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序章

死が必要だ──残酷な死が。

中世の見せしめ処刑のように。かつて、処刑は庶民にとって最大の娯楽だった。絞首刑、火あぶり、串刺し、八つ裂き──今こそそれが必要なのだ。私は繰り返しそう主張してきた。

同志達は皆頷いた。そのくせ、私になかなか神の龍を譲ろうとはしない。

まだ寝かせておけと言う。起こすには早いというのだ。

何を悠長な。お前達は何のためにいるのだ?私は非難した。

調教者たちは言い訳が多すぎる。自らは安全な場所に留まっておきながら、敵地に潜伏し身を削っている私の要請に応じないというのか。急げ!一日も早く龍をこの国に来臨させよ。

ともあれ、致し方ない。まずは龍を伴わず、私は口火を切る事にする。

それは明日でなくてはならないのだ。百年に一度の蝕の如く、全てが重なり合う絶好の刻を私は見出していた。

辛抱強く探りを入れ情報を積み重ねた。それに伴って輝かしい閃きが幾度も私を襲った。

紛れもなく、生き甲斐を感じた。おかげで一分の隙もない筋書きが完成したのだ。やがて綻び一つない絹織物のように編まれ、喩えようもなく美しい成果として結実する。

ああ──神がいるとするならこんな気分だろう。

盤の目の上に最適な駒を配置し、思い通りに動かすことで運命を描いてゆく。自らが望む劇的な運命を。

私にとって盤の目とは、小さなこの国に他ならない。

同志の中には私を策謀マニアと呼ぶ者もいる。

諸葛孔明の如き奇才軍師気取りのパラノイアと見なすものも。

好きなように言うがいい。彼らは到底この愉しみを知らぬ。

私は実行に移す、移さずにおけるものか!

成果を突き付ければ彼らからは一言の文句も出ない。

それどころか、全てが巧みな策によるものだと知るとき、彼らの愁眉は一瞬で開け大喝采に変わるだろう。

そのためには、一部始終を記録すること。

抜かりはない。準備は整っている。明日、私は自ら火中に入る。怒りの小箱を携え、古く淀んだ目をやり過ごし、色のついた紐を手首に巻いて──あの男と見える。

そして無言で語りかけるのだ。私が誰か分かるか?と。

それが大号令となる。小箱が弾け、火蓋が切って落とされる。饗宴の幕開けだ。

だから、龍よ急げ。

宴の締めにはどうしても、神の劫火を必要とするのだから。

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