プロローグ
皆さん初めまして。この度初めて小説を書こうと思い当たりました。なので至らないところも多々あるとは思いますが、温かい目で見守って下さると幸いです。感想など有りましたら宜しくお願いします。
何時からだろう?嬉しい時に喜べなくなったのは…
何時からだろう?他人に対して怒りという感情を持たなくなったのは…
何時からだろう?哀しい時に泣けなくなったのは…
何時からだろう?楽しい事を素直に楽しいと感じなくなったのは…
何時からだろう?俺が本当の自分の感情を
「心」を失ったのは…
何時からだろう?俺が本当の
「笑顔」を忘れたのは… 俺
「水無瀬 彼方」は、常に自分の事だろうと他人事であるかのように、淡々と接してきた。
…感情が薄い。いや、無いと言った方が正しいくらいだった。
だから俺には、確立する自己と言うものさえ曖昧で存在しなかった。
自分自身が曖昧で、陽炎のようにゆらゆらと消えそうな存在。
だが、俺はその中で自己と言うものを保つ為、周りから求められる物だけに応えられるような人間で有ろうとしてきた。
でもそれは、偽りの自分。偽りの仮面を付けた単なる偽善者だ。
誰かが喜んでいたら、一緒に喜んであげた。
誰かが怒っていたら、それに共感するようになだめたりもした。
誰かが泣いていたら、自分もつられるように涙を流す努力もした。
周りが楽しくしている時には、出来るだけ自分も楽しそうにしていた。
そこには、自分の感情など一切無い。
出来るだけイレギュラーにならないように、俺は今まで生きてきた。
正しい事もしただろう。
間違った事もしただろう。
それでも、感情の無い俺の処世術は、周りに逆らわずに、流される事だった。
そうする事で全てが上手くいった。
だが、
『チクッ。』
時々、周りの本当に嬉しそうな顔、楽しそうな顔を見ていると、胸に何かが刺さるような感じになることがある。
彼方
「羨ましいのか?…俺は?」
でも、俺はどうすれば、普通の人のような感情を手に入れる事が出来るのか分からなかった。
彼方
「ふぅ。」
俺は溜め息をついていた。
彼方
「ん!?」
俺は、時々何かが引っかかって、何かを思い出しそうになることがあった。
定かでは無いが、幼い頃の自分は、誰よりも感情の豊かな明るい少年だったのではないかと…
でもそれは、すごく朧気な儚い記憶…
思い出そうとしても、霞が架かるように消えていく。
彼方
「…お…母…さ…ん?」
何故か不意に口に出た言葉。
それには、少しの懐かしさが含まれていたように思えた。