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第百四話【彼女らに訪れる面倒な予感】

白百合のプリンセスは何とか日常に帰って来ました。

美鈴メイリン鳳華音フォン・ファインから北学院と南学院代表の試合に誘われたのをキッカケに友人達と白百合のプリンセスを同行させる事にします。


元気の無かった白百合のプリンセスが美鈴メイリン達の前に同級生「闘姫ドウ・ヂェン」として姿を表したのは例の赤服集団事件から3日後だった。


寮内の食堂のテーブルでたむろしていた美鈴メイリン達の前にフラッと彼女が歩み寄って来たのだ。

「皆さん、お久しぶりです…。」

ペコリとお辞儀するヂェン


美鈴メイリン達は顔に僅かな喜びを浮かべた。


けど、頭を上げたヂェンの顔色はまだ本調子とは呼べない状態だと気付くや皆気不味そうな顔になる。


ヂェンさん、もうお身体の具合はよろしいんですの?」

美鈴メイリンから出来るだけ屈託の無い…と思われるよう意識した笑顔を向けられる闘姫ドウ・ヂェン


心から回復を喜んでくれている、そんな穢れの無い無垢な表情を向けられたヂェンの顔が一瞬だけ僅かに曇った。


しかし直ぐに気を取り直し、美鈴メイリンとその仲間達へ余計な心配を与え無いように薄っすら微笑んだ。

「ご心配をお欠けしました、気分が優れなくて時間はかかりましたが明花ミンファさんのお陰で無事回復致しました。」


ヂェンさん本当に大丈夫なんですか?まだ少しお顔の色が優れないようですが…。」

明花ミンファが心配して傍に寄ってその片腕を支えた。


「大丈夫ですよ明花ミンファさん、貴女には本当にお世話になりました。」

「こうして歩けるくらいには回復したので、少しずつ動いて体力や魔力を取り戻したいのです。」


「もう、それならちゃんと私に声をかけてからにして下さいね?本当ならもう少し部屋で大人しくして貰いたかったんですから。」


「ええ、貴女には本当に感謝しています。」


ヂェン明花ミンファは今迄は美鈴メイリンを取り合う恋敵ライバルとしての関係が強かったけど今回の一件でわりと距離が縮まったようだ。


「…むう〜、何だか…お二人の仲がよろし過ぎて妬けますわぁ?」

美鈴メイリンが少しだけムッとした。

ん?コイツがこんな発言するのは少々珍しいな。


本気で言ってるのか、それとも場を和ませようと言ったのか…?


それにこの場合、どっちに妬いてるんだ?


