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第百三話【戦士の休息…癒やされる美鈴、されど白百合のプリンセスは…?】

美鈴メイリンと白百合のプリンセスはそれぞれ違った意味でダメージを受けてたようですが、取り敢えず復活!

…しましたけど…。


う〜〜〜ん………。


………ハッ?…………ですわ!


あ、あら?

ここは………私の部屋ではございませんこと?


…………あ、あれから一体何がどうなって…?


………あ。


あの白いボーッとした人影は、もしや…?


「やっぱり!」


「プリンセスさん、白百合のプリンセスさん!」


…………何故でしょう、返事がございません。


………ていうか、まだ白百合のプリンセスさんたらスッポンポンのままではありませんか!

………細かい部分は良く見えませんけど、残念…。

…て、私は何を考えてますのっ?!

「あの…何故お洋服を着られないのですか?」


(………!)


(貴女がそれを私に言うのですか…?)


(……何故、あの時助けてくれなかったのです…?)


「へっ?」


(私はずっと助けてと心の声で叫んでおりました…貴女に助けを求めておりました…)


(私が、私がこんなに愛しているのに…)

(なのに、もう私はこんなに穢されてしまったのです………。)


「あ、あのー?」

「そ、それより何か着るモノを…。」


(もういいの…私は…。)


(こんな穢し尽くされてしまった私でも、貰ってくれますか…?)


いっ?

だ、駄目ですわ、そんないきなり抱きつくなんて!


もし明花ミンファさんにでも見られたら…。


「………見ましたよ。」


そ、その声はもしや………というかやっぱり…?


「いいっ?!み、明花ミンファさんっ?!」


「何ギョッとした目で私を見てるんですか?」

「裸の白百合のプリンセスさんに抱き着かれてやましい事でも考えてるんでしょう?」


「い、いえそんな事は…(ちょっとだけ事実ですけど…)。」


美鈴メイリンさん、そんな女なんか放っといて二人でイイコトしましょ?)


「な、ななな…!」


「そんな女とは何よ!」

「フン、もうお二人で仲良くしてくださいな!どうもお邪魔しました(怒)!!」


ズカズカズカ…!


「ああん、行かないで下さいまし?誤解ですわ明花ミンファさあ〜〜ん(涙)!」


「し、白百合のプリンセスさん?離して下さいな!早く明花ミンファさんを追いかけないと…!」


(イヤ…もう離さないんだから…♡)


「それより美鈴メイリンさん?私とイイコトしましょう…♡」


「か、勘弁して下さいまし〜〜〜っ?!」


………………………。



………………ガバッ!!


「ハッ、…ハアッ、ハアッ、ハアッ…?!」



美鈴メイリンのベッドの傍で椅子に座っていた愛麗アイリー美鈴メイリンの方をキョトンと見るなりこう言った。

「あらお嬢様、やっとお目覚めになられましたか?」


「ふえっ?」


何だかうなされてた美鈴メイリンがやっと目を覚ました。


一体どんな夢を見てたのやら…。


「あの…今どういう状況ですの…?」


ハアッと息を吐くなり愛麗アイリーがこれまでの経緯を説明した。


「あのですね、お嬢様は試合終了後に試合を妨害した正体不明な赤服集団相手に仮面の剣豪になられてこれを撃退なされまして…まあここまでは良いのですけれど…。」


「そ、その赤服達は?」


「警備兵達にしょっぴかれて今頃尋問されてると思いますよ?」


「そうでしたか…正体がわかると良いですわね。」


「ええ……て!そこは置いといてください!」


「???他に何か…?」


「あの、お嬢様?もしかしたらと思いますけど…まさかお忘れになられた、とか?」


「忘れた?私が?一体何の事を…。」


と、徐々に美鈴メイリンの顔から余裕が消えていった。

やっと思い出したらしい。


「そうでしたわ!白百合のプリンセスさんは?!」


「プリンセスさんは現在学院の医務室で眠っておられます…様態は明花ミンファ様が診られましたが特に怪我や異常は無かったそうです。」


「…よ、良かったですわあ〜。」


(はあ〜、夢の中とはいえ裸の白百合のプリンセスさんに危うくあんな事やこんな事を………て、私がそんな事するわけないじゃありませんかっ?!)


