元魔王ですが、勇者側の理不尽な仕組みについて語らせてくれ ~魔物側視点からお伝えします~
俺は元魔王【ハーデス】。
とある理由で人間界に来ている。
魔王であった俺は、勇者側の常識がいまいち分からない。
というか、勇者側は色々と理不尽なのだ。
まず一つ目、【レベルアップ】だ。
敵を倒すと経験値が溜まりどんどん強くなるだと?
馬鹿馬鹿しい。
魔物側は生まれた時に強さが決まってるんだよ!
お前らは時間をかけレベルアップすればどんな魔物でも倒すことができるが、魔物側は一度負けたらもう勝つ可能性はないんだよ!
こっちだって人間を倒してどんどん強化されるんだったら、はっきり言って力の差は歴然だからな?
二つ目、【能力値】だ。
エイチピー?エムピー?はぁ?
そんなの魔物側は認知してねーんだよ!
HPが少なくなってきたから防御をしましょうとか、そんな戦略立てられるのはお前ら勇者側だけだよ!
こちとら「自分あと三回くらい攻撃くらったら死ぬ?いや二回くらい?」とかそういう状況の中で脳ミソ働かせて戦ってるのに、余裕で計算できて対処出来るのは有利すぎるだろ!
MPなんて概念もないから、そりゃあ出し惜しみするだろう!
そんなん数値化されてたら、こっちだって通常攻撃しないで最初から全力で大技ぶっ放すわ!
攻撃力と防御力だと?
そんなん数値化されてたら、強敵相手にわざわざ死ぬの確定してるような戦闘はするわけねーだろ!
三つ目、【回復魔法】だ。
これマジで凶悪。
昔の魔王の言い伝えで、傷付いた勇者御一行に勝利を確信したら一瞬で傷が癒え形勢が逆転したという伝説がある。
俺ら魔物側は回復魔法なんて知らないから、これを敗者の言い訳だと思い込んでいたが、勇者側は普通に使える。
そんなん使われたら絶対に負けるじゃん!
あと一撃で倒せるって時に、回復されても困るんだよね。
俺ら魔物側がそんなん使ってたら、マジで泥仕合だぞ?
本当に頭おかしい種族だ。
四つ目、【仲間】だ。
いやいや、これ普通にズルい。
だってさ、俺らはさ、配下の手柄を横取りするのは御法度なわけ。
そんなんしたら普通に内乱が起きるじゃん?
俺の獲物になにしやがるんだー!って。
勇者側はそういうの関係なしに仲間を連れてやってくる。
もう凶悪すぎて言葉も出ない。
俺ら魔物側総出で潰しにかかるとお前らは勝てないぞ?
五つ目、【宝箱】だ。
あのな、俺達魔物側は大切なものが腐敗しないようにな、温度とか湿度とか考えて保管してるの。
これは魔物側の財産なの。
勇者側からしたら宝箱かもしれないけど、魔物側からしたら保管箱なの。
それをずかずか私有地に入ってきて、箱を開けて「武器ゲットー!」だと?
君らが手にしてるもんは俺らの財産だぞ?
魔物側は勇者側の命しか奪わないぞ?
それなのに君たちは命も奪い、財産も奪う。
これもう凶悪以外のなにものでもないよね。
たまーにさ、保管箱に混ぜて保管箱に激似の魔物を置いているだろ?
それは、俺ら魔物側にとっては鉄板の悪戯なわけよ。
俺が配下に保管箱の中身を定期的に確認させてるんだけど、保管箱かと思ったら違いましたー!なんてめっちゃウケるだろ?
それなのに勇者側は倒すよねー。
激似の魔物マジかわいそう。
俺らの一笑いの為に、確認しに来るのを何ヵ月もじっと待ってるのにな。
いやー、他にも色々とあるけどね。
何で元魔王の俺がそんなこと知ってるかって?
そりゃあ俺が勇者から直接聞いたからね。
俺はひょんな事から……って言っても結構俺にとっては重大な事ではあるが、今冒険者として勇者と行動を共にしている。
今の魔王を倒したいからね。
そうは言っても、もちろん勇者側にこっちの情報は流してないぞ?
腐っても俺は元魔王だ。
一応、俺はちゃんとした魔物側の味方だ。
「魔物だー!」
あ、じゃあレベル上げに行ってきます!
ここまでお読み頂きありがとうございます。
今、筆者が連載中の
「縄張り争いに負けた元魔王ですが、リベンジのため勇者パーティに仲間入りします! ~え?勇者側って【レベル】が上がると強くなるの?そんなんチートじゃん~」
の短編小説です。
ローファンタジー部門での連載をしておりますので、少しでも興味が湧きましたら、【小説情報】の【作者】から飛んで作品ページをチェックしていただければと思います。
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