第七十九話 水準2
「うわ~お……」
ついに怠惰の国に到達する俺ら一行。なぜか、国の光景を見るなり、俺は自然と懐かしさを感じていた。門を潜り抜け、そこにあるのはちゃんとした都市のような作りの国だった。あたりを見渡せば、路面電車は通り、人々の服装なんかもおしゃれさが、ちょっと他の国とは違ったテイストになっていた。
人々の雰囲気も明るいものがあり、外とは大違いの光景に言葉が出せなかった。俺は入った瞬間から感じる懐かしさに対しての疑問が浮かんでくる。どこかであったことのあるような雰囲気や街並み、人の服装。
そもそもが俺とあまり変わらないラフなスタイルだ。髪型も人それぞれ変わっており妙に落ち着くところがある。
「ん~……」
隣にいるフローラは、この場所を見て何か不思議そうに考え事をしていた。俺はそちらの方をゆっくりと見つめる。それに気づいたのか、笑顔になり問いかけてくる。
「私の記憶よりも発展してますね。それに、今までとは大きく異なった文化のようなものを感じます」
「そうか……妙に、俺からしたら懐かしさを感じるんだ」
「なつかしさ? ですか……」
フローラとあまり話があっていない感じが俺の中ではした。頭の中では、懐かしさを感じるのだが、実際それがいつ体験したのか? そもそもどこで知ったのか? 全くと言っていいほどわからないし、合致しない。だからこそ、俺の考える。この懐かしさは正常なものなのかも怪しいところだ。
しかし、一つだけ言えるのは、フローラの服がこの国とあっていないということくらいだ。正直俺は何回も彼女に対して話したが、その服装が良いとして聞いてくれないことがしばしばある。
少しぼろぼろな、シンデレラがまだ床掃除をしているときのようなロングスカートの服装。
本人は良いとするのだが、この国の発展を見ると考えさせられるものがある。
「あゆむさん。懐かしいと感じました。その心忘れないでくださいね?」
「え……」
「のちに、重要になっていくと思います」
「わかりました」
俺が少し考えているときにルーシィは語り掛けて来た。何やらこの国のことを知っているかのように話してきた。一体それが何なのかはわからない。ただ、今後知っていくであろう。なので、あまり突っ込まないで置くことにする。
俺たちはなんだかんだ馬車での行動が多く、疲れ切っていた。思っている以上に馬車は眠ることもできない。外は魔獣がうごめいていることもあり、余計に危ないのだ。
なので、この国のことや怠惰の魔女のことは次回以降にするとして、ひとまず宿屋を借りることにした。
「お客さんかい? どうぞ。ゆっくりしてな」
門の近くの小さい宿屋につき、扉の先にはふくよかなエプロンに白い三角巾を付けているおばちゃんが話してきた。そもそも、小さい宿屋といってはいるが、どこからともなく、外装からして旅館のようなスタイルだ。疲れていることも相まってか、そこら辺の不思議な部分はあまり触れないことにした。
国が違えば大きく異なる街並み、恐ろしいと感じざる負えない。ただ、話に聞けば、この国の魔女は、非常に怠けものと聞く、発展の仕方を見るとどうしても思えないところがある。
トントン
「はーい」
ドアが叩かれる。誰か来たのかと見に行く。
「フローラか……どうしたのよ」
「む~~~!!」
何やら非常に怒っているようだった。無言のまま部屋に入ってくる。
そして、すかさず詰め寄られる。
「どうして!? どうしてですか? ねぇ!!」
「どうしてって……そらぁ~……ね?」
「言葉になってません! はっきりといってください!」
「いやさ……男女が二人一つ屋根の下なんて、あまりよくないだろうに……」
「む~~!!」
フローラが怒っているのは、俺とルーシィ、フローラの部屋が別々だということみたいだ。俺は一人部屋、フローラも一人部屋だ。ルーシィがくまのぬいぐるみだから、一人部屋だ。
無理やりそうしてもらった。それに対して非常に不服なのだろう。
本当に旅館のようなスタイルを貫いているようで、畳部屋にベッドの置いている部屋が一つある。それくらいなものだ。まあまあ広い。机を挟んで会話する。常時不服そうなフローラの目を見ずに話す俺に対して、さらに異議があるようで……
「これは一大事です!! 夫婦間の!! 一大事です!! 女性を連れ込むきで!?」
「さすがに……それはないって……」
今晩荒れそうなきが、俺の中ではした時間だった……