美鈴メイリンは真っ赤な顔をブンブンと振って邪念を振り払ってるように見えた。


…ん?愛麗アイリーの顔が少し曇ってるな。

何か隠してるようにも見えるが…。


「それじゃ明花ミンファさんは白百合のプリンセスさんについてらっしゃるのですわね?」


「いえ、明花ミンファ様は芽友ヤーヨウと一緒に食材の買い出しに…。」


「食材?…寮のオバチャン達から何か買い物でも頼まれたのでしょうか?」


「違いますよ!」

突然、愛麗アイリーが凄い剣幕になった。


「お嬢様、御自分が何故倒れられたのかおわかりになられませんか?!」


「は?」

「私が、倒れた?何でですの?」


「試合には勝ったし赤服達もバッタバッタとノシテやりましたし、倒れる要素など何処にも…。」


「…何処に、も……?」


あれ、何か思い出そうとしている?

頭を抱えて考えてる。


いや待て?


コイツがそもそも気絶するキッカケとなったのは?


そうそう、鼻血噴き出して貧血で倒れたんだっけ。


あれ、何で鼻血なんか噴き出したんだコイツ…。


………あ!


愛麗アイリー…何か今、下手に思い出させ無い方がいいような気がするんだが………。】


(じゃあ何か気を反らせる事を言えばよろしいんですね?)


「あーっ!そうでしたお嬢様ー!!」

愛麗アイリーは突然声を張り上げた。


「な、何ですの突然大声なんか…?」


「いえ、北学院代表の鳳華音フォン・ファインさんから伝言でした!」


愛麗アイリーは懐から一通の封筒を取り出した。


「では、私は外出して来ます!」

気を利かせたのか、愛麗アイリーは部屋の外に出るやパタンとドアを閉めた。

【………俺も部屋から出た方がいいのかな?】


「いつもプライバシー無視してる癖に何を今更、ですわ。」

ちょっと呆れたように美鈴メイリンから言われてしまった。


(もう…本当人騒がせなお嬢様…!)

(…私、まだやっぱりお嬢様の事を…。)

ドアの外で愛麗アイリーはブツブツと呟いた。

(いけないいけない、今の私には芽友ヤーヨウがいたんだけっけ…シッカリしなくちゃ!)


そうだっのか…愛麗アイリーも中々複雑な気持ちを抱えてたんだな…。


(私はあくまでもお嬢様とは主従関係!家族のような扱いで幼馴染でもありますけど、それ以上を望んではいけない!)


(…そう、お嬢様へと向ける私の思いとは…。)


ダン!と床を踏む愛麗アイリー

そして拳を天に突き上げると心の声でこう叫んだ。

(あの柔肌をムニュムニュペロペロしたいという思い(爆)!!)


チュドーン!!


…何かが愛麗アイリーの背後で爆発したような錯覚を覚えたぞ…。


(よし、初心忘れるべからず!)

(これからもお嬢様へのセクハラに精進、精進!)


すっかりご機嫌に戻りスタスタと廊下を歩いて行く愛麗アイリーだった。


………いや、そんな思いは初志貫徹せずサッサと捨てちまえよ………。

 

……………。


…等という愛麗アイリーの一人芝居を見ていると。

『エエエ〜〜ッ?!』

今度は美鈴メイリンの部屋からか、何だ何だ?


【どうした美鈴メイリン?】

俺は再び部屋の中の美鈴メイリンへと意識を向けた。

鳳華音フォン・ファインさんから彼女の次の試合に招待されたんですけど…。」

「何と仮面の剣豪・不可視擬フカシギと一緒に来てくれ、ですってぇ!」


【無茶言うな、あのお嬢様も。】

まあコッチの事情などは関係者でも無いあのお嬢様が知る由もないけど。


それより鳳華音フォン・ファインの次の試合と言えば南学院代表との試合か。


他学院同士の試合の場合、中央学院近辺で行われる事になりそうだな。


となると、まだあのお嬢様も王都辺りに宿泊中なのかな?


それに他学院代表らも王都に待機してるかも知れないな。


…………。


さて、美鈴メイリンも無事目が覚めた事だし、そろそろ白百合のプリンセスの様態でも…


(何を考えてますの、名尾ナビ君?)


ギクッ?!


【な、何って…やっぱり心配じゃんか白百合のプリンセスの事がさ。】


(それはそうですけど、その、名尾ナビ君は一応男の子なのですし、女子の寝室はみだりに覗くべきでは無いと思います…の…。)


…何恥ずかしそうに話してるんだコイツ?


