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第一話【人間飛ばしTSご令嬢と百合召し使い】


ちょっと息抜きがてら書いて見ました。


美少女とアクションとコメディ、

そして百合(笑)。


これらをR指定無しで書けるのか、ちょっとした挑戦です(爆)


とある中華風の宮殿。


その庭で流麗なる美少女がもう一人の醜悪な女人から剣の勝負を挑まれていた。


美少女の方は質素な色合いながらも動き易さ、機能性を重視した実戦にも耐えうる装い。

ゆったりした上着とは対象的に軽装なドレスの組み合わせだ。


一方、醜悪な外見の女の方は見るに耐えないドギツく派手な色彩のピチピチしたチャイナドレス。


美少女は問うた。

「もう一度言ってご覧なさい?」

彼女は美しい召し使いの女性を庇うように、醜悪女の前に壁となって立ちはだかっていた。



対して醜悪女はこう返す。

「テメエみてえなガキがいい気になって召し使い女をはべらせてんじゃねえって言ってんだよっ!」


醜悪女がそのムキムキな豪腕で得物の棍棒を「ドスン!」と地面に叩き付け、ふんぞり返った。


「やれやれ、どうやら私の言葉の意味を理解できなかったようね?」

美少女が剣に鞘を着けたままで醜悪女へと向けた。


「来なさい。そのお顔に負けないくらいに醜い言葉が二度と吐けないよう、懲らしめて差し上げましょう。」


「だ、誰が醜い、だとお?!」


「貴女が、ですよ。耳が遠いようですね、聴こえませんでしたか?」


「こ…コラアっ!」

醜悪女がブチキレた。


醜悪女が咆哮を上げて美少女に棍棒を振り下ろさんと、ドスドス地響きを鳴らしながら駆け出す。


「お嬢様!」

召し使いの女性が叫んだ。


「大丈夫です。下がってなさい。」

美少女はチラッと背後の女性に目をやり、薄く微笑んで返した。


そして、キッ!と前を見据える。


「おやおや。走る姿までが、はしたないですこと。」

美少女の顔が弛んだ。

目の前の「それ」が取るに足らない存在であると理解したからだ。


「ふんぐぁあああ~っ!?」

雄叫びをあげて走る醜悪女は、まるでゴリラのようだと周りの見物人達は思った。


対して美少女の方は螺旋を描くがごとき足捌きで醜悪女へと駆け寄る。


醜悪女と比べて地響きや土煙すら立てない、その優雅な走り姿に誰もが見とれた。


「ふんがああっ!」

醜悪女が棍棒を振り上げた。


「…………欠伸が出そうね。」


美少女は立ち止まって醜悪女の動きを待った。


「死ねえええっ!」


醜悪女の棍棒が振り下ろされた。


「…今、何と仰いましたか?」


直後に醜悪女の背後から美少女の声がした。


ズシイイイン。


手応え無く地面へと振り下ろされた棍棒を見て、醜悪女は狐にでも摘ままれたような顔で後ろを振り返った。


「ん、んああっ?!」


「て、テメエ!何でそこにいる!?」


慌てて後ろの美少女に向かって向き直る醜悪女。


「貴女の武器をかわしたから。」


「それよりその前に、貴女私に『死ねえ』とか仰いましたか?」


「そ、それがどうしたよ?」


「………とんでも無い事を仰いましたわよ、貴女?」


美少女の周囲の空気が変わる。


徐々に空気が冷えていった。


「………よりによって、この私に、死ねと?」


「そんな言葉を吐いた以上、覚悟をして貰わねばなりませんよ。」


ピキキキ…と、地面から水分が凍てつくような音が鳴り出す。


「な、何偉そうに………。」


醜悪女が一歩前に踏み出そうとする。


だが彼女の一歩は踏み出されない。


いや、踏み出したくても踏み出せないのだ。


「な、なんだ?何で足が動か…………………なっ?」


醜悪女が自分の足を見ると、その足が地面へと凍り付いてしまっていた。


「ひ、冷ええええええっ?!」


「普通に痛めつけるだけにしてあげとこうかと思ってましたけど、気がかわりました。」


「他人に対して死を望むなら、相応のやり返されが有ることを、身を持って教えて差し上げましょう。」


「な、何言ってやが…」


醜悪女が棍棒を再び振り上げようとしたが、最早腕までが上がらない。


「このままなら貴女、心臓まで氷ってしまうわよ?」


「さ、寒いよお……。た、助け、て…。」


「先程の言葉を撤回なさい。そして私の召し使いに詫びなさい!」


「さもなくば、私が一撃を加える事で今のほぼ凍った貴女の身体は、簡単に粉々に砕け散る事になりますが。」


「あ、謝る!…すまなかった、言い過ぎた!」


「ふーん。」


ピタッと冷気が止んだ。


「では、身体を自由にしてあげるから土下座で態度を示しなさい。」


「それが出来ればお互い水に流しましょう。」


「わ、わかっ、た…!」

背に腹は変えられないと悟った醜悪女はとにかく助かるために受け入れる事にした。


やっと身体中の寒さから解放され身体が自由に動くようになった醜悪女。


「さあ、言葉で謝ったのなら今度は土下座よ。早くして?」


美少女が剣を腰に戻して腕を組む。


醜悪女は地面に膝を着き、ゆっくり頭を下げていく…。


(畜生、わ、私がこんな小娘なんぞに……!)

