第八十五話 合致3
案外長く行進は続く。いつ終わるのか待っているのもだるいが、付いて回るのならば最後尾から続いていくのがセオリーだろう。
ようやく、長い行進の最後尾が去っていくのが見て取れた。人々はたちまち、パレードが終わった後のように後ろについていくものや普段の活動に入るものが多かった。
俺とフローラは、その後ろをついていく。そのまま道なりに進むと、大きな門が現れた。兵士たちはそこに流れていく。さすがにそれ以上は進めないとし一旦止まる。
「どうするか……」
「どうしましょう」
門は俺らを無視しゆっくりと閉じていく。たちまちそこには風の音が聞こえるほどに静かな空間に早変わりとなった。目の前には身長の何倍もの大きな扉と壁。
立往生となり、悩んでいたところ。
「あゆむさん! あれ!」
「まじか……ラッキー」
フローラが近くの建物の影に従者がいるのを発見する。すかさず向かっていく。ばれずに城まで進んでいけると思いつつ尾行をする。
なぜか、従者は入り組んだ人気のないところをすらすらと歩いていく。怪しさが多く盛り込まれた箇所をいくつも渡り歩いていく。
そして、従者らしき人物が角を曲がったところを自分たちもまがった途端。
「まじか……いない……だと!?」
「これこれ尾行は良くないな。お二人さん」
「見つかっちゃいましたね? あゆむさん」
何も考えずただ尾行すれば、魔法を持つ者にはばれるのは十分理解できたはずだ。しかし、宛てがなさ過ぎるゆえに計画性のない行動が仇となった。
たちまち後ろに従者らしき人物がたち、俺らに声をかける。振り返ろうとした矢先。
「振り返らないほうが身のためです。今あなた方の後ろには拳銃が二丁あります。尾行したのですから、暗殺部隊、偵察部隊。どちらかの可能性が考えられます。それに、女性の方の身なりは、この国の者ではないと思えるほどボロボロではありませんか? 答えを」
緊迫した状況下に落とされた。無理もないっちゃ無理もないだろう。こんな無鉄砲な行動をすれば大体対応はそれになるわけで……
「何も持ってないし、何もないよ。ただ怠惰の魔女に会いに来ただけ」
俺は素直に答える。だが、相手の反応は違った。
「魔女様に名に用ですか? 内容によっては、この時点で抹殺は可能です」
「ただのお話しに来ただけだよ。荒っぽいことをする気はない」
「お話ならば私が聞き入れましょう。さてどのような内容ですか?」
「仲良くなりたいから来たとかはだめですかね……?」
「あり得ません。あのお方と仲良くしたいからという言葉は口が裂けても言えないはずです」
ん? どういうことだ? 俺は、今の従者らしき人物の発言により、ちょっと目が覚める。
「あまり良い関係ではなさそうだな。魔女と」
「あなたは何者ですか?」
「しがない普通の旅人さ」
俺はそれを言いつつ、真上に硬貨を投げると同時に、振り返り従者らしき人物めがけて、顔の正面に向けて右手を開いた状態で寸前のところで止まる。
「何……!?」
「俺もやればできるみたいだ。最初からわかってたさ。拳銃なんてないことくらい」
「一体あなたは‥…」
「今度は俺の質問に答えてもらう。怠惰の魔女の元へと連れていけ」