【お前は覗かれても平気なのか?】


(ぜ、前世のお友達だから特別に許してあげてるのですわよ!チョーシならないでくださいましっ!)


【ちぇっ、そんなに言うならお前が行けば?】


(その…ご様子がわからないので明花ミンファさんから良い知らせが出るまでは待とうかと思いますわ…。)


何だよ、歯切れが悪いなあ。


と、噂をすれば。


バタン!!


美鈴メイリンさん!」


【おやおや、噂の明花ミンファさんのお出ましだぞ美鈴メイリン?】


「良かった、目が覚めたんですね?」


明花ミンファ美鈴メイリンの手を取って握り締めた。


「ご、ご心配おかけしましたわ…。」


と、美鈴メイリンからのこの一言で途端に明花ミンファの表情が不機嫌そうになる。


「ホンットにそうですよ!」

「私が駆けつけた時、貴女血の海の中で横たわってらっしゃったんですよ?もうたまげたのなんのって…!」


「ち…血の…海…?!」

ヒクッと美鈴メイリンの頬が痙攣する。


その場面を想像しただけで身体から力が抜けそうみたいだ。

良かったな、ベッドに腰掛けてて。


「必死に治癒回復魔法を注いでやっと顔色が良くなって来たと思ったら、今度は芽友ヤーヨウが裸で倒れられてた白百合のプリンセスさんを見つけて…。」


「え?!」

「そ、そうですわ、プリンセスさんはどうなったのですの?!」


「どちらかと言うと私の方が美鈴メイリンさんが血溜まりの中に倒れてたのか聞きたいくらいですけど…」

「あんなになるまで鼻血を出されるなんて何があったんです?」


「うっ…ま、まあそれはまた後にしていただけます?」


「ちゃんと話してくださいね?…えと、それで白百合のプリンセスさんなんですけど…。」


明花ミンファによれば特に目立った外傷とかも無いとの事だが。


(でも…裸で倒れてたという事は…。)


(…な、何を考えてるのよ、私ったら?)

明花ミンファは平静そうな態度を保っているけど、何か悶々としているみたいな…。


(怪我も無く、身体の汚れは芽友ヤーヨウが生活魔法の水魔法やクリア魔法で浄めてくれたし…私も回復魔法や治癒魔法を直ぐ浴びせたから他に何かあったとしてもわかんなかったかも。)


(とにかく下手な事を言って美鈴メイリンさんに余計な心配をかけないようにしよう。)


「あの方は先に意識が戻られましたけどやや衰弱気味だったので二、三日安静にしてもらおうと思っています。」


「そうですの…では私も回復した事ですし、白百合のプリンセスさんのお見舞いにでも…。」


「フフッ、今の彼女は仮面を外してるので闘姫ドウ・ヂェンさんですよ?」


「それと美鈴メイリンさんもまだ貧血気味なので明日いっぱいまでは良くお休み下さい?」


「で、でも…。」


「私が王都で造血効果の高い食材を購入しましたので、それで美鈴メイリンさん専用のお食事を用意致しますので良く食べ良く休んで下さい?」


「おお…明花ミンファさんの作られるお食事…それは魅力的ですわね♪」


「ではおとなしくなさってくださいね。」

明花ミンファ美鈴メイリンをベッドに横たえると毛布をかぶせた。


と。


「本当に…心配したんですよ…?」

明花ミンファ美鈴メイリンに毛布をかぶせながら、そのままハグするのだった。


「……!」


「ごめんなさい、ですわ…。」

美鈴メイリンの方もそんな明花ミンファに対してハグをやり返す。


そうやって二人は少しの間だけ抱き合う格好となった。


……………。


コンコン。


「失礼します明花ミンファです、…入ってもろしいですか?」


返事が無い。


ドアに耳を付けてみると、少しベッドがゴソゴソしているようだ。



ガチャ


「明かりをつけますよ。」

明花ミンファが天井に手を翳すと魔法灯がボウッ…と灯った。


ベッドを見ると、シーツがグチャグチャ。


金色の長髪も乱れていた。

そして毛布から裸の肩がはみ出している。


「お加減は如何ですか、闘姫ドウ・ヂェンさん。」

出来るだけ優しく明花ミンファ闘姫ドウ・ヂェンに話しかけた。


「…明花ミンファ…さん…?」

ちょっとヤツレ顔の闘姫ドウ・ヂェンこと、あの白百合のプリンセスがそこにいた。


「お粥とお茶をお持ちしました。」

「食欲が戻って来たら普通のお食事に変えますね。」


「ありがとう…。」


「おトイレには自分で立っていけそうですか?」


「それは…問題無いわ…」


「はい…えと…。」

「そろそろ服を着られてはどうですか?」

明花ミンファが照れながら話しかけた。


さっきからチラチラ見える闘姫ドウ・ヂェンの肌に、流石の明花ミンファも平静を装おい切れないようだな。

実は俺もだ!


