第九十七話 宅配5
「駄目でした。事象解決には向き合う気はもうないと……」
「そうか……ありがとう。毎日助かる」
「いいえ。それでは私はお仕事の方に……」
「うん」
従者ロートは去っていく。俺は一人部屋で考え事をしていた。昨日フローラから出された語りを思い出していたのだ。小さいながらよくやっている。そう答えが付いた。
あの小ささから、国を任されるようになり、全体を見なければいけなくなった。まともにできたと思ったが、あだとして返される。
俺は責任の重さについて計り知れないほどの脅威を考えていた。誰も悪くはない。だが、十分引きこもる理由にはなると考えた。
怠惰の魔女ベルルは働きものだとフローラは語った。スイッチが入れば、誰よりも率先し行動を起こす。しかし、それが徐々に国民には理解されないものへとなっていた。当時は魔女へのあたりが強く、それが国を治めるトップになるとなると、嫌がるものが続出していた。
石を投げるものまで現れた。この世界の魔女は、人によりけりだが、嫌っている人が大半を占めていたのが怠惰の魔女の国だった。何とか毎日苦戦しながらも運営していたが、間に合わずといったところが強く出た。
そもそもどうして魔女が国を治めるようになったのかはわからない。自然とそうなったとフローラは語る。争いのない平和な世界を築く。それがしたいがために力あるものが上にあがった。しかし、結果は散々たるものへとなっていく。魔女であろうが、元は人である。
何も変わらない。ただ力が人よりも強い。それだけ。
問題点はそこに収まらず、何をしても因果応報として行動するものも現れた。
それを救ったのが従者と呼ばれるものたちだ。フローラはそう語る。
俺は日々考えた。どうしたものかと。俺が理解できる! そういったところで、相手は何をいっているんだ? っと突っぱねるだろう。
国の運営自体はやったことがない。だからこそ、アドバイスすらできない。人のコントロールもしたことがないため、動かす力もない。
強欲の魔女からのねじ伏せは、きっかけに過ぎず、元から諦めがひどくあったのだろう。フローラが語るには、人への愛情が何倍も強いこともあり、それが絶望への浸蝕度もすさまじいと結論づいた。
横になり天井を見つめる。今回の問題は、今までよりも楽で単純なものだ。しかし、ベクトルが違う。何より説得が必要であり、何より、俺と同じ引きこもりなんだ。
俺は引きこもりに重点を絞った。そして、あることを思いつく。
引きこもりであれば、同じもの同士分かり合えるのではないのか? そう確信したのだ。
思いつけば即行動を胸に、魔女の城へと向かった。