第九十四話 宅配2
作戦実行から1か月が経過した。問題が発生した。
「あゆむさん? 大丈夫ですか?」
「どうしよう……これでは何も……」
「夢乃様、徐々には進んでいますが、これだと三か月は夢のまた夢かと……」
「夢乃 あゆむ みたいにですかね?」
「何もかかってねーよ! それ!」
フローラの適当なボケに対して突っ込む俺。ただ、本気でまずいという状況ではあった。メール便の数だ。この国の水準や発展に関して情報を手あたり次第渡そうと思ったが、どれも不発。国内だけの人でも、そこまで魔女に対して考えている人がいなかったのだ。
そもそも魔女がニートだから、興味を示している人がいない。ある意味危機的状況というところだ。一か月でこの程度のレベルで果たして、三か月後はどうなることやらといった状況だ。
従者ロートは今すぐにでも開始した方がよいのではないのか? そう話したが、ニートの警戒心の強さは尋常ではないと俺は語った。結果よりも過程が未熟すぎては話にならない。
ため息をしつつ、広げていた怠惰の魔女ベルルが書いたとされる画用紙を見つめていた。
「あ……これ……か!!」ドン!!
「どうしました? 驚きましたよ」
俺の机の音に対してフローラは驚く。ある一つの方法を思いついた。次の日からそれが開始される。まずは服屋にいき、資料を見せた。従者ロートは変わらず宅急便のメールだけを投函する日々。
それから2週間後のこと。
「あゆむさん……これはご趣味ですか? 良いのですが、さすがに人前では……」
「夢乃様。これは何という……」
頭をかきつつ恥ずかし気に俺は言う。
「メイド服ってやつ。ただ、猫耳、しっぽだから、似て非なるものってやつかな」
フローラは手渡されたメイド服を着ては、二人の前に姿を現す。それにしてもかわいらしい。髪色も黒のウィックを付けてもらい別人のように見える。
俺はベルルの描いた画用紙を見つつ一つの絵に着目した。片隅描かれていたが、メイド服を着た人が3人ほど描かれていたのだ。それを俺は、元いた世界と照らし合わせて、このスタイルにしてみた。
従者ロートは、このメイド姿をただの仕えだと考えていたらしい。そうなのだが、そうではないと俺は離した。
そして、従者ロートにあることを伝える。
「これを増やすのですか?」
「そう、増やす。増やして魔女ベルルに興味を持たせる。動画なんか作れたらより最高だと思うんだがな」
「わかりました。何とかしてみます」
それからはスピーディーに物事が進んだ。国の一角にはメイド喫茶なるものが設立される。この国はある意味変化を好むといった風潮が若者に対してあり、フローラの姿を見るなり、好んで集まってきた。
そして……
「夢乃様!!」
「どうしたんだよ……」
「これ……」
従者ロートが渡してきたのは、手紙だった。ロート宛てのものだったが、内容を確認すると、その動画を取ってきてほしいといった内容だった。作戦は成功する。
同時に俺はメイド喫茶の設立を機に、新たなる作戦を設けた。送り便を多くさせる一つの方法だった。
それが魔女ベルルがやった! っといった内容のものを添えたことだ。中には否定的なものもいたが、それでも怠惰の魔女ベルルの起こした行動が活気をよりあげてくれたことに喜んでいるものも多く現れた。
やがて、様々な内容のメールが箱ほどの量となり作戦実行から二か月半で段ボール一つとなった。
そして驚いたことに出くわす。
「フローラと会いたい?」
「そうです。この動画の中央にいるお方に会いたいのだとか」
「まじか……」
フローラ自身は大丈夫として頷く。俺はそれを聞き、一つのチャレンジに出てみることにした。