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現在編1部−辿り着いた丘で

この度、お読み下さった皆様方の助言により文体を変えております。

これからも皆様方の助言をもとに読みやすい、小説らしい文体になるように頑張って参りますので宜しくお願いいたします。

『ハアッ…ハアッ…ハアッ……っと、もう少しで着くはずだよな。』

 俺は今、道標に従って林の中を通る畦道を歩いて丘を目指している。

 それほど遠いと感じることもなく、少し歩くと林の切れ目が見えてきた。

『おっ! 出口だ。さてと、いったいどんな丘になっているのかな?』

 そう言って俺は、丘へと一歩足を踏み出した。

『おおっ!?』

 少し木漏れ日が射すだけの薄暗い林の中から、太陽の光の降り注ぐ所へと急に出てきたためか一瞬目が眩んだ。

 ゆっくりと目を開く。

 そして、瞳の中に映ったのは、

 海の青

 空の蒼

 雲の白

 大地の緑

 太陽の赤

 光の金




 それは、今まで見てきた中で圧倒的な世界であり、景色であり、色だった。

 どの位だろうか。俺は時間が止まったかのように、この景色を眺めていた。

 その時だ、

『……っ!?』

 今、一瞬頭の中に何かがよぎった。

『…今のは何だ? 何か…広い…丘のような場所が見えたが…。』

 確かに、今よぎった記憶の中には丘のような場所があった気がした。

 記憶の中の白黒の世界。丘らしき場所には子供が二人、手を繋いで空を見上げていた。笑顔だった。

『それと、小さな子供が二人…。男の子と女の子だったと思う。…でも、あの男の子はどこかで見たような気がする…。』

 女の子の方には特に引っかかる事はなかったが、男の子の方は何かが引っかかったのだ。

『……あの男の子は。』

 俺は空を仰いで何とか思い出そうとする。

『…そうだ。あの男の子は……小さい頃の俺だ!』

 突然何かのピースが当てはまるように俺は叫んでいた。

『でも、何で小さい頃の俺は丘にいたんだ? そして、あの女の子は誰だ?』

 その先を思い出そうと再び空を見上げたが、残念ながら出てくる事はなかった。

『俺は、小さい頃ここに来たことが有るのか? あの丘はこの場所なのか?』

 丘を見渡した。そよ風が吹いて足下に広がる緑を揺らしている。空には雲が流れていた。

『俺は何か大切な事を忘れている気がする…。大切な何かを…。』




 そこから先がどうしても思い出せない俺は、適当な木陰を見つけて寝転んだ。

「サワサワサワ‥サワサワサワ…」

 風に運ばれ夏草の匂いがする。とても心地が良かった。

 俺は疲れた体を休めながら、再び記憶を手繰り寄せようとする。

 親父に連れられて都会に出て行く前の記憶を・・・・・・ 俺の記憶には一部分の欠落がある。

 今は亡き母さんと過ごしていた頃の記憶。

 そして、母さんが亡くなる前の前後の記憶。

 そこだけが今の俺にはすっぽりと抜けている。




『・・・・・・・・。』

 疲れていたためか急に眠気が押し寄せてきた。

『…ん…少し…だ……け………。』

 そして、俺は眠りに落ちていった。




 夢を見た。


 小さい頃の


 あの夢を


『彼方…彼方……。ほら、起きなさい。』


『彼方。』




 それは


 とても優しい夢


 でも


 とても悲しい夢でもあった・・・・・・・・・・

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