかち過ぎました。」


「いえいえ魔力はまた充填すれば良いのですし、その分警戒を怠らないように致しましょう。」

美鈴メイリンも気分をとっくに切り替え気にして無いようだった。


「そう言っていただけて嬉しいです。」

芽友ヤーヨウはホッと安堵した。


「それでは私は白百合のプリンセスさんと指定された席へ向かいますわ。」


ここでやっと両手に花状態から解放された美鈴メイリンは心底ホッとしていた。

(あ、あのままでしたら何かが私の中で爆発しかねませんでしたわ、ああ恐ろしい…!)


「私達は一般席に向かいます、では後ほど。」


一行は闘技場入口で美鈴メイリンと白百合のプリンセスの二人、そして明花ミンファ芽友ヤーヨウ愛麗アイリーの三人に分かれた。


…………………。


「さて、指定された私達の席は…」

美鈴メイリン達の席には少し上級貴族や成金など裕福そうな大人や若者達が既に着座しており、歓談していた。


二人に与えられた観客席はかなり手前の観やすい位置にあった。

「あ、ここですわね。」

二人が席に腰掛ける。


…と、白百合のプリンセスは周りからかなりの視線を集めている事に気付く。


白百合のプリンセスはコソコソしながら美鈴メイリンに話しかけた。

(あの…私達結構目立っておりませんか?)


(…?…私はともかく白百合のプリンセスさんなら目立って当然だと思いますけど…?)


二人はヒソヒソと小声であーでもないこーでもない、と話す。


しかし顔を近づけながら会話するその姿が周りの観客達の琴線?に触れたらしい。

二人は更にニマニマしながら好奇の目線に晒される事となってしまった。


「見てご覧なさいな、可愛らしくも高貴そうなカップルが何やら語り合っておりますわよ?」


「あらまあ、お似合いなお二人です事♪」


「互いへの愛でも呟かれておられるのかしら、キャッ♡」


「片方のお方、あのティアラとドレス…王族のお方かしら…さぞや高名なお姫様なのでしょう。」


「仮面でお顔を隠されているという事は、お忍びでいらっしゃってるのね?」


「という事はまさか、偲ばれる恋なのですね♡」


「その隣の学院生のお方、何処かでお会いしたような…いずれにしろかなり高位の御令嬢とお見受け致しましたわ。」


「まあ、それではあの高貴なお二人は許婚者同士であらせられるのかしら?」


キャッキャッ♡と黄色い声を挙げながら勝手に自分達のラブストーリーを作って聞かされる美鈴メイリンと白百合のプリンセスは恥ずかしくなって顔を伏せた。


「は、恥ずかしいですわね…。」

「は、はい…。」

しかし美鈴メイリンは単純に恥ずかしがってるんだが、白百合のプリンセスの方は何処となく嬉しそうな顔をしてるぞ?


…………ちょっとだけ美鈴メイリンが羨ましい。

ほんのちょっと、ちょっとだけだけどな?


