現在編1部−丘の上の少女
目の前には、青く透き通るような海。
上を見上げれば、蒼く澄み渡る空。
周りを見渡せば、新緑に覆われた山々。
足元に目をやれば、綺麗な緑色をした夏草が茂っている。
耳を澄ませば、風の音、潮騒、蝉の声が聞こえてくる。
『ヒュルルル〜。ヒュウ〜。』
時折、丘の上を涼しげな風が駆け抜ける。
『…サワサワサワ…。サワサワ…。サワサワサワ…。』
風に揺られ、夏草達が踊っている。
うだるような夏の日差し、暑さも、この場所に居ると不思議と苦にはならなかった。
海に浮かぶ蜃気楼。
周りに立ち昇る陽炎。
全てが神秘的に見えてくる。
ここは、
『青空の見える丘』
永久音村の外れにある海に面した小さな丘だ。
そして、丘にある岬に、少女は空を見上げて立っていた。
■少女視点■
少女
「今日は来てくれるかなぁ……。」
私は空を見上げて呟いた。
少女
「あの日の約束……覚えていてくれているかなぁ……。」
私は、今日もこの丘で人を待っていた。
その人は、今日来るかもしれないし、来ないかもしれない。
明日かもしれない。
明後日かもしれない。
1ヶ月、一年、十年先かもしれない。
それに、もう来ないのかもしれない。
それでも私は、あの日からずっと、この丘で約束の人を待っている。
???
「じゃあ、約束する!僕は必ず、ここに帰って来るよ。」
???
「だからそれまで………をよろしくね。」
その人は、本当に明るくて、思いやりがあって、優しい男の子。
だから私は、あの日と同じような青空が見える日には丘の上で彼を待ち続けている。
あれから何年も経っているから、彼は男の子から立派な青年になっているのだろう。
少女
「クスッ(笑)。きっと、すごく格好良くなっているんだろうなぁ。」
少女
「でも…あまり格好良く成りすぎていたら、私が分からないかも…。」
そう言うと、私は自分に目をやった。
少女
「…私は多分………変わっていない。」
少女
「…あの日からずっと……そのまま……成長しただけ……。」
少女
「…だって私は………。」
私はそこで言葉を区切った。そして、空を見上げた。空には大きな入道雲が一つ、2つと浮かんでいた。
少女
「……私はずっと、待っているよ…。」
少女
「…あなたが来てくれるのを…。」
そう言うと、私は青空に向かって両手を伸ばしながら微笑んだ。
少女
「……ねぇ……。彼方君……。」