第九十一話 到達4
ズズズズ……
ゆっくりと扉は開かれる。ようやく戻ってきたと思い立ち上がる。
あまり元気のない従者ロートがやってくるなり話す。
「期待にそぐえない結果しかもってこれませんでした。申し訳ございません。」
「そうか……」
待っていた回答ではなく、あまり聞きたくない回答がやってきた。扉がゆっくりと閉じていくところを俺は従者を押しのけて入っていく。あまりにも勢いある行動だったために、周りは驚いたことに違いないだろう。俺も同じだ。
しかし、焦りという感情が何よりも高くあり、どのような結果であれ試しに話してみないと変わらない。俺はいつしか、行動することが美徳である事実に気づいていたのかもしれない。
気づけば扉は完全に閉まり切る。俺は一人になった。後ろにある閉まりきった大きな扉を見つめながらつぶやく。
「こうまでして入れさせない理由はなんだろうか?」
今までの魔女の城は扉こそ大きいが、自分で押せば開かれるようなものだった。しかし、怠惰の魔女は別だ。自分から押してもびくともしない。引いたり、上げたりも考えたが、どうにも自動というシステムが組み込まれていることもあり、俺自身危ない。そう思ってしまい手段を行使することはできなかった。
扉を後にし、目の前を向く。両側には滝の川のようなものが道に沿って流れている。その奥には鏡のようなものが張られており、こちらを映している。
一本道の床の両側は、流れる川のように緩やかだ。心が落ち着く。そう感じるほどの場所であった。
俺はゆっくりと道に沿って歩いていく。代り映えのしない光景だが、それでも落ち着く場所。魔女がしたいことがたくさん詰め込まれてできたのだと思うと余計に驚きを隠せないでいた。
やがて目の前に扉が現れる。大体俺の身長を超えているくらいの大きさだ。入口と比べるとあまりにも小さい扉に別の意味でも驚かされる。
トントン
ノックをする。何も音沙汰がなく、もう一度。
トントン
二度目からは中から物音がする。扉に耳をつけ、じっくりと聞く。すると、ガサゴソと音がしているのがはっきりとわかった。俺はこちらを観察しているのだと思い声をかける。
「怠惰の魔女ベルル様ですか? 俺はあなたと話をしに遠くからやってきました」
何も反応がない。わかったと思い去っていったのだろうか。魔女がニートなのは嘘だと少なからず思っていたが、もしかしたら本当にニートなのかもしれないと考え始める。
そうなるとここからが厄介だ。体験者である俺は語る。
何があっても絶対に居留守を使うやつだと……