さて、そんな風に美鈴メイリンが白百合のプリンセスと羞恥に晒されていると。


観客席がにわかに湧き上がり始めた。


両選手が入場して来たのだ。


まず最初に入場して来た一人は、言わずと知れた鳳華音フォン・ファインだった。


『北学院代表、鳳華音フォン・ファイン選手の入場です!』


キャーキャーキャー♪♪♪


周りから黄色い歓声が飛ぶ。


鳳華音フォン・ファインの人気は絶大だった。

彼女は入場しながらアチコチに手を振っていた。


例の二つに分離する剣を手に持ち、腰にはあの式神チャクラムを装着していた。


…おいおい、また壊されても知らないぞそのチャクラム。


美鈴メイリンもボソッと呟いた。

「壊されるのが嫌なら持って来なければよろしいですのに、あのチャクラム。」


それに対して白百合のプリンセスは苦笑しながらこう言った。

「勝負に勝つためならそうもいかないんでしょう。」


「はあ…しかし彼女、凄い人気ですのね。」


「多分前大会にも出場されてて知名度があるのと、つけ加えるならあの美貌と愛想の良さがそうさせるのでは?」


「知名度…でも前回は彼女が優勝されたワケではございませんのよね?」


「学院長代理から聞きましたが、一年生ながら代表に選ばれた去年は惜しかったそうです。」


「その時は誰が優勝したか美鈴メイリンさんなら知っておられますよね?」


「ええ…確か前回優勝は南学院の代表でもう卒業されてますわ。」

「ウチの…中央学院代表と五分の勝ち星で決勝戦を行ったそうですから、今年は中央学院にとって雪辱戦となりますわね。」


「そしてそれはおそらく北学院の鳳華音フォン・ファインさんも同じでしょう…それだけ今年は南学院を敵視する選手は多そうですわ。」


「あ、鳳華音フォン・ファインさんがコチラをご覧になってますよ?」


鳳華音フォン・ファインは会話する二人に対してニッコリ笑うと軽く手を振った。


それに対し、少しぎこち無い笑顔を向ける美鈴メイリンだった。


と、鳳華音フォン・ファインの視線が白百合のプリンセスを不思議そうに見た。


「?どうなされたのでしょうか、フォンさんからジッと見られてるような…。」


「…あ。」

美鈴メイリンはハタと気付く。

「そうですわ、きっと同じ仮面の剣豪でも不可視擬フカシギさんではなく白百合のプリンセスさんだからアレ?と思われたのでしょう。」


「まあその件につきましては後で私から説明しますから気にする必要ありませんわ。」


「ならいいですけど。」


鳳華音フォン・ファインの方もそれ以上は見つめる事なく正面を向いて歩き続けた。


「ご覧ください美鈴メイリンさん、あの優雅な足運び…とても綺麗な歩き方だと思いませんか?」


「え、ええ…貴族らしく見事なまでに美しい歩き姿ですわね。」


「剣もまた同じです、無駄の無く研ぎ澄まされた動きで一連の技が淀みないせせらぎのように流れれば、それが一つの到達点と言えるでしょう。」


「はあ…?」


「早い話しぎこちなさや唐突さが無い方が見た目にも美しく、効率良くなるのです。」


(私の剣はぎこちないのですの?)


「それはつまり、結果的に剣が疾くなる事も意味します。」


(ピキーン☆)

(疾く…なる…?今よりも…もっと…?)


「ヂ…ヂェンさん、帰ったら速、私と訓練を!」

興奮気味に語る美鈴メイリンに圧される白百合のプリンセス。

「え…えと…また後日で良いですか?…そのうちという事で…。」


「わっかりましたわ!」

ウキウキする美鈴メイリンだが。


【なあ…コイツにこれ以上疾くなる意味なんか無いんじゃねえの?】


(…私も正直そう思いますけど…)

白百合のプリンセスは心中で俺の意見に同意した。


(ただ、僅かであれ余計な動きやブレが取れればその分、力の分散や距離の短縮となり戦いに於いて幾分有利になる事もあり得ますので…)


【なるほど】

………そういうもんか、な?


ただでさえ今大会優勝候補な上に仮面の剣豪にまでなれるんだからもう強さを極める必要あるんか?

それでなくても基本能力レベルはゲーム的にはカンストしてるというのに。

 

美鈴メイリンの身体能力や魔力と武術が超人的なのは元々ゲームでいうとこのレベルが上限まで行っちゃってるからだ。


そう言えばノベルゲーム開始前のミニゲームをやり込んで初期レベルを決定するという変わった仕様だったな。


ここで底レベルだと後の難易度が優しくなるんだった。

その分経験点が少なくヒロイン好感度も上がりにくくなるんだが。


………ん?


て事はアイツ今はレベルマックスなワケだから…


…………戦いはメッチャ高難易度なんじゃね?


それにそうか、だから美鈴メイリン最初からモテモテなのか。


しかしそれだと戦いの結果だけでなくノベルゲームとしてもヒロインとの良好なエンディングを迎えるにはかなり厳しくなりそうだ。


となると気になるのは例の赤服達の暗躍だな。


新血脈同盟ルートに入ってるとなると、この大会が終わってから連中とそれなりの接触が考えられるが…果たしてどうなる事やら。


俺がそんな事を考えてる内に鳳華音フォン・ファインの今回の対戦相手である南学院代表選手が入場して来た。




仮面の聖霊こと名尾ナビ君が久々に語る「ゆりかめ」ゲームに出て来る新血脈同盟は今後どう美鈴メイリン達に関わって来るのか。

そして赤服達の正体とは?

鳳華音フォン・ファインは南学院代表に勝てるのか?

美鈴メイリンは無事、ボディーガードの件を断り切れるのか?

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