「…まだ、ダメ…なの…。」

「忘れた頃に身体中が火照って…自分で抑えが効かなくなりそうで…。」


普段より今日の闘姫ドウ・ヂェンからは色っぽさが感じられるな…。


「あの時、何があったのですか?」


「それは…。」


闘姫ドウ・ヂェンの目の焦点が合わない。


瞳が潤み、口が半開きになる。


「…今は…言えない…。」


…な、何だそれ?

何があったのか益々気になるじゃないか!


「ご、ごめんなさい…言いにくい事なら言わなくても良いですから。」

「それより、お食事を摂って早く元気になってくださいね?」


「ええ…いつまでもこうしてはいられないもの…」


「私は…仮面の剣豪…なのだから…。」


「白百合のプリンセスの名に恥じないよう、務めを果たさなくては…。」


「あの、前から疑問だったんですけど仮面の剣豪とはどのような存在なのですか?」


ピク…と白百合のプリンセスこと闘姫ドウ・ヂェンがその言葉に反応する。


「それはまだ貴女方には知らせる事は出来ない。」

「けれど信じてほしいのです、私は…仮面の剣豪達は皆、世界の人々を守るため存在してるのだと。」


…………そうだった。

例え何かあったとしても彼女がその誇りを失わない限り、彼女は仮面の剣豪・聖練潔白…白百合のプリンセスなんだった。


俺は自分が恥ずかしくなった。

同時に色々考えて悶々とした気持ちがフッ…と楽になった。


「…ありがとうございます、それがもう私の知りたかった答えみたいなものですから。」


明花ミンファ)闘姫ドウ・ヂェン)に笑顔を向けた。


「そう言ってくださるだけで私も助かります。」

闘姫ドウ・ヂェンもまた明花ミンファへと微笑み返した。


良かった、さっきまでよりも顔に生気が戻ってる。


「では翌日食器を取りに来ます、おやすみなさい闘姫ドウ・ヂェンさん。」

パタンとドアを閉め明花ミンファは部屋を出た。


そこから時間を置かずして闘姫ドウ・ヂェンの部屋に結界が張られた。

彼女は身の回りに慎重になってるようだな。

まあ無理も無い。


……………………。


………だけど……。


(…うっ…うっ、…うううっ………。)


ちょっとだけ闘姫ドウ・ヂェンの部屋から彼女の声が聴こえた。


それは悲しみにすすり泣く声なのか、はたまた何かの呻き声なのか。


彼女の身に何があったのか、それは彼女本人にしか分からない。


明花ミンファのいた手前では気丈さを見せてたものの、やはり一人では隠した感情を抑え切れないようだ…。


身体に傷は無いとして、仮に心に傷を負ってたとしても彼女から打ち明けない限りそれ彼女自身で乗り越えるしか無い。


俺は自分の無力さを感じた。

惚れた女の為に何も出来ない、そんなもどかしさに苛まれながら彼女の部屋から意識を背けた。


対照的に美鈴メイリン明花ミンファ愛麗アイリー芽友ヤーヨウまでもが美鈴メイリンの部屋へ食事を乗せたトレーを持ち込んで皆が一緒に夕飯を賑やかに食べていた。


そんな様子を見ていると、いつの間にか俺も気持ちが和むのだった。


早くこの輪の中に闘姫ドウ・ヂェンも戻って来れると良いな…。


どんな形でもいいんだ、辛かったら俺達を遠慮無く頼ってくれてもいいんだぞ?白百合のプリンセス。


君が俺達を助けたいように、俺達もまた君の事を助けたいんだからさ。


美鈴メイリンの方はやはり心配無用みたいですね。

白百合のプリンセスは…何があってどうなったのかは不明ですけどナント乗り越えて欲しいです。

仮面の聖霊役を仰せ付かっている名尾ナビ君は彼女の支えになれるのでしょうか?

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