第八十七話 合致5
「現状のこの国の発展は古くからの魔女様の意向を元に作り上げた環境なのです」
「それはすげーことじゃん」
「しかし、それを一から作り上げたのは、私なのですね」
「おっと……おかしいぞ。雲行きが!」
「突然2Bの鉛筆で書いた画用紙一枚丸ごと使った絵を渡され、そのようしろと投げられ。今に至ります。これが果たして正解なのかもわからず……」
適当。THA・適当。ただ、俺自身驚いたのが、その絵だけを見てここまで完成された国を作るこの従者の腕がすごすぎたことだ。あえて触れないでおくが……
「ベルルと最後に会ったのはいつだよ」
「もはや年単位ですね……」
「えっぐいニートしてんな……」
「はい……」
俺はフローラと顔を合わせ、心持ちなさもありつつ、怠惰の魔女の城へと向かうことになる。先頭に何も言わずただ歩く姿を後ろから眺めていたが、先ほどの話を聞くに、自信なさげな背中に見えてしまっている自分がいる。
そんなことをつゆ知らず、先ほどからずーっと小さく笑っているフローラの姿があった。
「さっきからどうしたんだよ……」
「いえいえ、ごめんなさい。でも笑いが込み上げてしまいまして……ふふふ」
「何に対して笑っているのかわからないんだけど」
「そうですかね? 先ほどの行動で笑わない人はいないかと」
「やっぱそれか!!」
「さすがはったりがお上手なあゆむさんです。久しぶりに見ましたけど健全ですね」
先ほどからずーっと口元隠しながら笑い堪えていたフローラの理由がわかった。魔法がないのにも関わらず、あるように見せ、強気の物言い。何も変わらないが、傍から見ればただのかっこ付けも良いところ。
さすがに、無理あるとフローラは笑い続けていた。
「そこまで笑われると恥ずかしいんだけど……」
「そうですか? 私は好きですよ~! あの強気なあゆむさん! 惚れなおしましたね!」
そう言いつつ腕に絡んでくる。そもそも、フローラの魔法であれば、あの状況ならば打開できたはず。それをしなかったのはある意味確信犯のような気もする。
大体俺が従者の拳銃がないことがわかったのは、携帯のカメラシステムのおかげだ。自分を映すモードに切り替えて、小さな隙間からなら後方確認は容易にできる。
現代技術の勝利と言うわけだ。スマホは便利。異論は認めない。
この世界に来て渡り合えているのも、これが理由かもしれない。まだまだ可能性が多く存在している以上使っていきたいな。
ただ唯一の欠点は、電波がないこと。インターネットがあるわけないので仕方ない。あればもっとより良い使い方できるとは思うのだが、こればっかりはね。