第八十八話 到達
長い道を進みようやく城の前前でたどり着く、険しくはないが長い。とても長かった。体感数十分ほど歩いた気分だ。実際そのレベルだと携帯の時計を見つつ知る。
従者ロートは、正門前に来た途端に一呼吸をする。後ろで見守る俺とフローラ。ある意味重苦しい空気が漂う感じがして否めない。
それから、こちらに振り向き一言話す。
「覚悟してください。私もここに来ることは1年ぶりほどなので緊張しております」
「まじかよ……」
もはや交流がない状態。これは非常に危険度の高い攻略になりそうだと感じる。ゆっくりと鍵を開け、門を開ける。大きな門はゆっくりと、じりじりと音をたてつつ開いていく。
そこに見える光景は、温泉街のような街並みをした場所。メイドや執事がいるわけでもない様子に見えるが、非常に綺麗に保たれている。この国に来てからは、何といっても和が基調なっていることが多く、美しくも可憐といった思いが感想が浮かんでくる。
城という場所でありながらも、そこまで行くのにも温泉街のような場所を進むほど距離が遠いのと含めて、広い。
やっとの思いで、城まで付く。目の前には大きな一本橋があり、下には大きな川のようなものが流れていた。左側は、遠くに山々がそびえたっており、大きな湖と思われるような風景が、そこにはあった。
一本橋の目の前には、いよいよ縦と横両方に長く広いお屋敷のようなものが現れる。
そして、よくよく見ると、橋の向こう側にはそれしかなく、一つの孤島のような作りになっていた。当然辺りには何もない。人もいなければ動物もいない。
なのに綺麗である。錆やコケが一切見当たらない。保ち方が異常とされるほどだ。
俺はそれが気になり従者に話す。
「何で、誰も来ないのにこんな綺麗なんだ?」
「それは単純です。魔法によるものです」
「どういうことだ?」
「あゆむさん! 魔女の魔法の力は定期的に吐き出さないと爆発します。そのため、ニートしている怠惰の魔女は吐き出すところがないため、こうして綺麗保つようにしていると考えています」
「なるほど……」
そういう制約もあるんだなとしみじみ思う。まてよ。その前に俺は一つの疑問にぶち当たる。フローラがそのような行動に及んだところ一回も見たことがない。
俺はフローラに話してみることにした。
「一回もフローラの処理を見たことないんだけど……」
「あゆむさん……それは、のちにわかることですよ」
フローラが何やら隠し事をしているように見えた。また何かよからぬいことをしでかすような考えに俺は落ちてしまう。
従者ロートはそんな俺たちを見てほほえましく思っていたのだろう。表情が軽くなる。過去を見通し考えてみると、従者は相当大変な立ち位置にいるのだと知った瞬間だった。