第九十五話 宅配3
トントン
扉を叩く音。メイド姿のフローラが立っていた。従者ロートとフローラの二人が扉の向こう側にいるであろう怠惰の魔女ベルルを待つ。
「魔女様。お求めのメイド様を連れてきました」
従者ロートはそういうと。
ガチャリ
扉は音をたてゆっくりと開いていった。俺はと言うと、フローラのかけた擬態できる魔法を付けてくれた。下手な行動をすると解けるが、後ろにちゃんといる。
扉がゆっくりと開き、中から何者かが現れてくる。
俺はその姿に驚愕し、慌てて口を押える。
「ようやく来たか。待ちわびていたぞよ」
これほどにまで驚いたことはないであろう見た目をしていた。見た目はラスティのように幼く小学生程度の身長しかない。言い過ぎかもしれないがそのくらいだ。
白い文字入りくそださティーシャツを着ており、なぜか知らないが下駄を履いている。Tシャツのせいで下を履いているのかまったくわからない。
確実にオタクである事実が目の前を見てわかった。
おさげにしており、明るい茶色の髪色をしていた。何よりも驚いたのが、Tシャツに「仕事人」と書かれていたことだ。何が仕事人なのかさっぱりだ。
だが、ここで一つ恐ろしいことが起こった。
「メイドじゃ! メイドじゃ……!?」
バタン!!!
一瞬の出来事だった。はしゃいでメイド服のフローラを見た瞬間、細かく言えば顔を見た瞬間、扉がものすごい速さで閉められた。同時にチェーンもつける音もした。
何が起こったのかさっぱりだった。
「かえってくれ!!」
扉の奥からは大きな声でそう話す。従者ロートもそれを聞くなり困惑する。何が起きたのかさっぱりだ。
だが、その状況を理解している者が一人いた。そのものは、扉の前に行くなり突然。
「燃えよ……」
ドガアアアアアンン!!
「「ええええ!!」」
フローラは突然扉めがけて、炎をぶっ放す。従者ロートと俺は言葉がでてこなかった。何が起きたのかさっぱりだった。だが、フローラは間髪入れずに何度も行使する。
「でてきなさい!! 早く!! 事象問題があるのです!! ベルル!! あなたの力がなければ解決できません!! 怒るよ!!」
「やだ! やだ!! 事象とか知らない!! なんでいるの!? どうしているの!? おねーっちゃんいるなんて知らないよ!! そもそも怒ってるじゃん!!」
「いて悪い!? いちゃわるいの!? ちなみにルーシィも来てるから! こら!! 開けなさい!!」
「やだ! やだ! やだー!!!」
ドガン!! ドガン!!
後ろから棒立ちで立ち尽くし何事かわからず、互いに見ている俺と従者ロート。
「ロートこれは止めないとやばいよな……」
「たぶん……そうですね」
それから流れは速かった。俺は無理やりフローラを離し、身動き取れないようにがっしりとつかむ。
従者ロートはぼろぼろになった扉を見つつ、魔女ベルルに事の経緯を話した。
「無理じゃ!! 絶対に不可能じゃ!!」
「魔女様。しかし、アスモ様は事象解決を一番考えていただいており……」
「おねーちゃんは事象解決より、婚期遅れからの人探しに集中した方が有意義だと思うぞ!!」
「ベルル様! まだアスモ様がいるのですが……」
「うそじゃろ!!!」
ドガアアアアアン!!!
「おおおお!!!」
ジャボン!!
従者ロートは爆発に吹き飛ばされ川に沈められ、そのまま背中だけぷかぷか浮いていた。俺のところからいつの間にかいなくなり、目の前の扉めがけて猛威振るっているフローラに扉の修復をしているのか、ベルルも応戦しているのが目に見えてわかった。
それらを見て俺は思った。
「この世界の従者って大変だな。はははは!!」