やはり頭で敵わないとわかっていながらも、心が我慢ならなかった醜悪女。

(コイツ油断してやがる、やるなら今だっ!)


醜悪女が棍棒を握り直すと、さっきまでの大雑把な動きとは違った小さな動きで、美少女に突きを入れる。


「!そう来ましたか。」


美少女は身を翻すと棍棒を掴んで手繰り寄せた。


そしてそのまま勢いを利用して醜悪女に近づく。


近づく勢いを生かしながら、腰から剣を抜く。

鞘が付いたままの剣をバックハンドブローのように横に小さく払うと、その攻撃は醜悪女の脇腹を軽く叩いた。


「あ、れええええーーーっ………………?」


醜悪女の声がどんどん遠ざかっていく。


やがて、「ず、ズウウウン…。」と、音が遠くから鳴った。


「ふむ。今日の無頼の輩飛ばしの記録は約百メートル程度ですね。」


「お嬢様、惜しい!あと五メートルで新記録でしたのに!」

先程美少女に庇われていた召し使いだ。


「今日はもう暗くなって来ましたし、ここまでに致しましょう。」


「はい!ではお屋敷にお戻り下さいませ。」


「今日も協力、ありがとう。」


…………この二人、お嬢様と呼ばれる方の美少女の趣味で人間をどれだけ自分の力で飛ばせるのかを記録するという遊びをしていた。


召し使いが無頼の輩を惹き付け、そして彼女を守るという大義名分の元に無頼の輩を文字通りぶっ飛ばしていたのだ!


「よーし、明日はもっと頑張るぞー!」


「明日こそは新記録が出るといいですね、お嬢様!」


この世界は重力が弱い。

なので我々の世界なら放たれても直ぐ地面に落ちるはずの物が結構遠くまで飛ばされてしまったりする。


だからといって、百メートルも人間を飛ばせるのはこのご令嬢の魔力によるところも大きい…と言うか、かなりある。


少しふわふわするように歩く彼女達。


一方、コンクリートの壁にめり込んだ醜悪女は勿論ちゃんと生きていた。


「あ、あれが噂に聞いた人間飛ばし令嬢ってヤツなのかい…。」


「冗談じゃねえ、あんなのがいたら命が幾つあっても足らねえよ!」


醜悪女はコンクリートの壁から抜け出すと、スタコラサッサと何処かへ逃げて行った。


醜悪女の行方は知れない。


だが、この時の人間飛ばし令嬢こそが、後のこの世界における救世主的存在になろうとは彼女の召し使いも、令嬢本人も全く考えていなかったのだ。


無理も無い。


それは彼女の部屋に運ばれた夕食。


「…こ、これは何ですか?」


「焼き肉にございます。そこの下から焼かれている鉄板に生肉を載せて、焼きながら食べるのでごさいます。」


「…………血、血が……生肉の、血、があ……。」


令嬢は気が遠くなってパタンと倒れてしまった。


「…やはりダメでしたか。今晩は精を付けていただこうと思ったのに…。」


「またお預けですか?お嬢様あ。」


召し使いが疼く身体をくねらせながら欲求不満を口にした。


その言葉を遠くから聴こえてくる声のように認識しながら、令嬢は密かに思った。


(き、気を失ったおかげで助かったあ!)


そう、このご令嬢は剣には腕が立つものの、血を見ると身体の力が抜けてしまうのだ。


そして屋敷の召し使い女達の愛を一身に集めるものの、自身も女であるという理由から彼女達から身体の関係を求められても恐怖を感じてひたすら逃げているのだった!


(私、何でこんな、ゲームの世界に?)


(ゲームの世界なら血を見ないで済むと思ったのにい。)


(それに何でゲームのヒロインに転生しちゃったのかしら?)


(私、元々は男の子だったのにいい!)


でもそれは仕方がない。


このゲームは剣と魔法の世界。

故に命のやり取りもある。

ゲーム画面からは見えなかった文字通り血生臭い光景も、他ならぬ当事者ともなればどうしても見えてしまうものなのだ。


そしてこのゲームでは男が登場しない。


何故なら製作者達が百合好きの為、女だけの世界が舞台となるよう作り上げられた、百合ゲーであったのだから!

基本はアクションコメディ路線で行こうかな、と思います。


もう一本の連載の方の合間に、のんびりしたペースで続けられればなあ。と、考えています。


主人公たちの名前はこれから考えます(笑)。

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