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現在編1部−丘へ

彼方

「……遠い………暑い…………疲れた…。」

 俺は延々と続く畦道をひたすら歩き続けていた。

 頭上には真夏の太陽がカンカンと照りつけていた。

 道の先には陽炎が立ち昇っていた。

 風は時折吹くものの、完全に生暖かい不快感を感じる風だった。

彼方

「ふぅ…。少し……休みたいな…。」

彼方

「…流石にこの状況下で30分近く歩いていると辛いものがある…。」

 素直にバスを待っていれば、こんな苦労はしなくてもよかったのかもしれない。

彼方

「…だけど、この炎天下の中、野ざらしのバス停で5時間も後の次のバスを待つのも嫌だったしなぁ…。」

 結局の所、俺はかれこれ30分近くこの畦道を歩いていた。

 駅に有った案内板には、永久音村まで徒歩40分と書かれていたが、どう考えてもあと10分程歩いて着きそうには見えなかった。

 途中、休み休み来ていればここまで辛くは無かったと思うのだが、木陰すらなく休む事が出来なかったのだ。

 ただ、ただ続く、一本の畦道。脇には果てなく続く田園風景。そして山々…。

 この炎天下の中、木陰がなければ到底一休みする気にもなれなかったのだ。  もう少し行けば村に着くはず、きっと木陰が有るはずと信じて歩き続けて今に至ったのだが、それも限界に来ていた。

彼方

「……うっ…。」

 視界が少し暗くなった。いよいよマズい状態になってきたみたいである。彼方

「…マズいな…、どこか休める所はない……か…な…?」

 俺は道の先へと視線を移した。

彼方

「…ん?あれは何だろう?……道標か何かみたいだが…。」

 陽炎が立ち昇る道の先にうっすらとぼやけるようにして見えたのは、道標らしき物だった。

彼方

「…よし。とりあえずあそこまで行ってみるか。」

 俺は疲労が溜まった体と、来たときよりも重くなったように感じるバッグとアタッシュケースを引きずりながら歩いて行った。




彼方

「…ん〜と何々…。永久音村までこの先真っ直ぐ、徒歩20分………と書いてあるなぁ。」

彼方

「に…に、20分……。まだ歩かなくちゃならないのかよ……。」

 俺は、まだこの先20分も歩かなければならないと分かりガックリとうなだれた。

 流石に今のこの状態では、20分も歩けそうに無かった。

 周囲を見渡したが、バスなど当然来なかった。ヒッチハイクをしようにも車が通るような様子もさえも無かった。

彼方

「……仕方がないか…。この道標の脇で休むとするか……………ん?」

 諦めてここで休もうとした時、道標の立っている畦道の脇にもう一本細い道が続いているのを見つけた。

 その道は少し行くと林の中に続いていた。

彼方

「…この道は何処に続いているんだろう?」

 もう一度道標に目をやった。すると、道標には小さく

 『この先300メートル、青空の見える丘』と記されていた。

彼方

「この先300メートルか……ちょっと行ってみようかな?」

 確かに体は限界にきていたが、不思議とこの丘に行ってみたいという興味が勝っていた。

彼方

「よし!何かの縁だ行ってみよう。」

 俺は重くなったように感じる体を奮い立たせ、歩きだした。

 林を抜けた先に在るだろう

 『青空の見える丘』へ

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