第九十二話 到達5
「どうするか……」
本物のニートと対面をしてしまったばかりに何も対策を考えていなかった俺は、その場に座り考えこむ。
「少しあってくれませんか~?」
「……」
言葉をかけるも、何も返ってくる気配がない。本物なのだから仕方ないだろう。それからというもの扉を叩いても、声をかけても返事がかえってくることがなかった。完全な居留守状態だ。
「夢乃様」
後ろから声が聞こえた。振り返ってみると、そこにいたのはフローラと従者ロートだった。あの大きな扉を開けれるのだと少し驚いた。まあ従者なのだからそうなのだろう。
こうして三人が合流をする。俺の反応を見るや否や納得する二人。扉を開けるそぶりが全くなく、声すらない。このままでは時間だけが過ぎ去っていくことになる。
従者ロートに鍵を持ち合わせているのかと問うが、大きな扉以外には開けるものがないとのこと。いよいよお手上げの状態となった。
「声でだめなら、物理で進みますか?」
「物騒すぎる。さすがフローラ」
「無理なのです。この空間では威力が減少する魔法防御が作られており、この扉も非常に強固なものとなっております」
「厳しい」
屋敷の内装などを見ればわかることだった。この空間は魔法防御というのはわからないが、きわめて強固に作られている。同時に不明と言わざる負えない物を作っている。少なからず、この世界の人達では想像が付かないようなものばかりだ。
少しばかり俺もそれは考えた。俺の居た世界と似たものが多く採用されている。だからこそ言える。両方の世界で通用するもの通用しないものがあるのだと。
生憎俺の居た世界では、魔法が発達していない。だが、この世界ではしている。しかし、こちらは、科学の分野は低いのかもしれない。ほぼ魔法で済ませている点もあるし、何より、文明の域が非常に低い。
国それぞれで天と地の差があるほどだ。まあそれは、元居た世界でも同じかもしれない。だが、それは非常に厳しい現実となる。天と地も差があるのならば、外部の国の人には、この国の常識が全く通用しないのだ。だからこそ、フローラと従者ロートは仕組みがわからない。ニートに対する対応もだ。
っと考えていくうちに俺はある一つの方法を思いついた。ニートを部屋から出す方法があることを。文明や世界が違っていようが、確実にでることが。出すことが出来る方法を俺は知っていた。
にやりと座りながら笑顔を作る俺に対してフローラ、従者ロートは不思議そうに見つめてきた。
「何か考え付いたのですか? あゆむさん?」
「生憎俺も長年ニートしていたんだ。突破法あるかもしれない」
「「!?」」
二人はその答えを聞き驚いていたのは言うまでもないだろう。