「な、何をおっしゃられるのですか美鈴メイリンさん?」


「そうですよ、学友同士の助け合いじゃ無いですか?」


そそくさとヂェンから明花ミンファが離れる。


二人とも美鈴メイリンの言葉を意識して、ちょっとだけ距離を取った。


…う〜ん、でも明花ミンファは以前に若汐ルオシーってヤツの面倒を見た時怪しい雰囲気になった事があったからなー。


まあアレは結局のところ寮に忍び込んでいた淫魔によって見せられた淫夢のせいだと判明したんだっけ。


淫魔が倒されてからはそんな寮内の雰囲気も搔き消えたから、もうそんな心配も無さそうだし俺の勘繰り過ぎとは思うけど。


「まあ取り敢えずそう言うことにしておきますわ、…えと、それはそれとして…。」

「実は午後から北学院代表の鳳華音フォン・ファインさんが南学院代表と試合をされるのですが、そこに私と仮面の剣豪こと不可視擬フカシギさんを招かれておりますのよ。」


「招くって…鳳華音フォン・ファインさんがですか?」

ヂェンはパチクリと瞬きをして聞き返した。


「ええ。…それで私が招かれて出向く事に関してはやぶさかではございませんが、仮面の剣豪・不可視擬フカシギさんの方はその…。」


「あ、ああなるほど。」

「確かに他の仮面の剣豪さん達をこちらからお呼びするのは難しいですものね。わかりました。」

「代わりが務まるかわかりませんけど、そう言うことでしたら協力致します。」


「あの、お嬢様?呼ばれた仮面の剣豪さんは不可視擬フカシギさんとかいうお方なのに白百合のプリンセスさんが出向かれてもよろしいのですか?」


「心配無用ですわ愛麗アイリー、同じ仮面の剣豪でしかも剣の腕が立つ白百合のプリンセスさんなら充分釣り合いがとれますもの。」


ここで闘姫ドウ・ヂェンは疑問に思った。

「しかし何故にフォンさんは不可視擬フカシギさんをご所望されるのでしょうか?」


「いえね、最初は不可視擬フカシギさんがチャクラムを破壊しまして、その弁償代わりに彼女をボディーガードに召したてようとされまして…。」


ヂェンは目を丸くした。

「ほおほお、ボディーガード…ですか?」


「それで不可視擬フカシギさんが撤退したので已む無く後から来た私がボディーガードを依頼され…。」


「…で、逃げたんですね?」

ギロッと美鈴メイリンを睨むヂェン


「だだだ…、だって私じゃなくて仮面の剣豪がフォンさんのお望みだったのですよ?素顔の私一人では役不足ですわあ、オホホのホー♪」

顎に手をやり、甲高く笑う美鈴メイリン

それはもう、思い切り白々しい笑顔だった。


しかしその顔には

『どこぞの貴族のお嬢様のボディーガードなんてカッタリイ〜、御免被りますわっ!!』

と、しっかり書いてあるのだった。


「まあ、今回の試合会場は王都郊外のちゃんとした試合会場で行われますから警備も今迄よりしっかりしてますし…私達の出る幕は無いと思われますわ。」


「そうですか、それなら安心して…」

「…いえ、油断は禁物ですね、特に私は…。」

再びヂェンの表情に陰りが差した。


「…あ、無理にとは申しませんのよ?ちゃんとフォンさんには私からお断りを…」


「いえ、寧ろ名誉挽回の為にも私の方からお願いします!」


ヂェンは真剣な表情で訴えた。

でも少し無理してないか?ヂェンよ…。


ちょっと彼女の背中が痛々しく見えるのは俺だけか…?


美鈴メイリンさん、危険の可能性があるのならまだ彼女はお連れすべきではないかと思いますけど。」

明花ミンファは少し慎重だった。


「うう〜ん…今日は流石に大丈夫とは思いますけど…。」

「わかりましたわ、ではこう致しましょう。」


明花ミンファさんも私達の近くで待機していただきます、よろしいですか?」


「はい、ヂェンさんも気がかりですけど美鈴メイリンさんの傍にいられるなら喜んで!」


「そ、そう…ですの…?」

美鈴メイリンのヤツ、ちょっと照れてやがる(笑)。


「あと、転移アミュレットを使える芽友ヤーヨウさん、それに防御魔法の使い手の愛麗アイリーの二人は明花ミンファさんの護衛をお願い致しますわ。」


「私はお嬢様に付き従うのが当然ですので元よりそのつもりでございます。」


「はーいっ!全力で明花ミンファ様と芽友ヤーヨウをお守り致しますう!」


「これで決まりましたわね、それではお食事を済ませてから王都に向かいますわよ。」


五人は今いる寮の食堂でそのまま早目のランチを摂った。


その後、軽い馬車酔いに悩まされるメンバーもいたが取り敢えず無事王都に辿り着いた。


「さて試合会場はここから更に郊外…」


『おーい、美鈴メイリンやないかあー?』


「ん?」


『おまいも試合見に来たんかー?』


「…幻聴が聴こえたような気がしますわ、寝不足でございましょうか。」

美鈴メイリンが軽くアタマを振る仕草を見せる。


『ウチやウチ!無視すんなやー?!』


「あの…挨拶を返して差し上げては如何ですか?」

明花ミンファが苦笑する。


明花ミンファさん、せっかく聞こえないフリしてたのが台無しですわ…。」

本気で咎めるワケでもない台詞を吐くと、美鈴メイリンは少し高い面倒臭そうにその声のした方を見てこう言った。


「あらあ〜?何か聞いた事のあるお声が聞こえたみたいですけどー、一応何処の誰が私の事を呼んだのか名乗りを挙げていただけませんか〜?」


勿論知っててワザと言ってる。


すると。


ボウッ!


突然火球が美鈴メイリンめがけて飛んで来た!


