第八十四話 合致2
この国に訪れてから俺は懐かしさを感じていた。風景や空気、人々の服装や外見、それらすべてを照らし合わせてみたところ、とても初めて見るようには思えなかった。
この世界に来てから長い時間が経つにつれて忘れてしまっていたのかもしれない。俺はただ、その事実に対して虚しさが少しほどやってきていた。
だが、それでもはっきりと言えるし、そんな悩みは小さなものに過ぎない。ここは俺が元いた世界と同じだ。何一つ変わらない全体に対して嬉しさが込み上げてくる。
それと同時に似たようなもので違う世界である事実もぬぐえない。
俺は一つの疑問が浮かび上がってくる。ルーシィがここに来た時にいってくれた言葉だ。
「忘れないでくださいね? 重要になっていくと思います」
この言葉が何を意味するのかはわからないが、もしかしたらこの国の魔女は、それらを使って攻略していかなければいけないのかもしれない。
過去の経験から何が攻略の際に必要になっていくのかはわからない。特に強欲の魔女においては、それがより強く現れた。今回ももしかしたら、その可能性は十分にあり得る。
しかし、フローラの言葉やルーシィの言葉を聞くに、怠惰の魔女は非常に怠惰みたいだ。どれほどなのかはすぐに会ってみたいが、そう簡単にはいかなそうだ。
フローラの質問に俺は答える。
「俺が元居た世界に似てるんだ。何もかもが……」
「あゆむさんの?」
「そう。本当に何もかもが似ていて、懐かしさを感じる」
「これが、あゆむさんの居た世界なんですね」
俺の答えに対して、なんだか、うれしそうな表情を見せるフローラについ目を背けてしまった。
そこから歩いていると、遠くの方から大きな足音がしてくる。
ドドドド
鈍い感じではあるがちゃんと整列した足音。民衆はパレードのように両脇によけていく。俺らも同じようにする。奥からゆっくりと流れて来たのは、軍隊のような恰好をした者たち。
洗礼されたかのようなその動きに、そして、戦闘にいるものについて理解する。
「従者だ……」
明らかに他とは違った見た目をしていた。威厳も含めて、かなりしっかりとした見た目。俺の予想では間違いなく従者であると確信していた。
見つけたはいいものの、そこからどのようにしてコンタクトを取るかが悩みどころだ。こんな大衆の前でしかも、軍隊の行進のイベントが開催されているさなか、突然目の前にでていくのは無鉄砲だろう。
少し考え、フローラに話す。
「あの従者の後ろをついていこうと思う」
「突然どうしたのですか?」
「何かわかりそうな気がしてな……」
「わかりました。やりましょう! 楽しそうですね!」
「そういうことでいったわけでは……」
案外簡単に頷いてくれたフローラ。ルーシィが今何をしているのか、フローラが何を考えているのかは詳しくはわからないが、このままいるのも忍びないこともあり、自然と行動に踏み切っていた。