第八十九話 到達2
城内は城というよりかは、お屋敷。和風な造形をした建物。何よりも驚いたのが、家の中に木々があること。そこには美しく綺麗な桃色の花が咲いていた。
フローラはそれを見るなり、初めて見るかのように不思議そうに眺めていた。
「綺麗な花ですよね。実のところ私にはその花のことがわからないのですよ」
従者であるロートは悲しげにつぶやく。どうやら、今まで見たことがない品種のものであり、なおかつ、この世界で咲いている情報もここ以外にないという。
ならば、なぜここに咲いているのか? 非常に疑問に浮かんだのだが、怠惰の魔女ベルル自身が作り出したと従者ロートは語る。
玄関から流れるように進んでいくと、中央にはそれよりもはるかに美しいと思える光景が一面に広がっていた。
「まじか……」
「綺麗ですね」
「ベルル様は、こういった光景が好きみたいでしてね。常人では考えられないような発想をよくします。なおのこと、これが街に反映し、現状の国をお築きになられたと思うと素晴らしいと思います」
お国を築いたのは、大半従者ロートである事実は、俺は突っ込んだ方がよいのだろうか? 少しばかり、そちらに思考が進んでしまう。ただ、あえて触れないことにする。
フローラとロートの二人は、これが何かわからず、綺麗の一言。それも納得ではあるのだが、俺自身そうではなく、どっからどう見ても「桜」や「和」である事実が否めない。
俺自身思いたくもない事実だが、もしかしてこの国の魔女は、別世界から来た住人の知り合いがいるのだろうか?
非常に過去の話になるが、俺がこうしてこの世界に来ても、周りは驚かなかった。そしたら、この世界には様々な人種の人々が別の世界からやってくるなんていうことがあるということだ。
ただ、一度たりともあったことがないのも事実。ここまで大きな行動をしていたとしても、一度もあってない。それはつまり、やられた……
俺は少し嫌なことを考えてしまう。自分の悪い癖だとして一切忘れようとした。周りの景色を見ると自然と落ち着く。フローラが言うように、綺麗な景色だ。
中央の広間のような場所には、一本大きな桜の木のようなものが立っている。周りには綺麗な花が色を均等にして配置されている。
魔女ベルルが、ニートであることが何とも信じがたいと考えてしまうレベルだ。燃え尽き症候群なるものがあるが、果たしてどうなのだろうか?
詳しくはあってみるしかない。俺は従者ロートに魔女ベルルのいるであろう場所めがけて進んでいく。