第九十八話 娯楽
一人怠惰の魔女ベルルの住まう場所に進む。なぜかスムーズに進めるようになっている。扉は修復されている。だが、一つ違うところがあった。
「空いている」
なぜか、扉が開いていたのだ。理由は本人しかわからない。俺は中に入る。
「お邪魔します」
静けさがあり、とても人が住まう場所とは感じなかった。人気もなく、生活感もない。
あたりを見渡しながら、ゆっくりとベルルの居る部屋に向かう。
トントン
扉を叩き来たことを話す。
「夢乃あゆむ。話しに来た」
「……」
相変わらず応答がない。聞いていれば問題ないかな。そう思いつつ話す。
何気ない話をした。事象解決とは全く関係のない話。単純に生きて来た道を話した。
扉の向こう側の音は物音はするが、それ以上の音は一切ない。俺はそれでも話し続けた。
それを毎日し続けていた。我ながら何をしているのだろうかと思いつつも、部屋の前で座り話し続けた。話したが尽きたときには、本を持ってきては読み聞かせ。
慣れないそれに戸惑いながらも続けていった。
「あゆむさん。今日も行くのですか?」
「いくね。来ないでほしい」
「わかりました」
悲しそうな表情をするフローラ。今日は雨が降り、雷さえ鳴り響いていた。それでも決して変わらず通い続けていた。
それを始めてから早一か月が経過した。
「また来るぞ」
「まって……」
「今何か言ったか……?」
扉の方から声が聞こえた。待ってという言葉が聞こえた。ようやく聞こえた言葉に安堵しながら、再び座る。
「待ったぞ。何をしてほしい?」
「こっち……」
扉がゆっくりと開かれながら、少女の声が聞こえた。まさかの部屋の中に入れた。
「まじか……」
部屋の中は、俺が知っているアニメやゲームが数多く並べられていた。ごっちゃごちゃした感じが強く、とても女性の部屋とは思えないものだった。なぜここまで多くのものが存在しているのかが謎であるのと同時にもしかしてっと一つ考えた。
「一つ聞いていいか?」
「なんじゃ」
「お前も別世界から来た人か?」
「そうだな」
どこかしらオタクのような話し方をしつつも、普通の会話も織り交ぜる。特徴的な口調だ。
そして、同じ別世界から来た住人だということがここで知った。今まで会わなかったこともあり、非常に苦労したが、本当にいたという事実に俺は何か心のおもりが外れる気がした。
「どれくらいここにいるんだ?」
「わからない」
「そうか……」
「これ……これをやってほしい」
「ん?」
怠惰の魔女ベルルは、あるものを指さした。広い部屋の中でたった一つ指したものはゲーム。
その画面には「GAMEOVER」と白文字で大きく書かれ、キャラクターが中心に倒れている描写がされていた。俺はそれを見るなり、苦戦していると理解した。
「こんな難しいゲームしてたんだな」
「知ってるのか?」
「知ってる。言うてやりこんだしな」
「教えてほしい!」
「いいぞ」
こうして、俺はただ遊ぶことを中心とした魔女攻略が開始する。