と、美鈴メイリンは涼しい顔でこれを人差し指一本で受け止めて見せる。


そして指をパチンと弾くと「パシイッ!」と火球を霧散させた。


「こらこら、全く冗談が通じない相手ですわね。」


「冗談ちゅうより流石に今のは無礼やろ!?」

いつの間にか声の主は美鈴メイリンに近寄っていた。

まあイキナリ火球ぶつける方も充分無礼だと思うがな?


「クスッ、その元気の良さは相変わらずですわね炎龍イェンロン?」


「たくう、最初からそう言いなや。」

ボリボリ頭をかく炎龍は(イェンロン)、「ヤッパリからかっとんたんかー。」と呆れた。


「それよかウチの先輩の試合見に来たんか?ならとうに午前中に終わったで。」


炎龍イェンロンは西学院所属でしたから…あら、西学院VS東学院の代表戦は午前中でしたの?」


ズコッとコケる炎龍イェンロン

さすが西の生徒だけあって笑い芸が身に沁みてるのか?

「し、知らんかったんかい?」


「冗談ですわよ、知ってましたけど見るまでも無いと思いまして。」


「今回の東学院代表は確か雷魔法の使い手でしたわよね?なら土魔法で電撃を大地に逃がせられる土門トゥメンさんが有利ですわ。」


「わ、わかんのかいな?」


「西の代表の土門竜トゥメン・ノンさんは火属性と土属性の使い手でしょう?以前の対戦で溶岩流を使われましたのがその証拠ですわ。」


「せやな…溶岩は岩や土が高熱で溶けたものやから火と土の両方魔法が使えんと作り出せんもんな。」


「…と、なると結局オマイは何しに来たんや?」


「ですから午後の試合にお呼ばれしたんですのよ、北学院代表の鳳華音フォン・ファインさんに。」


「北学院?何やそんなに北学院代表と親しゅうしとったんか?」


「いえ、この前の試合が初対面でしたけど?」


「そ、それなのに何でや…?」


「何でもボディーガードか欲しいそうですわよ、それで私ともうお一人に白羽の矢が立ったのですけど…」


美鈴メイリンがボディーガードお?」


「勿論丁重にお断りしましたわよ、けどしつこく今度は試合観戦に呼ばれまして…まあまた上手く断るつもりですけど。」


と、炎龍イェンロンはブツブツ呟いていた。

「ボディーガード…ふうん、なら噂は本当やったんやな…。」


「何ですの、その噂とは?」


美鈴メイリンに顔を覗き込まれるや、慌てて顔を逸らす炎龍イェンロン


「い、いいい…いや、何でもあらへん!」


そんな炎龍イェンロンの態度が可怪しく感じたのか美鈴メイリンは更に炎龍イェンロンに顔を近づけた。

「何ですのその態度、隠し事ですの?」


途端に頬がポッと赤くなり目が大きく見開かれる炎龍イェンロン


…て、何でそんな反応になる?


「ちゃ、ちゃうわい!いらん噂如きでオマイの精神に余計な負担与えたくないだけや!」


「あら、聞かなければ精神的負担かどうかわかりませんわよ?」

コロコロ笑う美鈴メイリン


益々炎龍イェンロンの頬に紅が差す。

………おいおい、まさかコレ…?


「そ、それでは…また今度なあっ!」

脱兎の如く炎龍イェンロンは走り去ってしまった。


「何ですのあの方は?」

「全く、一方手に話しかけておいて一方的に逃げてくなんて礼儀が成っておりませんわ全く!」

腰に両手を当てて胸を張りながらプンプンする美鈴メイリン


俺は黙って見ていた白百合のプリンセスに同意を求めるように話しかけた。

【なあ…アレってもしかして…。】


(………はあ…言わないで下さい。)

(認めたくないです、これ以上ライバルが増えるなんて…。)


そんな俺達と同じ事を明花ミンファも思っていたようで。


「あの方…美鈴メイリンさんの事をライバル以上に意識されてるのでは…?」


どうやら美鈴メイリンを取り巻く人間関係に、また一つカオスの因子が増えたようだ。


炎龍イェンロン、まさかの…ガチ百合レースに参戦か?


そして彼女の洩らした噂とやらは何なのか?


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